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2018年01月13日

時代劇 必殺アワー 「必殺仕事人X 風雲竜虎編」第6話「替え玉お見合い騒動」







 1月9日、午前9時から、テレ玉(テレビ埼玉)にて 藤田まことさん主演「必殺仕事人X 風雲竜虎編」第6話が放送されました。サブタイトルは「替え玉お見合い騒動」です。
 立派な家柄を誇る武家の若殿が家来を使い、屋敷内で若い女を「手籠め」にしようとします。家来どもに女を押さえさせ、自分の思うままにしようというのですが、女はもちろん激しく抵抗し、若様(バカ様)の思い通りになりません。それに腹をたてた若(バカ)は女を殴りつけ、ついには死なせます。
 母親(二宮さよ子さん演じる)は「おんな一人口説けなくてどうする?」と息子を責めますが、結局は罪を問うことなく事件を隠蔽しようとします。
 バカ息子の顔には、女に抵抗されたときに出来た傷がある。こんなことでは嫁がこないと、母親は偶然知った影太郎(三浦友和さん演じる)に目をつけ、お見合いの席での「替え玉」にさせようと企みます。
 結局、影太郎は替え玉となります。そしてバカ息子を溺愛する母の姿になんとなく惹かれます。
 影太郎自身は母の愛を知らないらしいのです。
 バカ息子はさらに悪事を重ねます。吉原の遊郭で花魁を初回で枕をかわそうとして断られます。吉原の遊郭の世界では、花魁を金で買ってもいきなり抱こうとしてはいけない、二回目三回目と登楼しないと臥所を共にすることができないという決まりがあります。そのことを花魁に言われたバカ様は腹を立て花魁を殴りつけ暴行事件を起こします。
 バカ様と、そのバカの悪行を隠蔽しようとする母・家来たちは裏の稼業の「仕事」の標的となります。そこで影太郎はどうするのか? そして息子が仕事人に狙われたと知ったときに、息子を溺愛する母がとった行動とは?
 
 この回の興味深いところは、単なる「悪を懲らしめる」とか「世の為人の為にならぬ悪を成敗する」ということだけでなく、バカ息子を溺愛する母の愛を描いたところです。
 出来の悪い子ほど可愛い、という言葉がありますが、「出来が悪いから可愛い」のか、「可愛がりすぎるから出来が悪くなる」のか?
 昔も今も、子どもの教育はいかにあるべきか、ということが大きなテーマなのでしょうが、家柄を誇るような家庭ほど、母も息子を可愛がりすぎ、悪事にも目をつぶったり隠蔽しようとしたりするものでしょうか。
 この回の母も息子の悪行をみて厳しく注意しているように見えて、結局は許してしまい悪事を放置して、どんどんひどい状態にしてしまっているのです。
 家来もまた、若(バカ)様の悪行を諫めません。お家がつぶれると自分も路頭に迷うからです。自分が可愛いから悪事を放置したり協力したりして増長させ、とんでもない事件を起こさせ、結局、隠しとおそうとして悪事を重ねるのです。
 そんな息子や家臣をどうすることも出来ず息子可愛さに自分も悪に手を染める母の溺愛ぶり。愚かでもあり哀しくもあります。
 甘やかすことが愛ではないのだ、厳しくすべき時にはとことん厳しくすべきだ。この回に登場する母にそういっても通じないでしょう。バカ息子だから溺愛するのか、溺愛したからバカになったのか。溺愛の結果の悪行だとしても、それでも母親は息子をかわいがり、かばう。それが母の「業」なのか。
 そういう哀しい姿が描かれた回でした。







 

2018年01月12日

「暗闇仕留人」第27話(最終話)「別れにて候」






 1月12日。CS放送の時代劇専門チャンネルで午後5時から放送された「暗闇仕留人」の第27話は、最終話で、「別れにて候」というサブタイトルがついていました。
 (以下ネタバレ)中村主水の義理の弟ふたりのうち、石坂浩二さん演じる糸井貢(このシリーズではいちおう糸井貢が主人公らしい)は、裏の稼業でのやる気をすっかり失った。
 しかし、この最終話の仕留(殺し)のターゲットは松平玄蕃頭という大物。時代劇の悪役を演じることでは有名な 戸浦六宏さんが演じていますが、いつも演じている役柄通り、政治を動かす大物だが裏ではやりたい放題のことをやっていて多くの人の恨みを買っています。だから中村主水などは裏の稼業の者として討つ気まんまんですが、それでも貢は仕事をする気がないといいます。
 松平玄蕃の娘( 西崎みどりさん演じる)がとうてい悪人とは思えず玄蕃を殺すことは娘を不幸のどん底に突き落とすことという思いもありました。
 結局は貢が玄蕃殺しに向かうのですが、当の相手の、わしを殺せば日本の夜明けが遅れるぞ、という言葉を聞いてためらいが生じます。その隙をついて玄蕃が貢を斬ります。
 主水が玄蕃を仕留めますが、貢は命を落とします。
 貢をなんとか生き返らそうと、主水は大吉に、いつも相手を仕留める時にやっていることを応用しろと言います。大吉は標的の胸に手を突き入れ心臓を握りつぶして殺します。それを応用するということは、つまり、止まった心臓を人の手で動かして蘇生を図るというわけで、一種の(強引な)心臓マッサージといっていいものです。
 その大吉の働きで、貢は一時的に目を開け蘇生しますが、すぐにまた死者の世界へ向かって、帰らぬ人おなってしまいます。
 主水と大吉は、海の向こうへ行きたかったという貢の思いをかなえようといって貢の遺体を海に流します。つまり水葬です。
 そして、もう潮時だな、と、裏の稼業のチーム解散を告げます。大吉は江戸を去ります。
 のちの必殺シリーズでもよくあることですが、最終話で、仕事人チームの重要人物が死ぬか、幕閣か江戸城内の大物を殺してチームが解散せざるを得ない状況となることが多いです。「暗闇仕留人」ではこの二つが最終話であるのです。
 非情に徹することのできない者は裏の稼業をまっとうすることができない。しかし、人間である以上、殺すことに悩みや迷いが生じる。殺したことによる影響が大きいからです。たとえば殺しのターゲットにも身内がいて……。とか。そういう苦悩を石坂浩二さんが演じていました。





松本幸四郎主演ドラマ「父子鷹」







 1月9日から、CS放送の時代劇専門チャンネルにて、松本幸四郎さん主演の時代劇「父子鷹」の放送が開始されました。放送時間は夜8時からです。「父子鷹」と書いて「おやこだか」と読みます。
 松本幸四郎さんといっても最近改名された旧市川染五郎さんのほうではなく、改名前の幸四郎さん、現白鴎さんです。制作時期が改名よりはるか前なので、旧名で書いた方が複雑でなくてむしろ分かりやすいかもしれません。
 子母澤寛さんの原作で、勝海舟とその父・勝小吉を描いた作品です。勝海舟が幕臣として出世するよりはるか前の時代を描いたものなので、勝海舟と呼ぶより勝麟太郎と書いた方がいいかもしれません。
 勝小吉を演じているのが松本幸四郎さん(旧名)で、勝麟太郎を演じているのが息子の市川染五郎さん(旧名)です。ドラマの上でも実際でも父子です。歌舞伎の舞台ではよくあることですが、映像作品では父子共演というのは、よくあることでもないので、そのあたり興味深くみました。
 時代劇専門チャンネルで「父子鷹」が放送される前、同じ夜8時から放送されていたのが藤田まことさん主演の「はぐれ医者」で、このドラマの中でも勝小吉が登場していたので(演じていたのは田村亮さん)、人物像を比較してみるのも面白いです。





 

2018年01月11日

滝沢秀明主演・大河ドラマ「義経」(平成17年放送)第39回「涙の腰越状」






 1月11日午後2時より、CS放送のチャンネル銀河で、大河ドラマ「義経」第39回「涙の腰越状」が放送されました。ジャニーズ事務所の滝沢秀明さん主演で平成17年にNHKで放送された作品です。
 まだ幼い時に実の兄(同母兄)たちと別れ、父のかたきである平清盛をほんとうの父と思って育った牛若丸は、やがて自分の出生の秘密を知ってしまった。源氏の残党から諸国の情勢を伝えられる中で、伊豆に腹違いの兄・頼朝がいることを知ります。そしてまだ見ぬ兄への思いを募らせました。
 そういう背景があっての「涙の腰越状」という話です。
 元服して義経と名乗り、奥州平泉の藤原氏のもとで成長した牛若丸は頼朝の挙兵を知って兄のもとへ駆けつけました。その初対面のときこそ涙の対面でしたが、以来、彼が求めていた「兄弟の情愛」を感じられないまま源氏の部将として働き、ついに平氏を倒しました。
 兄に自分の働きを認めてもらえると思っていたところ、後白河法皇から官位を受けたことで兄の怒りをかってしまった。
 なぜ頼朝が怒ったかと言うと、頼朝が目指していたものは朝廷に影響されず平氏のように法皇にゆさぶられることもない東国の武家政権であり、その武家政権は全国の武士をまとめ頼朝が武家の頂点にたつことだった。そのため、頼朝の手足となって働くべきはずの義経が兄に無断で官位をうけるということは、頼朝の目指す武家政権の秩序を大きく乱すものだということになる。義経に悪気はなくても、鎌倉側からみたら勝手きわまるものにみえるのだ。だから、しめしがつかないために頼朝は義経に対して怒りをあらわにし、鎌倉に入ることを許さなかった。
 
 足止めをくらった腰越の地で沙汰を待つ義経主従。
 一方、鎌倉では、中井貴一さん演じる頼朝が平家の総大将だった宗盛(鶴見辰吾さん演じる)と対面します。宗盛は平家の総大将としての誇りを捨て、頼朝に命乞いをします。
 そのとき、頼朝の妻の政子(財前直見さん演じる)は、娘の大姫の心の病をいやせるのは義経だとして、ひそかに義経に使いの者を送り、極秘に鎌倉に入って大姫に会うようにと伝えさせる。しかし、兄に無断で行動するわけにはいかないと義経は断ります。
 そんな義経に怒る政子。
 政子の言うことをきく、きかぬ。どちらにしても立場の悪くなる義経。
 松平健さん演じる武蔵坊弁慶は、義経に忠告します。頼朝様に肉親の情などないのです、と。そして、情を捨てて現実を見なされ、と義経言います。
 しかし、なおも兄の「情」を信じる義経には耳の痛い言葉であり腹の立つ言葉でした。自分の思いを伝えれば兄上は分かってくれるだろう、と。
 腰越の寺で謹慎している義経は頼朝の近臣・大江広元に書状を送ります。これが世にいう「腰越状」です。
 しかしその書状は情緒的な思いを綿々と綴っただけで、鎌倉の武家政権樹立という頼朝の意に反して官位を受けたということについての謝罪はまったくありませんでした。
 結局、鎌倉入りを許されなかった義経主従。
 義経や弁慶の苦悩や、そこから起こる悲劇が描かれた回でした。


 

2018年01月10日

NHK大河ドラマ「天地人」総集編 第一回







 正月七日の夜、九時から、CS放送の時代劇専門チャンネルでNHK大河ドラマ「天地人」総集編の第一回が放送されました。
 いうまでもなく平成二十一年に妻夫木聡さん主演で放送されたものの総集編で、上杉景勝重臣の直江兼続の生涯を描いたものです。
 放送当時から、直江兼続の少年時代・樋口与六を演じだ加藤清史郎くんの好演が話題となりました。その年のうちのクルマのCMで「こども店長」と呼ばれて有名になった加藤清史郎くんですが、大河ドラマ放送の当初から演技が評判になったものです。
 ちなみに加藤清史郎くんはこの「天地人」が大河ドラマ二度目の出演で、一回目は「風林火山」での武田太郎(武田晴信嫡男)役でした。
 大人の役者で一番光っていたのは、私個人の思いとしては、上杉謙信役の阿部寛さんでした。威風堂々としていて、上杉謙信のイメージに合っていたと思います。

 一方で、このドラマでは、主役とはいえ上杉家の一家臣(しかも若年)が単独で織田信長と対面する(しかも安土城の上層階で)とか、長澤まさみさん演じる真田昌幸の娘・はつねが織田信長のそば近くにいる、とか、歴史的にとうていありえないシーンが目立っていて残念なところがありました。




2018年01月09日

「鬼平犯科帳 THE FINAL 前編 五年目の客」








 正月7日の日曜日の夜、CS放送の時代劇専門チャンネルで「鬼平犯科帳 THE FINAL 前編」が放送されました。
 若村麻由美さん演じる旅籠屋の女房・「お吉」は、以前、遊郭で働く女郎だったが、ある客の持っていた大金を持ち逃げして女郎の身分でなくなり、過去を弟以外の誰にも分らぬように隠して旅籠屋の女房におさまっていたのだ。
 ところがある日、お吉が持ち逃げした商人(谷原章介さん演じる)がお吉の旅籠屋の客となる。男の顔をみて愕然となるお吉。
 男はお吉のことに気付いているのか、いないのか、お吉と二人っきりになると彼女を抱き寄せ肉体関係を迫る。男は自分に気づいているんだ、と恐れおののいたお吉は、昔のことをばらされたくないあまりに、男のいいなりになり、外での逢引きを重ねる。
 その男こそ、江戸に狙いをつけた凶悪な盗賊の一味だった。
 お吉は悩んだ挙句、ある決断をする。

 主人に明かせない自分の過去に苦悩する女を若村麻由美さんが好演しています。
 そしてお吉の苦悩を知った鬼平の「超法規的な人情裁き?」が心を打ちます。



 
 

NHK大河ドラマ「西郷どん」の配役について








 インターネットの記事などを見ていますと、今年のNHK大河ドラマの主役・鈴木亮平さんについて、「西郷隆盛のイメージではない」とか「ミスキャストだ」というような意見があるようですが、そういうことは一年を通してみないと分からないと思います。
 ドラマの冒頭で、明治になって西郷吉之助が死んでから、西郷像の除幕式があり、西郷の妻が西郷像の顔をみて「違う」と言ったシーンがあります。このエピソードは歴史的事実のようで、ほんとうに西郷自身の顔と違っていたようです。
 にもかかわらず、西郷像の顔が広く世間に知られているため、西郷像のような顔の役者さんが西郷を演じなくてはならない、という固定観念みたいなものが人々の心に植え付けられてしまったようです。だから西郷像と違う顔の人が演じたら「西郷のイメージではない」と?
 しかし西郷像の顔と本物の西郷の顔とが違う、と西郷の妻自身が言っている以上、西郷像とはかけ離れた姿の役者さんが演じても構わない、ということになるのではないでしょうか。
 問題は主役の鈴木亮平さんが一年通じて西郷吉之助という人物の生き方と、多くの人をひきつけた薩摩のカリスマ的人物としての魅力をどう演じるか、にかかっています。だから我々視聴者はずっと見守らなくてはならないのだと思います。
 それと、第一回放送はほとんどが子役たちのシーンだったので、西郷役がほさわしいか、大久保役がふさわしいか、なんて判断などまったくできません。
 ちなみに、昭和43年の大河ドラマ「竜馬がゆく」では、西郷吉之助役は小林桂樹さん、昭和49年の「勝海舟」では中村富十郎さん、昭和55年の「獅子の時代」でも中村富十郎さん、平成2年の「翔ぶが如く」では西田敏行さん、平成20年の「篤姫」では小澤征悦さんが演じました。
 「翔ぶが如く」で西郷吉之助役を演じた西田敏行さんが、今回ではナレーションを担当しているので「おもしろいなあ」と感じました。
 また、「翔ぶが如く」で大久保利通役を演じた鹿賀丈史さんが今回は島津斉彬の父の島津斉興を演じています。「翔ぶが如く」のオマージュだということが伝わってきます。
 大河ドラマで或る時代の人物を演じた役者さんが、また別の大河作品で以前のと同じ時代の作品を演じるにあたって、以前とは違う人物、とくに関係の深い人物を演じたりするのは、作品のストーリーそのものとは関係ないにしても、面白いものです。「翔ぶが如く」で島津斉彬の弟の久光を演じた高橋英樹さんが「篤姫」では島津斉彬を演じていました。
 ただ、その思いとは矛盾するようですが、今回大久保利通を演じる瑛太さんには、個人的な思いとしては小松帯刀を演じてほしかったです。
 唐沢寿明さんが「利家とまつ」だけでなく「功名が辻」でも前田利家を演じたり、古くは緒形拳さんが「太閤記」だけでなく
「黄金の日々」でも豊臣秀吉を演じ、高橋幸治さんが「太閤記」だけでなく「黄金の日々」でも織田信長を演じたように。





2018年01月08日

NHK大河ドラマ「西郷どん」第一回「薩摩のやっせんぼ」







 平成三十年のNHK大河ドラマが始まりました。
 「維新三傑」といわれる明治維新の立役者の代表格三人のうちの一人、西郷吉之助が主人公です。
 サブタイトルの「薩摩のやっせんぼ」の「やっせんぼ」の意味は、ドラマの中で登場人物の島津斉彬が語っています。
 斉彬が、若き日の、しかも少年の日の西郷吉之助(子ども時代は小吉といったそうで)に対して言った言葉が「やっせんぼ」で、「弱いものをみて助けないのは弱いもの以下だ」ということだそうです。その言葉にショックを受ける。そして、武士としてどうあるべきか考え、生き方を決めた、となっています。つまり「やっせんぼ」になるな、弱い者をたすける大きな人物になろう、と。
 西郷の人生をきめた決定的な言葉だということです。
 もちろんドラマですから、本当に西郷吉之助と島津斉彬がその時そういうふうに(ドラマで描かれたように)であったかは分かりません。フィクションでしょう。しかし、フィクションとしても、少年の日の西郷が斉彬と出会ってその時に言われた言葉が人生を決定づけたとするなら、面白い設定であり面白いストーリーの出発点です。
 
 この出会いの後、後の西郷吉之助(小吉)は或る少年から恨みを買ってケンカのすえ肩を斬られます。その傷がもとで、刀が振れない体になります。
 「刀は武士の魂」と言われます。その刀が振れなくなったということは、武士らしいことができなくなったといってもいいくらいで、例えていうなら、サッカー選手がボールを蹴れなくなったようなものです。
 もちろん、刀を実際に振れなくても刀以外の働きで武士としての務めを果たすとこはできるでしょう。しかし、武家の家に生まれた少年は、そうは考えません。
 そんな少年の絶望感を子役の子がよく演じていました。




2018年01月07日

北大路欣也主演「剣客商売」の「御老中暗殺」をみた。

 





 正月六日の夜、CS放送の時代劇専門チャンネルで、北大路欣也さん主演の「剣客商売」の「御老中暗殺」が放送されました。
 かつてフジテレビで放送されたものです。同じく、かつてフジテレビで放送されたものは藤田まことさんが秋山小兵衛を演じ毎週放送される連続ドラマでしたが、北大路欣也さん主演のものは連続ドラマではありません。スペシャル版となった事情は、毎週つづく連続ものの時代劇がつくりにくい世の中になったということでしょうか。
 「御老中暗殺」というサブタイトルがついていますが、池波正太郎さん原作の第一話と「老中暗殺」を合わせた話となっています。
 私は原作も読んでいますし、「山形勲(秋山小兵衛役)・加藤剛(秋山大治郎役)版」も「中村又五郎(秋山小兵衛役)・加藤剛版」も「藤田まこと(秋山小兵衛役・渡部篤郎(秋山大治郎役)版」も「藤田まこと・山口馬木也(秋山大治郎)版」もみていますので、ストーリーも人物関係・人物設定もじゅうぶん承知しています。
 それでも新しい配役で楽しめるのは、原作の面白さと、役者さんたちの演じぶりを楽しめるからです。それと、かつて何度もドラマ化された作品を脚本家がどう描き分けて人物設定やセリフを少し変えてゆくか、どうスパイスをきかせるか、ということに注目するからです。
 この北大路欣也さん主演の「剣客商売」では、大治郎を斎藤工さんが演じています。おはる役が貫地谷しほりさん、佐々木三冬役は杏さんで、田沼意次役は國村隼さんです。それぞれが、以前の作品の演者たちとは違った味わいを出しています。

 北大路欣也さんの優れたところは、「子連れ狼」といい、「剣客商売」といい、「三屋清左衛門残日録」といい、すでに視聴者の記憶に残る作品があってその主役の俳優が強烈に演じているからやりにくいであろうに、しっかり演じて自分の特色を出して演じられることです。
 このようなしっかりした役者さんがいないと、時代劇は消えてしまうでしょう。
 そういうふうに考えると北大路さんは時代劇にとって貴重な存在といえるでしょう。





 

藤沢周平新ドラマシリーズ「小ぬか雨」







 正月三日にはCS放送の時代劇専門チャンネルで「藤沢周平新ドラマシリーズ」の「小ぬか雨」という作品が放送されました。
 永山絢斗さん、北乃きいさんW主演です。
 舞台は江戸。貧しい町民たちが暮らす一角で、ささやかな履物屋を営む若い女「おすみ」(北乃きいさん演じる)は、或る晩、自分の家に不審な若い男(永山絢斗さん演じる)が入り込んでいるのを知り、愕然とする。
 男は「かくまってくれ」という。男がいうには、町でケンカして追われているのだという。男のただならぬ様子に、本音ははやく出て行ってほしいのだ、といいながらも、しばらくかくまう「おすみ」。
 男の名は「新七」といった。
 おすみは、ただのケンカ沙汰えはないと感じながらも、男をかくまい続ける。男は事件を起こしたといっても、粗野な様子ではない。おすみに危害を加える様子なども全くない。
 おすみには婚約者がいた。ある日、その婚約者が訪ねてくる。欲望のままに、おすみを抱こうとする男。おすみは拒絶する。男は乱暴そのもので、無理にでも抱こうとする。そして「お前、なんかおかしいぞ?」と、おすみの様子が変だという。結局、男は去っていくが、それからか、だんだんと新七におすみはひかれていくようになる。
 また或る日、目明しがおすみの家を訪ねてきて、新七のことを尋ねる。そのとき分かったのは、新七が「ケンカ」を起こしたのではなく女を殺したお尋ね者だということ。おすみはそれでも、「しらない」と言い張るのだった。
 そして新七の口から語られた女殺しの真相とは?
 
 過去にもドラマ化されている話で、登場人物も少なく単純な話ではありますが、少しずつひかれあう男女のせつない思いが伝わってくる作品です。




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