b.熊山・鬼ノ城(キノジョウ)と山つづき、そろそろ海が恋しいなあ、
a.そんじゃあ、そろそろ南へ向かうとしよう、
b.ゆるい丘を越えると、赤磐(アカイワ)市らしからぬ美的建造物、
a.残念ながらここはとなりの岡山市、赤磐市とは打って変わってリッチな政令指定都市でござる、
b.市民ホールみたいやな、
a.そんな風に見えるけど、環太平洋大学って体育系大学の校舎や、数年前、モンゴル人留学生の関係で、もと横綱、朝青龍も来たらしい、
b.手前の池や背後の山ともグッドバランスやな、
「風景に 溶けこんでるで この校舎」
b.こりゃパノラマ仕立てでござるな、正面はもしかして前々回の旅で登った、あの熊山では、
a.うむ、右手は吉井川をわたる新幹線、
b.しかし、12月やと風景が茶色ばっかりで、イマイチいただけませんな、
a.空の青さくらいか、あざやかな色らしい色は、
b.しかし、南へ向かうって、これじゃあ真東(マヒガシ)やないすか、
a.まあどの道えらんでも、けっきょく回り道やしなあ、
b.なるほど、そうやして訳もなく流れる雲をながめたりと、
a.そう、そんな乗り方がエエんや、
b.吉井川を渡ってからは延々とカメラも構えず小一時間、千町平野を南下して突き当たりの山すそを流れる川も千町川、
a.この公園で休憩や、
b.サザンカの咲く四阿(アズマヤ)か、
a.きょうは雲がエエなあ、
「竹やぶと 雑木林の 地味コラボ」
b.あいかわらず地味な絵作りっすね、
a.冬は地味やなホンマに、色味が無いでいかんわ、
b.シブい板切れに、なんちゃら公会堂って書いてる、会の字もすんげえな、「會」ってか、
a.こういう古い字体のばあい、「カイ」ではなく「クァイ」と読まねばならぬ、発音してみい、
b.「こうくゎいどう」、
a.「町内會」、これは「ちょうないくゎい」
b.これで戦争負けたんちゃいます?
a.なんでや、
b.発音や書き順、手間取ってる間に攻撃されたんちゃいます?
a.なるほど、そう納得する自分がこわいわ、
b.しかし、気のせいか、ずいぶん暖かくなってきた気がするんですけど、
a.それは海が近い証拠や、
b.お風呂みたいな海なんすか、瀬戸内海って、
a.なんでや?
b.ホカホカ暖かいし、きつい波は立たへんし、島は多いし、対岸はほぼ見えてるし、なんかホッとしませんか、湯船につかってるような、内輪の感じ、
「瀬戸内は 銭湯内輪(セントウチワ)の なごやかさ」
a.たしかになあ、工業地帯は別やけど、このあたりはなごやかさの極みや、畑だけでほかに何も無いのんがええ、
「なんもない かえってそれが ありがたい」
a.そして、ようやく見えたぞ海が、っていうより海の向こうの小豆島(ショウドシマ)が、
b.このへんは何かって言うと小豆島(ショウドシマ)が見えますね、たしか鬼ノ城(キノジョウ)からも熊山からも見えてた、
a.小学生のとき家族で行ったきりや、
b.あんな近いのに、
a.海をはさむと陸地より何倍も遠くに感じるなあ、
「いつも見る 近くて遠き 小豆島(ショウドシマ)」