2013年12月18日
「ぼくらの頭脳の鍛え方―必読の教養書400冊」 立花隆・佐藤優
書評本を読むことの意義は3つある。1つは評者の物の見方を評価対象の本を通じ自身と比較できること、2つ目は思いもよらぬ本・視点に出会えること、3つ目は自ら労することなく手っ取り早く本の「概要」「評価」「視点」を得られることである。
1つ目はまあ書評の体を成す本ならばどれでも満たすだろう。2つめは自身と評者の相性もあるがまともな評者ならまあまず満たす。3つ目は当然といえば当然であるし、あまりに稚拙で功利的な手段であるといえばそうなるが、意外とこれを満たせるものは少ない。
本書は知の巨人・立花隆と知の怪物・佐藤優(立花との対比で紹介にはこうあるがまさに言えて妙である)の対談書評本である。副題に必読の教養書400冊とある通り、二人が自分の書棚から百冊ずつ、書店の文庫・新書から100冊ずつ選りすぐったものである。
立花隆はその経歴・著作から言ってもまさに「巨人」で、自身が執筆するのに参考とした文献を「冊」単位ではなく「m」単位で考える規格外の知識人だ。対する佐藤優も年は若いがソ連動乱時に情報活動を行っていたバリバリの実戦派、叩き上げのインテリだ。
佐藤優は知識・思考の幅・深さ共に凄まじいものを持っているため、対談本ではたいてい相手を食ってしまう。今現在のところ佐藤と対談して互角に対談しているのはこの本での立花しか知らない。
それにしても二人とも凄い。政治的立場や思想的立場を前面に押し出した対談ではなく、本好きの知識人二人がのんびりと談じているつくりだからなおさら話が広がり、深さがある。途中乃木希典の殉死の解釈とかで意見が分かれるところはあるものの、基本的には雑談の中でどんどんトピックに応じた本を紹介するのみで停滞感無く進んでいく。
章が終わり、雑談に区切りができるごとに立花・佐藤それぞれの選んだ本がリストアップされる。佐藤がそれぞれに解説・解題をつけているのに対し、立花は何冊かにのみ膨大な解説・解題を付け、他はただ挙げるのみであるのが面白い。さらに立花が現代科学論・生理学・死といったように簡潔にジャンルを定めているのに対し、佐藤は「宗教・哲学についての知識で、人間の本質を探究する」「歴史についての知識で、未来への指針を探る」といったように分けているのも興味深い。
宗教関連はやはり佐藤が多く挙げ、サイエンスものは圧倒的に立花が担当しているのが二人の来歴を示しているようでいい。
この書評本は、書評のための本ではなく、二人の思考法に関する対談の中で本が紹介されている、ぐらいのものだろう。付録の「立花隆による『実戦に役立つ十四カ条』」・「立花隆選・セックスの神秘を探る十冊」もよく考え抜かれている。
対談初めの方にある立花の本の読み方と、情報機関の人間の読書術が同じものであるというエピソードが一番面白かった。
佐藤優 立花隆 書評 対談
1つ目はまあ書評の体を成す本ならばどれでも満たすだろう。2つめは自身と評者の相性もあるがまともな評者ならまあまず満たす。3つ目は当然といえば当然であるし、あまりに稚拙で功利的な手段であるといえばそうなるが、意外とこれを満たせるものは少ない。
本書は知の巨人・立花隆と知の怪物・佐藤優(立花との対比で紹介にはこうあるがまさに言えて妙である)の対談書評本である。副題に必読の教養書400冊とある通り、二人が自分の書棚から百冊ずつ、書店の文庫・新書から100冊ずつ選りすぐったものである。
立花隆はその経歴・著作から言ってもまさに「巨人」で、自身が執筆するのに参考とした文献を「冊」単位ではなく「m」単位で考える規格外の知識人だ。対する佐藤優も年は若いがソ連動乱時に情報活動を行っていたバリバリの実戦派、叩き上げのインテリだ。
佐藤優は知識・思考の幅・深さ共に凄まじいものを持っているため、対談本ではたいてい相手を食ってしまう。今現在のところ佐藤と対談して互角に対談しているのはこの本での立花しか知らない。
それにしても二人とも凄い。政治的立場や思想的立場を前面に押し出した対談ではなく、本好きの知識人二人がのんびりと談じているつくりだからなおさら話が広がり、深さがある。途中乃木希典の殉死の解釈とかで意見が分かれるところはあるものの、基本的には雑談の中でどんどんトピックに応じた本を紹介するのみで停滞感無く進んでいく。
章が終わり、雑談に区切りができるごとに立花・佐藤それぞれの選んだ本がリストアップされる。佐藤がそれぞれに解説・解題をつけているのに対し、立花は何冊かにのみ膨大な解説・解題を付け、他はただ挙げるのみであるのが面白い。さらに立花が現代科学論・生理学・死といったように簡潔にジャンルを定めているのに対し、佐藤は「宗教・哲学についての知識で、人間の本質を探究する」「歴史についての知識で、未来への指針を探る」といったように分けているのも興味深い。
宗教関連はやはり佐藤が多く挙げ、サイエンスものは圧倒的に立花が担当しているのが二人の来歴を示しているようでいい。
この書評本は、書評のための本ではなく、二人の思考法に関する対談の中で本が紹介されている、ぐらいのものだろう。付録の「立花隆による『実戦に役立つ十四カ条』」・「立花隆選・セックスの神秘を探る十冊」もよく考え抜かれている。
対談初めの方にある立花の本の読み方と、情報機関の人間の読書術が同じものであるというエピソードが一番面白かった。
佐藤優 立花隆 書評 対談