秋の土俵は貴景勝が制しました。11勝4敗で優勝ラインが低いことは否めませんが、全休明けの場所、しかもカド番だったわけですから、かなりのプレッシャーがあったと想像します。優勝決定戦の立ち合いでの変化もさまざまなご意見があるかと思いますが、両膝などのけがを抱え、千秋楽は体力も限界に近かったのでしょう。優勝すべき大関がしっかり賜杯をつかんだことは評価できると思います。
一方、新大関・豊昇龍は千秋楽で勝ち越し、初のカド番だった霧島も9勝止まり。かなり物足りなかったです。豊昇龍は初日を見た限りでは期待を抱きました。体の調子が悪かったのかもしれませんが、一気に崩れました。大関になると黒星を喫したときにかかる重みが全く違います。私も大関昇進以降は、負けた翌日は大変な思いでした。看板力士の重み、叔父さんの朝青龍関の心身両面でのすごみを痛感したことでしょう。
口酸っぱく言うようですが、こうなったら負けない自分の型を早く完成させるべきです。相撲にまとまりがないと言いますか、迷いが出てきますからね。これは霧島にも共通することです。両者ともに稽古に励み、体も大きくすべきでしょう。2人とも優勝経験のある実力者ですし、けがも少ない。一つ上の番付への期待も大きいです。常に「自分は弱い」という意識を持って努力してほしいです。
今場所を振り返る上で忘れてはいけないのが、熱海富士の存在です。彼がいなかったら秋場所はどうなっていたのだろう、と思うくらい盛り上げてくれました。一方、上位には通用しないことも痛感したことでしょう。立ち合いは腰が高く、まだ甘さを感じます。飛行機が離陸するような立ち合いを磨くべく、強い力士と稽古を重ねてほしいです。
また、弟子の北青鵬が千秋楽まで優勝争いをしましたが、名古屋場所の伯桜鵬に続き、2場所連続で悔し涙をのむ結果に。今度はうれし涙を流したいですね。その伯桜鵬はリハビリと治療に励んでいます。しっかり治して復帰しますので、もう少しお待ちいただければと思います。(宮城野親方=元横綱・白鵬、スポーツ報知評論家)
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