2018年08月27日
性ホルモン暴露前に男脳・女脳を決定する遺伝子! 男脳・女脳を決定する遺伝子を特定
性ホルモン暴露前に男脳・女脳を決定する遺伝子!
男脳・女脳を決定する遺伝子を特定 2018年07月26日 06:10
男性と女性では、ものの考え方や好みなどの傾向に違いがある。
国立精神・神経医療研究センター、筑波大学などの研究グループは、脳内に発現する「Ptf1a遺伝子」を破壊したマウスを用いた実験で、脳の性分化について検討。小脳や膵臓の形成にも関与するPtf1a遺伝子が、胎仔マウスの視床下部で働き、脳の男性化や女性化に関わることが明らかになったと、Cell Reports(2018; 24: 79-94)に発表した。
胎仔マウスの脳内における神経前駆細胞でPtf1a遺伝子が発現
男性と女性では、脳の構造や機能に生まれつき違いが見られる。その違いを出発点とし、成長を通じてものの考え方や立ち居振る舞い、嗜好などに差が生じてくる。
ヒトを含む哺乳類の脳は、最初はほとんど性差がないが、「臨界期」と呼ばれる時期に男性ホルモンの一種であるテストステロンによる刺激を受けると男性化し、その刺激を受けないと女性化することが知られている。
臨界期は、マウスでは出生直前〜出生後1週間、ヒトでは妊娠12〜22週ごろとされ、この時期における脳の性分化機構の研究はかなり進んでいる。しかし、臨界期以前の脳の性分化機構についてはよく分かっていなかった。
これまでに研究グループは、Ptf1a遺伝子が胎仔マウスの視床下部で発現することを見いだしている。
Ptf1a遺伝子は、もともとは膵臓をつくるのに必要な遺伝子として知られていたが、2005年に京都大学(現・国立精神・神経医療研究センター神経研究所病態生化学研究部部長)の星野幹雄氏らにより、小脳をつくるために重要な働きをすることが明らかにされた(Neuron 2005; 47:201-213)。
そして今回、研究グループが胎仔マウスの視床下部におけるPtf1a遺伝子発現についてさらに詳細に調べたところ、臨界期よりかなり前の発達段階で、視床下部の、特に脳室に面した神経前駆細胞でPtf1aが発現することを見いだした。その発現は胎生10日に始まり、臨界期前の胎生16日にはほとんど失われるという。
脳内Ptf1a 遺伝子KO マウスは性分化準備状態に至らず
続いて研究グループは、視床下部でPtf1a遺伝子を破壊したノックアウト(KO)マウスを作製し、その行動を調べた。
正常な雄は通常、雌のお尻の上に乗りかかる「マウント」という性行動を行うが、KOマウスの雄では、マウントが観察されなかった。
また、正常な雄は同性に対して攻撃性を示すが、異性である雌に対してはほとんど攻撃性を見せない。しかし、KOマウスの雄は、雄への攻撃性をほとんど示さず、雌に対して攻撃性を見せた。
このようにKOマウスの雄では、雄特有の行動が見られなかったことから、臨界期にテストステロン刺激を受けても脳が正常に「雄脳(男性脳)」へと性分化できていないことが示された。
一方、正常な雌には、雄にマウントされたときにお尻を突き出す「ロードシス」という性行動が見られるが、KOマウスのメスでは、ロードシスの頻度が極端に低下していた。
また、子集めや毛繕いなどの基本的な子育て行動もほとんど見られなかった。
これらのことから、「臨界期」にテストステロン刺激を受けていないにもかかわらず、脳が正常に「雌脳(女性脳)」へと性分化できていないことが示された。
以上から、脳は臨界期を迎えればテストステロンの刺激・非刺激によって無条件に男性脳(雄脳)・女性脳(雌脳)へと性分化できるわけではなく、臨界期までに脳が「性分化準備状態」になっている必要があることが明らかになった。
さらに、Ptf1a遺伝子が臨界期よりも早い時期に視床下部で働き、脳を「性分化準備状態」にさせるという重要な役割を担っていることが明らかになった。
これまでにも脳の性分化に関わる遺伝子は幾つか報告されているが、Ptf1aはそれらの中でも最も早期に働く最上流遺伝子であるという。
研究グループは、今回の結果を振り返り「脳の性分化プロセスが、かなり早い段階から始まっていることが明らかになった」とコメント。
「今後、胎生期における脳の性分化に関する研究に弾みが付き、脳の男性化・女性化のメカニズムへの理解がさらに進むだろう」と期待を寄せている。
(比企野綾子)
男脳・女脳を決定する遺伝子を特定 2018年07月26日 06:10
男性と女性では、ものの考え方や好みなどの傾向に違いがある。
国立精神・神経医療研究センター、筑波大学などの研究グループは、脳内に発現する「Ptf1a遺伝子」を破壊したマウスを用いた実験で、脳の性分化について検討。小脳や膵臓の形成にも関与するPtf1a遺伝子が、胎仔マウスの視床下部で働き、脳の男性化や女性化に関わることが明らかになったと、Cell Reports(2018; 24: 79-94)に発表した。
胎仔マウスの脳内における神経前駆細胞でPtf1a遺伝子が発現
男性と女性では、脳の構造や機能に生まれつき違いが見られる。その違いを出発点とし、成長を通じてものの考え方や立ち居振る舞い、嗜好などに差が生じてくる。
ヒトを含む哺乳類の脳は、最初はほとんど性差がないが、「臨界期」と呼ばれる時期に男性ホルモンの一種であるテストステロンによる刺激を受けると男性化し、その刺激を受けないと女性化することが知られている。
臨界期は、マウスでは出生直前〜出生後1週間、ヒトでは妊娠12〜22週ごろとされ、この時期における脳の性分化機構の研究はかなり進んでいる。しかし、臨界期以前の脳の性分化機構についてはよく分かっていなかった。
これまでに研究グループは、Ptf1a遺伝子が胎仔マウスの視床下部で発現することを見いだしている。
Ptf1a遺伝子は、もともとは膵臓をつくるのに必要な遺伝子として知られていたが、2005年に京都大学(現・国立精神・神経医療研究センター神経研究所病態生化学研究部部長)の星野幹雄氏らにより、小脳をつくるために重要な働きをすることが明らかにされた(Neuron 2005; 47:201-213)。
そして今回、研究グループが胎仔マウスの視床下部におけるPtf1a遺伝子発現についてさらに詳細に調べたところ、臨界期よりかなり前の発達段階で、視床下部の、特に脳室に面した神経前駆細胞でPtf1aが発現することを見いだした。その発現は胎生10日に始まり、臨界期前の胎生16日にはほとんど失われるという。
脳内Ptf1a 遺伝子KO マウスは性分化準備状態に至らず
続いて研究グループは、視床下部でPtf1a遺伝子を破壊したノックアウト(KO)マウスを作製し、その行動を調べた。
正常な雄は通常、雌のお尻の上に乗りかかる「マウント」という性行動を行うが、KOマウスの雄では、マウントが観察されなかった。
また、正常な雄は同性に対して攻撃性を示すが、異性である雌に対してはほとんど攻撃性を見せない。しかし、KOマウスの雄は、雄への攻撃性をほとんど示さず、雌に対して攻撃性を見せた。
このようにKOマウスの雄では、雄特有の行動が見られなかったことから、臨界期にテストステロン刺激を受けても脳が正常に「雄脳(男性脳)」へと性分化できていないことが示された。
一方、正常な雌には、雄にマウントされたときにお尻を突き出す「ロードシス」という性行動が見られるが、KOマウスのメスでは、ロードシスの頻度が極端に低下していた。
また、子集めや毛繕いなどの基本的な子育て行動もほとんど見られなかった。
これらのことから、「臨界期」にテストステロン刺激を受けていないにもかかわらず、脳が正常に「雌脳(女性脳)」へと性分化できていないことが示された。
以上から、脳は臨界期を迎えればテストステロンの刺激・非刺激によって無条件に男性脳(雄脳)・女性脳(雌脳)へと性分化できるわけではなく、臨界期までに脳が「性分化準備状態」になっている必要があることが明らかになった。
さらに、Ptf1a遺伝子が臨界期よりも早い時期に視床下部で働き、脳を「性分化準備状態」にさせるという重要な役割を担っていることが明らかになった。
これまでにも脳の性分化に関わる遺伝子は幾つか報告されているが、Ptf1aはそれらの中でも最も早期に働く最上流遺伝子であるという。
研究グループは、今回の結果を振り返り「脳の性分化プロセスが、かなり早い段階から始まっていることが明らかになった」とコメント。
「今後、胎生期における脳の性分化に関する研究に弾みが付き、脳の男性化・女性化のメカニズムへの理解がさらに進むだろう」と期待を寄せている。
(比企野綾子)
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