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2019年05月02日

「いつか還る日まで」

「無意味な言葉が僕の翼になる」より。
2010年04月12日投稿。




お題で無茶修行企画その六。そして短編。
「Astral slumbar」より、お題を借りてきました。










「いつか還る日まで」




 それは夏の夜だった。
 一等星がより輝いていて、そして、その星は簡単に落ちていった。
 君は笑った。
 天体望遠鏡を覗いて、とても、楽しそうに。
 僕はあの一等星なんだよ。
 私は首を傾げる。
 すると、それが見えていたかのように君は目を離して、そして、悲しそうに笑んで私を見つめた。
「落ちる間際までは、輝いているよ」
 君の傍で。
 そう言って、もう一度、望遠鏡を覗き込む。
 でも、その瞳に星が映っていないことは、分かっていた。
 私はぼんやり空を見上げた。
 もう一つ、星が落ちた。
 そろそろかな。
 君が嬉しそうに言った。でも、違うことは知っていた。
 声が震えていたから。
 無理に出した喜びは、真実でないと知っている。
 お互いに。
 私はまた、ぼんやり空を見上げた。
 一つ、二つ、三つ。
 少しずつ、星が、落ちていく。
 四つ目、五つ、あぁ、もう数えられない。
 流星群。
 君と見る、最後の星月夜。
「明日、」
 うん?
 私の言葉に、声だけで君は応える。
 柔らかいその声が、私は好きだった。
「明日、もし、」
 うん。
 望遠鏡の中、埋め尽くすような、星の雨。
「明日、もし、世界が終わってしまったら、」
 君を独りで逝かせないのに。
 言葉は最後まで出てこない。どうせ、言ったところで、世界は終わるはずもない。
 そしていつか、君は空に還る。
 私を残して。
 何も言えなくなって、二人の間に沈黙が落ちて、私はまた、空を見上げた。
 星の雨。星は散っていく。もう、戻ってこない。
「あぁ、寒くなってきたね」
 君が身を震わせる。
 そう? 私は適当に返す。
 そうして横目で見た君の頬に伝っている星の雫に、気付かない、フリをして。
 あぁ、そうか。
 どうして気付かないフリをしたのか。
 それはきっと、
 自分も同じもので頬を濡らしていると、認めたくなかったからなんだろう。
 馬鹿な私。
 もう、この時は戻らないのに。
「もう、戻ろう」
 怒られるよ、たぶん。
 私は君の肩を抱く。
 だいぶ冷え切って、震えていて、でも、その震えは、寒さのためなのか、分からない。
「そうだね」
 君はそっぽを向いて、ごしごし、寝巻きの袖で顔を顔を拭く。それを見て、私も、服の袖で顔を拭く。
 そして顔を見合わせて、二人笑った。
 そのまま頬にキスを落として、塩の味がする、と、君は私を抱きしめた。
 冷たいその体が、私の体温で、少しでも温まればいいのだけど。
 ぼんやり思いながら、まだ、その日は来ないだろうと、心のどこかで決め付けた。
 それは、切望。
 まだ、落ちる日は来ないでほしい、と。

 君は私の一等星。
 傍にいるのに、ずっと、遠いところにいる。
 そして、逝ってしまう。
 近いいつか。




「君の記憶で輝き続けるから、いつか、空へ還るその日まで」











お題で無茶修行第六弾は、短編?短い物語?散文詩?そんなものです。
コヨル様の「Astral slumbar」から、選択式のお題を一つ、お借りしてきました。僕は、小説なんてたいそうなものは書けません。こういった短い場面を、言葉として閉じ込めるだけ。
いや、それをどうにか書けるようになろうと、無茶修行しているのですが。
そして、何故、こういう短い場面を描くとき、近い将来消えていく命みたいなものを描いてしまうのか。
うーん。
これも、修行して、直さないと(苦笑)
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