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2021年08月22日

経営法務 〜合併・会社分割・事業譲渡〜

吸収合併

吸収合併消滅会社の吸収合併による解散は、吸収合併の登記の後でなければ、これをもって第三者に対抗することができない(会社法750条2項)。会社分割では吸収分割契約の内容を記録した書面又は電磁的記録を本店に備え置かなければならないが、事業譲渡ではこのような制度はない。会社法では吸収合併、吸収分割、株式交換について対価の柔軟化が図られており、消滅会社の株主に対して交付する財産は存続会社の株式に限らず、金銭その他の財産(現金、社債、新株予約権、親会社の株式等)でも可能である。
債権者異議手続

債権者異議手続が終了していない場合には、吸収合併の効力は発生しない(同6項)。したがって、債権者異議手続が終了していない場合、吸収合併存続会社が、合併契約に定めた効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継することはできない。合併の各当事者会社は、合併の効力発生日 (合併契約に記載)より前に、その債権者に対する保護手続(公告・催告)を終了させなければならず、債権者が1社の場合であっても同様である。
行政機関による許認可などの承継

吸収合併等が行われた場合、行政機関による許認可などの公法上の権利義務に関する承継問題は、個々の許認可により取扱いが異なり、すべての許認可に関して、当然にその地位承継を認めているわけではない。許認可事業においては、 承継に際して届出が必要なケースがほとんどであり、事前に必要な場合、事後に必要な場合など、個々の業種により異なる。承継が認められない事業は新たに許認可申請をしなければ、業務を行うことができない。浴場業、映画・演劇などの興業場営業、理容業、飲食店営業などは会社合併により承継が発生した場合に届出を行うだけで許認可が承継できる。一般旅客自動車運送事業者、ホテル・旅館営業などは会社合併により承継が発生した場合に行政当局から個別の許可が必要となる。
事業譲渡

事業譲渡をする会社の株主が、事業譲渡に反対する場合、その反対株主には株式買取請求権が認められている。事前に反対の意思を表明した譲受会社および譲渡会社の株主等は、それぞれの会社に対して自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。請求できる期間は、効力発生日(通常は事業譲渡契約に記載される)の20日前から効力発生日の前日までである(会社法469条)。事業譲渡の場合、債務を移転するには、債権者個々の同意が必要である。会社分割の場合は、分割会社が取得している事業の許認可は、自動的に承継会社に承継される一方で、事業譲渡は譲渡対象の事業に許認可が必要な場合には、新たに取得が必要となる。会社分割および事業譲渡はいずれも対価の制限はなく、株式の発行あるいは金銭に限られない。事業譲渡は譲渡資産の帳簿価額が総資産額の20%超であれば株主総会の特別決議が必要となる。事業譲渡の場合は労働者から個別に譲受会社への移籍について同意を得る必要がある。
吸収分割

吸収分割は会社分割の手法のひとつ。吸収分割会社にとっての簡易の吸収分割とは、吸収分割承継会社に承継させる資産の帳簿価額の合計額が、吸収分割会社の総資産額の5分の1(20%)を超えない場合となる。分割会社が株主総会決議を省略できる要件は、承継会社に承継させる総資産額が5分の1を超えない場合である(会社法784条3項)。なお、5分の1の比率は、定款で下回る基準を定めることができるが、上回ることはできない。
新設分割後に全株式を取得する場合の買収スキーム

新設分割する相手先が企業が締結している契約の中に、会社分割が解除事由として定められているものがないかを確認しておくことが重要である。新設分割で継承する事業で新たに許認可を取得することが必要な場合、新設するまでは会社が存在せず事前に申請取得することができないため、その許認可を得るのに必要な期間やコストを把握しておく必要がある。また、そのコストはどちらが負担するか交渉する必要がある。契約の分割等の要否を検討するために、継承する事業とそれ以外の事業の双方で、同一の契約に基づいて使用しているリース資産やシステムがないかどうかの確認が必要となる。
会社分割における債務に関する定め

会社分割は分割会社がその「事業」 に関して有する権利義務の「全部または一部」を承継会社・設立会社に承継させるものである(会社法第2条29号・30号)。したがって、継承する事業から生じる債務の全部を継承会社が承継しなければならないわけではない。債務に関する定めは、それが免責的に承継会社・設立会社に承継されるのか、重畳的(並存的)に承継されるのか、それとも分割会社の債務として残るのかを吸収分割契約書または新設分割計画書に明示されねばならない (法定記載事項:同法757条、同法762条)。
労働契約承継法

会社分割の際に労働者を承継しようとする場合、労働契約承継法により労働者側に労働契約の承継を行うことを通知することを義務づけている(同法第2条)。
吸収分割と事業譲渡の法的な違い

吸収分割と事業譲渡はどちらも特定の事業の買収・売却のためのスキームとして利用される共通点がある。しかし、権利義務の承継に関する法的な扱いや、債権者異議手続、労働契約承継法が適用されるか否かなど、多くの点で異なる。吸収分割では、事業承継のために債権者・契約の相手・労働者の個別の同意なしに、債務や契約上の地位・労働契約を承継可能。一方で事業譲渡では、これらの手続きに、契約相手や労働者の個別同意が必要であるため、吸収分割に比べ時間もコストもかかる。

[債権者異議手続]
吸収分割は債権者異議手続に異議申述期間を設けなければならず、法定な契約や事前開示書類・事後開示書類の準備など、債権者異議手続きのための準備事項が複数存在する。一方で事業譲渡では対象事業に関係している債務まで承継する義務はないなど、対象事業に付随する権利義務が少ない場合は事業譲渡を行った方がスムーズとなる。

[労働契約承継法]
吸収分割は労働契約承継法において法的に定められた手続きや異議申し立ての申述期間が存在するため、労働契約の承継がスケジュール通りに進まない可能性がある。一方、事業譲渡の場合、承継会社との合意の上で移籍に同意した労働者の労働契約を承継できるため手続きが簡便と言える。なお、労働者の立場で見た場合、労働契約承継法により自分たちの権利義務が保護されているため、一概にどちらがよいとは言えない。
M&Aの買収監査(Due Diligence:デュー・デリジェンス)

M&Aの交渉から契約を経て取引が実行されるまでに必要に応じて行われる。多くの場合、買収の意思決定をする段階で、投資する価値やリスクの有無を確認する目的で行われる。
法務デュー・デリジェンス

企業の事業活動における法律上の問題点を調査する。契約書や取締役会議事録などの重要書類のチェックや取締役などへのヒアリングによって問題の有無を確認する。主なチェック項目としては、資産の所有権、担保権の設定状況、各種契約の妥当性、労働関連法令の遵守状況、許認可の取得状況と有効性、係争中の訴訟の有無、潜在的な紛争のリスクなどがあげられる。
財務デュー・デリジェンス

企業の財政状態、収益力などを、過去からの財務諸表、税務申告書などを中心にチェックし、問題の有無を確認するとともに、買収価格の妥当性を検証する。主なチェック項目としては、資産の過大評価や負債の過小評価の有無、簿外の資産・負債の有無、引当金の妥当性、売上高、損益の期間比較による業績推移のチェックなどがあげられる。 具体的な書類は以下のとおり
@会社全般に関するもの商業登記簿謄本、定款、社内組織図、株主名簿(株式取得によるM&Aの場合には重要) 株主総会議事録、取締役会議事録 等
A財務に関するもの直近の法人税申告書・決算書・科目内訳書・総勘定元帳、固定資産台帳、保有有価証券一覧(株式・出資・会員権等)、銀行残高明細書、リース物件一覧表 等
B契約関係、金銭消費貸借契約書、労働組合の有無と状況、リース契約書、特許・実用新案・商標・意匠・著作権等の内容、職務発明規定、業務上の各種許認可事項 等
独占禁止法

「株式取得会社=取得する側」(企業結合集団の国内売上高合計額が200億円超となる会社)が、「株式発行会社=取得される側」(子会社を加えた国内売上高の合計額が50億円超となる会社)の株式を取得する場合で、取得後に株式取得会社の企業結合集団の有する議決権の割合が20%または50%を超える場合には、事前に公正取引委員会に届出なければならない。届出を行った会社は、届出受理の日(受付日・提出日ではないことに注意)から30日を経過するまでは、当該届出に係る株式の取得をしてはならない(いわゆる取得禁止期間:待機期間)。ただし、公正取引委員会は、その必要があると認める場合には、当該期間を短縮することができる(同法8項)。届出を行うのは株式取得会社である。公正取引委員会では届出前相談制度を設けている。
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