2019年03月26日
術後せん妄の怖さ
術後せん妄の怖さ
科捜研のデータの科学的正確性が何一つ担保されていなかった恐怖の鑑定だった!
ある種、背筋が凍る『現代の怪奇話!!』
医療維新 乳腺外科医準強制わいせつ逮捕・起訴事件
「あり得ないと肌で感じた」、乳腺外科医裁判−高野隆・主任弁護人に聞く
インタビュー 2019年2月27日 (水)配信高橋直純、岩崎雅子(m3.com編集部)
自身が執刀した女性患者に対してわいせつな行為をしたとして、
準強制わいせつ罪で逮捕・起訴された男性外科医に対する裁判で、
東京地裁(大川隆男裁判長)は2月20日、男性外科医に無罪(求刑懲役3年)を言い渡した。
主任弁護人は刑事弁護の第一人者として知られる高野隆氏。
完全無罪判決は今回で16回目という。
本裁判の争点や、判決の意義を振り返っていただいた。
――最初に高野先生はどのような経緯でこの裁判に関わったのでしょうか。
僕が関わったのは第1回公判直後ぐらいですね。
男性外科医の保釈が認められたのが2016年12月で、その直前ぐらいに話がありました。
保釈後にご本人から面会の要請があり、ご家族の方からも「ぜひ」ということで参加することになりました。
実際に病院に行ってみて、『病室の構造的にもこれはあり得ない』と肌で感じました。
男性外科医と話しても、そういうことをする人には到底見えないし、
そのようなヒストリーのある人でもないです。
これは無罪にしないといけない事件だとすぐ分かりましたね。
――弁護団は12人と大所帯でした。
ご本人の希望で僕が主任弁護人になりましたが、それまでに病院の顧問弁護士を中心に活動されており、
こんなにたくさん弁護士が付いているとは思わなかったです。
僕が今まで体験した中では最大規模ですね。
実際に12人が期日間整理手続のために法廷に入ったし、
公判中も全員参加しましたからかなり異例だと思います。
――実際に弁護に関わるようになって、どのような印象を受けましたか。
われわれの専門用語でいう「証拠構造」、
要するに検察が有罪を立証するための証拠のパターンとしてはすごくシンプルですよね。
女性が胸をしゃぶられたと言っており、
その胸から被告人のDNA型が検出されて、
アミラーゼ反応がプラスだった。
非常にシンプルなパターンです。
同時に、弁護側のケースセオリーとしては、それを前提に防御する余地が非常に大きいケースですね。
乳腺外科医であり、乳首に触るのは当たり前の話です。
『術前にも手術中、手術室に入ってからも十分あり得る』。
ある意味シンプルな事件でしたが、
問題は被害女性(m3.comではA氏と表記)の体験供述が非常にリアルで、
迫真性があったということが特徴です。
そこで、「術後せん妄」や「幻覚」が問題になったところも今までの事件ではなかったことですね。
もう一つ、DNAで言うとやっぱりDNA「型」鑑定では済まない部分が出てきました。
DNAの「量」が争点になった点で、あまりない事件であることは間違いないですね。
――警察、検察が本件で逮捕・起訴に至ったことについてはどう評価されますか。
通常の判断なのか、それとも当初から無理筋な事件だったのでしょうか。
逮捕、起訴とも僕が入る前のやりとりなので、
あまりちゃんとしたコメントはできませんが、
やはり女性の乳首という部分から
男性外科医のDNA型が検出されてアミラーゼ反応が陽性だったという科捜研の鑑定が出ており、
それが大きいのではないでしょうか。
供述だけでなく、そんな所から男性のDNAが出るのは普通はあり得ないわけだから、
捜査官側のこれで大丈夫という思い込みがまずあったのかなと僕は思います。
A氏が真剣に被害を訴えて、
それを捜査官側がきちんと取り上げて
微物採取、鑑定をして、それに基づいて訴追に動くというのは
司法の在り方として間違ってはいないと思います。
ただ、この事件の特殊性、『触診や術後せん妄の可能性』があるのだから、
例えば左乳首だけではなく、
ネガティブコントロールとして他の場所からも微物を採取するなど証拠をきちんと確保すべきでした。
判決でも指摘されていましたが、そういう見通しのなさが今回の問題であり、
今後の捜査に生かすべき反省点だと僕は思います。
――柳原病院が民医連の病院だったという影響はあるとお考えでしょうか。
それは関係ないでしょう。
ただ、病院側と捜査側との間で対立があったような感じはしました。
その対立のために嫌がらせ的に逮捕したのかどうかは分かりませんが。
病院が早い段階で「これはせん妄ではないか」と考えたのは正しかったですし、
外科手術を行う医師にとっては死活問題ですから、
医師を守ろうという動きをするのは極めて自然なことだと思います。
――異例とも言える期日間整理手続の長さでした(第1回公判から第2回公判まで、1年10カ月の間に実施)。どのようなやりとりが続いていたのでしょうか。
1年を超えており、確かに長いですね。
やはり、検察官が有罪を立証するための証拠として開示しただけでは不十分なんですね。
微物を採取したというが、
では、それはどのように採取、保管されて、
どうやって鑑定にまで至ったのかというプロセスを開示してほしい。
DNA量の計算根拠であるデータを出してもらいたい。
こちらが法律に基づいて「検察官が請求している証拠を検討するにはこういう資料が必要だ」と言うと、
向こうは「必要ない」「廃棄した」と言ってきたりすると、
では、いつ廃棄したのかという議論が繰り広げられるわけですね。
それでだいぶ時間がかかりました。
もう一つは、こちら側も立証する必要がありました。
文献を調べても、胸を舐めた時と手で触った時で、
付着するDNAの量がこれだけ違いますという論文はないわけですから。
自分たちで実験をするしかないわけです。
鑑定のプロに頼んで、プロデュースして、報告書にまとめてもらうだけで、半年近くかかるわけです。
さらに専門家の証言も重要でした。
立派な先生に出会えましたが、意見書に書いてもらって法廷で証言してもらう。
そういう段取りを付けるのもやはり時間がかかります。
――検察側が証拠を出し渋ったということもあったのでしょうか。
ありましたね。
やはり一番出し渋ったのは、証拠の保管状況に関するものです。
あと、110番通報に関する音声データも。
多分、検察庁が出し渋ったんではなく、警視庁だと僕は推測しています。
実際のところ110番通報の音声データについては、裁判所の差し押さえ決定がなされて、
検察官が警視庁に行ってそのDVDとか音声データを差し押さえました。
あと、出し渋ったというか、あるのかないのかはっきりしなかったのがDNA鑑定での増幅曲線や検量線。
結局、「破棄した」という回答でした。
――裁判の中では、捜査のずさんさがいろいろな形で明らかになりましたが、
検察側の主張は「通常通り」というものでした。
高野先生はこれまで多数の刑事弁護をされてきましたが、
刑事捜査の実態はこのようなものか、それとも今回が特別にひどかったのでしょうか。
想定していた部分が多いですよね。
例えば押収する際に状況やアミラーゼ鑑定の色の変化についても写真を撮らない、
試料を誰がいつ持っていったかについての客観的な記録がないなど。
実は、これは日本の捜査の実は最大の弱点であり、最大の特徴なんですね。
僕はアメリカや香港、台湾の事件捜査を垣間見る機会がありましたが、
そういう国では証拠の保管の連鎖「chain of custody」をきちんと検証できるようにしています。
物を押収したら、その場で封をして、ラベルを貼って、日付と押収した人のサインをして、それを写真に撮る。
封を開けた時も写真を撮って、変化がないことを証明できるようにしています。
裁判所が検証可能性を要求するわけですね。
chain of custodyを立証しなくてはいけないのはcommon lawの基本中の基本となっています。
しかし、日本はそれをやらなかった。
日本の裁判は公務員に対する信頼が非常に厚く、
科捜研が「ちゃんとやった」と言うなら、
そう判断してしまう。
実は今回の判決もそういう前提に立っています。
だって、ワークシートは鉛筆書きで9カ所消してあって、
それで写真も撮ってない、
誰も立ち会ってない。
そんなデータは証拠として採用できないというのが僕らの主張です。
だけど、「捏造があったとは考えにくい」
「誤記があったとも言いがたい」として、
裁判所は「採用しない」というところまでは言っていない。
例えば、アミラーゼ活性が一番高いのは唾液であるという主張がされているのだから、
鑑定で青になったとしても、それが1時間後か2時間後かはとても重要ですが、それが検証できない。
科捜研の技官が「1時間で青色になりました」と言うので、
「あなたの言葉を信じるしかわれわれには選択肢がないですね」と法廷でも聞きましたが、
それは裁判ではないと思うのですが。
――今回の裁判の一つのハイライトは、第11回公判で、ワークシートを「証拠物」としてのみ採用するという裁判所の判断だったと思いますが、改めてその意義、位置付けをご説明いただけますでしょうか 。
裁判所は人の供述よりも科学的なデータで作られた鑑定書に信頼を高く置きます。
そのデータを支えるのがワークシートであり、
ワークシートはまさに鑑定書の一部ですが、
科学者の常識を無視した作られ方をしていたわけです。
われわれは「科学的正確性が何一つ担保されておらず、
鑑定に当たらない」と言ったわけです。
裁判所がそれを理解してくれて、鑑定書として採用することができない、
すなわちアミラーゼプラスやDNAが1.612ng/μLという数値自体を、事実を証明する証拠としては使えない
という判断をしたわけで、大きい判断でした。
――これは異例の展開なのでしょうか。
証拠を見れば当たり前の決定だと僕は思います。
むしろ、その後に鑑定書本体を採用したことが間違いだと思っています。
鑑定を支えるワークシートを却下しているのだから、
鑑定書を採用するべきではなかった。
あそこで却下してれば、
科捜研は実務を変えざるを得なくなったと思うので、
そういった意味ではちょっと中途半端な判断です。
鑑定書を却下していたら、その段階で完全に無罪ですから。
でも、裁判所がそういうドラスティックなところまでできないというのが、今の日本の司法の現状かもしれません。
科捜研のデータの科学的正確性が何一つ担保されていなかった恐怖の鑑定だった!
ある種、背筋が凍る『現代の怪奇話!!』
医療維新 乳腺外科医準強制わいせつ逮捕・起訴事件
「あり得ないと肌で感じた」、乳腺外科医裁判−高野隆・主任弁護人に聞く
インタビュー 2019年2月27日 (水)配信高橋直純、岩崎雅子(m3.com編集部)
自身が執刀した女性患者に対してわいせつな行為をしたとして、
準強制わいせつ罪で逮捕・起訴された男性外科医に対する裁判で、
東京地裁(大川隆男裁判長)は2月20日、男性外科医に無罪(求刑懲役3年)を言い渡した。
主任弁護人は刑事弁護の第一人者として知られる高野隆氏。
完全無罪判決は今回で16回目という。
本裁判の争点や、判決の意義を振り返っていただいた。
――最初に高野先生はどのような経緯でこの裁判に関わったのでしょうか。
僕が関わったのは第1回公判直後ぐらいですね。
男性外科医の保釈が認められたのが2016年12月で、その直前ぐらいに話がありました。
保釈後にご本人から面会の要請があり、ご家族の方からも「ぜひ」ということで参加することになりました。
実際に病院に行ってみて、『病室の構造的にもこれはあり得ない』と肌で感じました。
男性外科医と話しても、そういうことをする人には到底見えないし、
そのようなヒストリーのある人でもないです。
これは無罪にしないといけない事件だとすぐ分かりましたね。
――弁護団は12人と大所帯でした。
ご本人の希望で僕が主任弁護人になりましたが、それまでに病院の顧問弁護士を中心に活動されており、
こんなにたくさん弁護士が付いているとは思わなかったです。
僕が今まで体験した中では最大規模ですね。
実際に12人が期日間整理手続のために法廷に入ったし、
公判中も全員参加しましたからかなり異例だと思います。
――実際に弁護に関わるようになって、どのような印象を受けましたか。
われわれの専門用語でいう「証拠構造」、
要するに検察が有罪を立証するための証拠のパターンとしてはすごくシンプルですよね。
女性が胸をしゃぶられたと言っており、
その胸から被告人のDNA型が検出されて、
アミラーゼ反応がプラスだった。
非常にシンプルなパターンです。
同時に、弁護側のケースセオリーとしては、それを前提に防御する余地が非常に大きいケースですね。
乳腺外科医であり、乳首に触るのは当たり前の話です。
『術前にも手術中、手術室に入ってからも十分あり得る』。
ある意味シンプルな事件でしたが、
問題は被害女性(m3.comではA氏と表記)の体験供述が非常にリアルで、
迫真性があったということが特徴です。
そこで、「術後せん妄」や「幻覚」が問題になったところも今までの事件ではなかったことですね。
もう一つ、DNAで言うとやっぱりDNA「型」鑑定では済まない部分が出てきました。
DNAの「量」が争点になった点で、あまりない事件であることは間違いないですね。
――警察、検察が本件で逮捕・起訴に至ったことについてはどう評価されますか。
通常の判断なのか、それとも当初から無理筋な事件だったのでしょうか。
逮捕、起訴とも僕が入る前のやりとりなので、
あまりちゃんとしたコメントはできませんが、
やはり女性の乳首という部分から
男性外科医のDNA型が検出されてアミラーゼ反応が陽性だったという科捜研の鑑定が出ており、
それが大きいのではないでしょうか。
供述だけでなく、そんな所から男性のDNAが出るのは普通はあり得ないわけだから、
捜査官側のこれで大丈夫という思い込みがまずあったのかなと僕は思います。
A氏が真剣に被害を訴えて、
それを捜査官側がきちんと取り上げて
微物採取、鑑定をして、それに基づいて訴追に動くというのは
司法の在り方として間違ってはいないと思います。
ただ、この事件の特殊性、『触診や術後せん妄の可能性』があるのだから、
例えば左乳首だけではなく、
ネガティブコントロールとして他の場所からも微物を採取するなど証拠をきちんと確保すべきでした。
判決でも指摘されていましたが、そういう見通しのなさが今回の問題であり、
今後の捜査に生かすべき反省点だと僕は思います。
――柳原病院が民医連の病院だったという影響はあるとお考えでしょうか。
それは関係ないでしょう。
ただ、病院側と捜査側との間で対立があったような感じはしました。
その対立のために嫌がらせ的に逮捕したのかどうかは分かりませんが。
病院が早い段階で「これはせん妄ではないか」と考えたのは正しかったですし、
外科手術を行う医師にとっては死活問題ですから、
医師を守ろうという動きをするのは極めて自然なことだと思います。
――異例とも言える期日間整理手続の長さでした(第1回公判から第2回公判まで、1年10カ月の間に実施)。どのようなやりとりが続いていたのでしょうか。
1年を超えており、確かに長いですね。
やはり、検察官が有罪を立証するための証拠として開示しただけでは不十分なんですね。
微物を採取したというが、
では、それはどのように採取、保管されて、
どうやって鑑定にまで至ったのかというプロセスを開示してほしい。
DNA量の計算根拠であるデータを出してもらいたい。
こちらが法律に基づいて「検察官が請求している証拠を検討するにはこういう資料が必要だ」と言うと、
向こうは「必要ない」「廃棄した」と言ってきたりすると、
では、いつ廃棄したのかという議論が繰り広げられるわけですね。
それでだいぶ時間がかかりました。
もう一つは、こちら側も立証する必要がありました。
文献を調べても、胸を舐めた時と手で触った時で、
付着するDNAの量がこれだけ違いますという論文はないわけですから。
自分たちで実験をするしかないわけです。
鑑定のプロに頼んで、プロデュースして、報告書にまとめてもらうだけで、半年近くかかるわけです。
さらに専門家の証言も重要でした。
立派な先生に出会えましたが、意見書に書いてもらって法廷で証言してもらう。
そういう段取りを付けるのもやはり時間がかかります。
――検察側が証拠を出し渋ったということもあったのでしょうか。
ありましたね。
やはり一番出し渋ったのは、証拠の保管状況に関するものです。
あと、110番通報に関する音声データも。
多分、検察庁が出し渋ったんではなく、警視庁だと僕は推測しています。
実際のところ110番通報の音声データについては、裁判所の差し押さえ決定がなされて、
検察官が警視庁に行ってそのDVDとか音声データを差し押さえました。
あと、出し渋ったというか、あるのかないのかはっきりしなかったのがDNA鑑定での増幅曲線や検量線。
結局、「破棄した」という回答でした。
――裁判の中では、捜査のずさんさがいろいろな形で明らかになりましたが、
検察側の主張は「通常通り」というものでした。
高野先生はこれまで多数の刑事弁護をされてきましたが、
刑事捜査の実態はこのようなものか、それとも今回が特別にひどかったのでしょうか。
想定していた部分が多いですよね。
例えば押収する際に状況やアミラーゼ鑑定の色の変化についても写真を撮らない、
試料を誰がいつ持っていったかについての客観的な記録がないなど。
実は、これは日本の捜査の実は最大の弱点であり、最大の特徴なんですね。
僕はアメリカや香港、台湾の事件捜査を垣間見る機会がありましたが、
そういう国では証拠の保管の連鎖「chain of custody」をきちんと検証できるようにしています。
物を押収したら、その場で封をして、ラベルを貼って、日付と押収した人のサインをして、それを写真に撮る。
封を開けた時も写真を撮って、変化がないことを証明できるようにしています。
裁判所が検証可能性を要求するわけですね。
chain of custodyを立証しなくてはいけないのはcommon lawの基本中の基本となっています。
しかし、日本はそれをやらなかった。
日本の裁判は公務員に対する信頼が非常に厚く、
科捜研が「ちゃんとやった」と言うなら、
そう判断してしまう。
実は今回の判決もそういう前提に立っています。
だって、ワークシートは鉛筆書きで9カ所消してあって、
それで写真も撮ってない、
誰も立ち会ってない。
そんなデータは証拠として採用できないというのが僕らの主張です。
だけど、「捏造があったとは考えにくい」
「誤記があったとも言いがたい」として、
裁判所は「採用しない」というところまでは言っていない。
例えば、アミラーゼ活性が一番高いのは唾液であるという主張がされているのだから、
鑑定で青になったとしても、それが1時間後か2時間後かはとても重要ですが、それが検証できない。
科捜研の技官が「1時間で青色になりました」と言うので、
「あなたの言葉を信じるしかわれわれには選択肢がないですね」と法廷でも聞きましたが、
それは裁判ではないと思うのですが。
――今回の裁判の一つのハイライトは、第11回公判で、ワークシートを「証拠物」としてのみ採用するという裁判所の判断だったと思いますが、改めてその意義、位置付けをご説明いただけますでしょうか 。
裁判所は人の供述よりも科学的なデータで作られた鑑定書に信頼を高く置きます。
そのデータを支えるのがワークシートであり、
ワークシートはまさに鑑定書の一部ですが、
科学者の常識を無視した作られ方をしていたわけです。
われわれは「科学的正確性が何一つ担保されておらず、
鑑定に当たらない」と言ったわけです。
裁判所がそれを理解してくれて、鑑定書として採用することができない、
すなわちアミラーゼプラスやDNAが1.612ng/μLという数値自体を、事実を証明する証拠としては使えない
という判断をしたわけで、大きい判断でした。
――これは異例の展開なのでしょうか。
証拠を見れば当たり前の決定だと僕は思います。
むしろ、その後に鑑定書本体を採用したことが間違いだと思っています。
鑑定を支えるワークシートを却下しているのだから、
鑑定書を採用するべきではなかった。
あそこで却下してれば、
科捜研は実務を変えざるを得なくなったと思うので、
そういった意味ではちょっと中途半端な判断です。
鑑定書を却下していたら、その段階で完全に無罪ですから。
でも、裁判所がそういうドラスティックなところまでできないというのが、今の日本の司法の現状かもしれません。
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