b.さてさて、そんじゃあ登りますか、
a.悪い奴らはごまんと(=数多く)居てるけど、いちいち付き合いきれんしなあ、
b.けれども、なんかエライきついっすね、この坂、
a.なめらかに舗装してるけど、何やこのハンパない角度、
b.もうダメ、マウンテンバイクのいちばん軽いギアでもイヤや、
a.しょうがないなあ、ちょうど道の横に土の小道が続いてるし、こっから歩いて登ろう、
b.頂上付近の駐車場から先は、完全に整備されてる、
a.うむ、40年ぶりやと、これくらい変わって当然かもしれんけど、ともかくより良くなっててひと安心、
b.なるほど、この岩が鬼の城遺跡か、ちょっとがっかりやな、せっかく登ってきたのに、
a.バカを言うもんぢゃあない、左を向きたまえ、黒沢映画のセットみたくそびえてるやろ、
b.あれかあ、
a.昔はあんなん一切無かったんやで、
b.なんかいかにも古代の城っぽいなあ、そんで、いちばん遠くの山かげは、もしかして、
a.瀬戸内海に浮かぶ小豆島(ショウドシマ)、そうめんとしょうゆとオリーブの島や、
「そうめんと しょうゆオリーブ 小豆島(ショウドシマ)」、そのまんまやな・・・
b.その手前は国東(クニサキ)半島かな?
a.「児嶋だよっ、児島半島、分かってるのに間違えるの無し」、
b.そういえば、ふもとの砂川公園と作り方似てんなあ、両方ワンセットで作ったような感じ、
a.ここもセンス良いなあ、古代はホントにそうだったような感じが伝わるし、ふもとの砂川公園と同じように自由度も高い、
b.そしてなによりこの見晴らし、
a.途中で引き返さんと、登ってきて良かった、
「瀬戸内の 海と平野を ひとりじめ」、
b.40年前、高校の時はどうだったんすか、
a.夏休み、雨が降っててなあ、ここでテント張って一泊、
b.ひとりすか、
a.いや、中学からの友人となぞの日系アメリカ人留学生の3人、夜ふけになると雨も上がって、
b.しかし、夜景には田舎すぎますね、
a.かわりに、稲光(イナビカリ)がすごくて感動的やった、たれこめた雲ごと光って平野全体が青く浮かびあがる・・・友人はひたすら怖がってたけど、
b.謎の日系アメリカ人の反応は、
a.ようわからん、寝てたんちゃうかなあ、日本人の顔してたけど、英語しか喋(シャ)べれんかったし・・・ただ今でもひとつだけ覚えてんのは、アメリカでは日系人差別がひどいってこと、すこし照れながらボソボソっとしゃべるし、なおさらそのつらさが伝わって来た、
b.へえ、そんなことがあったんか、
a.ジェフはどうしてんのかな、今ごろ・・・「オレらの知らんまに、鬼ノ城(キノジョウ)、こんな立派になってんで」、