ストレスを溜めないことが大切であることは皆わかっていますが、
具体的には、
どうすればいいのでしょうか?
これについて、
セロトニン研究の第一人者で、
東邦大学医学部名誉教授の有田秀穂医師は、著書
『脳からストレスを消す技術』(サンマーク文庫)
の中で、こう述べています。
「『ストレス』というどこか得体の知れないものに対して、
私たちは今まで重大な思い違いをしていました。
それは、
ストレスに勝とうとしていた
ということです。
しかし、
私たちはストレスに勝とうと思ってはいけません。
なぜなら、
人はストレスには勝てないようにできているからです。
そしてもう一つ、
最近『ストレスフリー』という言葉をよく聞きますが、
これも目指してはいけません。
なぜなら、
ストレスは決してなくならないからです。
決して得られないものを望んでしまうと、
かえってストレスは増えてしまいます。
(中略)
では、
私たちは日々迫りくるストレスに対して、
どうすればいいのでしょうか。
その答えは、
実は非常にシンプルなものでした。
ストレスを『消せ』ばいいのです。
『ストレスはなくならないと言ったじゃないか』。
そう思われた方も多いことでしょう。
確かに、
ストレス自体は決してなくならないし、
ストレスに勝つことはできません。
ストレスが大きくなれば、
人間の生命をも脅かすとても危険な存在になります。
しかし、
ストレス自体はなくせずとも、
ストレスによって受ける『苦しみ』はいくらでも消せるのです。
本当の意味で『ストレスに強い人』
というのは、
ストレスを打ち負かしていく人ではありません。
襲い来るストレスを上手に受け流し、
自分にとって適度なストレスにコントロールできる人のことなのです。
重要なのは、
その方法を知っているかどうか、
それだけです。
(中略)
ストレスには『痛み』や『寒さ』といった身体的ストレスと、
『つらさ』や『悲しみ』といった精神的ストレスの二種類があります。
これまでのストレス研究では、
このうち身体的ストレスに関するメカニズムしか明らかにされていませんでした。
つまり、
心のストレスは確かにあるのに、
どうやって生じるのかも、
どうやったら治るのかもわかっていなかったのです。
だから、
今でも多くの人がうつ病などの精神的な病に苦しんでいるのでしょう。
私たちがストレスに対してこれまで何もできなかったのは、
精神的ストレスを『心のストレス』ととらえてしまったことによって、
原因も症状も曖昧なままにしていたからだと思います。
しかし、
脳科学はその精神的ストレスがどうして発生するのかを、
ついに突き止めたのです。
これがとても大きな発見だったことは言うまでもありません。
心のストレスの正体は、
『脳が神経伝達物質を通して感じるストレス』
です。
そして、
脳がストレスを感じるということは、
そこにはストレスを伝達する物質があり、
それを抑制する機能も確かにあるということです。
私はこのことをみなさんに知っていただくために、
心のストレスのことを『脳ストレス』と呼んでいます。
そして私たち人間の脳には、
脳ストレスをコントロールするための機能がちゃんと備わっているのです。
その機能は、
本来ならば、
人間が社会生活を送る中で、
人とのコミュニケーションを大切にしながら規則正しい生活を送っていれば、
自然と働くようになっていました。
ところが近年、
不規則な生活や、
核家族化、
パソコンや携帯電話の普及などによって、
社会生活そのものが大きく変化してしまいました。
そのため、
この大切な機能がうまく働かない人が増え、
ちょっとした『心のケガ』として表れているのです。
最近、
うつ病やキレる人が増えてきているのも、
まさにこのことが原因です。
脳ストレスをコントロールするための機能は二つあります。
一つは、
ストレスを受け流す体質をつくる機能です。
これは『セロトニン神経』を活性化させることで高まります。
もう一つは、
溜まってしまったストレスを一気に解消する機能です。
これは『涙』を流すことでスイッチが入ります。
この二つの機能が備わっているのは、
最も人間らしい脳といわれる前頭前野の内側部です。
この場所は、
別名『共感脳』といわれ、
社会性や他者への共感を育む場所でもあります。
ストレスをコントロールする機能は、
そうした最も人間らしい脳に備わっているのです。
(中略)
今までの生活習慣を少しだけ変えて、
人間が最も人間らしい生活をする――それだけで共感脳にある『二つの機能』は間違いなく高まります。」(3頁〜9頁)
「ストレス研究の先駆者であるお釈迦さまは、
一つの方法を私たちに教えてくれています。
お釈迦さまが教えてくれた『苦=ストレス』への対抗策、
それは『座禅』を組むことです。
六年間も苦行をしたのに悟りに至れなかったお釈迦さまが、
座禅によって悟りに至ったのは、
脳科学的にみると決して偶然ではないのです。
実は座禅によって、
お釈迦さまは、
脳のとても『大切な部分』を活性化させていたのです。
座禅というとただ座って瞑想しているだけのように思われるかもしれません。
もちろん瞑想もとても有意義な活動の一つです。
しかし、
座禅で最も大切なのは『呼吸』です。
腹式のゆっくりした呼吸を意識して規則正しく繰り返す。
それが、
座禅における呼吸法なのです。
実は、
こうしたゆっくりとした腹式呼吸を一定時間続けると、
脳の『大切な部分』に変化が表れるのです。
その変化が表れる場所というのが、
うつ病やパニック障害と深いかかわりを持つ『セロトニン神経』です。
一定のリズムを刻む運動を『リズム運動』といいます。
腹式呼吸も、
腹筋を一定のリズムで動かすので、
リズム運動の一つです。
セロトニン神経は、
そうしたリズム運動によって活性化するというおもしろい特徴を持った神経なのです。
セロトニン神経が活性化するというのはどういうことかというと、
具体的に言えば、
セロトニンという神経伝達物質の量が増えるということです。
このセロトニンには、
『クールな覚醒』といって、
脳の状態を、
落ち着いた状態でありながら非常にクリアにするという効果があります。
お釈迦さまが座禅によって悟りに至ったのも、
こうした静かな覚醒のおかげと考えられます。」(51頁〜52頁)
ストレスを消すためには、
呼吸を意識した瞑想が有効です。
瞑想を習慣にすれば、
癒やしのホルモンであるセロトニンが分泌されることが、
科学的に実証されています。
瞑想を日課とし、
ストレスを溜めない健康的な生活を送りましょう
(推薦図書)
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