2016年10月22日
歴史学派と歴史主義‐文学部史学科(史学概論リポート)
歴史学派と歴史主義‐法政大学文学部史学科(史学概論リポート)
19世紀のドイツで展開された歴史学派経済学の手本となったのは、イギリスのスコットランドで展開された啓蒙思想である。
スコットランドはイギリスのなかでは後進地域で、イギリスの中心で先進地域であるイングランドに対抗するために啓蒙思想を展開させていった。
この思想は歴史とは進歩するものという進歩史観から唱えられたものである。
歴史の進歩と経済の進歩の関係で、歴史と経済の発展は関連して進歩していくという説である。
このスコットランド啓蒙の代表はアダム・スミス(1723〜1790)である。アダム・スミスは経済において、規制主義的な重商主義を批判し、自由競争こそ必要とし、経済を自由放任にすれば自然と最善の状態に調整され経済がうまくいくと説いた。
またアダム・スミスはグラスゴー大学の教授に就任し、その講義で社会の経済システムの発展段階が、狩猟社会、牧畜社会、農耕社会、商工業社会、というように発展していき、この発展と国家の成立、君主制、共和制という政治形態の発展が両者関連して進歩していくと論じた。
しかし、当時のイギリスは世界一の経済大国であるので、過去の生産段階を振り返る意識は、ほとんど無いに等しかった。
そして、この発展段階説は当時経済的に後れていたドイツで、世界一の経済力を誇るイギリスに追いつくためにドイツで発展していった。
これをドイツ歴史派経済学と呼んだ。
ドイツ歴史派経済学の中心となったのはフリードリヒ・リスト(1789〜1846)である。
アダム・スミスは国家による経済統制批判を行ったがリストは、反対に国家による経済統制による市場の統一を目標とした。
これは、リストによれば未開、牧畜、農業、農工業、農工商、というように五段階で経済が発展するという経済段解説の考えの中でイギリスはすでに5段階であるが、ドイツはいまだに4段階であり、5段階に発展するためには国家による産業保護政策が必要であるとした。
5段階目に成長した後は自由貿易主義が良いと唱えた。
実際に、当時のドイツは国内の諸邦国を品物が通過するだけで関税が発生し統一的な経済が成り立ちにくい状況であった。
リストはこのようなドイツを変えるために関税の撤廃を国に求める運動をおこなった。
ドイツ歴史派の人達の特徴的な考えとして、経済政策や経済理論は歴史の発展によって発達するもで、いわゆる文化的現象と把握し、時代を超えるような経済理論は存在しないという考えである。
反対意見として歴史学派は歴史を国の政策目的に利用しているという批判もあった。
また、19世紀のドイツでは歴史主義という歴史観が存在していた。
特徴はロマン主義にまでさかのぼり、ロマン主義の人間の個性や感性を重んずる思想が民族の個性や強調となって現れる民族主義が特徴として存在する。
歴史主義の中心となったのはレオナルド・ファン・ランケ(1795〜1886)である。ランケは歴史の進歩はありえないとした。
その理由として、人間は自由な意思を持って行動する生き物なので、もし、歴史がある目的に向かって進歩していくとしたら、人間の自由な意思を否定することになる。
だから、歴史の進歩はありえない。
事実、人類の大半は原始生活にとどまっており、歴史的な発展をとげた民族でも、時を重ねるごとに発展しているとはいえず、時には逆行もある。
また、美術の分野においても常に進歩しているとはいえず、時代によっては衰退することもある。
ランケによれば1つの時代を次ぎの時代の前段階と考えるのではなく、時代それぞれに良さがあり、独自性があるので1つの時代は独立された完成形あると考えた。
歴史主義の歴史研究の特徴として、過去の出来事の固有性を尊重する考えから、厳密な史料批判にもとづく史実の確定作業を歴史研究の基本にした。
この史料批判は現代に与えた影響は大きく、現在の歴史研究の基本となる考えかたと同じである。
しかし、問題点として、歴史主義は歴史の個性を重視しすぎたために、史実の相互の関連を問う認識能力にはうとかった。
歴史学派と歴史主義との大きな違いは歴史の捉え方の違いである。
もし仮に現代という時代があるなら前の時代に現代に変わるための要素が含まれており、時代は常に進歩して発展していき、過去の出来事は現代に繋がるものと考えたのが歴史学派である。
歴史学派は1つ1つの歴史事実にはあまり注目せず時代の流れに注目したと言えるだろう。
逆に、歴史主義は1つの時代を別々に考え、過去の出来事はだだ1つの事実として捉え、歴史の進歩を否定し、歴史の流れには注目しなかった。両者にはこのような違いがある。
また、歴史学派は歴史の進歩と政治が関連して発達すると考えたが、歴史主義は1つのことを重視する考えから別々であるとした。要約すると関連主義と個別主義である。
最後に、両者の思想がミックスされ、両者の短所を補えるようになったのが現代の歴史の流れと史料批判を重視する特徴の歴史研究へとつながっていったと考える事ができる。
(ドイツ史2 山川出版 成瀬治 山田欣吾 木村靖冶 参照)
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