上場企業の開示情報
上場企業の開示情報には、法定開示、適時開示および任意開示の3種類ある。
法定開示
法定開示には、「金融商品取引法」と「会社法」に基づく開示制度がある。金融商品取引法では、企業の事業内容や財務状況を記載した有価証券届出書・有価証券報告書等を内閣総理大臣に提出することが求められ、その提出された書類は、公衆の縦覧に提供されることになっている。会社法では、株主や債権者を対象にした計算書類の備置・決算公告といった制度が規定されている。具体的には有価証券報告書、四半期報告書、事業報告における内部統制システムに関する取締役会決議の概要、などが対象となる。
適時開示
適時開示とは、「金融商品取引所規則」に定められているもの。具体的には、自己株式の取得などの決定事実、決算短信などの決算情報、業績予想・ 配当予想の修正、業務上の提携又は業務上の提携の解消、有価証券報告書及び四半期報告書の提出遅延、などが対象となる。
任意開示
任意開示とは、法律・規則等で開示を求められてはいないが、企業がIR等を目的として自らの判断で開示を行うものである。具体的には、不祥事が発生した後の情報の開示、会社業務における法令違反事実等の不祥事の発覚、中期経営計画などがあげられる
有価証券の開示制度
会社がその株式を取引所に上場すると、投資者を保護するため金融商品取引法に定められた種々の開示の義務が発生する。会社は、公益又は投資者保護のため開示が必要な事象が発生した場合には、その内容を記載した臨時報告書を、遅滞なく、内閣総理大臣に提出しなければならないと義務化している(金融商品取引法第24条の5第4項)。会社は、事業年度ごとに有価証券報告書を当該事業年度経過後3か月以内に提出しなければならない。会社は、事業年度の期間を3か月ごとに区分した期間ごとに四半期報告書をその当該期間経過後45日以内の政令で定める期間内に、内閣総理大臣に提出しなければならないとして、義務化している(金融商品取引法24条の4の7)。有価証券報告書、四半期報告書、臨時報告書の開示手続きは、金融商品取引法第27条の30の2に定義されているEDINET(開示用電子情報処理組織)を使用することが義務付けられている。
有価証券報告書に虚偽記載をした場合の罰則
当局に提出して開示した有価証券報告書の重要な事項について虚偽記載があったり記載が欠けたりした場合、有価証券の発行者である会社が課徴金を国庫に納めなければならない。課徴金の金額については、その発行会社が発行する有価証券の市場価額の総額に10万分の6を乗じて算出した額が600万円を超えなければ600万円、超えればその算出額となる。また、重要な事項について虚偽記載等のある有価証券報告書の提出会社は、流通市場における有価証券の取得者・ 処分者に対して、金融商品取引法に基づく損害賠償責任を負う可能性がある。この流通市場における提出会社の損害賠償責任については、発行市場における発行会社の損害賠償責任と異なり、立証責任の転換された過失責任であるとされている。
内部統制報告書
金融商品取引法では、企業内容の開示が適切に行われることを確保するため、平成20年4月1日以降開始する事業年度から、内部統制報告制度および確認書制度を導入した。内部統制報告書とは、会社の属する企業集団及び会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要な体制について評価した報告書である。上場会社は、財務局に対し、「内部統制報告書」を提出する必要がある。内部統制報告書に対しては、上場会社と特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査証明を受けなければならない(旧金商法193条の2第2項)。しかし、このような内部統制報告書に関する負担が、新規上場を躊躇させる要因の一つと指摘されていた。他方、新規上場企業は上場前に証券取引所による厳格な上場審査を受けており、監査証明は必ずしも必要とはいえない。そこで、新規上場企業の負担を軽減するために、上場後3年の間に内部統制報告書を提出する場合には、内部統制報告書の監査証明を受けることを要しないと平成 26 年に金融商品取引法が改正された(改正金商法 193 条の2第2項4号)。ただし、この監査証明免除は、資本の額その他の経営の規模が内閣府令で定める基準に達しない上場会社に限るとされている(改正金商法193条の2第2項4号括弧書)。ただし社会・経済的影響力の大きな新規上場企業(資本金が100億円以上又は負債総額が1,000億円以上を想定)は免除の対象外。
内部統制の4つの目的
@業務の有効性及び効率性・・・企業価値の増大という観点から、収益性を高め、無駄な投資を排除し、業務の有効性・効率性を高めること。
A財務報告の信頼性・・・財務諸表・財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性のある情報の信頼性を確保すること。
B事業活動に関わる法令等の遵守・・・事業活動に関わる安全基準の遵守や、法令等の遵守を促進すること。
C資産の保全・・・資産の取得・使用・処分が正当な手続・承認のもとで行われるように、資産の保全を図ること。
内部統制の6つの基本的要素
@統制環境・・・統制環境は、倫理観、経営者の意向、経営方針などの組織の気風を決定し、組織内のすべての者の統制に対する意識に影響を与えるとともに、他の本的要素の基礎・基盤となるものである。
Aリスクの対応と評価・・・リスクの評価と対応とは、組織目標の達成を阻害する要因を「リスク」として識別し、分析・評価するとともに、そのリスクへの適切な対応を行う一連のプロセスをいう。
B統制活動・・・統制活動とは、経営者や部門責任者などの命令・指示が適切に実行されることを確保するために定める方針・手続をいう。
C情報と伝達・・・情報と伝達とは、必要な情報が識別・把握・処理され、組織内外や関係者相互間に正しく伝えられることを確保することをいう。
D監視活動(モニタリング)・・・監視活動(モニタリング)とは、内部統制が有効・効率的に機能しているかを継続的に評価するプロセスをいう。
EITへの対応・・・IT への利用とは、あらかじめ適切に定められた方針・手続を踏まえ、業務の実施において、組織目標の達成のため、組織内外の IT に対し適切な対応をすることをいう。
確認書
確認書とは、有価証券報告書や半期報告書、四半期報告書の記載内容が、金融商品取引法令に基づき適正であることを確認した旨を記した書面であり、当該有価証券報告書等と併せて提出することを義務づけることによって、その記載内容の適正性をより高めることを目的として導入された。
内部統制報告制度
内部統制報告書で評価結果を表明する場合には、内部統制が有効であるか、または重要な欠陥があり有効でないかを記載しなければならない。内部統制報告書には、公認会計士又は監査法人の監査証明を受けなければならない。内部統制報告書は事業年度ごとに提出する(金融商品取引法24条の4の4第1項)。有価証券報告書を提出する会社であっても、有価証券を上場または店頭登録していない会社は内部統制報告書の提出は義務付けられていない。
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