2018年12月22日
「かぜには抗菌薬が効く」と認識する患者が約半数、どう対応すべきか
「かぜには抗菌薬が効く」と認識する患者が約半数、どう対応すべきか
提供元:ケアネット 公開日:2018/11/14
一般市民対象の抗菌薬に関する意識調査の結果、
約半数が「かぜやインフルエンザなどのウイルス性疾患に対して抗菌薬が効く」と誤った認識をしていることが明らかになった。
AMR臨床リファレンスセンターは10月30日、
「抗菌薬意識調査2018」の結果を公表し、
「薬剤耐性(AMR)対策の現状と取り組み 2018」と題した
メディアセミナーを開催した。
セミナーでは大曲 貴夫氏
(国立国際医療研究センター病院 副院長/国際感染症センター長/AMR臨床リファレンスセンター長)、
具 芳明氏(AMR臨床リファレンスセンター 情報‐教育支援室長)らが登壇し、
意識調査結果や抗菌薬使用の現状などについて講演した。
抗菌薬で熱が下がる? 痛みを抑える?
「抗菌薬意識調査2018」は、
2018年8〜9月に、
10〜60代の男女721人を対象に実施された
インターネット調査1)。
「抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがあるか」
という質問に対し、
94.2%(679人)が「ある(66.7%)」
あるいは「あるが詳しくはわからない(27.5%)」と回答した。
「抗菌薬・抗生物質はどのような薬だと思うか」
と複数回答で聞いた結果、
「細菌が増えるのを抑える」と正しく回答した人はうち
71.9%(488人)。
一方で「熱を下げる(40.9%)」、
「痛みを抑える(39.9%)」など、
直接の作用ではないものを選択する人も多く、
抗菌薬に対する誤った認識が浮き彫りとなった。
「抗菌薬・抗生物質はどのような病気に有用か知っているか」という質問に対しては、
「かぜ」と答えた人が49.9%(339人)で最も多く、
2番目に多かった回答は「インフルエンザ(49.2%)」であった。
正しい回答である「膀胱炎」や「肺炎」と答えた人はそれぞれ26.7%、25.8%に留まっている。
「かぜで受診したときにどんな薬を処方してほしいか」という質問にも、
30.1%の人が「抗菌薬・抗生物質」と回答しており、
“ウイルス性疾患に抗菌薬が効く”と認識している人が一定数いる現状が明らかになった。
抗ウイルス薬を約3割の人が抗菌薬と誤解
さらに、抗菌薬5種類を含む全12種類の薬品名を挙げ、
「あなたが思う抗菌薬・抗生物質はどれか」と複数回答で尋ねた質問では、
多かった回答上位5種類のうち3種類が抗菌薬以外の薬剤であった。
最も多かったのは抗ウイルス薬のタミフルで、29.3%(199人)が抗菌薬だと誤解していた。
他に、鎮痛解熱薬のルル(18.1%)やバファリン(14.4%)も抗菌薬だと回答した人が多かった。
本調査結果を解説した具氏は、
「医療従事者が思っている以上に、
一般市民の抗菌薬についての知識は十分とは言えず、
適応や他の薬剤との区別について誤解が目立つ結果なのではないか。
このギャップを意識しながら、十分なコミュニケーションを図っていく必要がある」と話した。
“不必要なことを説明して、納得してもらう”ために
医師側も、一部でこうした患者の要望に応え、
抗菌薬処方を行っている実態が明らかになったデータがある。
全国の診療所医師を対象に2018年2月に行われた調査2)で、
「感冒と診断した患者や家族が抗菌薬処方を希望したときの対応」について聞いたところ(n=252)、
「説明しても納得しなければ処方する」と答えた医師が50.4%と最も多かった。
「説明して処方しない」は32.9%に留まり、
「希望通り処方する」が12.7%であった。
大曲氏は、「薬剤耐性(AMR)対策アクションプランを取りまとめる過程で検討したデータからも、
感冒をはじめとした急性気道感染症や下痢症など、
本来抗生物質をまず使うべきでないところで多く使われている現状が明らかになっている」と話し、
必要でないケースでは医師側が自信を持って、
ときには繰り返し患者に説明していくことの重要性を強調した。
2018年度の診療報酬改定で新設された、
「小児抗菌薬適正使用支援加算」3)は、
不必要な抗菌薬を処方するのではなく、
患者への十分な説明を重視したものとなっている。
そのためのツールの1つとして、
2017年発行の「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版」や、
センターが運用している「薬剤耐性(AMR)対策eラーニングシステム」4)などの活用を呼び掛けている。
※薬剤耐性(AMR)ー安直に抗菌薬を使っていると、抗菌薬が効かない耐性菌が出現しやすい。
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、VRSA(バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌)、MDRP(多剤耐性緑膿菌)、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)など、耐性菌の出現スピードが加速化している。
■参考
1)国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター プレスリリース
2)日本化学療法学会・日本感染症学会合同外来抗菌薬適正使用調査委員会「全国の診療所医師を対象とした抗菌薬適正使用に関するアンケート調査」2018.
3)厚生労働省「第3回厚生科学審議会感染症部会薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 資料5」
4)国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター情報サイト「かしこく治して、明日につなぐ」
提供元:ケアネット 公開日:2018/11/14
一般市民対象の抗菌薬に関する意識調査の結果、
約半数が「かぜやインフルエンザなどのウイルス性疾患に対して抗菌薬が効く」と誤った認識をしていることが明らかになった。
AMR臨床リファレンスセンターは10月30日、
「抗菌薬意識調査2018」の結果を公表し、
「薬剤耐性(AMR)対策の現状と取り組み 2018」と題した
メディアセミナーを開催した。
セミナーでは大曲 貴夫氏
(国立国際医療研究センター病院 副院長/国際感染症センター長/AMR臨床リファレンスセンター長)、
具 芳明氏(AMR臨床リファレンスセンター 情報‐教育支援室長)らが登壇し、
意識調査結果や抗菌薬使用の現状などについて講演した。
抗菌薬で熱が下がる? 痛みを抑える?
「抗菌薬意識調査2018」は、
2018年8〜9月に、
10〜60代の男女721人を対象に実施された
インターネット調査1)。
「抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがあるか」
という質問に対し、
94.2%(679人)が「ある(66.7%)」
あるいは「あるが詳しくはわからない(27.5%)」と回答した。
「抗菌薬・抗生物質はどのような薬だと思うか」
と複数回答で聞いた結果、
「細菌が増えるのを抑える」と正しく回答した人はうち
71.9%(488人)。
一方で「熱を下げる(40.9%)」、
「痛みを抑える(39.9%)」など、
直接の作用ではないものを選択する人も多く、
抗菌薬に対する誤った認識が浮き彫りとなった。
「抗菌薬・抗生物質はどのような病気に有用か知っているか」という質問に対しては、
「かぜ」と答えた人が49.9%(339人)で最も多く、
2番目に多かった回答は「インフルエンザ(49.2%)」であった。
正しい回答である「膀胱炎」や「肺炎」と答えた人はそれぞれ26.7%、25.8%に留まっている。
「かぜで受診したときにどんな薬を処方してほしいか」という質問にも、
30.1%の人が「抗菌薬・抗生物質」と回答しており、
“ウイルス性疾患に抗菌薬が効く”と認識している人が一定数いる現状が明らかになった。
抗ウイルス薬を約3割の人が抗菌薬と誤解
さらに、抗菌薬5種類を含む全12種類の薬品名を挙げ、
「あなたが思う抗菌薬・抗生物質はどれか」と複数回答で尋ねた質問では、
多かった回答上位5種類のうち3種類が抗菌薬以外の薬剤であった。
最も多かったのは抗ウイルス薬のタミフルで、29.3%(199人)が抗菌薬だと誤解していた。
他に、鎮痛解熱薬のルル(18.1%)やバファリン(14.4%)も抗菌薬だと回答した人が多かった。
本調査結果を解説した具氏は、
「医療従事者が思っている以上に、
一般市民の抗菌薬についての知識は十分とは言えず、
適応や他の薬剤との区別について誤解が目立つ結果なのではないか。
このギャップを意識しながら、十分なコミュニケーションを図っていく必要がある」と話した。
“不必要なことを説明して、納得してもらう”ために
医師側も、一部でこうした患者の要望に応え、
抗菌薬処方を行っている実態が明らかになったデータがある。
全国の診療所医師を対象に2018年2月に行われた調査2)で、
「感冒と診断した患者や家族が抗菌薬処方を希望したときの対応」について聞いたところ(n=252)、
「説明しても納得しなければ処方する」と答えた医師が50.4%と最も多かった。
「説明して処方しない」は32.9%に留まり、
「希望通り処方する」が12.7%であった。
大曲氏は、「薬剤耐性(AMR)対策アクションプランを取りまとめる過程で検討したデータからも、
感冒をはじめとした急性気道感染症や下痢症など、
本来抗生物質をまず使うべきでないところで多く使われている現状が明らかになっている」と話し、
必要でないケースでは医師側が自信を持って、
ときには繰り返し患者に説明していくことの重要性を強調した。
2018年度の診療報酬改定で新設された、
「小児抗菌薬適正使用支援加算」3)は、
不必要な抗菌薬を処方するのではなく、
患者への十分な説明を重視したものとなっている。
そのためのツールの1つとして、
2017年発行の「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版」や、
センターが運用している「薬剤耐性(AMR)対策eラーニングシステム」4)などの活用を呼び掛けている。
※薬剤耐性(AMR)ー安直に抗菌薬を使っていると、抗菌薬が効かない耐性菌が出現しやすい。
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、VRSA(バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌)、MDRP(多剤耐性緑膿菌)、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)など、耐性菌の出現スピードが加速化している。
■参考
1)国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター プレスリリース
2)日本化学療法学会・日本感染症学会合同外来抗菌薬適正使用調査委員会「全国の診療所医師を対象とした抗菌薬適正使用に関するアンケート調査」2018.
3)厚生労働省「第3回厚生科学審議会感染症部会薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 資料5」
4)国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター情報サイト「かしこく治して、明日につなぐ」
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