2016年10月15日
シャツメーカーのお話
面白い納得できる記事だったのでお伝えします。
今も昔も基本的なことはおなじですね。
興味ある方はお読みください。
https://a.msn.com/r/2/AAiS6k8?m=ja-jp
顧客に手が届く価格で高品質の商品づくりを実現
メーカーズシャツ鎌倉(株)(貞末良雄会長・貞末民子社長)はシャツ専門の製造販売業として1993年に創業。現在の年商はおよそ33億8000万円(2015年5月期)、社員数120人。東北1、関東19、中部2、近畿1、中国1、九州2の合計26店舗(2015年現在)を展開する企業だ。
国内には数多くのアパレルメーカーが乱立しているが、その中で同社は比較的季節の影響を受けず、不良在庫になりにくい「シャツ」のカテゴリーに事業を絞り込んで事業化した。シャツのカテゴリーに絞り込んだ専門店は、当時国内に存在していなかった。
創業に際して貞末良雄氏は中間流通が収益の6割を得るアパレルの業界構造に疑問を持ち、GAPの様に中間流通を経由せず工場に直接製品を発注し、自らが在庫リスクを負うSPA(製造小売業)方式を取り入れた。
同社は中間流通に支払う経費がなくなれば上質な商品を手頃な価格で販売できると考え、兵庫県西脇にある生地メーカーと交渉。メーター当たり800円の生地を現金取引で全品買い取りという条件を提示して、半額の400円で商談を成立させ、生地の調達に成功する。入手した生地をつき合いのあった縫製工場に持ち込み、製造を依頼した。
こうした取り組みにより、「肌触りのよい綿100%の高級生地を使い、見た目が美しくほつれにくい巻き伏せ本縫いで、貝ボタンを使用し、しかも縫製は日本国内の工場で行う高品質なシャツ」を4900円(税別)という価格で実現する。一般的な高級シャツの原価率は15〜18%なのに対し同社製品では約60%となっているが、同品質のシャツがデパートなら1万円はする商品が手頃な価格で実現した。
ブランドの認知度と知名度を向上させた雑誌報道
同社は1993年に鎌倉の鶴岡八幡宮から徒歩5分ほどの「岐れ路(わかれみち)」バス停前にあるコンビニの2階に、1号店となる16坪の店舗をオープンさせた。予算的に制約があるため条件のよい場所に出店はできず、人を雇うこともできないため、販売は貞末民子社長、シャツの企画と発注は貞末良雄氏が行うという体制からのスタートだった。
いかに上質な製品を製造販売しても、生活者に知られるまでは売れるはずもなく、同社も顧客が生まれるまでには時間を要した。創業から半年近くたった1994年5月頃に、貞末民子社長が雑誌「Hanako」に店舗の情報を投稿したところ、鎌倉特集の中で紹介され、これをきっかけに顧客が次第に増え、店の前に行列ができるようになり、商社や百貨店の幹部が視察に訪れるようになった。
1号店が軌道に乗ったことで、1995年7月に横浜ランドマーク店を出店し、それ以降東京から神奈川のエリアに直営店を出店し、事業を加速させていく。
メンズファッションの本拠地ニューヨークに
ニューヨークのマディソン街は、「ブルックスブラザーズ」「ポール・スチュアート」「Jプレス」「Jクルー」といったメンズブランドの本店や旗艦店を構える場所として知られている。2012年10月にメーカーズシャツ鎌倉は、海外1号店として約70平方メートルの店舗をこの地に出店した。
日本と同様にニューヨークでも日本製の高品質シャツが手頃な価格(79ドル)で手に入ることが評価され、クチコミやSNSによって現地の弁護士や金融関係者に広がり、出店後2年目にして黒字を達成している。
「価格の進化」経営を推進する7つのポイント
時代を超えて求められる企業になるには、
(1)市場
(2)顧客
(3)意味(用途・役割)
(4)製品(商品)
(5)価格
(6)ブランド
(7)サービス
(8)課金方法
(9)販路
(10)販売方法
(11)コミュニケーション
という11の領域で経営を進化させ、経営全体を最適化することが必要だ。
詳しい進化経営のプロセスは、既に上梓した『価値づくり進化経営』(日本経営合理化協会刊)に譲るが、今回は(5)価格の進化に取り組んだメーカーズシャツ鎌倉の事例から、製造直販方式による価格設定の工夫から、全体最適を図って進化していったポイントを7つ抽出する。
(1)流行や季節性に影響を受けにくい製品領域に絞り込む
ビジネスパーソンがスーツに合わせて着るドレスシャツは毎日着る消耗品で、定期的に買い換え需要が起こる。高額なシャツには手が出ないが、紳士服の量販店やスーパーでは買いたくないというこだわりを持つ男性は多い。こうしたビジネスパーソンがメーカーズシャツ鎌倉の商品を評価してファンになり、リピーターが生まれた。
シャツのカテゴリーは季節に影響を受けにくい長袖が基本で、またデザインも流行に左右されにくい。こうした定番商品的要素が強いシャツのカテゴリーに絞り込んだことが同社の強みになった。アパレル産業に限らず、コモディティ(価格の安さだけで選ばれる製品)にならない消耗品市場で、季節性に左右されず定番的な製品カテゴリーを見つければ、大きな鉱脈になる。
(2)中間流通をなくして製造直販に取り組む
ファッション衣料の販売価格が高くなる理由は、中間流通に支払うマージンと売れ残りのリスクを加味した価格設定になっているためだ。この点にメーカーズシャツ鎌倉は着目し、シャツの専門店業態に製造直販方式を導入した。
(3)知覚価値価格設定とバリュー価格設定を組み合わせて市場規模を大きくし、高収益性を実現する
製造直販にすれば価格の設定は自由に行え、しかも利益は増える。しかし海外ブランドのように高額な価格設定にすると、顧客の数は減り、市場規模は限られてしまう。そこでメーカーズシャツ鎌倉はデパートよりも手軽で、量販店やスーパーで販売されている新興国製商品ほど安価でない、国内生産で4900円(税別)という価格に設定した。
この価格は、ここまでなら支払ってもいいと思う顧客の心理・値ごろ感・支払い能力を踏まえた知覚価値価格設定と、コスト・パフォーマンス(費用対効果)が高いバリュー価格設定を組み合わせている。目の肥えたこだわり層なら、品質がいいのに納得価格になっていることが見抜ける。また手が届く価格を実現したことで、顧客層を広げ、市場を大きくすることにも成功している。
業界の構造に目を向け「価格の進化」を実現
(4)手が届く既製品でありながら、豊富なサイズバリエーションを用意し、手間を掛けずに選べる利便性を提供
サイズ選択の幅が限られる安価な既製品と違い、メーカーズシャツ鎌倉では顧客が最適な商品を選べるように豊富なサイズバリエーションを用意し、店頭で簡単に選べるように工夫している。顧客は自分のサイズの商品を、2回目以降は陳列棚から容易に選べる。多忙なビジネスパーソンが仕事の合間に短時間で買い物でき、店頭での接客時間も短縮できるメリットを生み出した。
(5)広報活動に取り組み、自社の強みと魅力をクチコミやSNSで拡げる
直営店を出店しても、顧客基盤を持たない企業は集客に苦労する。メーカーズシャツ鎌倉は女性誌「Hanako」に情報を送り、鎌倉特集に掲載されたことがきっかけとなり集客につなげた。雑誌社は毎年定期的に特集するテーマ(観光なら京都や鎌倉、夏の水着シーズン前にはダイエットの特集など)があり、編集者は他誌を情報源として参考にすることが多い。そのため一度メジャー誌に掲載されると、その後は多くの雑誌やSNSなどに紹介される機会と頻度が増える(これを弊社では情報連鎖と呼ぶ)傾向がある。
こうしたメディアの特性を踏まえて広報活動を行うと、B2C市場では非常に効果がある。
(6)メイド・イン・ジャパンの魅力を強みにする
製造コストを削減するために新興国で製造する企業は多いが、コスト競争では生産量の多い大企業が有利だ。中小企業の場合、価格競争の市場でなく、独自の強みを発揮した価格帯の商品で優位性を発揮すべきだ。メイド・イン・ジャパンを売り物にするなら、商品を通じて国内生産の価値を「見える化」し、モノづくりの違いを提示することが重要になる。
(7)イメージのいい都市のブランド力を活用する
1都3県(東京、千葉、埼玉、神奈川)を対象に行われた全国都市ブランド力調査(2008年に(株)ゲインが実施)を見ると、行ってみたい都市ランキングで鎌倉は19位にランクインしている。首都圏に暮らす生活者には、鎌倉のイメージが非常に高いことがわかる。その一方、京都などと比較して、鎌倉の地をブランド資源としてアピールする企業や商品はまだ少ない。こうした中でメーカーズシャツ鎌倉は、鎌倉という都市のブランド力を自社の資源として上手く活用した。
成長を続ける企業は、「価格を進化」させるために業界の構造に目を向け、さらに顧客が納得する価格設定を実現していることがわかる。
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