2018年11月28日
なぜ高齢者にインフルワクチンが必要か
なぜ高齢者にインフルワクチンが必要か
サノフィ・メディアラウンドテーブル開催 2018年10月19日 06:10
国立感染症研究所の調査によると、日本における昨シーズン(2017年9月〜18年4月)のインフルエンザ感染者は2,230万人を超え、
1999年の統計開始以来、最高となった(関連記事:「インフルエンザ3週連続で過去最高更新」)。
特に免疫力が低下している65歳以上の高齢者では、
インフルエンザウイルス感染により入院や死亡のリスクが高く、
専門医からはワクチン接種率向上の必要性が指摘されている。
9月5日、サノフィが東京都で開催したメディアラウンドテーブルでは、
米・Brown UniversityのStefan Gravenstein氏と
国立病院機構東京病院の永井英明氏が講演し、
高齢者がインフルエンザワクチンを接種する意義などについて説明した。
インフルエンザ感染が急性心筋梗塞のリスクに
65歳以上の高齢者では循環器疾患などの慢性基礎疾患を抱えていることが多く、
インフルエンザウイルス感染はそれらを悪化させ、重症化の原因となることが珍しくない。
最初にGravenstein氏が、循環器疾患に対する影響を中心に、インフルエンザワクチン接種の有効性を説明した。
高齢者では、加齢、糖尿病などの慢性疾患や、インフルエンザ、市中肺炎、帯状疱疹といった感染症の罹患に伴い、血栓が生じやすくなる。
特にインフルエンザに感染すると、頻脈、低酸素症、急性炎症、血栓形成を来し、急性心筋梗塞のリスクが高まる。
同氏によると、インフルエンザワクチンの接種は、こうした急性心筋梗塞の予防に有効だという。
心血管リスクを有する6,735例(平均年齢67歳)を対象としたメタ解析で、
インフルエンザワクチンの接種が心血管イベント発現を36%低下させたとの報告(JAMA 2013; 310: 1711-1720)を紹介。
「ワクチンの接種により入院が減少し、医療費を抑制するというベネフィットも得られる」と述べ、
医療経済の観点からもワクチン接種の勧奨は重要であるとした。
日本のインフルエンザワクチン接種率は、小児で59.2%、一般成人で28.6%、高齢者で58.5%とされるが、先進諸国と比べて決して高い水準にあるとはいえない。
こうした現状について、Medical Tribuneでは同氏に追加取材を行い、その考えについて聞いた。
「ワクチン後進国」などとも呼ばれる日本の現状について、
同氏は「抗原量を増やした高用量ワクチンでなく、まず標準用量のワクチン接種率を向上させる必要があるのではないか」と指摘。
その上で、「米国でも、『ワクチンが悪い』とメディアで報道されることがある。
しかし、その年の流行を防げなかったとしても、ワクチンの有効性を示す試験結果は出ている」と話し、メディアなどを通じてワクチン接種の意義を啓発する重要性を強調した。
接種率上昇には公費助成の適応拡大を
続いて登壇した永井氏は、日本の高齢者におけるインフルエンザワクチン接種の現状を説明した。
インフルエンザによる入院と死亡は高齢になるほど増加するが、
その死因の多くは、うっ血性心不全、慢性閉塞性肺疾患、喘息、糖尿病などの慢性基礎疾患の悪化として分類される。
これらの疾患は、いずれも日本人の死因の上位を占めるものだが、
同氏は「高齢者の死因として、インフルエンザは過小評価されているのではないか」と話す。
では、インフルエンザワクチン接種による予防は、死亡数を減少させることができるのか。
同氏は、1950〜2000年の日本と米国における肺炎およびインフルエンザによる超過死亡数とワクチン接種量の関係を調べた研究を紹介。
米国ではワクチン接種量の増加に伴い超過死亡数が減少している一方、
日本では1994年の任意接種化を契機に超過死亡数が増加していると指摘した
(図、 N Engl J Med 2001; 344: 889-896)。
図. 肺炎とインフルエンザによる超過死亡数およびワクチン接種量
このように有効性が示されているインフルエンザワクチンだが、
日本で使用可能なものは標準用量の4価不活化ワクチンのみで、
抗原量を増やした高用量ワクチンが承認された米国と比べ、
選択肢は限定される。
また、公費助成の対象となるのは、
65歳以上または
60〜64歳で基礎疾患(身体障害者手帳1級相当の障害)を有する人のみである。
2010年に、生後6カ月以上の全国民が接種対象と位置付けられた米国に比べ、非常に厳しい基準が設けられているのだ。
こうした状況を踏まえ、同氏は「インフルエンザワクチン接種による重症化予防効果は明らかなので、高齢者は積極的に接種してほしい」と述べ、「公費助成の対象を60歳未満にも拡大すべきだ」と訴えた。
(平山茂樹)
サノフィ・メディアラウンドテーブル開催 2018年10月19日 06:10
国立感染症研究所の調査によると、日本における昨シーズン(2017年9月〜18年4月)のインフルエンザ感染者は2,230万人を超え、
1999年の統計開始以来、最高となった(関連記事:「インフルエンザ3週連続で過去最高更新」)。
特に免疫力が低下している65歳以上の高齢者では、
インフルエンザウイルス感染により入院や死亡のリスクが高く、
専門医からはワクチン接種率向上の必要性が指摘されている。
9月5日、サノフィが東京都で開催したメディアラウンドテーブルでは、
米・Brown UniversityのStefan Gravenstein氏と
国立病院機構東京病院の永井英明氏が講演し、
高齢者がインフルエンザワクチンを接種する意義などについて説明した。
インフルエンザ感染が急性心筋梗塞のリスクに
65歳以上の高齢者では循環器疾患などの慢性基礎疾患を抱えていることが多く、
インフルエンザウイルス感染はそれらを悪化させ、重症化の原因となることが珍しくない。
最初にGravenstein氏が、循環器疾患に対する影響を中心に、インフルエンザワクチン接種の有効性を説明した。
高齢者では、加齢、糖尿病などの慢性疾患や、インフルエンザ、市中肺炎、帯状疱疹といった感染症の罹患に伴い、血栓が生じやすくなる。
特にインフルエンザに感染すると、頻脈、低酸素症、急性炎症、血栓形成を来し、急性心筋梗塞のリスクが高まる。
同氏によると、インフルエンザワクチンの接種は、こうした急性心筋梗塞の予防に有効だという。
心血管リスクを有する6,735例(平均年齢67歳)を対象としたメタ解析で、
インフルエンザワクチンの接種が心血管イベント発現を36%低下させたとの報告(JAMA 2013; 310: 1711-1720)を紹介。
「ワクチンの接種により入院が減少し、医療費を抑制するというベネフィットも得られる」と述べ、
医療経済の観点からもワクチン接種の勧奨は重要であるとした。
日本のインフルエンザワクチン接種率は、小児で59.2%、一般成人で28.6%、高齢者で58.5%とされるが、先進諸国と比べて決して高い水準にあるとはいえない。
こうした現状について、Medical Tribuneでは同氏に追加取材を行い、その考えについて聞いた。
「ワクチン後進国」などとも呼ばれる日本の現状について、
同氏は「抗原量を増やした高用量ワクチンでなく、まず標準用量のワクチン接種率を向上させる必要があるのではないか」と指摘。
その上で、「米国でも、『ワクチンが悪い』とメディアで報道されることがある。
しかし、その年の流行を防げなかったとしても、ワクチンの有効性を示す試験結果は出ている」と話し、メディアなどを通じてワクチン接種の意義を啓発する重要性を強調した。
接種率上昇には公費助成の適応拡大を
続いて登壇した永井氏は、日本の高齢者におけるインフルエンザワクチン接種の現状を説明した。
インフルエンザによる入院と死亡は高齢になるほど増加するが、
その死因の多くは、うっ血性心不全、慢性閉塞性肺疾患、喘息、糖尿病などの慢性基礎疾患の悪化として分類される。
これらの疾患は、いずれも日本人の死因の上位を占めるものだが、
同氏は「高齢者の死因として、インフルエンザは過小評価されているのではないか」と話す。
では、インフルエンザワクチン接種による予防は、死亡数を減少させることができるのか。
同氏は、1950〜2000年の日本と米国における肺炎およびインフルエンザによる超過死亡数とワクチン接種量の関係を調べた研究を紹介。
米国ではワクチン接種量の増加に伴い超過死亡数が減少している一方、
日本では1994年の任意接種化を契機に超過死亡数が増加していると指摘した
(図、 N Engl J Med 2001; 344: 889-896)。
図. 肺炎とインフルエンザによる超過死亡数およびワクチン接種量
このように有効性が示されているインフルエンザワクチンだが、
日本で使用可能なものは標準用量の4価不活化ワクチンのみで、
抗原量を増やした高用量ワクチンが承認された米国と比べ、
選択肢は限定される。
また、公費助成の対象となるのは、
65歳以上または
60〜64歳で基礎疾患(身体障害者手帳1級相当の障害)を有する人のみである。
2010年に、生後6カ月以上の全国民が接種対象と位置付けられた米国に比べ、非常に厳しい基準が設けられているのだ。
こうした状況を踏まえ、同氏は「インフルエンザワクチン接種による重症化予防効果は明らかなので、高齢者は積極的に接種してほしい」と述べ、「公費助成の対象を60歳未満にも拡大すべきだ」と訴えた。
(平山茂樹)
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