2014年01月03日
「国家情報戦略」 佐藤優 コウ・ヨンチョル
2007年発行と少し前の本である。政治分析の新書は如何にも「新書」らしく、賞味期限が決まっているものだが、良い「新書」のエッセンスはその時勢の断片標本として立派に数年後も機能しうる。
上にはこう書いたが、本書では時勢分析よりは、インテリジェンス論がもっぱらであるため内容はある意味不変的なものだ。佐藤優と、同じく組織内の抗争で転落したコウ・ヨンチョル(元韓国国防省対外情報部)が韓国・北朝鮮・日本を中心としたインテリジェンス事情を語る。佐藤の対談本は多くあるが実際にインテリジェンスオフィサーとして活動した人物との対談はこの本ぐらいだ。
舞台や題材は日本近辺に絞られるものの、初心者にもインテリジェンスがどういったものであるか概観がわかる作りとなっている。ヒュミントやシギント、NSAといった用語がある程度身についている人にとっても、韓国情報機関の人事についてや北朝鮮の謀略工作の実態、戦前の中野学校と北朝鮮特務機関の比較といった項目は読みごたえがあるだろう。
中野学校の謀略について、「中野学校の教えの基本は、本当の意味での『謀略』以外の方法でやってはダメということです。女で脅したり、金で買収するようなやり方では、本当の謀略はできないと。謀略は真剣勝負なのだからこそ、『謀略は誠なり』でないと通用しないということです。」と佐藤は言う。中野学校からゾルゲ事件に至るまでの日本の情報活動に関する箇所はこの本独自の表現・考察もあり興味深い。
書中、コウは瀬島龍三の「私がベトナム戦争発生をいち早く予測できたのは、特別な情報源からではない。その情報の出所は、大部分、国内外の新聞記事だ。一つの目的意識を持って新聞記事を読むと、高い水準の情報判断が生まれる」という発言を紹介するのだが、この発言のほかにも日本近隣のインテリジェンスで活躍した人物の事例が次々に出てくる。具体的事例をつなげていくアプローチのほうが、政治や歴史といったストーリー性が重要となる事物の認識・理解には良い。
巷では特定機密保護法が騒がれているが、インテリジェンス的な面から(むしろそれが本題なのだが)の議論は驚くほど少ない。佐藤優の2007年時点でのスパイ防止法への考察も載っており、インテリジェンスの概観に触れるための本としては格好の一冊である。
インテリジェンス 北朝鮮
上にはこう書いたが、本書では時勢分析よりは、インテリジェンス論がもっぱらであるため内容はある意味不変的なものだ。佐藤優と、同じく組織内の抗争で転落したコウ・ヨンチョル(元韓国国防省対外情報部)が韓国・北朝鮮・日本を中心としたインテリジェンス事情を語る。佐藤の対談本は多くあるが実際にインテリジェンスオフィサーとして活動した人物との対談はこの本ぐらいだ。
舞台や題材は日本近辺に絞られるものの、初心者にもインテリジェンスがどういったものであるか概観がわかる作りとなっている。ヒュミントやシギント、NSAといった用語がある程度身についている人にとっても、韓国情報機関の人事についてや北朝鮮の謀略工作の実態、戦前の中野学校と北朝鮮特務機関の比較といった項目は読みごたえがあるだろう。
中野学校の謀略について、「中野学校の教えの基本は、本当の意味での『謀略』以外の方法でやってはダメということです。女で脅したり、金で買収するようなやり方では、本当の謀略はできないと。謀略は真剣勝負なのだからこそ、『謀略は誠なり』でないと通用しないということです。」と佐藤は言う。中野学校からゾルゲ事件に至るまでの日本の情報活動に関する箇所はこの本独自の表現・考察もあり興味深い。
書中、コウは瀬島龍三の「私がベトナム戦争発生をいち早く予測できたのは、特別な情報源からではない。その情報の出所は、大部分、国内外の新聞記事だ。一つの目的意識を持って新聞記事を読むと、高い水準の情報判断が生まれる」という発言を紹介するのだが、この発言のほかにも日本近隣のインテリジェンスで活躍した人物の事例が次々に出てくる。具体的事例をつなげていくアプローチのほうが、政治や歴史といったストーリー性が重要となる事物の認識・理解には良い。
巷では特定機密保護法が騒がれているが、インテリジェンス的な面から(むしろそれが本題なのだが)の議論は驚くほど少ない。佐藤優の2007年時点でのスパイ防止法への考察も載っており、インテリジェンスの概観に触れるための本としては格好の一冊である。
インテリジェンス 北朝鮮