2012年01月19日
「文才がなくても書ける小説講座」感想
「文才がなくても書ける小説講座」(鈴木信一 ソフトバンク新書)を読みました。
ざっくばらんにまとめるなら、
「自分には文才がない、書きたいことがないと言って小説を書かない人達へ。
文才がなくても、書きたいことがなくても、一文を書いてしまえば
そこから不足した情報を書き足していくことによって小説は書けるのだ。
物語に必要なのは、情緒や感性でなくて、論理的思考だ。
自分には情緒がない、感性がないから書けないんだ、なんて言い訳だ。
書きたいものが出てきたときに書く? そんなん待ってたら人生終わるわボケェ!
今書けないもんがこの先も書けるわけあるかい!
さあ、頭でっかちで悩んでないで、さっさと書け!
そして、書き続けて書き続けて、自分が書いた小説の中から『自分の真実』を見出せ!
事実でも現実でもなく、自分の真実が秘められているのが小説じゃないか!」
という感じでしょうか。いや、こんなクチ悪くないですけども(笑)。
「書くこと、読むことは、情報の不足を埋める行為である」
という点に着眼しています。
正直、この本の通りにやっても小説は書けないと思います。出来上がるのは「小説もどき」。
でも、おそらく、小説の多くが、作者の汗と涙と苦しみと喜びと妄想と痛みを栄養にして、「小説もどき」から「小説」に成長していったんだろうな。
まあ、「これが処女作です。初めて書いた小説を新人賞に出したら賞取りました」な人も、いることはいるのでしょうけど。
この本は、たぶん、「小説家になって、映画化やアニメ化したりして、印税ガッポガッポでウハハ笑いが止まらないや!」を目指している人には向いていません。
小説を書くことや小説を読むことに関して、心から感動する人(「うわあ、魂震えたんだけど!なんか自分の創作魂にスイッチ入っちゃったんですけど、どーしたらいいですか!?」の感動)を対象にしてると思います。
そもそも、本当に書きたい人や書かなければいられない人は、ハウツー本なんかなくても書いてます。見よう見真似で、手探り状態で書いてる。
で、上達したいと思えば、自分の作品の何が悪いのか、どこが世間の小説と違うのか、どうしたら書けるようになるのか、悩んで悩んで、やっぱり書いて、自分なりのスタイルを身に着けていくでしょう。
そういう人たちが、でも行き詰って、スランプに陥ったときに初心に帰るために読むには良い本かもです。
あとは、読んだ小説などに感銘を受けて、なんか書きたいような気がしているんだけど、いまいち一歩を踏み出せずにいる人。
ハウツー本ではあるんですが、著者の小説に対する(というか、文章を書くことへの?)思いがあちこちに散りばめられているので、何かしら凝り固まった魂が揺さぶられるような気がします。
「仰る通りです。何か書きたくなってきた、よし、書くぞ!」になるか、「コイツの言うこと、おかしいって! あー、ムカつく、腹立つから書いてやる!」になるかは読んだ人の受け取り方によりますが(笑)
この本に書いてあること全てに納得できるわけではないけど、加藤典洋という文芸評論家が、文学とは「現実を笑いとばすもの」と言った、というのには納得してしまいました。
現実や事実を、現代社会は重要視して重く扱う。
でも、それらを笑い飛ばせるのが文学だ、と。
現実や事実を笑い飛ばし、文学は真実を目指す、のだと。
以下、本より抜粋。
「事実や現実の前では、わたしたちは確かに無力です。しかし、その前にひれ伏してばかりいては、尊厳を保つことも、生きていくことさえもできない。それが人間です。では、どうするのか。人間は事実を蹴飛ばし、現実を踏み越えたところに、嘘の物語をこしらえます。そして、事実や現実にびくともしない強靭な生をまっとうする者たちの中に、光を見ようとするのです。
実話、いわゆるノンフィクションしか評価しないという人がいます。そういう人は小説はしょせん作り物でしかないと言いますが、小説の価値はその作り物であることにあるのです。
もう一度言います。現実の中にどっぷりとつかっていたのでは、人間の生は矮小化します。だから私たちは嘘の物語をこしらえて、真実という名の高みを目指すのです。」
ああ、何故か私の中で思い浮かぶのはイデア論(笑)。
あ、あと、この著者は描写重視タイプの方のようなのですが、「言葉→<目に見えないもの>を写し取るのが得意」「小説家は<目に見えるもの>をあえて言葉によって書く」という点で、そっか、描写は大事なんだな、と思いました。
例えば「悲しい」ということを言葉で表してしまうよりも、描写で表現されたほうが、何倍も悲しさが増すということは確かにあるものね。
あ、あとあと、「本好きな子供に育てるには?」の項目も面白かったです。
ちなみに私は、小説や映画などの展開が、自分の抱いた<構想>以下だったときにも「書きたい!」のスイッチが入ります。
↓この本が気になる方はどぞ。
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ざっくばらんにまとめるなら、
「自分には文才がない、書きたいことがないと言って小説を書かない人達へ。
文才がなくても、書きたいことがなくても、一文を書いてしまえば
そこから不足した情報を書き足していくことによって小説は書けるのだ。
物語に必要なのは、情緒や感性でなくて、論理的思考だ。
自分には情緒がない、感性がないから書けないんだ、なんて言い訳だ。
書きたいものが出てきたときに書く? そんなん待ってたら人生終わるわボケェ!
今書けないもんがこの先も書けるわけあるかい!
さあ、頭でっかちで悩んでないで、さっさと書け!
そして、書き続けて書き続けて、自分が書いた小説の中から『自分の真実』を見出せ!
事実でも現実でもなく、自分の真実が秘められているのが小説じゃないか!」
という感じでしょうか。いや、こんなクチ悪くないですけども(笑)。
「書くこと、読むことは、情報の不足を埋める行為である」
という点に着眼しています。
正直、この本の通りにやっても小説は書けないと思います。出来上がるのは「小説もどき」。
でも、おそらく、小説の多くが、作者の汗と涙と苦しみと喜びと妄想と痛みを栄養にして、「小説もどき」から「小説」に成長していったんだろうな。
まあ、「これが処女作です。初めて書いた小説を新人賞に出したら賞取りました」な人も、いることはいるのでしょうけど。
この本は、たぶん、「小説家になって、映画化やアニメ化したりして、印税ガッポガッポでウハハ笑いが止まらないや!」を目指している人には向いていません。
小説を書くことや小説を読むことに関して、心から感動する人(「うわあ、魂震えたんだけど!なんか自分の創作魂にスイッチ入っちゃったんですけど、どーしたらいいですか!?」の感動)を対象にしてると思います。
そもそも、本当に書きたい人や書かなければいられない人は、ハウツー本なんかなくても書いてます。見よう見真似で、手探り状態で書いてる。
で、上達したいと思えば、自分の作品の何が悪いのか、どこが世間の小説と違うのか、どうしたら書けるようになるのか、悩んで悩んで、やっぱり書いて、自分なりのスタイルを身に着けていくでしょう。
そういう人たちが、でも行き詰って、スランプに陥ったときに初心に帰るために読むには良い本かもです。
あとは、読んだ小説などに感銘を受けて、なんか書きたいような気がしているんだけど、いまいち一歩を踏み出せずにいる人。
ハウツー本ではあるんですが、著者の小説に対する(というか、文章を書くことへの?)思いがあちこちに散りばめられているので、何かしら凝り固まった魂が揺さぶられるような気がします。
「仰る通りです。何か書きたくなってきた、よし、書くぞ!」になるか、「コイツの言うこと、おかしいって! あー、ムカつく、腹立つから書いてやる!」になるかは読んだ人の受け取り方によりますが(笑)
この本に書いてあること全てに納得できるわけではないけど、加藤典洋という文芸評論家が、文学とは「現実を笑いとばすもの」と言った、というのには納得してしまいました。
現実や事実を、現代社会は重要視して重く扱う。
でも、それらを笑い飛ばせるのが文学だ、と。
現実や事実を笑い飛ばし、文学は真実を目指す、のだと。
以下、本より抜粋。
「事実や現実の前では、わたしたちは確かに無力です。しかし、その前にひれ伏してばかりいては、尊厳を保つことも、生きていくことさえもできない。それが人間です。では、どうするのか。人間は事実を蹴飛ばし、現実を踏み越えたところに、嘘の物語をこしらえます。そして、事実や現実にびくともしない強靭な生をまっとうする者たちの中に、光を見ようとするのです。
実話、いわゆるノンフィクションしか評価しないという人がいます。そういう人は小説はしょせん作り物でしかないと言いますが、小説の価値はその作り物であることにあるのです。
もう一度言います。現実の中にどっぷりとつかっていたのでは、人間の生は矮小化します。だから私たちは嘘の物語をこしらえて、真実という名の高みを目指すのです。」
ああ、何故か私の中で思い浮かぶのはイデア論(笑)。
あ、あと、この著者は描写重視タイプの方のようなのですが、「言葉→<目に見えないもの>を写し取るのが得意」「小説家は<目に見えるもの>をあえて言葉によって書く」という点で、そっか、描写は大事なんだな、と思いました。
例えば「悲しい」ということを言葉で表してしまうよりも、描写で表現されたほうが、何倍も悲しさが増すということは確かにあるものね。
あ、あとあと、「本好きな子供に育てるには?」の項目も面白かったです。
ちなみに私は、小説や映画などの展開が、自分の抱いた<構想>以下だったときにも「書きたい!」のスイッチが入ります。
↓この本が気になる方はどぞ。
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