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2012年02月06日

「フルメタル・ジャケット」感想

「フルメタル・ジャケット」原題は「The Short-Timers」。グスタフ・ハスフォード作、高見浩訳、角川文庫。

スタンリー・キューブリック監督の映画、「フルメタル・ジャケット」の原作です。

映画の「フルメタル・ジャケット」に関しては、ご存知の方も多いかもしれません。
鬼軍曹の、訓練兵に対するすさまじい侮辱と罵声は、未だにネタにされているほどです(笑)。

中学生だか高校生だかの頃、映画の「フルメタル・ジャケット」を観て、とてつもない衝撃を受けました。

ラストの惨状が凄まじい「ハンバーガー・ヒル」も、爆発の中サーフィンをしたがるナパーム弾好きのキルゴア中佐しか頭ん中に残ってないです、ゴメンナサイの「地獄の黙示録」(ていうか、あの中佐が出てくるところだけ、明らかに空気おかしかったですよね?ね?)も、もちろんショックでしたが、「フルメタル・ジャケット」は印象に残りまくっていて、本屋でこの本を見つけて思わず買ってしまいました。

……小説のが、衝撃的でした。私にとっては。

海外小説としては珍しい(のではないかと私は思う)短文で、淡々と、本当に淡々と物語が語られていきます。
作者のグスタフ・ハスフォードがベトナム戦争経験者で、臨場感たっぷりで、たっぷりすぎて読んでいるうちに戦場に引きずり込まれます。

訓練兵たちは、ガーハイム軍曹(映画ではハートマン)によって、「お前らは蛆虫だ、糞虫だ、人間ですらない」と罵られ、自己を否定され、訓練に耐えて「(海兵隊が望むような、という意味で)立派な」海兵隊員へとなっていきます。

「新兵が手に負えなくなったのを見て、訓練教官たちはかえって誇りに思うらしい。海兵隊がほしいのはロボットではない。海兵隊がほしいのは殺戮者なのだ」

という文が、なんだかとても印象的でした。
殺戮マシーンではなくて、殺戮者。

「殺戮をしてのけるのは、武器ではなく冷徹な精神なのだ」

そんな「立派な」海兵隊員になった者たちも、戦場で狂っていきます。
ある者は急に、ある者はゆっくり、じわじわと。

物語の語り手である主人公のあだ名は、「ジョーカー」。
ジョーカーの戦場で見た死体を思い出すシーンや、初めて殺害戦果を上げたときのシーンも印象的でした。
とても凄惨ではあるのですが、その中に狂気にも似た静かな何かがあって、読んでいる私は、ジョーカーの目で、それらを見ているのです。

死体、死体、死体。
目をそらす。あれはボロ雑巾だと言い聞かせる。でもやがてかつて人間だったものだと分かってくる。
4番目に見た死体まではしっかり覚えている。
でも、それ以降はぼんやりとして明瞭に思い出せない。
麻痺していく。

初めて殺した老農夫の顔。平穏そのものの、その顔。

ジョーカーはもう狂っているのか、かろうじて正常なのか、よく分からない。

「気違い沙汰だよ、おれたちのやってることは。早く娑婆にもどりてえや」
「いや、娑婆にもどったところで気違い沙汰は横行してるさ。ここ、おれたちのいるこのろくでもない戦場こそが現実なんだ」



読み終えた後は、ただ茫然としてました。

ラスト近くの、カウボーイのセリフはどういう意味だったんでしょう。
本当のことだったのか、嘘だったのか。

本を閉じて、しばらくぼんやりして、お腹を触って自分の腸が出ていないことを確認して、自分がどこも撃たれていないことを確認して、ようやく「私の現実」に戻ってこられた感じでした。

とりあえずは平和な日本に生まれてよかったと思いながら、どこか虚無感が残りました。

「戦争反対!」というより、「戦争はいやだなぁ…」とぽつりと言うような感じです。

面白いですが、読んでいて楽しいものではないですし、精神的に疲れます。
多分、戦争を疑似体験している感覚からくる疲労感のような気がします。
そして、けっこう、かなり、グロい。

「戦争が醜悪なのは真実が醜悪だからであって、戦争そのものは実に真摯だ」

でも、戦争は、いやだなぁ。

ところで作者のグスタフ・ハスフォードさん、なかなか波乱万丈な人生を過ごされたようで…。
出版社と揉めたこともあり、彼が亡くなった現在、彼の作品は絶版とのこと。
角川文庫のこの本も、現在絶賛絶版中で、Amazonを見ても、中古しかありません。ナンテコッター。
銃にしゃれこうべのあの表紙デザインが不気味なのに、表紙イメージもないです、ナンテコッター。

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posted by みあ at 01:52|
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日々の中で感じたことを、個人的な偏見を交えて語りたいと思います。 本とか、音楽とか、映画とか、いろいろ。
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