日々のつぶやき

私は、仕事柄、学校の成績は良くても

入学や入社試験では結果を出せない者を何人も見てきた。

客観的に見て、試験する側が不合格にする理由は

ほとんどの場合理解できるものだった。

受験する側に大きな欠点があり、

そのことを本人がわかっていないからだ。



ある時、就職試験を32社受けたが、

どうしても合格出来ない20歳の女の子が、

泣きそうな顔をして、というより

さっきまで泣いていただろう様子をそのままに相談にきた。


私には彼女が来て1分も経たない内に

彼女の不幸の原因がわかった。


彼女は「真面目だった」「何事にも一生懸命だった」。

私は彼女にアドバイスしたが、

それを聞いて彼女はさらに泣きそうな顔になってしまった。

それはそうだろう。

「一生懸命やるな」「不真面目に、ちゃらんぽらんにやれ」

と言われるとは、想像もしていなかっただろうから。


もっと真面目なアドバイスを欲しがる彼女を説き伏せて

この後、次を受験するまでに3回以上私のところにくること。

来るときは、必ず元気な声で挨拶をし、

会っている間に5回以上、私を笑わせること。

もう一つ、会っている間は笑顔でいること。


そして、自分が考えて「この会社はムリだろう」

と思う会社を2社、アポイントをとること。


彼女は毎日のように来ていたが、10日後ころ続けて受験した。

1社目を受験したその日、10日前とは別人の

輝くばかりの明るい顔をして走ってやってくるなり、

内定をもらえました、と報告してくれた。

受験後、しばらく待つように言われて、待っていたら

口頭で内定を出します、と告げられたということだった。


２日後、もう一社から私のところに連絡が来て

内定を出すのでよろしくとのことだった。


かくして、彼女の長く辛かった就職活動は呆気なく終了した。


彼女が持っている良いところを、面接官に見て貰えたからだろう。

2勝32敗。

最多敗戦記録だった。


終わりよければ全て良。


しかし、実際は戦いはまだまだ続いたのだ。

どちらの会社にするか・・・



その後、卒業時、入社式の時など何度も来てくれたが、

「そんなに真面目にしなくても」と言うと、

照れながらも笑顔で思い切り叩かれた。


立派な社会人になり、いいお嫁さんになったことだろう。



私にとっても、忘れられない就職相談になった。