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2018年10月28日
幽霊に取り憑かれた二週間【怖い話】
ひどい目に遭った
発端は先々週の3.11のときに被災地へ行ったこと
2011年の頃にはもう離れてたが、
被災地のある所に住んでたことがある
それで二年経つってことで旧知をお見舞いに行ったんだ
2012年にも被災地に行ったんで、
今回はどっちかって言うと
お見舞いというより観光になってた
知り合いにお見舞いして近況を報告して、市場行って、
被災の跡を見て回った
今思えばはしゃぎすぎたかもしれないな
比較的人がいる被災地は結構復興が進んでたが、
山田町やら釜石鵜住居地区はほぼ壊滅状態のまま
手付かずだった
被災地から帰ってきて、
次の日俺は一人暮らししてるアパートに帰った
そこで最初の事態が起こった
3月12日、
寝てたらパッと目が覚めた。
時計見たら朝方5時頃。
まだ真っ暗だった
んでもうひと寝入りするかって
スマホの画面の電源を落とした
瞬間、
金縛りに合った 金縛りに遭った瞬間、
「あ、こりゃダメなヤツだ」
と思った。
寝入り端に金縛りなんてよくあることだったが、
この時は金縛りに遭った瞬間に
何とも言えない嫌な予感がした
俺のベッドはワンルームの壁際にあるんだが、
俺は部屋の中心に背中を向ける感じで金縛りに遭ってた
すると男のしゃがれ声で
「南無阿弥陀仏!
南無阿弥陀仏!
南無阿弥陀仏!」
と物凄い切羽詰まった声で唱え声が聞こえてきた
それと同時に、
ベニヤ板を剥がすかへし折るかのような
「ミシ……バキャ……」
という音が聞こえてくる
それがどんどん近づいてきた
その瞬間、
金縛り中なのにぞわーっと全身に悪寒が走った。
金縛り中でも鳥肌って立つんだなとか思ったが
とにかく後ろから近づいてくるものを見たら
とんでもないことになるという予感があった
たぶん金縛りに遭ってたのは一分もなかったが、
とにかく般若心経を唱えまくった
こういう時のために丸暗記してたんだけど
まさか実際に唱えることになるとは思わんかった
そのベニヤ板をへし折るような音がすぐ背中に来て
「もうダメだー」
と思った瞬間、
人差し指が動いた これで金縛りが解ける!
と手と言わず足と言わず必死に動かしたら、
金縛りが解けて男の念仏とベニヤ板を折るような音が
バッと消えた
慌てて振り返ったが、もう部屋には何にもいなかった。
助かったという安堵感が凄くて気絶しそうになった
時計見たら朝5時過ぎぐらいで、
暗いとはいえ朝5時なのに幽霊って出るもんかいな……
と感心した
安心したらトイレ行きたくなって、
ベッドから降りてトイレに行った
トイレの前に洗面所あるんだが、
要足してベッドに戻ろうとした途端、
ふと鏡が目に入った
その瞬間背中がぞくっと反り返った。
「今後ろに何か立った……」
と直感した
これでもオカルト好きなんで、
この幽霊は見て欲しい幽霊なのだと思った
でも見たら洒落にならんことになるのがわかってたんで、
カニ歩きみたいに鏡を見ないようにベッドに慌てて戻った
ベッドに戻って頭から布団をかぶった。
もう五時だし、
もう二度寝どころじゃなかったんで、
とにかく寝ないようにスマホ見て時間潰そうと思った
で、枕元のスマホ取り上げた途端、
スマホの暗い画面に映った
腐ってふやけてぶよぶよの黄土色になった
白髪の婆さんの顔だった
「え!?」
と思った途端画面が点いて婆さんのかおが消えた
念のためもう一度画面消して確かめたが、
自分の顔しか映ってなかった
正直気絶しそうになった
もう五時半で外は白み始めてたが正直気が狂いそうだった
実家のオカンはいつも五時半ぐらいに起きてくるので、
情けない話だが怖くなってオカンに電話した
遅れたけどスペック
俺:24歳。社畜。
岩手出身で今県外。
霊感なし恐怖体験もなし
俺の住んでた所:岩手県宮古市。
被災しまくった
電話したらしばらくのコールの後、オカンが出た。
オカンまだ寝てた 俺半泣き。
「今アパートに出た……」
と言ったらオカンが
「え!?」
と絶句してた
で俺が今あったことを話したら、オカンの第一声が
「連れてきたか……」
だった
それ聞いて、やっと俺も
「こりゃ連れてきたかも」
と思い当たった
そしてオカンが
「連れてきたか……」
と言った瞬間だった
怖くて点けてた電気スタンドが
「バチン!」
という音とともに消えた
心臓が口から飛び出るかと思った
「今電気消えた!」
と電話実況した途端、電気スタンドが
「バチッ! バチバチバチバチッ!」
と物凄い勢いで点滅した
正気保つのに必死でオカンに助けを求めたら
「念仏! 念仏!」
と言われた。
唱えたけど意味なかった
で最後
「バッチーン!」
という電気スタンドとは思えない音立てて
電気スタンドの電気が消えた
それがその日最後の霊現象だった
取り敢えず現象は収まったんで、
オカンとオトンに三十分ぐらい会話に付き合ってもらった
二人で一致したのは
「アパートに 憑いてたものではない」
ということだった。
下見にも来たけど嫌な空気はなかった
そこでますます
「被災地から連れてきた説」
が有力になったそこでオトンが電話を変わった。
「ナンマンダスと三度唱えれば大丈夫だ」
と民間療法的除霊方法を享受された
こちとら般若心経フルで唱えたが効果なかったぞと
若干逆上したが取り敢えず聞いておいた
その後七時頃、
姉が興味津々な声で電話かけてきたけど
正直思い出したくもなかったんで適当に言って切った
そのまま会社行ったが、
目覚めの悪さが祟ってふらふらしていた
様子がおかしかったらしく、上司に
「なんかあったのか?」
と心配されたんで、思わずあったこと全部話した
課長は大笑いして聞いてた。
正直張っ倒したかったが、
結局会社の人々で真剣に信じてくれたのは
課長だけだったと思う
課長の奥さんは元看護師らしいが
所謂「見える人」らしく、
それで信じてくれたのだと思う
課長は盛り塩を進めてきた。
盛り塩なら簡単に出来るんで
帰ったら実践してみようと思った
その後もいろんな人に話しまくったが、
ある女性社員は
「被災地にはウヨウヨいるらしいからねぇ」
と気の毒そうな顔をしてくれた
正直会社からアパートに帰るの強烈に嫌だったが
帰るしかなかった
帰ってアパートの部屋開けたら、なんか空気が違った。
じっとり重くなってて自分の部屋じゃないみたいだった
こりゃまだいるなぁ……
とか思いながら、
とにかくやることをやろうと思った
帰って速攻で肩口に塩を巻き、
皿に盛り塩して玄関に置いたら、
多少空気が軽くなった
その日は般若心経を唱え、
枕元にいつだったか中二病こじらせて買った
剣鉈を抜き身で置いて寝た
魔物は金気嫌うともろもろの書籍なんかに
書いてあったので、
幽霊来たら突き刺してやろうと思ってた
その日は寝入ろうとすると
「また金縛りにあうんじゃないか」
と思って目が覚めて参ったが、なんとか寝付けた
しかし次の日の3月14日だった。
また夜中に目が覚めた
時計見たら丁度午前三時だった。
「あ、これは……」
と思った瞬間
ブォーン!
という音と共にパソコンの電源がひとりでについた
もうなんか怖いとかそういうのより、
睡眠を邪魔されてるのに非常に腹が立った
パソコンの電源を落とし、
トイレに行ってまた布団に潜り込んだけど、
だんだん幽霊に腹が立ってきた
深夜の三時なのに部屋中にいい加減にしろこの野郎などと
怒鳴り散らして虚空に剣鉈振り回したが、
これじゃ立派なキ○ガイだと冷静になって寝た
そのままフラフラになって会社に行ってしばらくしたら、
上司に呼び止められた
なんだろうと思ったら
「お前今日おかしいぞ? また出たのか?」
ってドンピシャなことを言われた
「出ました……」
って言ったら上司苦笑いしてた。
俺よく覚えてないんだけど、上司の話によると
俺は朝の会議中に配られた資料を
まとめて返そうとしたり
呼びかけても反応がなかったりと
明らかに虚ろだったらしい
正直霊障という程のことはないが
睡眠を邪魔されるので睡眠不足なんですと誤魔化したら
上司は逆に難しそうな顔になった。
そして
「もしお前が営業車で事故っても始末書に
『原因:幽霊』
って書けねーぞ」
と真剣な目で言われた
要するに
「何とかしろ」
と言われたわけだ。
正直あまり大事にしたくなかったが、
この時初めてお祓いしてもらうことを考えた
そんで、矢も盾もたまらずオトンに電話かけて
「実はコレコレこういうことがあって……」
と委細を話した
パパンは
「はぁ……」
となんとも言えないリアクションをした
俺は最初近所に神社があるんで、
そこの神主にお祓いしてもらう程度の事を想定していた
しばらくしてオトンから電話があった。
「明日除霊予約したから、お前今日の12時から
肉やら酒やら口にするな」
と言われた
予約したところを聞いたら、
地元では有名な真言宗の寺だった
費用を聞いたらそれなりにかかると言われたんで
俺は正直
「金かかるなら 盛り塩して俺で祓うわ!」
と反論したが
「オメーそんな場合じゃね―だろうが」
とオトンに怒られて目が覚めた
お祓い当日、
姉が付き添いしてくれることになった。
話によると結構強力なお祓いをする予定なので
もしかしたら帰り車の運転が出来なくなるかもしれない
ということで、
正直ガクブルしていた
寺に着いたら、今まで何度も見てたけど、
実際に中には入ったことがなかったんで
若干ワクワクしてきた
最初に僧衣を着たおばさんが出てきて、
「さあさあこちらへ」
と丁寧に通してくれた
事のあらましをそのおばさんに話すと、
おばさんはなんか長さ四十センチぐらいの
木の棒をジャラジャラ取り出し、
何か占いのようなことを始めた
紙に書かれた俺の名前を見ながら
しばらくジャラジャラとやって、
机の上に置いた積み木みたいなものを
カタカタと弄ってた
占いが終わったら、そのおばさんがポツリと一言、
「祓えんのかな……」と
「フハハハハハ 貴様程度の霊力で
我が祓えると思ったか!」
みたいな中二病的台詞が頭の中にこだまして
若干ワクッとするのと同時にガクブルした
正直「祓えんのかな……」
という台詞が現実に登場する台詞なのかよと思った
俺は気休め程度に経のひとつでも上げてもらえば
それで安心して熟睡できると思ってたのに
とんでもない事態になったなと内心怖かった
しばらくして住職がやってきた。
三十代ぐらいの、見るからに誠実そうな坊さんだった
地元では占いやらお祓いやらで有名なのは
この住職の人柄によるんかなと思った
ちなみに書いてなかったが、
俺が行った寺院の本尊は不動明王だ
それから住職は俺に取り憑いたものに関して
丁寧に説明してくれた。
言われたことが多かったんで箇条書きにする
・アンタに憑いたのはまず間違いなく被災して
亡くなられた人々であろうこと
・「南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏!」
という念仏を唱える声と
ベニヤ板を折るような音は、
最期の瞬間の記憶であろうこと
・被災者の霊はあまりにも通常ありえない死に方なので、
除霊というより慰霊になるということ
・3.11後、アンタみたいに被災地から連れてくる人が
絶賛増加中であること
・特に被災地の幽霊は交通事故を引き起こす
傾向があること
(これは聞かれた話から俺が考えたこと)
住職の
「俺が聞いた一切は被災者の最期の瞬間であろう」
という言葉には俺もやっぱりなと思った
おそらく、
襲い来る津波に家が流されてく中で、
取り憑いた幽霊氏は念仏を唱えながら
死んでいったのだろう
そう考えると寝不足程度でイライラしてた自分が
なんつーか申し訳なく思えてきた
だが除霊してもらわんと仕事にならんわけで。
ちなみにおばさんの
「祓えんのかな……」
という一言は
慰霊→除霊になる、
つまり慰霊なしの除霊だけでは祓えない、
という意味らしかった
ちなみに話が脱線するが、住職から聞いた他の人の話ね
その人は被災地に務める学校の先生らしいんだが、
赴任してからというもの、
なんでか車関係のトラブルが絶えない
ありえない交通事故をしたり事故をもらったり、
ありえない故障の仕方をしたり。
で、特徴的なのが、
そのたびにお守りが壊れたらしい
「これ詰んだわ」
と思うような大事故をしたときも、
何故か無傷ですんだが、
やっぱり車の中のお守りはボロボロに壊れていた
それで怖くなってお祓いに来た人がいたそうだ
そんでいよいよお祓いが始まった。
数珠を持たされ、袈裟を着せられて、
付き添いの姉ともどもお祓いされることになった
ここからが大変だった
お祓いが始まり、最初祝詞のような感じで
俺の周りに起きたことが本尊の不動明王に報告された
それで読経が始まったんだが、
木魚でなく太鼓がドンドンドンドンと鳴らされて、
ここで緊張がMAXになった
大学で宗教関連の話を勉強してたのもあって、
正直真言密教に関しては興味津々だったんだが、
太鼓の音とともに読経が始まった瞬間
そんな下心は吹っ飛んだ
しばらく
東日本大震災の犠牲者の慰霊のための
読経があって、
次にいよいよ除霊が始まった
その瞬間、
こちらに背を向けて読経してる坊さんの目の前から
ボワっと火の手が上がったのを見て俺は仰天した
護摩行とは聞いてたがマジでこんな屋内で火焚くと
思ってなかったんでアレには本当に仰天した
住職はどんどん護摩木をくべて、
ホントごうごうという感じで火柱が上がった
俺はもう内心
「(こんなマジな感じでやんの!?)」
って怖いやら驚くやらで呆気にとられていた
すると住職が
「では俺さん、こちらに来てください」
と俺を火柱の側に座らせた
俺がそこに座ると、
住職は金色に光る金剛杵を手にしておられた。
金剛杵なんて資料でしか見たことない
中二アイテムだったんで
「(おおお…… やっぱ本物カッコイイな……)」
と思ってたら、
「ではこれを胸の前で持ってください」
とその金剛杵を押し付けられた
慌てて金剛杵を受け取って親指で挟んだら、
金の匙で頭に水を掛けられた
もう住職フルパワーで読経してたな
ホントにどこの漫画や映画かみたいな感じで、
燃え盛る火柱の前で全身で印を切りまくり、
手にした経文をバサバサと広げたりたたんだり、
鬼気迫る表情で読経してた
この辺りの凄まじさはもう俺の貧弱な文章力では
表現しきれないのが惜しい
経文で頭と言わず肩と言わずバシバシバシバシ叩かれ、
除霊はその後一時間ほどで終わった
終わったら住職汗だくだった。
俺と姉もメロメロになってた
住職は汗だくの顔で
「できる限りのことはしました」
と爽やかに、しかし確実な声で言った
正直そのできる限りのことが
本気すぎると姉も俺も思った
住職はその後
落ち着きを取り戻したようで、
俺に取り憑いていた幽霊氏の話を始めた
どうやら二人憑いてたそうで、
一人は髪の長い、耳だけ出した女の人。
もう一人は頬が痩け、
帽子を被って杖をついた爺さんだったそうだ
心当たりはあるかと聞かれたが、
そのような人物にはどちらにも心当たりはなかった
ちなみにこの幽霊氏の素性は、
最初におばさんがジャラジャラやってた占いで、
「見えた」
というより
「占ったらそう出た」
ということだった
住職は
「まぁ被災者の幽霊は今後もこちらで慰霊しますので、
写真取らせてください」
と写真を撮ってくれた
その後住職は
「何かあったらいけないから」と、
数珠、不動明王真言、御守り、交通安全御守り、
拭き取り、御札、祈祷された水と菓子、
そして枕元に置いて寝る御守りまでくれた
正直はした金程度のゼニを惜しんだ自分が
強烈に申し訳なくなるぐらいのアフターサービスに
この寺がなんで地元で有名なのかわかった気がした
しかし帰り際に住職が一言、
「不動明王の護摩行って
洒落にならんぐらい強烈なので、
後で反動が来るかもしれないです。
個人差はありますけれど、
何かありましたらまたご連絡ください」
と言った
俺はこの一言をそれほど気にしてなかった。
俺と姉は丁寧にお礼を言って家に帰った
あんな下ヨシ子氏がやるような除霊だとは
想像だにしてなかったので疲れた
帰り際、姉と
「正直本気すぎた」とか
「あの価格であのサービスは破格の安さだ」
と好き勝手言いまくった
でもまぁ除霊できたので心は軽かった。
本当に
「憑き物が落ちたように」
意気揚々とアパートに帰った
アパートを掃除して、
住職に言われたとおりに御札を南向きの窓に向けて、
水を一杯お供えした
その日はかなり安心したので、
俺はアパートで焼酎を煽りまくった
寝不足が続いていたので酒が美味かった。
もう記憶飛ぶぐらいに煽ってその日は寝た
そしたら次の日、背中の痛さで目が覚めた
最初は「寝違えたかな」と思って気にしてなかったが、
会社に行くにつれてどんどん背中の痛みは増した
胃も痛くなり、
そのうちほぼ仕事にならんぐらいの激痛になった
先輩社員には
「お前それ急性膵炎じゃないか?」
と指摘されて怖くなって、
時間を貰って顔見知りの開業医に駆け込んだ
医者様のところに行くと首をひねられた。
医療系の仕事なんで
その先生とは顔見知りだったんだが、
採血されても触診されても結果が出ない。
なにかが体の何処かで起きていることは
明らかだったんだが、
膵炎にありがちな吐き気や下痢、
押したら痛いとか、
そういう確実な証拠が出なかった
結局胃腸炎の薬をもらってその日は早退した。
で、次の日も会社で具合が悪くなり早退させてもらった
早退してアパートの部屋で考えた。
これが護摩行の反動かなとよく考えたが
いくらなんでも祟りレベルの激痛だと思った
仏教には少し知識があったんで考えた結果、
どう考えてもたらふく酒飲んだこと以外の
原因が思い当たらなかった
そういえば不動明王は仏教五戒を守る仏なんだよなぁと
思った時、
不飲酒戒という単語がぼんやり頭の中に出てきたとき、
あぁこれかもしれんと本気でそう思った
いくらなんでもお不動様を部屋にお迎えしたその日に
飲んで飲んで飲み散らかしたのはまずかった
せめて一週間ぐらいは精進しろよと怒られたんだ
という結論に俺の中で達した
オカルト大好きな上に仏教に多少明るかったこと、
この一週間の霊現象でそちらの世界のことについて
謙虚になっていたせいもあり、
部屋にお迎えした御札と、
和紙に描かれた不動明王に
取り敢えず謝ってみようと思った
手を合わせて住職から教えられた
不動明王真言を唱えながら
「すみませんでした、酒は程々にします」
と寝る前に必死に謝ってみた
そして20日の日。
朝起きたら背中の激痛はウソのようになくなってた
いやホント。
快調すぎて今まで十円ハゲ出来そうな程だったのが
ウソのように平静を取り戻した
後で件の医者様のところに結果を聞きに行ったが、
結局原因不明の胃腸炎で片付けられた
やっぱり不動明王に怒られてたんだなと
俺は勝手に納得することにした
そして現在。
どうやら軽く風邪引いたみたいだけど、
何ごともなくなった
今も不動明王真言を唱えながら寝てるけど、
あれから変なことも起きなくなった
皆、遊び半分で被災地には行くなよ
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渓流釣り【怖い話】
大学時代に友人から聞いた話。
釣りが大好きだった友人は
その日も朝から釣りに出かけていた。
場所は川の上流域で、かなりの山奥である。
ここから先は、
友人の語り口調で書かせていただきます。
「車で行ったんだけど、途中からは獣道すらなくてな。
仕方なく歩いたんだよ。かなりの悪路だったな。
崖も越えたし、途中クマが木をひっかいた痕もあったな。
で、やっと釣れそうなポイントにたどり着いてな。
早速、そこらへんの石をひっくり返して川虫を集めたのよ。」
俺「餌ぐらい買えばいいのに。」
「いや、現地でとった餌は食いつきが違うんだよ。
何よりとるのも楽しいしな。」
俺も現地で餌を調達したことがあるが、
あの作業は虫が嫌いな人間にとって地獄である。
それ以来、俺はもっぱらイクラ派だ。
そんなわけで不本意ながら同意し、
話の続きを催促した。
「虫を確保して、早速釣り始めたんだ。
そしたら面白いぐらい釣れてな。
ものの3時間で十五、六匹は釣れたんだ。
でも朝まずめが終われば
流石に途絶えるだろうなって思ってたのよ。」
知ってる人も多いと思うが、
釣りは朝と夕方の「まずめ時」が最も釣れる。
「けど爆釣モードは昼を過ぎても全く終わる気配がない。
生涯で最高の一時だったね。
時がたつのも忘れて夢中になったよ。
気付いたら辺りは薄暗くてな。
もう夕方になってたんだ。
身の危険を感じて、帰り支度を始めたんだよ。
ふと背後に気配を感じて振り返ったら、
小さい女の子が背を向けて立ってる。
少し近づいて
「こんなとこで何してんだい?」
って聞いてみたんだよ。
振り向いた顔を見てギョッとしたね。
顔がお婆さんだったんだよ。
しかも、顔がひきつるぐらい満面の笑顔だったんだ。」
俺もギョッとした。
「でも病気か何かだと思って、同じ質問を繰り返したんだ。
今度は丁寧語でな。
そしたら笑顔を崩さないまま、
「いつまで」
ってつぶやいたんだよ。何回も。
キチ〇イだったんかなあと思って、
軽く会釈して帰ろうとしたんだ。
そしたら、急に婆さんの声が合成音声みたいになって、
「いつまで生きる?」
って言ったんだよ。
背筋がゾクッとして、
こいつはこの世の人間じゃないと思ってな。
凄い勢いで下山したんだよ。
途中、婆さんのつぶやく声が何度も聞こえた。
薄暗い山奥でだせ?発狂寸前だったよ。
あ〜あ、最高のポイントだったのにもう行けねえなぁ…。」
俺は自分の膝がガクガク震えているのを感じた。
話の途中から友人は気持ち悪いほど満面の笑顔だったのだ。
それからしばらくして友人は自殺した。
2018年10月26日
窓から見える高い煙突は何だ?【怖い話】
数年前のことですが、
私の職場にKさんという人が転勤してきました。
Kさんは、私と同じ社員寮に住むことになったのですが、
しばらくして、私と雑談している時に、
「寮の窓から見える高い煙突は何だ?」
と訊いてきました。
その時のKさんは心なしか青ざめていたようでした。
私には心当たりはなかったのですが、
同じ社員寮でも、私とKさんの部屋は離れていましたし、
Kさんの部屋の窓から見える風景と、
私の部屋から見える風景が同じとは限りません。
それに私もその土地では余所者でしたし、
詳しい地理を知っていたわけでもありませんので、
銭湯か何かの煙突でしょう、と適当に話を合わせ、
その話はそれきりになっていたのです。
ところが、それからひと月ほど経って、
Kさんが寮から程近い住宅街で死んでいるのが
発見されました。
死体の状態は無惨なものだったそうです。
奇妙なことに、Kさんはかなり高い所から、
墜落して死んだらしいのですが、
Kさんの遺体が発見された付近は、
住宅ばかりで墜死するほどの高所は見当たりません。
とはいえ、自動車事故でもなく、
他殺の疑いはまったくなく、
結局事故死として処理されたようです。
さて、私はKさんの本葬に参列するため、
Kさんの郷里を訪れました。
Kさんの郷里というのは、
九州のある海辺の町だったのですが、
遺族の方の車に乗せてもらって、
Kさんの実家に向かう途中、
海沿いの道路に差し掛かった時、
現れた風景に目を奪われました。
そこには、古びた工場に、
巨大な煙突が立っていたのです。
遺族の方によると、
それはお化け煙突と言われる煙突で、
かなり昔から町のシンボルとして
そこに建っているそうです。
私は何となく、
Kさんが寮の窓から見た煙突というのが、
この煙突ではないかと思えてなりませんでした。
ところで、
私は最近たいへん不安な日々を送っています。
私の寮の部屋の窓から、
高い煙突が見えるようになったのです。
心なしかKさんの郷里で見た、
あのお化け煙突に似ているような気がしました。
煙突はかなり遠くに見えますので、
以前からあったのに気づかなかった
可能性もないとは言えません。
また、最近になってできた
建造物かもしれませんが、
私にはその煙突が最近になって
忽然と現れたようにしか思えないのです。
職場の同僚に訊いてみても
あいまいな答しか返ってきません。
私には、あの煙突の近くまで行って
確かめてみる勇気はありません。
皆さん、お願いです。
今すぐあなたの家の窓から、
外を覗いてみてほしいのです。
それまで見たこともなかった煙突が
見えるということが、
あったら教えてほしいのです。
いったいそんなことが、
あり得ることなのでしょうか?
2018年10月25日
中つ森の山神様【集落・山・神様の怖い話】
これから話すことは、私が体験した出来事です。
もう30数年以上も前の、
私が小学生だった頃のこと。
祖父の家に遊びに行った時の出来事だった。
寒くて凍てつきそうなこの季節になると、
昨日の事の様に記憶が鮮明に蘇る。
学校が夏休みや冬休みになると、
私は父親の実家でもある祖父の家に、
毎年の様に長期で預けられた。
ひと夏・ひと冬を祖父と必ず過ごしていた。
あの年の冬も、
祖父は相変わらず太陽の様な愛情に満ち溢れた
優しい笑顔で私を迎えてくれた。
祖「よう来たなK(私の名前)。
少し大きくなったか?」
私はたまらず祖父に抱き着き、
いつもの様に風呂も寝る時も一緒に過ごした。
祖母は随分前に他界しており、
祖父は一人、小さな家で暮らしている。
祖父もきっと、私が訪れるのを
毎回とても楽しみにしていたに違いない。
祖父の家は、
東北地方の山間に位置する集落にある。
私は毎年祖父の家を訪れる度に、
冒険するようなワクワク感に駆られていた。
当時、私は都心の方に住んでいたので、
祖父の住む土地の全てが新鮮だった。
清らかに流れる川や、雄大な山々、
清々しい木々など、神々しく感じる程の
素晴らしい大自然が、私は大好きだった。
特に冬になると、雪が降り、
辺りは一面キラキラ光る銀世界で、
都心では滅多に見れない光景だ。
そんな中でも、
なにより私は祖父が大好きだった。
いつも穏やかで優しく、
決して怒るということはしない。
その穏やかな性格と屈託のない笑顔で、
祖父はたくさんの人たちから愛されており、
花がパッと咲いた様に、
祖父の周りはいつも笑顔が絶えなかった。
また、祖父は農業の他に
マタギ(猟師)の仕事をしており、
山の全てに精通していた。
大自然と共に生き、また、生き物の命を奪う、
マタギという仕事をしているが故に、
誰よりも命の尊さや、
自然の大切さと調和を何よりも重んじている人だった。
祖父の家に滞在してはや一週間経った
そんなある日の朝、私は集落の友人
AとB2人と秘密基地を作りに出かけた。
私「いってきまーす!おじい、
おにぎりありがとう!」
祖「おお、気をつけるんだぞ。
川に落ちないようにな。
あまり遠くに行くんでねぇぞ。
あ、ちょっと待てK」
私「なに?」
祖「ええか、K。何度も言うが
“中つ森”にだけは絶対に行ったらいかんぞ。
あそこはおじい達も近づけん場所だからな。
わかってるか?」
私「うん、わかってるよ」
祖「それと・・なんだか今朝から
山の様子がおかしくてな。
鳥がギャーギャーうるせぇし、
それでいて山の方は妙に静かなんだが、
変に落ちつかねぇ。
おめぇにあんまり小うるせぇ事は
言いたくねぇけど、こんな日はなるたけ
山の奥には行くんでねぇぞ」
私「はーい」
その日はこの時期には珍しく雪が降っておらず、
よく晴れた日だった。
それ以外は何も変わらない、いつもの朝だ。
だが、この時私はまだ、
祖父の言っていた言葉の意味が
よくわからなかった。
ところで“中つ森”というのは、
この山の中のある一部の森で、
『そこには絶対に行ってはいけない』
と、祖父から常々言われている場所だった。
近づいてはいけない理由は、
なんでも“中つ森”はこの山の神様である
“山神様”を奉ってある神聖な森であるから、
決して立ち入ってはならないのだとか。
もし山神様に会ってしまうと、
命を吸われたりだとか、
はたまた生命力を与え、
一生健康に暮らせるだとか、
色々な話があるようだ。
『命を奪いもすれば与えもする、
この山そのものの神様』
と祖父は言っていた。
もっとも、私はもともとここの人間ではないし、
“中つ森”の場所がどういう場所で
どこに存在するのかも、
いまいちわからなかったので、
祖父の言うことはよくわからなかった。
そして私は友人たちと合流し、
山に到着したあと、秘密基地を作る場所を探した。
A「さてどこで作るか?」
B「俺達の秘密の隠れ家なんだし、
もう少し奥にいこうよ」
私「大人に見つかったら隠れ家の意味ないもんね」
私達は更に山奥に進んだ。
30分ほど歩くと、
雑木林の中に丁度良い開けた場所があり、
そこに秘密基地
(秘密基地と言ってもかまくらだが)
を作ることにした。
そして昼も過ぎ、
昼食をとりながら基地作りに没頭していた。
日が暮れかけている夕方になった頃、
Aは落ち着かない様子で林の奥の方を見つめていた。
私「どうしたの?」
A「・・なんか、山が変な感じだ。いつもと違う」
私にはAの言ってる意味がよくわからなかった。
私の目に映るのは、別にいつもと変わらない、
ありふれた山の光景だ。
ただ、確かなことは、
Aの言っていることは祖父の言っていたことと
重なっていた。
私「どういうこと?」
A「俺もようわからんけど、なんかこう・・
山がゆらゆら揺らめいてる感じだ。
吹いてくる風もなんか変なんだ。
寒くもないし暖かくもないし・・ほら、見れ!」
Aが指さした森林の奥を、
鹿が5,6頭群れをなして走り去った。
そして続くように、鳥の群れも、
何かから追われるように騒ぎ立てながら
私達の上を飛び去っていった。
B「今の時期、鹿はもっと上の奥の方に
いるはずなのにどうしてだ?
熊から逃げてるのかな?
それだったらまずいぞ」
A「いや、この辺りは村のおじい達(マタギ)が
仕切ってるから、熊は絶対近寄らんて。
やっぱりなんか変だよ、もう今日は帰ろう」
B「そうだな、今日は帰った方がよさそうだ。
遅いし」
まだまだ遊べたが、私達は早々に帰ることにした。
この時なんとなく嫌な感じがしたのをまだ覚えている。
帰路について20分ほど歩いたが、
どうも周りの様子がおかしかった。
B「なぁ、こんな所通ったか?
来る時こんなでけぇ岩なかったろ」
A「うん、右行ってみるか。
あっちだったかもしれん」
しかし右へ行っても違かった。
私達は完全に迷っていたのだ。
私はともかく、AとBにとってここは地元の山だ。
しょっちゅうこの辺りで遊んでいる。
二人にとっては庭の様な所で、
決して迷う様な場所ではなかった。
もうどれほど歩いただろうか。
時間も距離も、
今どこにいるかということさえも、
私達にはわからなかった。
まるで同じ場所を
グルグル回っているかの様に思える程に。
途方に暮れてしまった。
私達はいつのまにか深い森に入ってしまっており、
冬という日照時間が短い季節のせいなのか、
森の木々が太陽を遮っているのかわからなかったが、
辺りは段々暗くなっていた。
いつのまにか雪も降りだし、
寒さも増し、子供心に不安が募る。
更にしばらく歩くと太陽は沈みかけ、
村役場の17時を知らせる鐘が鳴り響いた。
私「もう17時だよ。ここどこ?」
A「わからん。でもおかしいべ、
あんな浅い場所で迷うなんて」
B「こんなに遅いと
オド(父親の事)に怒られるぞ。早いとこ帰ろ」
しかし私達は疲れ果て、適当な場所に腰を下ろした。
祖父の村では、
子供に必ず懐中電灯を持たせる慣わしがあった為、
幸いにも私達は3人とも懐中電灯を持っていた。
B「疲れたなぁ。さみぃし。腹も減ったな」
私「ねぇ、なんかあそこにあるよ」
私が懐中電灯を照らした先に、
色の剥げた大きな鳥居があった。
私達は恐る恐る近づき、鳥居をくぐると、
荒れ放題の石畳を歩いた先に、
小さな祠(ほこら)の様な物があった。
祠の前には、米や瓶に入った水(恐らく酒)が
供え物がしてある。
その両脇に、卒塔婆の様な物に
漢字がたくさん記されてあった。
それをどう読むのか、私達にはわからなかい。
それを見た途端、
AとBはギョッとしたように顔を見合わせた。
A「まさか・・ここが
“中つ森”っちゅう事はねぇよな?」
B「いや・・俺も“中つ森”さ行った事ねぇし、
場所もよう知らんからわからんけど・・
この山に神社みてぇのがあるなんて聞いた事ねぇぞ」
私「“中つ森”ってそんなにマズイ場所なの?」
B「そうか、おめぇはよそ者だからな。
でも、こんな話はオドから聞いた事ある」
私「なに?」
B「簡単に言うと、
“中つ森”は山神様っちゅう、
山の神様が住んでる場所で、
村の人間でも絶対に入っちゃならねぇって
場所なんだ」
私「それは知ってるよ」
B「なんでもその山神様ってのが、
えれぇ短気な神様で、
人が“中つ森”にいるのがわかると
山神様は怒って、手足を引きずって
どこかに連れてっちまうんだ。
これを大人達は、
“神隠し”とか“祟り”って呼ぶ」
私「・・どこかって、どこに連れてかれるの?」
B「それはわからん。とにかく“神隠し”に遭うと、
大人でも見つけられねぇんだ。
大人にもわからないどこかに・・」
ゴォーッ
ゴゴゴゴ・・・・・・・・
Bがそう言いかけた時、
今まで聞いたことのないような耳をつんざく
轟音が鳴り響いた。
B「うわーっなんだ!?」
A「山が揺れてるっ!」
山が全体が揺れはじめたのだ。
私達は堪え切れずひっくり返り、
訳がわからないまま雪の上に転がったり、
必死で木にしがみついたりした。
山が揺れだしてから2〜3分経っただろうか。
揺れはようやく収まり、地鳴りも止み、
辺りは再び静寂さに包み込まれた。
私達は呆然としたまま、その場に座り込んでいた。
A「・・・今の・・何だったんだ」
私「わかんないよ・・地震かな・・」
と私が言ったその時、
・・デテイケ、デテイケ、デテイケ デテイケ
突然、耳元で誰かが囁いた。
男なのか女なのか判らない声。
いや、耳元というより、
直接頭の中にスッと入ってきた様な、
そんな感覚だった。
ただ、いやに冷たい声だった。
この瞬間を、今でも私ははっきり覚えている。
全身に鳥肌が立ち、
一瞬時が止まったかの様に思えた。
A「今、聞こえたか?」
聞こえていたのは私だけではなかった。
私達3人は互いの顔を見合わせ、
がむしゃらに走った。
B「いけん!ここ、やっぱり“中つ森”だ!
さっきの地鳴りも山神様の祟りだ!
俺達が“中つ森”に入っちまったから、
怒ってんだよ!
早く逃げんと山神様に命吸われちまう!」
A「早く!早くしないと!」
もう、本当にこの時は頭の中が
グチャグチャで訳がわからなかった。
とにかく暗闇の中、私達は走り続けた。
何度も転んだり、木々の枝等が顔にたくさん
ぶつかっても気にしなかった。
走っている方向も、帰り道かなんてどうでもいい。
とにかくあの場から逃げ出しかった。
そして私は足を止め、
ゼェゼェと息を切らせながら
思いきり空気を吸い込んだ。
体力の限界だった。もう走れない。
立ち止まると、AとBはいなかった。
先程の騒ぎではぐれてしまったのだ。
おまけに懐中電灯もどこかへ落としてしまい、
私は不安で顔が涙でグシャグシャだった。
私「ハァハァ・・・二人ともどこー?」
疲れ果て、いよいよ心細くなった私は、
立っていることさえもままならず、
木に寄り掛かるようにして座り込んでしまった。
いつの間にか降ってくる雪は激しさを増し、
吹雪に変わっていた。
吹き付ける雪が私の体にまとわり付き、
容赦なく体温を奪う。
手足の感覚はなく、
私の小さな体は完全に力尽きてしまっていた。
急激な眠気が襲ってきた。
もうダメかもしれない。
そう思った時、
ザっ・・ザっ・・
私の後ろの方から
雪を踏みしめる足音が聞こえて来る。
ゆっくり、ゆっくりと。
吹き荒れる風の音の中、
何故かハッキリと聞こえたのだ。
足音の主の姿はこの暗さで全くわからなかったが、
暗闇の奥から誰かが静かに歩み寄ってくる。
さっきまで体の感覚が全て鈍っていたのだが、
まるで研ぎ澄まされた様にわかる。
急に意識がハッキリとしてきた。
不思議な感覚だった。
こんな夜に、こんな場所で誰が?
山神様が跡を追ってきたに違いない・・・。
そんな事を考えると震えが止まらなかった。
逃げなきゃと思っても、
体が金縛りにあったみたいに
ピクリとも動かなかった。
私の心臓は爆発しそうなくらい
バクバクと高鳴っていた。
自分の心臓の音で居場所がばれるんじゃないかと思い、
必死に胸と口を抑えた。
ザっ・・ザっ・・ザっ・・
徐々に近づいてくる足音に、
私は怯えながら自分の服をギュッと握りしめていた。
もう足音は、私のる木の真後ろだった。
すると、ピタッと足音がやんだ。
私は息すらも止めていたんじゃないかと
思うくらいに、背筋を伸ばし硬直していた。
それから何分、何十分経っただろうか。
私の身に何も起きない安堵感から、
緊張の糸がプツッと切れたように、
息を大きく吸って吐いた。
もう大丈夫かな・・・
私は意を決して、後ろを振り向いた。
だが何もいなかった。
相変わらず轟々と吹雪が唸りをあげてるだけだった。
なんだったんだろう。よかった・・・
私は安心し、首を元の位置に戻した。
だが、――――――ッッ!!
私は目の前の光景に絶句した。
真っ白な着物を着た女が、
私を見下ろしていたのだ。
その距離は1メートルもなかっただろう。
記憶が曖昧だが、
身長は2メートル以上あったと思う。
手足が異様に長かった。
私は目の前の光景を理解できずに、
ただガタガタ震えていた。
月明かりに照らされたその無機質な表情と姿は、
まるで雪女を思わせる様な不気味さを醸し出していた。
女は私と目が合うと、
私の顔にまで大きく身を乗り出し、
顔をのぞきこんだ。
女は私の顔をのぞきこみながら、
ニンマリと笑いを浮べている。
とっさに目を閉じようとしたり、
顔を背けようとしても、何故か体が言う事を聞かず、
女は真っ直ぐ私を見つめていた。
まるで蛇に睨まれた蛙の様に、
私ただ震えそうになる全身を必死で押さえつけた。
ちらりと見えてしまったその顔の恐ろしい事。
前髪と肩から垂れる長い黒髪。
そして長髪から覗かせる血走った目と、
血の気のない唇がニヤッと不気味に歪む。
怒っているのか、喜んでいるのか、
はたまた悲しんでいるのかという事など、
その表情からは伺う事ができなかった。
そして女は唐突に、私の右手首をぐいっと掴んだ。
あまりの恐怖に、私は小さく「ヒッ」と漏らした。
物凄い力で、ぎりりと腕が痛むほどだ。
私「痛いっ、痛いっ」
私はたまらず叫び、
その手を振りほどこうともがいた。
だが寒さのせいか、恐怖のせいか、
身体は上手く動かず、力を入れることが出来ない。
喉に何かが張り付いているように、
あげたはずの叫びも声にはならなかった。
私はそのまま引きずられ、
女は無情にも私をどこかへ連れて行こうとする。
・・ズルっ・・ズルっ・・
引きずられながら私は女の方をちらっと見ると、
月明かりと雪の反射に照らされ、
恐ろしく不気味な顔だった。
相変わらずニヤニヤし、
私と目が合うとまたニンマリと嬉しそうに笑う。
ズルっ・・ズルっ・・
山神様に連れてかれるんだ。
薄れゆいて遠のく意識の中、私はそう思った。
しかし、どこからか
大好きな祖父の声が聞こえてくる気がした。
私が目を覚ましたのは、
それから2日後の事だった。
気がつくと、目に入ってきたのは
見慣れた天井だった。
私は祖父の家で布団の中にいた。
体にうまく力が入らない。
夢だったのかな?
そうボーッとしていると、
「目が覚めたぞ!」「無事だぞ!」
という声が聞こえ、
バタバタと廊下を走る騒がしい音した。
ちらっと横を見ると、
村の大人達数人が部屋にいる。
「K!」
私の名前を呼ばれる先に目をやると、
祖父がしわくちゃな顔をさらにくちゃくちゃにし、
私に抱き着いた。
祖「よかった!本当によかった・・・
生きていてくれて本当に・・よかった!」
祖父はそう言い、
目を真っ赤にしながら私の頬を撫でてくれた。
私には何が何だかわからなかったが、
ただ、この時祖父のぬくもりを感じて、
とても安心したのを覚えている。
ふと、私は妙な感覚に気づいた。
右手の感覚がないのだ。
恐る恐る右手を布団から出して見てみると、
何と右手首から上が無くなっていた。
包帯が巻いてあるが、私の“手”は姿形もない。
あの女に掴まれた部分が無くなっている。
再びあの夜の恐怖が私の中に蘇った。
私はパニックになり泣き出し、手に負えなかった。
祖父や他の大人達が私を落ち着かせ、
状況がよく理解できていない私に、
祖父は順を追ってゆっくりと説明してくれた。
あの日の2日前の夕刻、
祖父や村の人達はまだ帰らない私達が
山で遭難した事に気づき、
大人達が慌てて捜索に行こうとした時に突如、
不気味な地鳴りが響き渡り、間髪入れず地震が起きた。
村の電柱は倒れ、近くの道路では地割れも起き、
村では大変な騒ぎだったという。
更に追い討ちをかけるように、
地震の影響で私達がいるはずの山から
大規模な雪崩が発生し、
集落の村では山の側にあった
3棟の家が雪崩によって半壊し、
何人かの人が亡くなったり
怪我をしたりしたのだと。
しばらくして青年隊も駆け付け、
山狩り(私達の救助)を行おうとしたのだが、
しかし外は猛吹雪で大荒れだった為、
二次災害(二重遭難)を防ぐ為に、
捜索は次の日の明朝という事になったのだった。
当然の事ながら、あの大規模な地震と雪崩で、
もう私達の生存の可能性は薄いと見ており、
友人A、Bも2人同じ場所で凍死した状態で発見された。
私は瀕死の状態だったが、
“中つ森”の山神様の祠に寄り掛かるようにして
意識を失っていたという。
また不思議なことに、幸いにも
“中つ森”には雪崩の被害は及ばなかったらしい。
とにかく、あのような大惨事だったに関わらず、
子供が命を取り留めたのは奇跡なのだという。
しかし、発見時には
私の右手は重度の凍傷により壊死してしまっており、
手首を切断せざるを得なかったのだと。
道に迷い、知らぬ間に“中つ森”に入っていた事、
その突如地震が起きた事、不気味な声が聞こえた事、
女に右手を掴まれどこかへ引きずられた事・・・
私は祖父に、
自分の身に起きた全てのことを記憶の限り話した。
すると、祖父はぽつりぽつりと語った。
祖「ほうか・・・山神様はお前を守って下すったんだな。
山神様ちゅうのは、この山の生と死を司る神様だ。
山神様には気まぐれな所があってな、
わしらが生きる為の“命”を与えて下さるが、
時に激しく牙を剥く時もある。
山神様はお前の命を助けようと、雪崩の来ない
“中つ森”に運んで下すったんだよ。
本当は死んじまう所を、
手一本で済ましてくれたんだ。
AとBは・・気の毒だが」
私「なんで僕だけ助けたの?
AとBはどうして助からなかったの?」
祖「それはおじいにもわからん。
山神様は気まぐれだからな。お
じいも、AとBの事は本当に辛いと思っとる。
だがな、K。山神様は決してAとBを
助けなかった等と思っとらん。
ただ、時として人間も自然界の力には
敵わん時もあるっちゅう事だ。わかるか?
人間だって、自然界の一部の生き物だ。
鹿や熊、虫と変わらん同じ命を持ってる。
山神様は人間だからっちゅう理由で特別扱いはせん。
・・・だが、未来のある子供が
亡くなったっちゅう事は・・本当に悲しいがな」
そう言って、
祖父は悲しげに私の右手を優しくさすった。
この時、私には祖父の言っている意味が
よく理解できなかった。
そして月日が経ち、あの時の事故があってから
両親と祖父の間で色々あった様で、
祖父とは何となく疎遠になってしまった。
私が大学に入学した年の初冬に、
祖父は亡くなった。享年96歳。
村に初雪が降った日の朝、
隣の住人が様子を伺いに行くと、
静かに息を引き取っていたという。
苦しんだ様子もなく、眠っているような、
穏やかな死に方だったらしい。
葬式に参列した時、
祖父の変わり果てた姿に私は言葉が出なかった。
祖父が亡くなってからしばらくして、
10数年振りに祖父の所を訪れた。
だが、村は市と合併してしまい、
アスファルトに舗装されコンビニ等もできており、
私の記憶にある祖父の村とはかなり違っていた。
山も開発で穴だらけになり、
あの綺麗な小川や沢山の森や木々は姿を
消してしまっている。
私はなんだかやるせない気持ちに襲われた。
歳をとった現在、
当時の事を時々振り返る事がある。
あの時は幼くて理解できなかった事々が、
今ではなんとなくわかってきた様な気がするのだ。
私が遭難したあの日、
祖父は山で何かが起こると
予感していたのではないのか。
長年あの山でマタギを生業としている
祖父の研ぎ澄まされた“五感”が、
何らかの異変を感じとっていたに違いない。
そして、“中つ森”の山神様。
今思うと、あの時聞こえた
“デテイケ”という言葉は、
『雪崩が起きるから早く逃げろ』
という警告ではなかったのだろうか。
また、後からわかった事だが、
山神様というのは山の化身であり、精霊であり、
山の命そのものなのだという。
滅多に人前に姿を現さないが、伝聞によると、
女性や白蛇、時には白狐の姿で現れると
言われているのだとか。
山神様を信じ、敬意を払っていた人間は、
死ぬと自然に還って山神様の一部となり、
そして山の命は育まれ、大自然の中を巡り巡って、
また生まれ変われるのだと。
祖父の地域では古来より崇められており、
今でも毎年時期になれば山神様を讃える祭りが
行われている。
昔の人々は大自然と共に生きるが故に、
時折起こる天災や不幸な事故に畏怖し、
山神様を奉る様になった。
また、川や山で採れる命の恵みに感謝し、
山神様(大自然)に敬意を抱いていたのだろう。
私はあの時、偶然にも山神様に救われた事を、
夢や勘違いだとは決して思わない。
今だって、あの山の命としてどこかで
何かを見つめているに違いない。
春の陽気の様に優しい時もあれば、
冬の極寒の様に厳しい時もある様に。
祖父もあの山のどこかにいるのかと思うと、
何だか不思議な気持ちになる。
“中つ森”は開発されてしまい、
山神様の祠はどこかの神社へ移送されてしまった
と聞いた。
山神様はあの変わり果てた山々を見て
何を想っているのだろうか。
ツルツルの右手を眺めながら、私はそう思った。
2018年10月22日
家族っぽい何かども【異世界・ 怖い話】
先週のことなんだけど、小三の俺の弟が体験した話。
弟はその日、
学校終わって一度うちに帰ってから仲のいい友達と一緒に
近くの公園で遊ぶことにした。
夕方になってかくれんぼしていたら、
珍しいことに父、母、俺の家族全員が揃って
その公園まで迎えに来た。
それが弟には結構嬉しかったらしく、
かくれんぼを途中で切り上げて、
友達に一声かけて俺らと一緒に帰った。
家に着いて宿題し始めると、
これまた珍しく俺が弟のそれを見てやった。
宿題やってる間も色々と
ゲームの話だかなんだかの話で盛り上がったりして、
機嫌のいい俺はずっと弟の傍にいた。
やがて夕食の時間が来て、
母が1階のダイニングから声を張り上げた。
俺達の部屋は2階だったので大声で返事して下へ降りた。
なんでもない日なのに夕食はご馳走で、
弟の大好きなハンバーグとかが並んでて、
寡黙な父も、
さっさと平らげてしまった弟に
俺の半分食うか?とかかなり気を配ってた。
そんな中、
いつも見てるアニメの時間になったので
テレビをつけると 何故か砂嵐で、
チャンネルを回してもテレビはザーザー言うばかりだった。
すると突然母がリモコンを取り上げ、テレビを消した。
その顔がニコニコしてたので、ちょっと不気味だった。
夕食も終わると、やっぱりニコニコしながら
母が「ケーキ買ってあるの」
父が「一緒に風呂入るか?」
俺は「新しいゲーム買ったんだけど」
と銘々に魅力的な提案をしたんだが、
そこで弟は悪戯を考えた。
優しくされると意地悪したくなるとかいう
天邪鬼的なもので、トイレ行ってくると言って
帰って来ないという、まぁガキらしい発想だった。
うちのトイレは鍵をかけるとノブが動かなくなる仕組みで、
ドアを開けたまま鍵をかけてそのまま閉めると、
トイレが開かずの間になってしまうのだ。
この家に越して来たばかりは弟が良く悪戯して、
頻繁に10円玉をカギ穴に突っ込んでこじ開けるということがあった。
で、弟はその方法でトイレの鍵を閉めて、
自分はトイレの向かい側の脱衣所の床にある
ちょっとした地下倉庫に隠れて、
呼びに来た家族を脅かそうとした………らしい。
らしいというのは、
実は弟は、公園で友達と別れた後、
行方が分からなくなっていたのだ。
弟はかくれんぼ中に、
突然帰ると声を張り上げてさっさと帰ってしまったので、
誰かが迎えに来たかどうかは誰も見ていないらしかった。
日が暮れても何の連絡もない弟を俺達は心配して、
警察にも捜索願を出して、町内のスピーカーで呼びかけもした。
父親は弟の友達の家に電話かけてたけど
あんな取り乱したのは初めて見たし、
母親なんか早々に泣き崩れてた。
俺はというと、
弟が遊んでたいう公園の周りで聞き込みして探しまわってた。
マジで終わったかと思った。
一方弟は、例の地下倉庫に隠れている時に、
自分を探しているという町内放送を聞いてしまった。
困惑していると、
突然ダイニングの勢いよく扉が開かれて、
3人がぞろぞろとトイレの前に歩いて来て、
またさっきみたいに
「ケーキ買ってあるの」
「一緒に風呂入るか?」
「新しいゲーム買ったんだけど」
と声をかけた。
そのトーンがまったく同じだったらしく、
弟もただならぬものを感じてその様子をこっそり見てた。
すると3人はまた、
「ケーキ買ってあるの」
「一緒に風呂入るか?」
「新しいゲーム買ったんだけど」
と言いながら、
トイレのノブをガチャガチャ言わせ始め、
そのうちドアを叩き始めて、
ついにはドアをブチ破りそうな勢いの、
すごい音が鳴り響いた。
弟はもうそこでガクブルで、
見つかったら絶対殺されると思ったらしい。
時をおかずドアが破られて、いやな静寂が流れた。
やがてその家族っぽい何かどもはさっきの、
「ケーキ買ってあるの」
「一緒に風呂入るか?」
「新しいゲーム買ったんだけど」
を繰り返しながら2階に上がって行った。
弟は弾けるようにで地下倉庫を飛び出し、
家の玄関から靴もはかずに全力疾走で逃げ出した。
無我夢中で走って、着いた先はかくれんぼをしてた公園だった。
公園にはまだパトカーが止まっており、
聞き込みをしてた警官に泣きついたらしい。
その連絡を受けて、近くにいた俺がかけつけて、
無事に弟は見つかった。
その時に弟が警官に話した内容を
こうしてまとめているわけだが、
当然警官は信じないし、別に弟は見つかったし、
プチ家出として片づけられてしまった。
だが、それから家に帰ってくるなり
真剣な顔でテレビのチャンネルを回し始める弟を見ると、
とても出まかせとは思えない。
御巣鷹山を登山中に方角を尋ねてきたスーツの男性【不思議な話】
体験談じゃないけど…
俺の部の先輩(かな?)の3年前の話。
サークルの一環でオスタカヤマに登ったときの事。
2人一組のチームで3チームに分かれて
山小屋を目指すものだったらしい。
先輩は友人と一緒にゆっくり時間を掛けて
登るルートを取ったため、
後一時間ほどで日没andゴールの所だった。
ふと顔を上げると場にふさわしくない
スーツ姿の30代の男性が立っていた。
おかしいな、
と友人と顔を見合わせ
その男とあいさつを交わそうとすると
男の方からさわやかにあいさつがきた。
「こんにちは、暑いですね。」
確かにあたりは日が落ちたとはいえ夏場、
確かに暑いがスーツ姿は大変暑そうに見えたらしい。
だが先輩は東京出身で標準語なので、
その男の姿はともかく
言葉遣いに好感を持ったそうだ。
先輩がその男に話し掛けようとしたら
先輩の言葉をさえぎる様に
「申し訳ないけど、東京ってどっちの方向?」
となぜか照れくさそうに質問してきたと言う。
先輩の相方が磁石を見て東京の方角を教えると
「ああ、ありがとう」
とていねいに礼を述べ、
そのていねいさと相反するように
すごい勢いで道もない所を降りていったと言う。
先輩は後で気がついてゾッとしたそうです、
飛行機事故の事を思い出して。
山の神様「もし、旅かな?」【ほんのり怖い話】
一度だけ洒落にならない体験をしたのだけど
誰も信じてくれないからここに書く。
学生だった頃毎週末一人キャンプに
興じてた時期があった。
金曜日から日曜日にかけてどこかの野山に寝泊りする、
というだけの面白みもくそもないキャンプ。
友達のいない俺は寂しさを広大な自然の中に
まぎれこませていたのだった。
それでまあその日は岐阜の方面に向かってたんだけど、
地図も持ってないもんだから
正確にはどこへ行ってたのかよく分からない。
とにかく野営によさげな山を見つけたので
そこで一泊することにした。
ご飯食べて、ヤングジャンプ読んでたらもう夜中だ。
暇だなあ、とか思ってたら急に
テントのチャックを開けられた。
え、なに。
管理人?それとも通報された?
とか、もうビックリして死ぬかと思ったけど
立ってたのは普通の爺さん。
中覗きこんで
「もし、旅かな?」
と聞かれた。
返事できるような状態じゃなかったので
頭だけコクコクって返事したらそのままどっか行った。
民家まで1kmはあるような山奥に
まさか人がいるとは思わなかったね。
最初は幽霊かと思ったけどどう見ても人間だった。
むしろ変質者かサイコ野郎か
泥棒で俺を狙ってるんじゃ・・
と 考えると寝るにも寝れない。
うわあぁどうしよう・・・って落ち込んでたら、
またチャックが開いて、今度は中年のおっさん。
そいつも
「もし、旅かな?」
って聞いてくる。
また頷いたらそのままどっかへ行った。
からわれてるのかなんなのか分からないけど、
もうダメだここは、離れよう。
そう思った。
けど、テントの外は
月明かりも無いような暗黒世界で、
おまけに変質者が二人もうろついてる。
でた矢先に包丁でグサーとか怖いこと想像して
30分くらい悩んだあげく、でることにした。
護身用にマグライトを装備して
恐る恐る外にでると誰もいない。
今のうちだと猛スピードで
テントの片付けを開始した。
そしたら終わる頃になって
二人がまた近づいて来たんだよ。
俺が心臓バクバクさせてテント片付けてる横から
「帰るのかい?まだ夜なのに」
って声かけてくる。
「ええ、まあ急用思い出しまして」
と答えつつも荷物をバイクにくくりつけて
それじゃあとオッサン達のほうに
ライトを向けたら、光が何か変。
途中で途切れてる。
なんじゃこらあと後ろの方を良く見たら
全長4mくらいありそうな黒衣が、
屈んでオッサンと爺さんを動かしてる。
あの顔の垂れみたいなのの奥に目を光らせながら
口モゴモゴさせて喋ってたんだ。
短い命だったな・・・
とか思ってる暇も無くバイクに跨って逃げた。
そのまま麓にある神社に転がり込んで
迷惑にならないだろうところにテントはって寝た。
翌朝、
なんか騒がしくて目が覚めたら
ちょうどチャックが開くところを見てしまって、
まさか追いかけてきたのかと
絶望的な気分になったが、
神主がここにテント張るなっと
怒鳴ってただけだった。
かくかくしかじかって訳なんですよ、
と話すと
「あーそれ あそこの山の神様だから
どうにもできないよー。
でも良かったね神様に会えて。
僕は見たことないけど、
たまに見たって言う人いるんだよねー」
と。
なんかイラッとする口調だった。
害は無いらしいからそのまま帰ってきた。
害が無いとかそういう問題じゃない。
あんなもの野放しにされたらたまったもんじゃない
2018年10月17日
捨てられた女【怖い話 】
一昨年の9月、
俺とシゲジとキイチは町に飲みに行きました。
最初は焼き肉屋。
その後スナックでカラオケやって、
最後のラーメン屋を出たのが、たぶん1時半過ぎでした。
俺はアルコール飲まないんで、車の運転です。
キイチはもうベロベロで、
後部座席に収まるとすぐに寝てしまいました。
国道から県道へ入ってすぐの交差点でした。
助手席のシゲジが
「おい…おいって」
と、俺の腕を叩くのです。
「さっきの交差点に女がおったやろ」
県道のこのあたりは、
周囲は山ばかりで何もないし、
深夜になると交通量も少ない。
だから、そんなはずはないって思ったのですが、
シゲジは
「ちょっと戻ろうぜ」
と執拗に誘うのです。
「若い娘でけっこう可愛かった」
とか言って。
「お前、酔っぱらってるのに顔とかなんてわかるんか?」
そう言いながらも車を方向転換させて、
さっきの交差点に向かいました。
すると居たんです。
シゲジの言うとおり、
交差点のところに若い女が。
女は、道端のちょっと草むらっぽいところにしゃがんで、
こっちに背中を向けていました。
ワケありかよー、とか考えながら、車を停めました。
ライトは点けっぱなしで。
「おーい、何やってんや?こんなトコで」
女はくるっと振り向きました。
色が白くて、美人タイプの女なのがわかりました。
けど、その時の表情がちょっと忘れられないんです。
口がワっと全開になっていて、
目も血走った感じのまん丸で、
ビックリした顔のまま固まったみたいな表情でした。
そんな顔でこっちをじっと見ています。
ちょっと毒気を抜かれた感じで立ち竦んでいると、
後ろからシゲジが話しかけてきました。
「あいつ、ゲロしてたんちゃうか?」
そう言われて見ると、口の端がよだれか何かで
濡れているのがわかりました。
町で酔っぱらって、
ここまで歩いてきて吐いたのかもしれません。
事情はともかく、
このまま見過ごすのも悪いような気がして、
こう言いました。
「家まで乗せてったるわ」
「*@?。&*#$%!」
女は口を開いたまま、
訳のわからないことを言いました。
女が座っていたあたりの草むらで、
ガサガサと何かが動く気配があるような気がします。
これはヤバイかも、そう思いました。
すると、女は口を閉じて今度は普通に喋りました。
「…乗せてって」
ちょっとおかしいとは思いましたが、
こんなところで置いていくのも気が引けます。
見た目は可愛い女だったので、シゲジは
「よっしゃ、それでオッケーなんや」
とか、意味のわからないことを言って、
一人で盛り上がっています。
後部座席のドアを開くと、
寝ているキイチの隣に女を座らせました。
「夜中やし、シートベルトはええやろ」
女を乗せると、俺は車をスタートさせました。
「…あんなトコで何してたんや?」
「誰かに捨てられたんかぁ?」
シゲジが、しきりに後部座席に向かって話しかけています。
俺は、バックミラーで女をチラチラと見ていました。
ちょっと短めの髪で整った顔立ちですが、
ちょっと顔色が白すぎるように感じました。
車の揺れに合わせて、
白い顔がゆらゆらと揺れています。
「私が捨てられたんとちゃうねん」
突然、女が口を開きました。
「私は捨てられた男を捜しにきたんや」
ちょっと言っていることが良くわかりません。
「…なんや、男って彼氏か?」
いつの間に目覚めたのか、キイチが話に加わりました。
「ちょっとガッカリしたわ。
せやけど意味ワカランな、その話」
どうやら大分前から意識はあったようです。
「ドコに行ったらええねん?」
俺は女に聞きました。
車は県道を自分らの村に向かって走っています。
「真っ直ぐ行って、もうちょっとしたら左」
女は運転席と助手席の間に
身を乗り出して指示しました。
その時、バックミラー越しに女と目が合いました。
どこを見ているのかわからないような、
何か疲れ切ったような目。
女はそのまま、
ストンと後部座席の真ん中に座り直しました。
「そこ、そこ曲がって」
そんな感じで、何回か曲がり角を曲がりました。
俺はだんだんおかしいなと思い始めました。
この先は山の奥で人里など無いのです。
シゲジもいつの間にか無口になっていました。
寝てるのかと思って見ると、
目を開けたまま俯いています。
だんだん道が狭くなって、
とうとう舗装もなくなりました。
「ほんまにこの道でエエんか?」
「…ええねん。もっと先や…」
男に挟まれて後部座席の中央に座っているので、
悪路で揺れるたびに声が震えています。
「もうすぐやなぁ…」
女が独り言のようにそう言いました。
もうずいぶん奥まで来ています。
もちろんこの先に人家などありません。
もうすぐどこに着くのか、
俺はだんだん怖くなってきました。
女の顔を見ようかとミラーを見ましたが、
暗くて表情が見えません。
助手席でシゲジが何かブツブツ言っています。
「ここで停めて」
林道の車廻しのところに車を停めました。
女は車から降りると、
細い人が一人やっと通れるような
山道の入口に向かいました。
あたりは月明かりで少し明るいのですが、
木立の中は真っ暗です。
女の格好は、
ワンピースにパンプスだったかハイヒールだったか、
とにかく山歩きをする格好ではありませんでした。
「おい!どこ行くんや!そっちには何もないぞ!」
俺が叫ぶと、女は振り向きました。
うっすら笑っています。
「早くおいでやぁ、もうちょっとやから」
女の後を追いかけようとして、
誰かに肩を掴まれました。
一瞬心臓が止まるかと思いましたが、
シゲジでした。
「お前…行くんか?」
弱々しい声でそんなことを聞きます。
「しゃあないやんけ。
このまま放り出していくワケにいかんやろ」
「…ほなら俺も行くわ」
最初の頃のハイテンションが嘘のような様子でした。
俺が先頭で女の後を追いました。
女はどんどん山道を先に進んでいきます。
途中で気が付きました。
この道は夏に通った覚えがあります。
若い男が山に迷い込んで、消防団で捜索した時でした。
確かこの先には大きな池があったはずです…
女は池に何の用事があるのか?
後を追いながらそのことばかり考えていました。
後ろからは二人の影が追いかけてきます。 やがて池に出ました。
9月だというのに少し肌寒い。
女は池のほとりで立ち止まりました。
「…来たで」
月明かりは木立に遮られて、
水面は真っ黒で何も見えません。
あたりは全くの無音でした。
俺たちの息の音しか聞こえてきません。
「アホー!!何してるんや!ボケェ!!」
女が池に向かって突然がなり始めました。
「いね!いんでまえ!あほんだらぁ!
クソッタレ!!死ね!」
もの凄い勢いの悪口を全身を震わせて叫び続けています。
呆気にとられて見ていると、今度はこっちを向きました。
「お前らも帰れ!はよ帰れ!ボケー!!」
最初に見た時のように大きな口を開けて、
血走った目でこっちを睨み付けています。
「はよいね!殺すぞ!ごろ…ごぼゴボ!」
口から何かを吐き出しながら、
こっちへ手を伸ばしてきます。
俺は限界をでした。振り向くと、
さっき来た山道をダッシュで引き返しました。
後ろからは女の叫び声が、
前にはシゲジの走る姿が見えます。
車のところまで来ると、
ドアを開け車内に乗り込みました。
後ろを確認すると、
キイチがぐっすりと眠り込んでいます。
エンジンをかけて、そのまま待ちました。
「なにしてんねん!はよ出せや!」
シゲジが追いつめられたような顔で言いました。
「何を待ってるんや、まさか…」
その言葉で我に返りました。
一気に車をスタートさせて林道を下りました。
一番近いキイチの家まで帰り着くと、
体の力が一気に抜けました。
寒くなかったのに、体がガタガタと震えてきました。
もちろん、
女が怖かったというのもありましたが、
それよりも、
シゲジの最後の言葉が恐ろしかったのです。
俺たちは、
3人で町へ飲みに行った帰りに女を拾いました。
3人足す1人で4人。
ところが、女を拾った後、
車には5人乗っていたのです。
運転席に俺、助手席にシゲジ、
俺の後ろにキイチ、後部座席の真ん中に女。
もう一人、助手席側の後部座席に
男が一人座っていました。
俺もシゲジもそれを憶えています。
でも、男の顔も姿も全く記憶にないのです。
なのに、シゲジの言葉を聞くまで、
不思議とは思っていませんでした。
そのことを考えると、今でも背筋が寒くなります。
未来【怖い話】
友達から聞いた話です。
4年程前、
その子のお兄ちゃんの彼女が妊娠したのですが、
お互いいつかは結婚したいと
思いながら付き合っていたものの、
当時兄は就職活動中、彼女も短大入学したてで、
「今は無理やよな」
「まだ時期早いわな」
と今回は見送りのようなあっさりした感じで
中絶したらしいです。
その後、
2人はうまくいかなくなり別れてしまいました。
しばらくして、
彼女は他の人と結婚したそうです。
そして最近その兄がこんな夢を見たのです。
公園で3歳くらいの女の子が
一人でブランコを漕いでいる。
兄は普段子供に話しかけたりしないが、
ごく自然に
「お名前なんていうの?」
と話しかけた。
髪がサラサラして目の大きな可愛い子だった。
真正面から兄を見上げると、
「みくちゃん。産まれてたらこうなってたの。」
と言って突然大きくブランコを漕ぎ出した。
ブランコは垂直の高さまで上がり、
頂点で女の子はポーンと投げ出され、
逆さ吊のようになったまま、
空へ吸い込まれていった・・・。
その夢を見てからしばらくして、
兄は昔の彼女に電話してみたそうです。
すると
「実はおめでたで、今5ヶ月やねん」と。
とりあえずおめでとうを言い、男か女か聞くと、
「まだわからんねんけど、
女の子やったら未来と書いて、みくにしたいねん」
と彼女は言ったそうです。
自分が中学くらいの時から女の子には絶対
「みく」
と付けたかったのだと。
兄が自分の見た夢の話をすると
彼女は電話の向こうで黙りこんでしまいました。
結局、
彼女は女の子が生まれたのですが、
違う名前にしたそうです。
この話を聞いた時、
怖いというより可哀相と思ったのですが、
後でじわじわ怖くなってきました。
生贄になった止ん事無き血族の友人【怖い話】
話の出所はちょっとぼかしてしかかけない
信じる信じないは自由です
某県にすんでいるのだが、
自称やんごとなき血族の友人がいた。
すでに鬼籍にはいってしまったのだが、
実に信じがたい話なのだが聞いてほしい
自称やんごとき血族の友人Aとは
幼稚園のころからの付き合いだった。
地元でも名士で、
かなりの土地とかなりの資産をもっている
友人Aは長男で、
ゆくゆくはその家を継ぐだろうと思っていた
高校2年の夏に
進学のことや将来のことで色々と話す機会があった
友人Aはにこにこ笑いながら、
「俺の将来はきまってるから・・」
あまり裕福でない私はまぁ正直
家が金持ちでいいなぁと思っていた
今から思えば、地元の名士であるはずの長男が、
普通の中学、高校に通って自由に遊んでいたのも、
友人Aの末路がわかっていたので
親や親族が自由にさせていたのだろうと思う。
高校3年の夏すぎから
友人Aの様子があらか様におかしくなっていった
自暴自棄というか、
何もかもどうでもいいような発言と行動が
目に見えて多くなっていた
受験のノイローゼか
年齢的におこる不安定だと思っていたが、
実はそうではなかった
卒業して見事に私は浪人になり、
ぶらぶらろくでもない生活を送っていた
友人Aとは何ヶ月か連絡を取っていなかったが、
クリスマス前に突然友人Aから連絡があり、
ひさしぶりに会うことになった
何ヶ月ぶりあったの友人Aの姿は
異様というか異常というか髪は白髪まじりで、
頬骨がういて見えるくらいげっそりとやせていた
たった数ヶ月で人間の容姿が
ここまで変わるものかと
ひどく驚いたのをいまでも覚えている
近所の公園で寒い風の吹く中
暖かいコーヒーをすすりながら
私「おー ひさしぶり 卒業式以来 なにかあったの?」
友人A「ちょっと話を聞いてほしくてな
なにも聞かないで俺の話をきいてくれ」
私「・・・病気かなにかか?」
友人Aのあまりに変わり果てて
やせ細った姿を異様におもった私は自然ときいていた
友人A「・・・いや、ちがう・・が関係はある
この話はお前にしかいわない」
そういうとAは左手でコートをちらっとめくった
友人Aの右肩から先にあるはずの右腕が見当たらなかった
あまりの衝撃と予想もしなかった状況に言葉を失っていたら
友人Aがぽつりぽつりと ある物語を話だした
とある公家の当主が、
大きく変わる世の中と自らの家系が耐えてしまうのを恐れ、
ある神社の神主に相談をした
その神社の神主は、
当主の相談に3つの条件を承諾すれば
未来永劫家系と田畑がまもれるといった
その条件とは、
1.神主の娘を娶り神主の血筋も絶やさない
2.代替わりごとに贄を差し出すこと
3.ある箱を守り続け その代の当主がその度作り直すこと
そういうとその神社の神主は、その当主に娘をわたし、
ある箱をわたすと自らの命を絶った
ほんとはもっと細かく長かったが、要約しました
そういう物語だった。
クリスマスの時期のくそ寒い公園で聞かされて
気持ちのいい話ではなかった
私「・・その話はなにか意味があるのか?」
友人A「・・・代わり事の贄は長男 つまり俺・・・・」
私「何だそれ・・お前の腕とか いきなり変な話とか・・」
友人A「・・まぁきいてくれ 俺は来年の夏までに死ぬ・・」
友人A「・・ただ誰かに話を聞いてもらいたかったんだ」
私「その腕とはどうした? そのやせ方は異常だぞ 病院にいけ」
友人A「腕は・・ 腐って落ちた
食っても食ってもどんどんやせていくんだよ」
言葉につまっていると友人Aは
死にたくない つらい 助けてくれ
と2時間以上泣き喚いた
そうこうしているうちに友人Aが
「ありがとう」
といって深く頭をさげて帰っていた
今月あのまま連絡がなく、
こちらから連絡がつかないまま、
友人Aの訃報を受けた
葬儀にあつまってきた学校の友人たちから事故死と聞いた
いまだに 心に整理がついてないのだが、
友人Aの父親と母親がよくやったと泣いていたが
いまだに耳からはなれない