2018年09月29日
急性心筋梗塞患者への酸素療法は無効〜長期追跡結果を発表 ルーチンの酸素療法が不要に!
急性心筋梗塞患者への酸素療法は無効〜長期追跡結果を発表
ルーチンの酸素療法が不要に!
2018年09月11日 06:00
心臓発作を起こした患者に対する酸素療法は100年以上前から行われているが、
血中酸素濃度が正常な患者での十分な効果は証明されていない。
スウェーデン・Karolinska InstitutetのRobin Hofmann氏らは以前、
低酸素状態でない心筋梗塞(MI)が疑われる患者を対象に、
酸素療法と空気吸入を比較するDETO2X-AMI※1試験を実施し、
酸素療法は1年時点の生存率を改善しないことを報告している※2。
今回、同氏らは同試験の長期結果を欧州心臓病学会(ESC 2018、8月25〜29日、ミュンヘン)で報告し、
「MIが疑われる患者への酸素療法に心不全予防効果はなく、
長期死亡リスクも改善されない」と述べた。
なお、詳細はCirculation(2018年8月26日オンライン版)に同時掲載された。
(関連記事:「急性心筋梗塞に酸素投与の効果なし」)
ルーチンの酸素療法が不要に
2000年以降、世界中の研究者が心臓発作(急性MI)患者に対する酸素療法は無効なだけでなく、
有害ですらあるのではないかと疑い始めていた。
DETO2X-AMI試験の意義について、Hofmann氏は「心臓発作患者の治療法に関する知識には、
これまで大きなギャップがあった。
今回の研究により、その中心部分を埋めることができた。
1年前、われわれは心臓発作後の酸素療法は1年時点の死亡リスクを低減させないことを確認した」と説明。
さらに「今回は、1年前に得られた知見をより長期的に裏付け、酸素療法は心臓発作患者に最も懸念される合併症である心不全の発現頻度を低下させないことを示すことができた。
今回の結果を受け、今後はルーチンの酸素療法をやめることができ、医療従事者はより有効な処置と病院への迅速な搬送に集中することができる」としている。
6,000例以上を2年以上追跡して確認
DETO2X-AMI試験はスウェーデンの35の病院で実施された登録ベースのランダム化比較試験で、急性MIの疑いがあり、酸素飽和度が90%以上の患者6,629例を酸素群(3.311例)と空気群(3,318例)にランダムに割り付けた。
酸素群では6L/分の酸素補給が6〜12時間実施された。
組み入れから1年時点までに、全死亡と心不全入院の複合事象が発現した患者の割合は酸素群で8.0%、空気群で7.9%であった〔ハザード比(HR)0.99、95%CI 0.84〜1.18、P=0.92〕。
長期追跡調査期間(中央値2.1年、範囲1.0〜3.7年)でも、
複合事象の発現割合は酸素群11.2%、空気群10.8%と差がなく(HR 1.02、95%CI 0.88〜1.17、P=0.84)、
心血管死亡の発現割合も酸素群5.2%、空気群4.8%と差がなかった(同1.07、0.87〜1.33、P=0.52)。
これらの結果はサブグループ解析でも一致していた。
このことから、MIが疑われるものの低酸素状態でない患者に対する中用量の酸素補給は有害ではないが、効果もないと結論付けられた。
前回の1年時点のデータに基づく結果は死亡率が想定より低く、検出力に問題があった。
これは、低酸素血症患者を除外したことや同意取得が必須であったため、脆弱な患者の組み入れが難しかったことが主な原因として考えられるという。
今回、Hofmann氏は「重要な副次評価項目として複合事象を導入したことで、検出力の問題を克服でき、より確実な結果が得られた」と指摘した上で、「今回の研究結果が世界のMI治療ガイドラインに反映されることを期待している」と展望した。
※1 DETermination of the role of OXygen in suspected Acute Myocardial Infarction
※2 N Engl J Med(2017; 377: 1240-1249)
(ESC 2018取材班)
ルーチンの酸素療法が不要に!
2018年09月11日 06:00
心臓発作を起こした患者に対する酸素療法は100年以上前から行われているが、
血中酸素濃度が正常な患者での十分な効果は証明されていない。
スウェーデン・Karolinska InstitutetのRobin Hofmann氏らは以前、
低酸素状態でない心筋梗塞(MI)が疑われる患者を対象に、
酸素療法と空気吸入を比較するDETO2X-AMI※1試験を実施し、
酸素療法は1年時点の生存率を改善しないことを報告している※2。
今回、同氏らは同試験の長期結果を欧州心臓病学会(ESC 2018、8月25〜29日、ミュンヘン)で報告し、
「MIが疑われる患者への酸素療法に心不全予防効果はなく、
長期死亡リスクも改善されない」と述べた。
なお、詳細はCirculation(2018年8月26日オンライン版)に同時掲載された。
(関連記事:「急性心筋梗塞に酸素投与の効果なし」)
ルーチンの酸素療法が不要に
2000年以降、世界中の研究者が心臓発作(急性MI)患者に対する酸素療法は無効なだけでなく、
有害ですらあるのではないかと疑い始めていた。
DETO2X-AMI試験の意義について、Hofmann氏は「心臓発作患者の治療法に関する知識には、
これまで大きなギャップがあった。
今回の研究により、その中心部分を埋めることができた。
1年前、われわれは心臓発作後の酸素療法は1年時点の死亡リスクを低減させないことを確認した」と説明。
さらに「今回は、1年前に得られた知見をより長期的に裏付け、酸素療法は心臓発作患者に最も懸念される合併症である心不全の発現頻度を低下させないことを示すことができた。
今回の結果を受け、今後はルーチンの酸素療法をやめることができ、医療従事者はより有効な処置と病院への迅速な搬送に集中することができる」としている。
6,000例以上を2年以上追跡して確認
DETO2X-AMI試験はスウェーデンの35の病院で実施された登録ベースのランダム化比較試験で、急性MIの疑いがあり、酸素飽和度が90%以上の患者6,629例を酸素群(3.311例)と空気群(3,318例)にランダムに割り付けた。
酸素群では6L/分の酸素補給が6〜12時間実施された。
組み入れから1年時点までに、全死亡と心不全入院の複合事象が発現した患者の割合は酸素群で8.0%、空気群で7.9%であった〔ハザード比(HR)0.99、95%CI 0.84〜1.18、P=0.92〕。
長期追跡調査期間(中央値2.1年、範囲1.0〜3.7年)でも、
複合事象の発現割合は酸素群11.2%、空気群10.8%と差がなく(HR 1.02、95%CI 0.88〜1.17、P=0.84)、
心血管死亡の発現割合も酸素群5.2%、空気群4.8%と差がなかった(同1.07、0.87〜1.33、P=0.52)。
これらの結果はサブグループ解析でも一致していた。
このことから、MIが疑われるものの低酸素状態でない患者に対する中用量の酸素補給は有害ではないが、効果もないと結論付けられた。
前回の1年時点のデータに基づく結果は死亡率が想定より低く、検出力に問題があった。
これは、低酸素血症患者を除外したことや同意取得が必須であったため、脆弱な患者の組み入れが難しかったことが主な原因として考えられるという。
今回、Hofmann氏は「重要な副次評価項目として複合事象を導入したことで、検出力の問題を克服でき、より確実な結果が得られた」と指摘した上で、「今回の研究結果が世界のMI治療ガイドラインに反映されることを期待している」と展望した。
※1 DETermination of the role of OXygen in suspected Acute Myocardial Infarction
※2 N Engl J Med(2017; 377: 1240-1249)
(ESC 2018取材班)
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