借金生活２０００

今日も暑かった。やっと仕事が終わり土曜日だったので焼き肉でも食べに行く事にした。
夏の仕事終わりのビールと焼き肉は超最強である。
西成の焼き肉は一人で入れる所が多いので助かる。
kさん）たー坊。
私）あっ、kさんお久しぶりです。いつから西成いるんですか？
kさん）こないだ会社出てきたばっかりや、鳶の手元ばっかりつけるから、一回出てやったわ(笑)
神戸の会社では全然話した事がなかったkさんだが、尼崎のパチンコ屋で会って以来なぜかすごく仲良くなった。
kさん）最近どこ行ってんねん。
私）東大阪の体育館の解体です。
kさん）なんか良さそうやな。オレなんかガラ出しやで。
私）kさんパワーあるからいいじゃないっすか
kさん）全然良くないわ。最近腰が痛くて仕方ないしな。頭使った仕事がしたいわ、たー坊確か大卒やったな？
私）そうです
kさん）大卒でドカタってなかなかいないで、おまえやったら頭使う仕事できるやろ。
私）頭使う仕事ってどんな仕事ですか？
kさん）こんな作業員じゃなくて、中の仕事や。例えばオレら雇ってる会社の番頭なんて頭使う仕事やろ。自分は作業しなくていいんやで、そのかわり頭使うけどな。
私）kさんは作業員嫌なんすか？
kさん）こんな仕事好きでやってるやつおらんやろ。きつい仕事ばっかりだし、ケガする確率も高いし。高校卒業しとったらこんな仕事絶対やらんわ。
たー坊はなんでもっといい仕事しないんや？保険ついててボーナスある会社とか入れるのと違うんか？
私）ただ日払いで欲しいからこの仕事やってるだけです。
kさん）オレもなんか資格取ろう思ってんねん。ペンは拳より強いからさ。
私）ペンは拳より強いんすか？
kさん）そりゃそうやろ。社会で上に立つ人間でプロレスラーみたいなやつあんまおらんやろ。
ビルゲイツにしろジョブズにしろカッコ悪いし弱そうやん。でも、めっちゃ頭いいから会社の超お偉いさんやんか。
日本の偉い人間でも橋本以外知らんけどかっこいいなぁとか強そうだなとかまずおらんやん。
社会で大成するには顔とかパワーとかどうでもええねん。頭、学歴、まずそっからや。
私）はあ
kさん）とりあえずカラオケ行くか
その後ベロンベロンに酔ったkさんとフィリピンバーに行く事になった。

朝７時半になんばで待ち合わせの予定だったが急に電話がきて変更になった。
aさん）すまん今日行けなくなった。道頓堀のとこなんやけど一人で行けるか？
私）道頓堀ってどこでしたっけ？ビッグカメラの通りあたりですか？
aさん）たぶんそうや。近くに行ったらアドフラットで囲まれてて緑のシートが入口にかかってるからすぐわかるって。
私）そうなんですか、わかりました。
しかし、探しても全然現場が見つからない焦ってaさんに電話するが電話に出ない。
近くのコンビニに寄って店員に聞いた。
私）すんません。道頓堀ってどこなんすか？
店員）ここらへん一帯が道頓堀です。
私）そうなんですか？ここらへんで工事現場って知らないですか？
店員）ちょっとわかりません。
道頓堀とは道頓堀川の南に東西に伸びる一帯である。
なんばなんて滅多に行かない私が知るはずもない。
既に８時を回り現場には間に合わなかった。電話がつながらない事。あまりに説明不足な事に腹がたってしょうがなかった。
どうせ現金の仕事だから行かなくてええわ。
aさんが悪いやろ、電話にも出んし。
今日は１パチにでも行って気分転換でもするか。
もう仕事なんか行く気は完全に無くなり、コンビニでビールを買って飲みながら帰ることにした。
ところが帰り道に偶然現場を発見してしまった。
入口に緑のシートがかかっている、間違いなくここであろう。
道頓堀ってここなんかい(怒)。もう酒も飲んでしまったしそのまま素通りして帰る事にした。
だいたい電車で仕事行かすなら地図くらい持たせるのが普通だろ、aさんの説明もあまりに適当だったのでしょうがない。
近くにあったパチンコ店で1パチを打ったら10回転くらいで当たって5000円ほど勝った。
まあたまにはこういうのも悪くないかなどと思い串カツ屋で飲み直す事にした。

仕事の休憩中に人がタバコを吸ってるのを見るとなぜタバコを吸いたくてたまらなくなるのだろうか？
休憩中無心ですがれる物、それはやっぱりタバコだろう。どっしりとしたソファーのような椅子に座ろうが、例え休憩中布団で横になれたとしてもタバコの一服には勝てないだろう。
そんなに吸いたいのなら吸ってしまえばいいのに、ポケットの中にタバコとライターが入ってない無力感。肩はずっしり重く休憩中にすることが無くうなだれている。固まっている。
私は19日間事情によりタバコを吸えなかったのだが、体の軽さ、食事の真の美味さに改めて感動し、こんな体に悪い物この際やめてやろうと禁煙を決意したのだが・・。
タバコをやめるのはそう簡単ではない、社会生活をする上で必ずあるふとした無駄な待ち時間、ストレス社会においてリラックスを感じたいその2、3分。タバコという物は本当にありがたいと思えるくらいその一瞬ストレスを忘れ没頭できる。
コーヒーとタバコ。とりあえずそれだけでなんか落ち着くのだ。
それでもなぜタバコをやめたいのか？それはやっぱりタバコは体に悪い。
タバコの害で徐々に体調を崩しているのは私だけではないだろう。
最高の嗜好品ではあるが最高に体に悪い物である。
タバコを一定期間やめるとタバコがいかに体に悪いか良くわかる。
吸いすぎて体調を崩したり、風邪をひいてるのにまずいタバコを吸ったり、コーヒーの飲みすぎでズブズブになった胃にタバコを注入してオエッって吐きそうになったり。
タバコは体に悪いのだ、吸っていい事なんて実は無い。百害あって一利無し。
そうだそれがタバコなのだ、我慢しない事で体に一気にツケが回ってくる。
タバコをやめてからものすごく美味く感じるようになった爽健美茶をガブッと飲み、十分美味しいじゃないかと自分に言い聞かせなんとか我慢する。
余談だがある程度時間が経つとタバコへの興味はかなり薄れる。むしろタバコの匂いさえも嫌になる。

私も気づけば30半ばになっている。もういい加減にこんな生活をやめなければいけない。
一番問題なのは貯金が全く無いことだ、むしろ金さえあれば、どんな仕事につこうが遊んで暮らそうが自由である。
もし、それだけの余裕が持てるほどの大金を持っていればの話だが。
私の場合は今から貯金を始めるという段階である。貯金グセがつかずにこのままズルズル行けば、そのスタートラインは40才、50才とどんどん遅くなる。もし、50くらいまで貯金も何もなければその後の人生は苦労するのは目に見えている。
１日2000円ずつ貯金できれば250日働けば50万である。二年間で100万円とりあえず貯めてみれば自信にもつながるかもしれない。
本当は1000円でも500円でも良いのだ、少しずつでもいいから増えていく、そして使わないという事が重要である。
たかだか１日2000円、月に換算すると4、5万円くらいであろう。決して無茶な金額ではないが、我慢と節約は必要となるくらいの金額である。
ある程度の我慢、ある程度の計画性があれば二年間で100万円貯める事は難しいことではない。
もちろんギャンブルなどしてはいけない。
いくら貯金があろうとも、一気に大金を失うと今まで積み上げてきた努力、我慢が一気に崩壊してあっという間に何も無くなってしまう事だってある。
一回全て失うとまたそこから一から頑張ろうという気には到底なれないだろう。

久しぶりに西成に帰ってきた。夏真っ盛りであるため６時頃にセンターに行っても全然仕事がある。むしろ人が不足してるので選ぶ余裕もある。
男）兄ちゃん現金行かんか？
私）仕事の内容何なんすか？
男）コン打ちや。現場大正やからゆっくり出来るで。
私）あー、コン打ち苦手なんでやめときます。
男）何だったらええねん？体育館の天井の解体行くか？暑いけど作業内容はたいした事ないわ。
私）ステージ組んでるんですよね？
男）当たり前やん。ステージなかったらどうやって仕事すんねん。
私）じゃあ行きます。
男）よっしゃ、そこの車に乗っといて。
こんな感じで夏の忙しい時期はある程度仕事内容が選べる。しかし、あんまりわがままばっかり言ってると、仕事が暇な時期に干されるので要注意である。
体育館の解体は暑かったが、仕事の内容はボードやスクラップを下に落とすだけだったので楽ではあった。
しばらくの間何もしない生活を過ごしていたので、働けるありがたさをしみじみ感じながら作業をしていた。
仕事はやっぱり嫌だが、何もしない生活に比べればまだましである。
男）おい！鉄とアルミ別々にしろ言うたやん。
私）そうなんすか？聞いてなかったけど。
男）アルミなんかわけるに決まってるやん。素人はこれだからあかんわ。
私）すんませんね。素人だからわかんなかったすわ。
男）おまえ反省してないやろ。
私）そんなに素人が嫌なら解体工以外お断りって最初から言ってくれないっすか。そしたら最初から来らんし。
男）なんやねんこいつ。
必ず現場には口うるさいやつ、変な事ばっかり言うやつがいるが、あまりはいはい言わないようにすることにした。どうせ仕事が終われば一緒の部屋で生活するわけでもないし、８時間の間言われた事にたいしてある程度頭を使って言い返せば、そこまで言われっぱなしにもならなくなる。
220番に24時間いじめ倒されたから多少免疫でもついたのであろうか。
確かに同じ部屋でずっと変なやつらと過ごすよりはよっぽど気軽ではある。
夕方になり仕事が終わり、一万円を貰い帰り道のコンビニでビールとからあげくんを買った。
このくそ暑い中働いた後のビールは本当に最高である。
働けるありがたさ、稼げるありがたさ、そして自由に買い物できる事の楽しさ。
本当にありがたいとしみじみ感じていた。

なぜそんな辛い事をしなければいけないのか。そんな夢を見た、あまりにいろいろとあったせいなのであろうか。
人生において楽しい事とはだいたい自分をダメにする事ばっかりである。
酒にしろタバコにしろ体に良くない事は誰でも知っている。
体にいい事といえば運動、控えめな食事、禁酒禁煙などストレスの溜まりそうな事ばっかりである。
酒もタバコも暴飲暴食も体に良ければ、もっと人生を楽しむ事が出来るのに。
なぜ我慢するような事や辛い事ばっかりが人間の体にとっていい事ばかりなのであろうか、それが人間の宿命なのであろうか。
我慢が必要な事ほど自分にとってプラスになり、依存しそうな楽しそうな事はだいたい自分を破滅の道へと追いやる。
これだけ世界が進化しても体にいい酒、体にいいタバコは全く開発されもしない。
なぜなんだろう、なぜ神はそんな試練を与えるのだろう。

19日ぶりに留置所の外へと出た私、とりあえず風呂に行きたくてしょうがない。
ネットで調べたら近くに銭湯があったので早速行くことにした。
久しぶりの風呂は最高である。留置所でも週２回風呂には入れたが、15分と時間が決まっているし石鹸しか洗うものはないし、青いタイルの汚ならしい昔風の風呂だった。
外の風呂はやはり一味違う、開放感あふれる広さとしっかりとした設備、さらにいろんな種類の風呂が楽しめる。
20分くらいゆっくりつかり、体を念入りに洗いまた15分くらいつかり、また体を洗う。19日間の垢を一気に洗い流した気分だ。
最後にサウナに入り悪いものと19日間の鬱憤を全て出しきり、風呂から上がったら冷えたビールを一気に飲みほす。
たかが1000円でこんなにも贅沢な気分になれるなんて、今までいろんな事を我慢してきたから、なおさらそう感じるのだろう。
ビール一本で完全に出来上がってしまい、その勢いでDVDの金太郎へと行った。
久しぶりの個室でハッスルして、その後久しぶりに10時間くらい熟睡した。
こんなくそ狭い部屋が安心感でいっぱいでたまらないとは、部屋と便所が別の部屋である事、部屋に自分以外の誰もいない事、それがこんなにも幸せな事だなんて。
失ってみて初めてわかった。普段当たり前だと思っている事をもっと感謝しなければならない。

今日で19日目である。このまま何もなく明日がきてしまうと、起訴されて事実上二ヶ月延長である。なぜ私の父親は来てくれないのだろうか？もしかすると何か大きな病気でもしたのではないか？
これだけ時間が経っても来ないということはやはり何かあるのだろう。しかし、考えてもしょうがない、ここを出ない限り電話もできないので、外の事など全くわからないのである。
気が遠くなりそうだがあと二ヶ月ここでの生活をすることになるだろう。完全にあきらめてそろそろ昼飯になろうとしてた時、やっと誰かが来てくれた。
警）213番面会です。
まあ間違いなく父親だろう、なんだか急に緊張してきてドアを開けるまでに10秒くらいかかった。
ドアを開けると私の父親ともう一人見知らぬ男がいた。
父親）○○の店長さんだ、お詫びしなさい。
私）自動ドアを壊してしまい申し訳ありませんでした。
店長）やってしまった事はしょうがないです。弁償していただいて終わりにしましょう。
なんかものすごいあっさりしていた。
ものの二分くらいで話は終わった。
父親は全く怒るそぶりも見せなかった。まあ、私の父親らしいといえばらしいが、さすがに今回ばかりはものすごい形相で来るだろうと思っていたので、淡々と示談の事について話された時は、なんかどうリアクションしていいかわからなかった。
とりあえずパチンコ店との示談は成立し、私は外へと出れる事となった。
最初に身体検査を受けた部屋で私の所持品を返してもらい、緑の鉄のドアを開け刑事の事務所を通り抜け一階へと降りた。
久しぶりの自由な外の世界である。入り口で父親が立って待っていた。
父親）とりあえず飯でも食おうや。
私）あぁ・・・いいのかい？
私）・・・その前に・・今回は本当に迷惑かけてすんませんでした。金もできるだけ早く返します。
父親）まあいいよ。人じゃなくて物で良かったな。
なんかあまりに怒らないので逆に申し訳なくなってきた。とりあえず外へと出て歩きだした。小雨が降っていてアスファルトが雨に濡れた匂いがした。タバコをずっとやめてたせいであろうかものすごい鼻が前より良くなった気がした。
久しぶりに見る街の景色は新鮮である。セブンイレブンたばこ・酒という看板を見て、そうかもう自由に買い物していいんだ。
なんかそんな当たり前な事で嬉しくなってしまい、心の底からワクワクした。
父親）松屋でいいか？
私）もちろんいいよ。
松屋に入り久々に外の食事を取ることにした。
やっぱり温かい飯は最高である。
温かい牛丼と温かい味噌汁。こんなに旨かったか？と思ってしまうほど、どうしようもなく旨かった。温かい飯と温かい味噌汁。どうしようもなく旨いのである。
父親）帰る家はあるのか？帰ってきてもいいがどうする？
私）自分でまた一から生活し直すよ。あと、盆と正月には家に帰るようにするよ。
父親）ほぅ。そりゃ嬉しいなあ。あんまり無理すんなよ。
私）すんません。ありがとう。
父親）人にだけは迷惑かけるなよ、じゃあ帰るわ。
私）あっ、帰るの？途中まで見送るわ。
父親）いいよ、ついでに観光して帰るから。
私）そっか、どうもありがとうございました。
父親）じゃあ。
うちの父親は他の家庭に比べればかなり甘く、理解力もかなり高いと思う。自分で言うのもなんだが本当にいい父親だと思う。
こんな親不孝してないで本当にそろそろ一人前の人間に変わらなければならない。
とりあえず飯の後のタバコが吸いたくなり、19日前のしわしわのメビウスに日をつけた。
なんだがあまり美味く感じない。しかも、ものすごいヤニクラがおそってきた。頭が痛くなってきて半分も吸わずに消してしまった。
私）タバコはやっぱり体に悪いよな。
思わず口からそんな言葉が出てきた。
飯の美味さも体が軽いのも、タバコをやめてたおかげなのかも、なんかそんな気がしてせっかくだから禁煙してみようかななんて思ってみたりした。
それが最後の一本となり、それ以来私は一本もタバコを吸わなくなった。

留置所に入って18日目になった。いまだ父親から面会も連絡も無い。こっちから手紙だけは唯一出せるが、電話などはできないので父親がパチンコ店と示談する気があるのかどうかさえわからない。
警察に確認すると、すでに213番のお父さんには連絡しています。としか教えてくれない。肝心な事は何一つ教えてくれないのである。
逮捕されてから20日経つと起訴されるため、裁判までの約二ヶ月間さらにこの中で暮らす事となる。さらに起訴されれば私の場合実刑は無いが、罰金刑か執行猶予はつくらしい。
今さら罰金刑だろうが執行猶予だろうがどうでもいいが、この中にあと二ヶ月居なければいけない事の方がよっぽど絶望的である。
24時間ろくでもない男達と同じ部屋で過ごすストレスは想像以上に耐え難い。パチンコ店で金を全て使い、帰る家も無くフラフラと夜の街をさまよっていた時の方がまだ少しは希望があった。
今はこの六畳の部屋を出ることさえ許されない。働けないし、電話もできない、もちろんパチンコも競艇もできない。タバコすら吸えない、テレビもない、ケータイでネットを見ることもできない。
本当にただ何もせず24時間檻の中にいるだけである。さらに、中が丸見えの便所で用を足すのもかなりストレスが溜まる。
そもそも部屋の中に便所がある事自体が嫌である。完全な個室ではない為匂いが若干部屋へと漏れる。18日間タバコを吸ってないので鼻が前よりだいぶ良くなっているせいもあるのだろう。
特に飯を食う時は便所に背を向け、意識せず食べるようにはしている。それでも便所の匂いが若干飯に混ざるので、あきらめて我慢するしかないのである。
はぁ、私の父親はあまりの情けなさで見捨ててしまったのだろうか？そういうタイプの人間ではない事は息子であるがゆえよくわかっているのだが、あれから一回も面会に来てくれないので、さすがに不安である。
外の事は一切わからないのでただ待つしかないのである。はぁ、ため息をついては見飽きた天井をただただ見つめている。
この生活を自分では変えることはできない。
この生活を変えることが出来るのは弁護士と私の家族だけである。
この生活をどうするか決めるのは検察である。
ここに居る以上どんなに考えようが、どんなに頑張ろうが、どんなに後悔しようが全くの無意味である。
そう、私は今捕らわれの身なのである。
おおよそ人間の扱いなどされなくて当然なのである。

220番が来てから留置所生活が苦痛でしょうがない。本当にここから早く出してほしい。
220番）おい、123。おまえのぶたグループやろ。郷ひろみの123の歌知ってるやろ、歌えや。
私）そんな歌知らん
220番）寒いなおまえ。だから人に嫌われるんやで。ドスッ！
私）やめろや
くだらない事を言っては私にからんできて、気に入らない事があると肩パンチしてくる。しかも結構な痛さだからなおさら腹が立つ。
220番）早く出せやーいらいらするわ！
警）220番静かにしなさい。
220番）わかっとるわボケ。早く検察連れていかんかい。
本当に迷惑である。人の顔見て舌打ちするし、すぐに大声出すし。何かあればすぐに文句言ってくるし。
220番）おい213！
私）なんだよ！
220番）なんか面白い事やれや。
私）面白い事なんか無い。
220番）なんかやれや！ペッ！
197番）おまえどこに唾吐いてんねん。
220番）あぁ間違えたわ。
197番）間違えただぁ！？（超大声）
警）やめろやめろ何してんねん。
ヤクザの大声に警察が飛んできて、中に入ってきて喧嘩の仲裁をし始めた。やっとヤクザがキレてくれたので、私としては気がすむまでやってほしかったのだが。
197番）こいつうるさすぎるわ、部屋替えしてくれや。
警）とりあえず中で喧嘩されても困るから220番部屋移ろうか？
220番）あぁ良かったわ。これで自称ヤクザさんとやっとお別れや。
197番）自称って何やコラ！
警）やめろや
ヤクザのおかげで220番は他の部屋へと移る事になった。こればっかりは本当に助かった。
220番が来てから二日間これでもかというほど嫌な目にあってきた。
197番）おまえも好き勝手言わせすぎや。もう少し気合い入れて相手の顔見ろや。
私）すんません。
気合いを入れようが、入れまいが残念ながら私の顔は変わらない。なんだかんだで人間は中身ではなく顔で８割がた決まる。
197番）舐められないために出来る限りの事やってる人間からしたら、そうじゃない奴らって話にもならんやん。
私）そうなんですか
話にもならないってどういう意味なのと思いつつ流して聞いていたが、夜になりその言葉がじわじわと効いてきた。
舐められないために出来る限りの事か・・・
たぶん今までそんな事を意識した事は一度も無いだろう。今日から舐められないために出来る限りの事を自分なりにやってみようかなんて思い始めていた。
本当に変なやつ、とんでもなく悪いやつ、どうしようもなくたちの悪いやつ。社会に出る以上そういう人間と関わる事も、もちろんあるだろう。
そんな時言われっぱなし、バカにされっぱなしでどうするのだ？
真面目で誠実な人間など結局どこかで損をしなければならないのだ。
社会に出る以上舐められない努力をしなければならないのだ、あんな低俗なバカな小学生みたいなやつに好き勝手舐められて、悔しくてしょうがない。
社会で生きてく以上お人好しではダメなのである。