2018年09月11日
レム睡眠行動異常症,幻視が特徴的な認知症 パーキンソン病の亜系,レビー小体型認知症
レム睡眠行動異常症,幻視が特徴的な認知症 パーキンソン病の亜系,レビー小体型認知症
レビー小体型認知症ガイドライン、大幅改訂の中身 2018年08月21日 06:10
大阪大学大学院行動神経学・神経精神医学寄附講座教授の森悦朗氏は、
2017年に大幅改訂されたレビー小体型認知症(DLB)の国際臨床ガイドライン(Neurology 2017; 89: 88-100)について診断と治療のポイントを第33回日本老年精神医学会(6月29日〜30日)で解説した。
診断基準では、中核症状がレム睡眠行動異常症(RBD)を新たに加え4つとなり、
指標的バイオマーカーが
MIBG心筋シンチグラフィ、
睡眠ポリグラフィを加え3つとなったことが大きな変更点。
「これまでの診断基準では感度、特異度ともに約80%だったが、新基準では特異度を落とさずに感度が向上するものと期待されている」と強調した。
レム睡眠行動異常症(RBD)があれば、probable DLBと診断
DLB国際臨床ガイドライン(GL)での診断基準は、中核的臨床特徴と指標的バイオマーカーを組み合わせて診断を行う。
森氏はまず、それぞれの中核的臨床特徴と指標的バイオマーカーについて詳述した。
今回、中核的臨床症状に新たに加わったのがRBDで、
レム睡眠下で大声で寝言を言ったり夢の中の行動を実際に行ってしまったりする症状。
RBDを患者から、あるいは患者家族から訴えられることはまずないので、
認知症を疑っているときは問診で尋ねることが必要である。
RBDの確定診断には、指標的バイオマーカーに新たに加わった睡眠ポリグラフィによる筋活動低下を伴わないレム睡眠の確認が必要となる。
ただ、ほとんどの医療機関では実施できるところは少ない。
中核的臨床症状としては病歴からRBDの存在を確認できればいいことになっている。
RBDSQ-Jなどの質問票も活用できるという。
類縁疾患との鑑別のポイントは
DLBを疑う認知機能障害の特徴としては、
アルツハイマー型認知症に比べ健忘が比較的軽く、
認知症検査のMini Mental State Eximination(MMSE)の総得点に比べ1項目である「7シリーズ」(100から順に7を引いていく検査)の得点が低いことなどがある。
MMSEの各要素の得点を使って導き出せるAla scoreでは、アルツハイマー型が「総得点に比べ注意・構成が良く記憶が悪い」領域に偏るのに対しDLBは「総得点に比べ注意・構成が悪く記憶が良い」領域に偏り、両者を判別するのに役立つ。
森氏は「これで6〜7割は鑑別できる。確定診断はできないが、疑うきっかけにはなる」と述べた。
DLBを疑う精神症状としては、幻視、実体意識性、誤認妄想などがある。
「認知症の場合、幻視の有無は本人・家族に必ず尋ねる」と同氏は強調。
「幻視」だと本人・家族が気付いていない場合もあるので、
「視力はどうですか? 変なものは見えますか?」などと注意深く問診すべきとしている。
「何者かが確実にいる」などという感覚体験の実体意識性は幻視とは区別される。
また、「自宅が自宅でない」などという誤った認知(誤認妄想)も幻視とは別だが、両者が伴うこともある。
パーキンソニズムは、DLBで頻繁に見られる症状。
軽症でパーキンソン病の診断基準を満たさないこともあるので、寡動、静止時振戦、筋強剛のいずれか1つを満たすだけでも中核的臨床特徴と見なせる。
パーキンソニズムが唯一の中核的臨床特徴であった場合は、指標的バイオマーカーのDATイメージングで異常があり、進行性核上性麻痺などのパーキンソニズムを呈する他の疾患と鑑別できればprobable DLBと診断できる。この鑑別にはMIBG心筋シンチグラフィが役立つとしている。
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬は慎重に十分量まで増量する
DLBに対する治療は薬物の中でもアセチルコリンエステラーゼ阻害薬が中心となる。
メタ解析では、ドネペジルがMMSEを有意に向上させた結果が報告されている(Am J Psychiatry 2015; 172: 731-742)。
一方、精神症状に対しては有意な効果は認められなかったが、森氏は「ある程度有効だという経験と合致している」とした。
ドネペジル5mgで非反応の症例に対し10mgに増量するとMMSE、精神症状ともに有意に改善することが報告されている(Alzheimers Res Ther 2015; 7: 5)。
また、ドネペジルの血中濃度とMMSEが有意に相関することも報告されている(J Neurol Sci 2016; 366: 184-190)。
これらのことから、同氏は「ドネペジルは十分量を使うことが必要。
しかし、副作用のリスクもあるので慎重に行うべき」と指摘した。
実際、ドネペジルの血中濃度は投与量だけでなく、高齢も有意に影響することも報告されている。
(牧野勇紀)
レビー小体型認知症ガイドライン、大幅改訂の中身 2018年08月21日 06:10
大阪大学大学院行動神経学・神経精神医学寄附講座教授の森悦朗氏は、
2017年に大幅改訂されたレビー小体型認知症(DLB)の国際臨床ガイドライン(Neurology 2017; 89: 88-100)について診断と治療のポイントを第33回日本老年精神医学会(6月29日〜30日)で解説した。
診断基準では、中核症状がレム睡眠行動異常症(RBD)を新たに加え4つとなり、
指標的バイオマーカーが
MIBG心筋シンチグラフィ、
睡眠ポリグラフィを加え3つとなったことが大きな変更点。
「これまでの診断基準では感度、特異度ともに約80%だったが、新基準では特異度を落とさずに感度が向上するものと期待されている」と強調した。
レム睡眠行動異常症(RBD)があれば、probable DLBと診断
DLB国際臨床ガイドライン(GL)での診断基準は、中核的臨床特徴と指標的バイオマーカーを組み合わせて診断を行う。
森氏はまず、それぞれの中核的臨床特徴と指標的バイオマーカーについて詳述した。
今回、中核的臨床症状に新たに加わったのがRBDで、
レム睡眠下で大声で寝言を言ったり夢の中の行動を実際に行ってしまったりする症状。
RBDを患者から、あるいは患者家族から訴えられることはまずないので、
認知症を疑っているときは問診で尋ねることが必要である。
RBDの確定診断には、指標的バイオマーカーに新たに加わった睡眠ポリグラフィによる筋活動低下を伴わないレム睡眠の確認が必要となる。
ただ、ほとんどの医療機関では実施できるところは少ない。
中核的臨床症状としては病歴からRBDの存在を確認できればいいことになっている。
RBDSQ-Jなどの質問票も活用できるという。
類縁疾患との鑑別のポイントは
DLBを疑う認知機能障害の特徴としては、
アルツハイマー型認知症に比べ健忘が比較的軽く、
認知症検査のMini Mental State Eximination(MMSE)の総得点に比べ1項目である「7シリーズ」(100から順に7を引いていく検査)の得点が低いことなどがある。
MMSEの各要素の得点を使って導き出せるAla scoreでは、アルツハイマー型が「総得点に比べ注意・構成が良く記憶が悪い」領域に偏るのに対しDLBは「総得点に比べ注意・構成が悪く記憶が良い」領域に偏り、両者を判別するのに役立つ。
森氏は「これで6〜7割は鑑別できる。確定診断はできないが、疑うきっかけにはなる」と述べた。
DLBを疑う精神症状としては、幻視、実体意識性、誤認妄想などがある。
「認知症の場合、幻視の有無は本人・家族に必ず尋ねる」と同氏は強調。
「幻視」だと本人・家族が気付いていない場合もあるので、
「視力はどうですか? 変なものは見えますか?」などと注意深く問診すべきとしている。
「何者かが確実にいる」などという感覚体験の実体意識性は幻視とは区別される。
また、「自宅が自宅でない」などという誤った認知(誤認妄想)も幻視とは別だが、両者が伴うこともある。
パーキンソニズムは、DLBで頻繁に見られる症状。
軽症でパーキンソン病の診断基準を満たさないこともあるので、寡動、静止時振戦、筋強剛のいずれか1つを満たすだけでも中核的臨床特徴と見なせる。
パーキンソニズムが唯一の中核的臨床特徴であった場合は、指標的バイオマーカーのDATイメージングで異常があり、進行性核上性麻痺などのパーキンソニズムを呈する他の疾患と鑑別できればprobable DLBと診断できる。この鑑別にはMIBG心筋シンチグラフィが役立つとしている。
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬は慎重に十分量まで増量する
DLBに対する治療は薬物の中でもアセチルコリンエステラーゼ阻害薬が中心となる。
メタ解析では、ドネペジルがMMSEを有意に向上させた結果が報告されている(Am J Psychiatry 2015; 172: 731-742)。
一方、精神症状に対しては有意な効果は認められなかったが、森氏は「ある程度有効だという経験と合致している」とした。
ドネペジル5mgで非反応の症例に対し10mgに増量するとMMSE、精神症状ともに有意に改善することが報告されている(Alzheimers Res Ther 2015; 7: 5)。
また、ドネペジルの血中濃度とMMSEが有意に相関することも報告されている(J Neurol Sci 2016; 366: 184-190)。
これらのことから、同氏は「ドネペジルは十分量を使うことが必要。
しかし、副作用のリスクもあるので慎重に行うべき」と指摘した。
実際、ドネペジルの血中濃度は投与量だけでなく、高齢も有意に影響することも報告されている。
(牧野勇紀)
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