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2014年03月07日
もとより足取りは狂いがちであった
独りで踊りを持て扱い引込みもつかなくて、さんざんに痴態を演じているうちにも、心は次第に白けて来たが、転身の契機もそうやすやすとは来ないのであった。
 ある時も、彼は小肥りに肥った下宿の主婦に、部屋に葉子がいないと言われて、入口の石段を降りて来たが、何か人の気勢がしたようにも思われるし、お茶でも呑みに行ったか、行きつけの南明座かシネマ・パレスヘでも行ったのなら、帰るのを待つのもいいような気もしたが、いつもの「上がってお待ちになっては……」とも言わないので、それも気になった。

ちょうど政友会の放漫政策の後を享けて、緊縮政策の浜口内閣の出現した時であった。ふと庸三の耳に総理大臣の放送が入って来た。ラジオは下宿から少し奥へ入ったところの、十字路の角の電気器具商店からだったが、聞きたいと思っていたところなので、彼はステッキに半身を支えてしばらく耳を傾けながら、葉子の姿がもしも見えはしないかと、下宿の方に目を配っていた。
大判プリント 格安
Posted by salchan at 12:39 | この記事のURL
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