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2018年04月12日
俺の地元には絶対に入ってはいけない温泉がある
俺の地元は、温泉で有名な所なんだが、
そこに1ヶ所だけ、いわくつきというか・・・、
絶対に入ってはいけない
とされる温泉がある。
昔、そこでの掘削作業中に事故があったとかで、
そこで起った話を。
当時、都会の大学に通っていた俺は、
某県の田舎の実家に帰り、
集落に残って農家を継いでいたA、
地元の大学に進み、同じく帰省していたB、
と再会した。
小学校時代からの幼馴染だった俺らは、
20歳を越えてから初めて会うこともあって、
酒も入り、夜中まで騒ぎまくった。
午前2時を回り、さすがにトーンダウンし、
「そろそろ解散するか」
と言い始めた頃、
突然、俺の頭の中に、例の温泉のことが思い浮かんだ。
何故だかは分からない。
小学生の頃にAの言い出しっぺで一度だけ、
3人でその温泉の近くまでは行ったことはあった。
入ろうとしたところを、たまたま山道を
トラックで降りてきたおっさんに見つかって怒鳴られた。
その場でトラックに乗せられ、
「あそこは入っちゃいかんだろうと親から教わらなかったか!」
と何度も怒鳴られた。
山を降りると電話で親を呼ばれ、お袋が引き取りに来た。
もちろん家に帰った後も、
親父と一緒になって散々叱られるのだが、
どうしても納得出来なかった俺は、
その晩、寝る時お袋に、
「大人になったら入ってもいいの?」
と聞いた。
お袋は、
「あんたが大学に行くくらい大きくなったらね」
とだけ言った。
もちろん、
寝る前に発した冗談だったのだろうが、
その一言を俺は何故か、忘れることが出来なかった。
ふと、あの温泉に行きたくなった。
あの時のお袋の一言を信じるわけではないが、
また3人で昔みたいに冒険したくなった。
帰り際、2人にその話をぶっちゃけると、
意外にも承諾してくれた。
2人とも、昔みたいにみんなで冒険したいのだと。
しかもAによれば、
今は昔ほどタブーな地ではなくなっているらしく、
周囲の山道が整備されたせいか、
1年に数回は勘違いした観光客が
温泉につかるまでにいかなくても、
足を踏み入れてしまうらしい。
もちろん彼らの身には、特に何も起っていない。
地元の連合がしつこく電話して確認している。
ただ、
今から行くのは流石に気が引けるので、
3日後の昼間に行くことで、2人とその晩は別れた。
出発当日、
俺たちはその温泉がある山に足を踏み入れた。
山道をアスファルト道に整備する過程で、
木をだいぶ伐採したのか、小学生の頃よりは、
日光が入ってくるようになっていた。
暗さからくる怖さは、ずいぶんと安らいでいる。
2kmほど歩くと、例の温泉に入る山道が見えてきた。
山道の入り口の、
「この先、危険、入るな」
という木の立て看板を無視し、
ずんずんとその山道を歩く俺たち3人。
○○温泉と消えかかった文字で書かれた
木の看板が見えると、ようやく脱衣場になるよう
造ったであろうスペースに到着した。
かなり昔のものだがら、
蜘蛛の巣が張ってるわ、足場は悪いわで、
もう無茶苦茶だった。
だが、肝心の温泉はちゃんと湧いており、
ぎりぎり奥が見えるかどうかの透明感がある。
ただ、管理されていないだけあって、
温度は50℃から60℃だろうか。
相当熱かった。
流石に入浴するのは無理なので、
足湯だけで済ますことにした。
足湯でくつろいでいる途中、
一番、この温泉の歴史や怪奇現象に詳しいAが、
色々と話してくれた。
その昔、
この町が温泉バブルに沸き、
いい湯が湧き出てるとされるこの地も、
整備しようという話になったようだ。
整備は順調だったが、ある日、
掘削機器の不備による事故で、
かなりの死傷者が出たこと。
その後、作業を再開し、
なんとか完成にこぎつけたものの、
作業中は怪我人や体調不良になる者、
怪しい人影などを見た者が多発し散々だったこと。
完成し、営業を始めたはいいものの、
怪奇現象が多発したこと。
入浴していると、いきなり湯の中から足を掴まれる。
いきなり作業着を着たおっさんが入ってきて、
そのおっさんと目が合うと、のぼせ気味になり失神する。
いきなりお湯の温度が上がり、湯船から出ようとするも、
金縛りに遭ったように動けず、大やけどを負う。
髪を洗っていると、肩に誰かの手の感覚。
だが、振り向くと誰もいない。
などなど・・・。
結局、重傷を負う人も出てきたので、
町が強引に閉鎖させたらしい。
だが俺たちがいる間は、そのような現象も起らず、
「もう事故から何十年も経っているから、
祟りも薄まってきてるんだろうなぁ」
ということで、
笑いながらその温泉を後にした。
しかしその晩、
俺が家の風呂に入ってる時から、
事態はおかしくなっていく。
その晩、
いつも通りに風呂に入ってくつろいでいた俺。
髪を洗おうと、シャンプーを頭の上に泡立てていた時だった。
頭の上で増えていく泡に、違和感を感じた。
明らかに手の平の上に取ったシャンプーの量に比べて、
泡立ちすぎなのだ。
「よく泡立つシャンプーにでも変えたのかな」
と俺が思っているうちに、
泡は異常な速度で増えていく。
異常を認識し、目を開けた瞬間、風呂中に泡立った泡が、
俺の顔を覆い尽くしてしまった。
いざ泡に囲まれてみると分かるが、
圧迫感が凄く、息が出来なくなってしまうのだ。
泡一面の中、なんとかドアに手を掛けようとするも、
目がやられてしまい、なかなか手が届かない。
やっとのことで手が届いたものの、今度はドアが動かない。
家の風呂のドアには、鍵など付いてないというのに。
完全に手詰まりになり、命の危険を感じ始めた俺は、
必死に親父やお袋のことを叫び始めた。
そして足をバタつかせ、
なんとか自力でもドアを開けようと試みる。
その時、誰かが俺の足を掴み、
ドアとは反対側の方向へ引っ張り始めた。
「冷たい手だ」
「間違いなく風呂の中に、誰か他にいる」
家の風呂は、
俺がギリギリ横になれるくらいの広さしかないのだが、
その時は長い間、足を掴まれ引きずられた記憶がある。
その手の主は、俺をどこに連れて行こうとしていたのか。
数秒後、
叫び声を聞いて駆けつけた親父によって、
失神している俺が救出された。
ただ、
現場を見たはずの親父によれば、
大量の泡なんて全くなかったし、
もちろん風呂の中には誰もいなかった。
俺がそこに失神していただけ、
ということだった。
約1時間後、
意識を取り戻した俺は、これは間違いなく、
あの温泉の祟りだと確信した。
すぐにAとBに連絡を取り、Aとは連絡がついたが、
B宅に電話を掛けると、とんでもないことになっていた。
電話に出たBの妹が言うには、
Bが風呂で滑って転び、
ドアの縁の部分に頭を強く打ちつけ、
意識がないのだということ。
すぐに2人で病院に行き、
一晩中を病院で過ごしたものの、
結局、Bの意識は戻らなかった。
次の日の夜、Bは死んだ。
昼間には俺たちの問いかけに反応するまで回復したのだが、
夜になって容態が急変し、そのまま亡くなった。
Aに俺の経験したことを報告し、
これは間違いなく祟りだろうと伝えた。
Aは昨日の晩、
風呂に入る前に俺から電話がかかってきて助かっていたが、
祟りだろうという認識は一致した。
しかも、AはBの妹から、とんでもないことを聞いていた。
Bは、あの温泉に行って足湯につかった時、
何者かに足を掴まれていたという。
Bは俺らを不安に思わせないよう、黙っていたのだろうか。
Aと俺は、強く責任を感じた。
タブーではなくなっているというデマを教えてしまったA。
そもそも、最初に行こうと言い出した俺。
結局、
それで一番関係のないBを巻き込み、死なせてしまったのだ。
Bの家族にこのことを伝えたら、どんな顔をするだろう。
Aと俺は、しかるべき時が来るまで黙っていようと一致した。
しかし、
Bの妹が誰かに言いふらかしたのか、
Bが例の温泉の祟りで死んだということは、
田舎のこの町に噂として、あっという間に広がった。
もちろんそれは、あの日、
俺が風呂で失神していたのを救出した、
俺の両親の耳にも入ることになった。
しつこく問い詰められた俺は、
ついに、あの日3人で例の温泉に行ったことを
白状することになった。
すぐに、Aの家族、Bの家族と俺の家族、
地元の温泉連合の人たちが集まることとなった。
Bの母親は、俺とAを白い目で見つめていた。
連合会長の爺さんに、会合が始まるや否や、
「ったく、お前は、 あれほど立ち入るなと言ったのに!」
と怒鳴られた。
連合の人たちから、
「あの温泉の怨念は、 弱まるどころか年々高まっており、
観光客が立ち入ってしまうのもそのためだ。
立ち入った観光客は、 何者かに引き寄せられるかのように
あの温泉に入ってしまったと、 皆話している」
と聞かされた。
そして、あの温泉の名は、こちらの地方の古い方言で、
「二度目、再び」
という意味であり、祟りも二度、
あの温泉に立ち寄ったものに降り注ぐというのだという。
会長さんは、
「Bは一度目か二度目かは知らないが、
何かあの温泉の霊たちにとって、
気分を害することをしてしまった のかも知れない」
と言った。
さらに、Bのお袋さんからも、とんでもないことを聞かされた。
小さい頃、
俺らが温泉に入ろうとしたところに、たまたま通りかかった、
俺らを連れ戻したトラックに乗ったおっさん。
あの人は、てっきり地元の人だと思っていたが、
Bのお袋によれば、あんな人は見たことなく、
当時、AとBの母親も、不審に思っていたという。
そして、
連合の人に相談し、もしやと思い、
例の温泉の事故によって亡くなった人の写真を見ていくと、
おっさんとよく似た人物がいたのだとか。
「あの温泉に立ち入るなと、 わざわざ警告してくれた・・・。
それなのに・・・」
Bのお袋は泣き崩れた。
連合の人によれば、
「この地から、なるべく離れること。
お祓いされた桶を渡すから、
それを風呂場だけではなく、
事故の危険がある水場の近くに行く時は、
なるべく持ち歩くことが祟りを絶つ方法」
だと教わった。
俺と両親は、
この地を離れる覚悟をした。
これが大体の経緯です。
Aも、あの土地を離れようとしたのですが、
両親から、
「代々農家として暮らしてきた 私たちも、
あんたも、 都会に出て暮らせるわけがない」
と猛反発を受け、結局、
残ることになってしまいました。
それからは、
周りからの避けるような視線、
Bを死なせてしまったことへの責任感、
色々なものが積もっていたのでしょう。
数回、
その土地から離れたところでAと会ったのですが、
その苦悩はよく分かりました。
自分も、AだけにB死亡の事故の責任を取らせまいと、
必死に励ましたのですが、Aは昔から悩みを自分だけで
抱え込みやすいタイプなので、
なかなか事態はいい方向へ進展しませんでした。
Aが、このままではどうにかなってしまうのではないか、
と思っていたのですが、
ちょうど就職活動で多忙なこともあり、
結局、最後の1年は、Aとは会えずじまいでした。
Aが自殺した・・・
と連絡を受けたのは、なんとか就職も決まり、
もう一度Aと会おうとしていた矢先のことでした。
もちろん葬式には出させてもらえなかったので、
断片的にしか情報がありませんが、
風呂の中でリストカットし、死亡していたとのことでした。
その場にお祓いされていた桶があったかどうかは分かりません。
ただ、
A自身の意思で自殺という選択肢を選んだとすれば、
それはもはや、祟りとは関係なくなってしまいます。
何者かに引き寄せられるように
風呂場での死を選んだとしたら・・・。
やはり、祟りということになってしまいます。
死亡に至る経緯はどうあれ、
結局、自分は2人の親友を亡くしてしまいました。
この事件のきっかけを作ったのは自分です。
そして、Bがその煽りを食らった形になって死にました。
自分だけが逃げることが出来る立場なのをいいことに、
Aを放置して、結局Aまでも死なせてしまいました。
桶のおかげか、
今でも周りに不可解な現象はあまり起きません。
しかし最近になって、
自分は、もはや○○温泉の霊よりも、
AとBの2人に祟られているような気がしてきました。
今でも、あの温泉はあるのでしょうか。
自分にはよく分かりません。
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2018年04月03日
霊能者のアシスタント
霊能者のとこでバイトしてた時の不思議なこと書く
実際に俺が経験した除霊的な儀式の話
とある霊能者のとこで
アシスタント初めて数ヶ月経った初夏の日
学食でダラダラしてたら霊能者に持たされたPHSが鳴った
今日の夜8時に家に来い、赤ワイン一本買って来い、と
俺は安物の赤ワインを買って指定された時刻に霊能者の家に行った
霊能者の家に着くと、俺はいつもの通りに到着を知らせる
裏口の横にあるブザーのスイッチを押して来訪を知らせて、
母屋の裏にある待機小屋に行く
しばらくすると霊能者が来て、
俺に指示をだすってのがいつもの流れ
その日も俺が到着して部屋で待機してると霊能者がやってきた
この霊能者ってのが見た目はちょっと派手だけど普通のおばさん
デブでもブスでもなくて見た目で言えば
キレイ目な40半ばくらいの女性
ただし性格はこの上なくエキセントリックだった
その日はまず車に荷物を積むように指示された
荷物の内容はゴチャゴチャ小物が入った
大きいブランド物のカバンがいくつか
それと白木で作ったテーブルのようなもの
あとは除霊時のお約束グッズのラジカセだった
俺は指示の通りに仕事用のワンボックスカーに機材を積むと
霊能者を乗せて指示された場所に車を走らせた
指示された場所は結構近所にある
史跡的な公園というか広場のようなところ
敷地の中に資料館的なものや
林やら公園的な広場があるところ
そこの来客用駐車場に車を止めると、
正門のところにオッサンが立っていた
そのオッサンがここの責任者なのか依頼主なのか知らないが
うちの霊能者と話し始めた、俺は車で待機してた
手招きされて俺も呼ばれ、
敷地内の丘のようなところへ車を移動させ
しばらくそこをうろついた霊能者の指示で祭壇を組み立てる
祭壇って言ってもさっきの白木の机に塩やら線香やら
その時の霊能者の気分と指示でいろいろ置かされる
そして準備が終わると俺は車を置いてくる
そしてその間に霊能者自身が
自分の気の済むように準備を済ませておく
いつもそんな感じだったしその時もそうだった
そして俺が戻ってくると、
俺がしゃべることは許されないのがお約束だった
霊能者に言いつけられていたことは儀式が始まったら
・お前は喋るな
・お前はできる限り動くな
・もしなにかお前が異常に気がついたら
私の視界に入らないように
後ろから腰を二回叩いて知らせろ
・私がなにか指示したら その通りに動け
こんな感じのことを言われていた
そして儀式が始まった
ラジカセから流れる
一定のリズムに合わせて霊能者のおばちゃんが
俺に聞こえるか聞こえないかの声でなにかつぶやきながら踊る
これはいつものことだったが、
そのときは俺が買ってこさせられた赤ワインを
時折撒きながら踊ってた
そしてさほど長くもない時間、
5分くらいだったんじゃないだろうか?
これもいつものことなんだけれど
霊能者のテンションが上がってきて
ワインを激しく振りまいたり
浴びたりしながら踊りが激しくなる
そして霊能者がワインの瓶を放り投げて急に動きを止めた
その時の俺は、
今日は案外早く終わったようだ、と思っていた、が
その時霊能者が俺の方に向き直って手招きしたあとに
ゆっくりした動作で少し離れた資料館の建物を指さした
資料館の外灯で薄ぼんやりと見える
外壁のところに1人の女性の姿が見えた
顔まではわからないけれど黒っぽい服を着た女性がいた
俺は正直言って、
イタイことしてるところを見られた恥ずかしいと
瞬時に思ったが
霊能者はその女性を指さして俺にこう叫んだ
つかまえろ!!と
俺はやべえ、変態扱いされる、
女性を捕まえたらワケを話して謝ろう
でも指示通りにしないと怖いのでその女性に向かって駆け出した
儀式してた丘の中腹からその資料館までは
100mくらいだったんじゃないかな?
その中間点位に俺がたどり着くまでその女性は動かなかった
でも、もうすこしで表情が見えそうな距離に来たところで
その女性が逃げ出した
資料館の奥の方にある膝丈くらいの草が生えた藪のようなところへと
俺は足が結構早いほうだと自負していたけど結局は
追いつけなかった
不思議なことにその女性は焦って逃げている感はなくて
常に一定の距離を置きながらスイスイ歩いているような感じ
ちなみに足はあったw
30mくらいだろうか、
その距離を保ったまま女性は藪の中に走っていく
そして俺が藪のところにたどり着いた瞬間女性が消えた
その時の俺は、うおおお、逃げられた!!
と単純に思っただけだった
そしてその藪のあたりで女性が出てこないかウロウロしていると
霊能者がやってきて俺にこういった
バカだね、逃げられたじゃないか!
あれが今回のターゲットだったのに って俺に言った。
俺は普通の女性だと思ってたけど、あれは霊だったらしい
霊能者はいつも俺に仕事の細かい内容は話さない
何をしてるのか?相手はなんなのか?
そんなことを話してもお前には意味ないし
余計面倒くさいことになるだけだから、
と霊能者はいつも俺に言ってた
でも霊能者は俺にその時はこういった
お前があれに触れてれば
一番いい解決だったんだけど仕方ないね、と
俺が、でもあれは普通の人で
やべえから逃げただけじゃないの?
と聞き返すと
そうかもしれないね、
でもお前はあれの顔が見えたかい?
というようなことを言い返された
その後霊能者は、地ならし?するからと言って
その藪で塩を撒いて歩き始めた
しばらくその行為を眺めてたら霊能者が、
片付けな、というので 俺は車を取りに行って
荷物を積み込み正門横まで戻った
出迎えた責任者に霊能者は、
とりあえず終わりましたけど また何かあったら連絡をください、
と言って車に乗り込んできた
そして霊能者の家まで送り届けて片付けをし、
控えの離れで待っていると
霊能者がやってきて
今日はお前はヘマをしたからと言い
1万だか2万だか貰った
あとは帰る前にこれを飲んでから帰れと
塩っぱいお神酒をもらって飲んだ
家に帰るときに空を見ると白み始めていたから
朝の4時くらいだったんだろう
その金でデニ〇ズでハンバーグ食って帰ったのを覚えている
俺には霊能力なんてものはないらしい、
が、霊らしきものをはっきり見たのは
今のところあれが最初で最後だし、
あの時も正直アレが霊だなんて俺は思ってなかった
オカルト話や怪談は大好きだけれども
俺にとっての実際の霊体験は
こんな微妙な不思議といえば不思議な話しかない
一度でいいからゲゲゲの鬼太郎や
ぬ〜べ〜やまとめで読んだ霊能者のような
冒険活劇を繰り広げてみたかったと思ってるw
2018年04月01日
寺に宿泊
山寺での修行中、
僧侶たちの多くは変な体験をしたり・見たりするらしい。
その体験談もかなり薄気味悪いが、今日は別な話を書くとしよう。
わたしが子供の頃、
近くの寺にひとりのお坊さんが住んでいた。
子供好きで、話し上手。
檀家の誰もがこの坊さんのことを尊敬していた。
人相は悪いが、そこにいるだけで
「ありがたい」
と思えるような坊さんだった。
ある年の夏休みのことだ。
近所の友だちと寺の境内で遊んでいると、
その坊さんがスイカを御馳走してくれた。
坊さんと、わたしと、友だち3人で縁側に座り、
蝉の声を聞きながら他愛もない話しをしていた時、
友だちのkが
「幽霊って本当にいるの?」
なんて質問をした。
いるさ。
坊さんはあっさりそう答えた。
そんなものいるハズないと声を張り上げるkとわたしに、
坊さんは今夜泊まりに来るよう誘った。
両親に寺に泊まる許可をもらったわたしとKは、
わくわくしながら夕飯を食べ、暗くなってから寺を訪ねた。
すると坊さんは麦茶を一杯飲ませてくれた後、
わたしたちを本堂へ連れて行った。
これから夜の御勤め(読経)をするから、そこに正座して静かにしてなさい。
わたしたちは坊さんの後ろに並んで座り、
嫌々ながら読経につき合わされるハメになった。
子供にとってそれは恐ろしく退屈で、足の痺れる苦痛な時間だった。
だが悪ふざけをする訳にはいかない。
この坊さん、子供好きで優しいが、悪いことをすると容赦なく叱るのだ。
それを身にしみて知っていた私達は、
黙ってお経が終わるのを待つしかなかった。
読経が始まってしばらく経った時だ。
本堂の入り口、つまりわたしとKのすぐ後ろで物音がした。
何の音だろうと耳をすましていると、どうも人の足音のように聞こえる。
しかも靴の中にたっぷり水を入れたまま歩いているような、
グチョッ、グチョッ・・という足音だ。
それから、誰かにジッと見られているような嫌な感覚。
思わず背筋がゾッとしてKの方を見ると、
彼も同じものを感じたようにわたしを見ていた。
和尚さん・・・助けを求めるように
わたしたちは小声で坊さんを呼んだ。
が、坊さんは左手をちょっと揚げてわたしたちを制した。
そのまま大人しくしていろ・・・
そう合図しているようだった。
読経の間中、
その不気味な足音と視線は続いた。
これからどうなってしまうんだろう、
わたしたちは訳もなく不安になり、半ベソ状態だった。
やがてお経が終わると、正体不明な音も視線も、綺麗に消えた。
私達は緊張の糸が切れた勢いで坊さんにしがみついた。
夜、御勤めの読経をしていると、
成仏できない仏様がたまにやって来るらしい。
今夜来たのは、
おそらく3年前に近くの川で身投げした身元不明の女の人。
毎年、同じ月日の同じ時間にやって来るのだという。
幽霊がいるかいないかは分からない。
信じる人も信じない人もいる。
だが、こういう奇妙な体験をしてしまうと、
坊さんを続けなくちゃいけないと思うね。
坊さんは静かにそう言った。
2018年03月31日
三角屋敷【怖い話】
よし18年ちかくだれにも話したことない話をしよう
実話なので地名は伏せます
直接かかわったわけではないので
何がどうという詳細はよくわかりません
ちょっと複数の事象が絡んでいて
なおかつ 思い出しながらかいてるので申し訳ない
現在はもうその土地を引越して私はすんでおりません
いつのころかあるのかは知りません。
私が小学校に通い始め物心ついたころには
その家はすでにありました。
結構田舎で学校に通うのに
あぜ道を毎日かよっていました
その途中にある一軒の家の話です。
その家は昔からあるというわけではなく、
和風建築の割とあたらしい家でした
小学校1年〜5年生までの間はなんの噂もなく、
私も気にとめておりませんでした。
5年生の夏の時期にA君が転校してきてから、
その家が、なんなのかわかりました。
その家の話を書く前にひとつ予備知識として、
その家のお向かいの家について説明しないとなりません。
便宜上お向かいの家を家A 問題の家を家Bとして書きます
問題の家の立っている区画は私が生まれるころくらいからの
いわゆる新興住宅地とよばれるところでした。
実際に家が建ち川が整備され畑もなくなっています
さて家Aについてですが、非常に奇妙というか異常というか
玄関のどまん前に 祠 がたっております。
どれくらいどまん前かというと玄関あけて1メートルの場所
道路-門-階段-祠-玄関という普通の1戸立ての家で
でかい屋敷というわけでもありません。
なぜそんなことになっているのかというと
私が聞いた話では 家を建てたのは
そこに土地をもっていた方でむかしから住んでいたと
元々は田んぼでとりわけなにかしら
因縁話もなかったと聞いております。
新しく県道が通るためにその土地を売って
自宅もまぁ開発のために立て直したとよくある話です。
そのさいにその場所にあった道祖神ですかおじぞうさまも
丁寧に祈祷して場所も移しました
家Aは何事もなく新築でたち
その家の方も普通に住むようになりました。
しばらくしてある日を境に家Aの中で
赤ん坊の泣き声がするようになったそうです。
家の人は最初近所に赤ん坊のいる家族が近くに
引越してきたのと思ってたそうなんですが、
夜昼関係なく一日中聞こえるようになって
これはおかしいと思ってご近所にたずねたみたいです、
するとご近所の人全員
近くに赤ん坊のいる家族が引っ越してきたと。
家Aの人と近所の方が声の発生場所を探しあてたところ、
家Aの地下から声がすると大騒ぎになりました。
いろいろお祓いとかやったそうですが効き目がなく、
偉い霊能者さんかお坊さまがお地蔵様が原因なので
もとの場所にもどしなさいと
そういった行き先で家Aは私たちの間では
かなーり有名な場所でした。
小学5年生の時に引っ越していたA君は
そのいえの向い側の家Bにすんだ友人でした。
A君はたしか1ヶ月もしないうちに家Bから引越しました。
まぁその時はとくに何事もなかったように時間はすぎ、
小学5年の冬のときに私はべつの土地にうつりました。
生まれ育った場所であり幼馴染もいましたから、
しばらくは連絡をとっていましたが、
進学し、社会人になりすっかりわすれていました。
先日 幼馴染が結婚するということで
10年ぶりくらいに生まれ故郷にもどり再会しました。
昔話に花をさかせてわいわいとしてましたが、
私があの地蔵の家まだあるなぁ
といった所から話が変わっていきました
ここからは友人Bの話ですが
「地蔵の家よりそのむかいの家おぼえてるか?」
と無論A君家族がたしか住んでたなと答えました
「すぐに引越したの知ってるか?」
もちろん私が転校する寸前だったんで覚えてると答えました
「なんでか知ってるか?」
それは知らないなと答えました。
どうもその家Bはなにかしらが出るというのです。
10年ほどの間に10世帯以上が出たり入ったり、
ボヤが3度あったそうです。
A君家族が引っ越したのもそのひとつだと
原因はまったくわからないそうですが
友人Bいわく
あの家に1ヶ月以上住んでいた家族はいないと
A君家族は何番目に入居したかはしらないが、
家の中で 老婆が徘徊していたり庭に女の子がうろうろしていたり
屋根に男がたってじっと外をみていると
A君のお母さんが精神的にまいって家を引っ越したと。
そのあとも何度かお祓いをしたと聞いたけども全然おさまっていないと
高校の時にTV局かラジオ局かが霊能力者をつれて撮影をやったらしぃが
霊能者がその家の敷地に入るなりぶっ倒れて大騒ぎになって
そのままおじゃんになったと。
私は家Bてなんだよ?
ときいたら
「生まれた時からすんでる俺らもわからん。
ただお墓の土つかってるとか地下に死体うまってるとか
噂はあるけどどれもほんとかは怪しい。
ただ事実として人は定着しないし、
俺も窓に何人も人がたっていてこっちをじっとみてたのをみたことある。
あそこは何かおかしい。
あぁそうだ家Bてさなんて呼ばれてるかしってるか?」
私「知るわけないだろう」
友人B「あそこの家ってさなんでか知らないけど敷地が三角形なんだよ
だから三角屋敷て今よばれてんだ。 今も空き家だぞ
帰るときに見たらいいよ」
そういう感じで別れ帰路に着きました
もちろん気になったので帰りに家Bの前をとおりのぞきました。
県道沿いのその家の前には 土嚢がつんであり
入り口が見えない状態になってなっていました。
見た瞬間にあからさまにおかしい
それ以上はちかずかないようにして家にかえりました。
その話をきいて思い出したことがありました。
10年以上たって記憶がおかしくなっていたのかとおもっていましたが
あの家Bの屋根の上に何人も人が立ってこっちを見ながら
ゲラゲラ大笑いをしてたのを
集団下校してた友人たちと見て泣きながら
はしって帰ったことがあったなと。
2018年03月27日
廃寺に潜む何か 【怖い話】
もう10年くらい前、
俺がまだ学生だった頃の出来事。
当時友人Aが中古の安い軽を買ったので、
よくつるむ仲間内とあちこちドライブへ行っていた、
その時におきた不気味な出来事を書こうと思う。
ある3連休、
俺たちは特にすることもなく、当然女っけもあるわけもなく、
意味も無く俺、A、Bで集まってAのアパートでだらだらとしていた。
そしてこれもいつものパターンだったのだが、
誰と無くドライブへ行こうと言い出して
目的地もろくに決めず出発する事になった。
適当に高速へと乗ると、なんとなく今まで行った事の無い方面へと
向かう事になり、3〜4時間ほど高速を乗りそこから適当に
一般道へと降りた。
そこから更に山のほうへと国道を進んでいったのだが、
長時間の運転でAが疲れていたこともありどこかで一端休憩して
運転手を交代しようという事になった。
暫らく進むと車が数台駐車できそうな
ちょっとした広場のような場所が見付かった。
場所的に冬場チェーンなどを巻いたりするためのスペースだろうか?
とりあえずそこへ入り全員降りて伸びなどをしていると、
Bが「なんかこの上に城跡があるらしいぞ、行ってみようぜ」
と言ってきた。
Bが指差した方をみると、ボロボロで長い事放置されていただろう
木製の看板があり、そこに「○○城跡 徒歩30分」と書かれ、
腐食して消えかかっていたが手書きの地図のようなものも
一緒に描かれている。
どうも途中に城跡以外に何かあるらしいのだが、
消えかかっていて良く解らない。
時間はたしか午後3時前後くらい、
徒歩30分なら暗くなる前に余裕で戻ってこれるだろう。
俺たちはなんとなくその城跡まで上ってみる事にした。
20分くらい細い山道を登った頃だろうか、
途中で道が二手に分かれていた。
看板でもあれば良いのだが、
あいにくそういう気の効いたものはなさそうで、
仕方なくカンで左の方へと進んでみる事にした。
すると、
先の方を一人で進んでいたAが上の方から俺たちに
「おい、なんかすげーぞ、早く来てみろ!」
と言ってきた。
俺とBはなんだなんだと早足にAのところまで行ってみると、
途中から石の階段が現れ、更にその先には城跡ではなく
恐らく長い事放置されていたであろう廃寺があった。
山門や塀、鐘などは撤去されたのだろうか、
そういうものは何も無く、本殿は形をとどめているが
鐘楼やいくつかの建物は完全に崩壊し崩れ落ちている
本殿へと続く石畳の間からは雑草が生え、
砂利が敷き詰められていただろう場所は
一部ほとんど茂みのような状態になっていた。
ただ不思議なのは、山門などは明らかに
人の手で撤去された様な跡があったにも関わらず、
残りの部分は撤去もされず朽ちていてかなり
中途半端な状態だった事だ。
時間を確認すると、まだまだ日没までは余裕がありそうだ
俺たちはなんとなくその廃寺を探索することにした。
が、周囲を歩き回っても特に目に付くようなものはなく、
ここから更に続くような道も見当たらず、
Aと「多分さっきの分かれ道を右に行くのが正解なんだろうなー」
と話していると、
本殿の中を覗き込んでいたBが「うおっ!」と声を挙げた。
Bの方をみると本殿の扉が開いている。
話を聞いてみると、だめもとで開けてみたら
すんなり開いてしまったという。
中は板敷きで何も無くガランとしている、
見た感じけっこうきれいな状態で中に入っていけそうだ。
中に入ってみると、床はかなりホコリだらけで
恐らくだいぶ長い事人が入っていないのが解る、
なんとなくあちこちを見回していると、
床に何か落ちているのが見えた。
近付いてみると、それはほこりにまみれ
黄ばんでしわくちゃになった和紙のようで、
そこにはかなり達筆な筆書きで
「うたて沼」
と書かれていた。
なんだなんだとAとBも寄って来たので、
俺は2人に紙を見せながら
「うたてって何?」
と聞いたのだが、2人とも知らないようだ。
そもそもこの寺には池や沼のような物も見当たらない。
本殿の中にはそれ以外なにもなく、
「うたて沼」の意味も解らなかった俺たちは、
紙を元あった場所へ戻すと、城跡へ向かうために廃寺を後にした。
元来た道を戻り、さっきの分かれ道を右の方へと進むと、
すぐに山の頂上へとたどり着いた。
ここには朽ちた感じの案内板があり
「○○城跡 本丸」
と書かれている、どうやらここが目的地のようだった。
山頂はかなり開けた広場になっており、
下のほうに市街地が見えるかなり景観のいい場所だ。
と、なんとなく下のほうを見るとさっきの廃寺も見えた。
3人でさっきの廃寺って結構広い敷地なんだなー
などと話していると、ある事に気がついた。
寺の庭を回った時に一切見かけなかったはずだが、
庭の端の方に直径数mくらい、大きな黒い穴のようなものが見える。
「あんなものあったっけ?」
と話していると、寺の庭に何か小さな動物が出て来ていた、
そしてその動物が庭の中を走り出した瞬間、
その穴のようなものが「動いて」まるで動物が穴の中に
消えてしまったように見えた…
わけが解らない現象を目の当たりにした俺たちは
「…今あの穴動いたよな?なんだあれ…」
と唖然としていると、更にとんでもない事が起きた。
その物体が突然宙に浮くと、
かなり高い距離まで上りそのまま移動し始めた。
その時になって、俺たちはあれが穴などでは無く、
真っ黒で平面のなんだか良く解らない物体である事に気がついた。
その平面状の物体は結構な高さを浮いて、
俺たちが来た道の上を山頂へと向かって進みだした。
その時、
恐らく移動する物体にびっくりしたのだろう、
木の間から大きめの鳥が飛び出し、
宙を浮く平面状の物体とぶつかった。
が、鳥はそのまま落ちる事も物体を通り抜ける事も無く
消えてしまった…
何がなんだか解らないが、とにかくあれは何かヤバそうなものだ、
そしてそのヤバそうなものは明らかに俺たちの方へと
向かってやってきている、その事だけは理解できた。
とりあえずここからすぐに退散した方が良さそうだ。
3人でそう話して気がついた、
あの物体は俺たちが登ってきた道沿いにやってきている
ということは、来た道を戻れば
確実に鉢合わせしてしまうという事だ。
とりあえず逃げようと言ったは良いがどうしたら良いのか解らない。
すると、
Bが「ここ通れそうだぞ!」
と茂みの方を指差した。
そこへ行ってみると、
近くまで行かないと解らないであろうくらい
細い獣道のようなものが下へと続いている。
ただし、この道がどこへ続いているか全く解らないうえに、
俺たちが登ってきた道とは完全に反対方向だ、
当たり前の事だが逃げれるには逃げれるが車からは遠ざかる事になる。
その事はAもBも解っていたのだろう、
この獣道を下るかどうか躊躇していると、
突然耳に違和感を感じた、感覚としては車で山を登っていて
気圧差で耳がおかしくなる感じが一番近いだろう。
AもBも同じ違和感を感じたらしく戸惑っている、
その時俺はふと下のほうを見た。
すると、例の物体はもうすぐそこ、
恐らく二の丸であろう平地の部分までやってきていた。
もう迷っていられるような余裕も無い。
俺は2人にもうあれが凄くそこまで来ている事を伝えると、
おもいきって獣道のある茂みを下る事にした。
2人もそれに続き、
殆ど茂みを掻き分けるように道を下っていくと、
後ろの方からAが
「ヤバイ、もうすぐそこまで来てる!急げ!」
と言ってきた。
俺が後ろを振り返ると、例の黒い物体が
もうあと10mくらいのところまで近付いてきている。
俺たち3人は最早草や木の枝をかき分けることすらやめ、
がむしゃらに獣道を駆け下りた。
どれくらい走っただろうか、
暫らくすると木の間から舗装された道路が見えてきた、
俺たちは泥だらけになりながらも必死で殆ど転がるように道を下り、
なんとか舗装された所までたどり付くことが出来た。
その時、
突然金属質の耳鳴りのような音が聞こえ、
次いで後ろから「バチンッ!」と
何かが弾けるような音が聞こえてきた。
びっくりして後ろを振り向くと、そこには例の黒い物体はなく、
爆竹か何かを破裂させたような、そんな感じの煙が漂っているだけで、
俺たちは呆然としてしまった。
その後、民家も無いような山道を散々迷い、
殆ど真っ暗になる頃にやっと最初に車を停めたところまで
戻る事が出来た。
結局その後もあれが何だったのかはわからない、
そもそもあんな体験をしてまた同じ場所へ戻る勇気などなかったし、
そんな事をしても俺たちに何の得も無かったからだ。
諭す【不思議な話】
七年前に勤めた会社が倒産し就職難の中、
運転手に転身したTに起きた事です。
最初は小さい2t車での仕事だったTも運転手に転身して
一年も経つと4t車に乗る様になり、
県内だけでなく県外にも足を延ばすようになった。
今から五年程前の雨の夜に隣県から帰る為に
県境の峠道を走っていたTは尿意を覚えて
山頂の少し手前の広い所にトラックを停めて用を足した。
雨は小雨程度だが霧が出ているし交通量も疎らな峠道にいつになく
嫌な雰囲気を感じていたが、用を足してスッキリしたTが
トラックに戻ろうと振り向くと・・・・・
助手席側に人が立っているのに気がつき一瞬身を固くする。
こんな真夜中に峠で人が?
恐る恐る観察するTに人影が振り向いた。
若い・・・二十代前半位の女性。
肩までくらいの髪も、どこかの会社の制服と思しき衣類も
全部が雨で濡れている。
思わず声をかけようとしたTより先に女が言葉を発した。
「峠を降りた○○まで乗せて下さい」
小さく、か細く・・・
しかしはっきりと聞き取れる声だった。
女の申し出に一瞬よく耳にする様々な怪談話を思い出すTだったが、
その女の何とも哀しく寂しそうな顔への同情が恐怖を上回った。
いいですよ、どうぞ。
そう言うとTは助手席のドアを開けてやり、女に乗る様に促した。
ステップを踏み手摺りに手をかけ女が乗り込む時、
ふとTは彼女の足元を見てやっぱりなと感づく。
助手席側や運転席側のドアを開けると
室内灯が点くようにしてあった。
光があたれば物体は必ず影を残すはずなのに
彼女には影が無かった。
だが不思議と恐怖を感じないままにTは彼女が助手席に座ると
そっとドアを閉め運転席へと乗り込み車を走らせた。
走らせながら彼女の横顔をチラチラと横目で伺う。
最初と変わらない寂しげな横顔のまま言葉もなく
ただ俯き加減に座っている。
意を決してTは彼女に勝手に、独り言のように話しかけた。
悲しい事とか色々あったりしましたか?
「辛い事、悲しい事、何があったのか僕には分かりませんけど
こんな所に居ては駄目です。
行くべき所があなたにはあるんじゃないですか?
僕にはしてあげられない事かもしれませんが。」
Tの言葉に彼女は反応を見せない。
この峠を下り彼女の望む所までにはまだ二十分はかかる。
その間もTは構わず一方的な会話を続けた。
「○○にはあなたの何かがあるのかな?
そこに行ってその後どうするんですか?
またあの峠に戻ってしまうのですか?
繰り返しては駄目だと思います。次へ進まないと。」
彼女はただ俯いたまま黙っている。
聞いているのかさえ分からないままTは話しかけ続け、
ようやく峠を下った。
突然彼女は前方を指差すと
「あそこで。」
とだけ言った。
なんの変哲もない住宅街への交差点だった。
Tはハザードランプを点けトラックを停めると彼女のほうを見た。
「ありがとうございました。」
微かに聞こえる声だけ残して彼女は消えてしまった。
そしてもう一言、
どこからともなく聞こえた「行きます」の声にTは
安堵のため息を吐き出し、再び車を走らせ無事に会社に帰った。
後日、Tはあの峠で起きた事件を同僚から聞いた。
十年前、情事のもつれから当時二十二歳の女性が絞殺され
死体が遺棄されていたのだと言う。
当時の彼女が住んでいた町こそTが彼女を降ろした住宅街だったそうだ。
その後あの峠で彼女を見る事もないままTは
三年前に子供をもうけ幸せに暮らしていた。
生まれた女の子も大きな病気や怪我もなく
明るい元気な子でTは溺愛し娘も父親を慕っていた。
そして今年・・・
峠の彼女の事も記憶から忘れていたTは再び彼女と再会する。
9月の半ば、夜中に目を覚ましたTが
喉の渇きを覚え台所で茶を飲み寝室に戻った時だった。
妻の横で寝ている愛娘が布団から飛び出して寝ていた。
なんて寝相だと苦笑しながら娘を布団に戻したその時・・・
娘が眠ったままTの手を握り
「ありがとう、あなたがあの時助けてくれたから私は今生きてます。
本当にありがとう」
と言った。
彼女の声で・・・
娘の口で・・・
生まれ変わりなのか娘の口を借りただけなのか分からなかったが、
恐怖は感じず不思議な温もりを覚えた出来事でした。
私(T)も家族も何ら不幸なく平穏に過ごしてます。
オチなしの怖く無い上に長文失礼。
2018年03月23日
ある集落に迷い込んだ時、凄まじい体験をした【集落にまつわる怖い話】
会社の上司の昔話で、十五年くらい前のことだという。
当時まだ駆け出しだった上司が、某県某町に新設の事務所に配属された。
工場併設のその事務所は市街地を遠く離れた山の中にぽつんとあって、
夜には車通りも無い、淋しい場所だった。
事務所の前から県道を右にしばらく行くと某町のジャスコに行き当たる。
左にしばらく行くと隣の某村に入るが、
村の中心部の集落まではしばらくかかる、そんな立地だった。
その日の上司は、仕事を抱え込んで一人残業のすえ、
疲れきって事務所を閉めた。
一人暮らしのアパートへと車を走らせていたところ、
うっかり道を間違えていることに気付いた。
右に出るはずが左に出てしまい、車はすでに某村に入って
しばらくたっているようだった。
車通りも無いので素直に切り返して戻ればよかったものを、
上司は脇道に入った。
ぐるっとまわれば元の道に出られるだろうと考えたからだが、
区画整理がされたわけでもない田舎道は、そうは行かないものだ。
走るだけ走ってさらに見つけた道に飛び込むことを数回くり返したが、
どこをどう走ったかもすでに定かではなく、周囲は真っ暗で道はすでに細い。
切り返しももう無理だった。
しかし、アスファルトと土肌が断続的に現れる道には
轍(わだち)が続いており、おそらくここは地域住民の生活道、
きっと先には集落があると踏んで、先に進み続けた。
読み通り、小さな集落に行き着いた。
何軒か先には明かりのついた家が見える。
方向感覚に間違いが無ければ村の中心部では無いようだったが、
帰り道が聞ければそれでいい。
遅い時間で恐縮ではあったが、なりふりを構ってもいられない。
上司は明かりのついた家の前で車を停め、ライトを消した。
火をつけていたタバコを吸い切ってから、
意を決して車を降りるとギョッとした。
暗がりに、おそらくは十人以上の村人が立っていたのだ。
村人は老人ばかりで、
一様ににらみつける顔付きからして明らかに歓迎されていなかった。
一人が大声を出す。
するとほかの村人も続けて叫び出した。
何しに来た、帰れよそ者!
どろぼう!…は、やらないぞ!
やらんぞ!帰れ!
聞き取れない部分もあったが、
土地の方言でだいたいこんなことを言っているようだった。
上司は誤解を解こうと釈明をしながらもたじろぎ、後ずさりした。
背後に気配を感じ振り向くと、そこにはさらに十人ほどの村人がいた。
彼らもまた何やら叫び出したが、上司が驚いたのはそこではなかった。
村人たちは上司を追い払おうとする上司の顔のすぐ下で、
小柄な老婆が、数珠を持って上司を見上げるように何かを唱えていたのだ。
尋常じゃない空気に圧倒され、上司は車に舞い戻りアクセルを踏んだ。
村人は、上司を追い返そうとしているだけのようで、
追ってくる様子はなかった。
はるか背後で、
たぶん老婆のものであろう叫び声を聞いた。
後で知った事実から考えれば、
唱えていた念仏の総仕上げの掛声のようなもので、
それは自分に向けられたものであったのだろう。
結局、集落を抜けて無我夢中で走ったところ、
村を抜けて隣県に行着いた。
国道を大きくまわって自宅に帰れたのは朝方であった。
翌日から、上司は目に見えて体調を崩した。
仕事が出来ないほどではなかったが、体が重く食欲が失せ、
無理に食べても三日で体重が5キロ落ちたという。
一週間もたつ頃には形相も変わり同僚にも本気で心配され始め、
町立の総合病院に行ったが、どこにも異常はなかった。
村での体験にショックを受けただけと思い、
意気地の無い自分を奮い立たせたが、回復しなかった。
ある日、
町役場の企業立地担当を訪問する用事があった。
役場の担当者は若く歳も近かったので仲が良かった。
飲んだ際に霊感があるという話を聞いたことがあったが、
その手の話を信じない上司は、からかった受応えをしたものだった。
用件もそこそこに、その彼が切り出した。
「どうせまた茶化すんだろうが、体調に関わることだから
真面目に聞いてほしい」と。
曰く、上司の体調は呪いによる憑き物のためであり、
お祓いを受けたほうがいいので、
慣れた寺を紹介をするということだった。
上司は呪いを解くために、寺に向かう上司は、
彼の霊感を信じたわけではなかったが、藁にもすがる思いで、
彼が電話を入れてくれた寺に向かった。
寺の住職は、落ち着き払った様子で上司を迎え、
極めて淡々とお祓いをしてくれた。
お祓いが済んだ後、嘘のように回復した上司は、
それでもまだ呪いには半信半疑のまま、
あの集落での体験を住職に話した。
住職は、あの集落が、土着のある風習を今でも頑なに
守り続けていることを教えてくれた。
風習とは、その昔、宿を貸したよそ者に、
赤ん坊をさらわれたことに端を発する集落の自己防衛策であり、
村に生まれて間もない赤ん坊がいるときには、
外部からの人間を迎え入れてはいけないというものだという。
風習はいつからかエスカレートし、
追払ったよそ者が二度と村に舞い戻らないよう、
祈祷師により、よそ者を呪い殺すようになったのだという。
上司は、あの晩に見た老婆とその叫び声を思い出したが、
それでも呪いなど信じたくなかった。
しかし、あの村で見たのは男も女も年寄りばかりだった気がするし、
若い者が出て来ないのはなぜだろうか。
そもそも、いくら田舎とは言えこの現代にあって、
若い世代がそんな風習に縛られて生きていることは信じがたかった。
そんなようなことを素朴な疑問として、上司は住職に尋ねた。
住職は一瞬目を丸くしたが、上司がまだすべてを理解していないと知り、
微笑みながら教えてくれた。
あの集落は日本全国でもかなり早い段階で高齢化を迎え、
残った老人達は頑なに周囲との交流を拒み、
いもしない赤ん坊を守るという建前で、よそ者を追払い続けたこと。
そしてその末に、集落が絶えてもう三十年以上経つことを。
それを聞いたときに全身を走った悪寒を、上司は今も忘れないと言った。
以来、上司は霊の存在を信じるようになったのだという。
後日談。
役場絡みの合同商談会みたいなイベントの後で、
役場の担当者の運転で上司はあの集落に行ったらしい。
もちろんまだ日の高い時間帯。
役場の彼はすこぶる嫌がったらしいけど、上司は真剣。
同乗していた取引先の人はノリノリだったとか。
あの晩に来た道とはたぶん反対方面から集落に行き着いたんだけど、
崩れ落ちそうな廃墟ばかりで同じ場所とは信じられなかったそうだ。
だけど、集落の奥まで歩いて振り返って見た風景は、
あの晩見た集落に間違いなく、上司は愕然とした。
正確には、その確認までして初めて、
上司は霊の存在を信じるようになった。
役場の彼には、廃墟のかげからこちらを凝視する村人が数人見えていたらしく、
最後まで車からは降りてこなかったんだと。
念のため、と取引先の人と三人であの寺にお祓いに行ったら、
優しかったあの住職に今度はこっぴどく説教されたそうだ。
2018年03月21日
すみません、僕の身体って何処にありますか?【怖い話】
中学のクラス会が行われると言う知らせを受けて、
本当に久しぶりに故郷を訪れ、その時に聞いた話。
クラス会への集合は19時にT駅との事でしたが、私は早めに地元に帰り、
すっかり変わってしまった町を見て驚きつつも、
足は母校の中学に向かっていました。
「お前Iか!?」
「はい・・・?あの、どなたでしょうか?」
「俺だよ、俺!Kだよ!!」
「K先輩ですか!?え、何で此処に居るんです?
まさか、学校の先生になったんですか!?」
しかし私の予想は外れており、K先輩は地元で消防官をしており、
休日は後輩の指導に当てているらしい。
警察官や消防官でも武道系に秀でた人物は
大会に出場する機会があるらしく、
K先輩は入賞経験があり、学校側も実力者で信頼の置ける
職業であるということで、特別にお願いしているらしいのだ。
練習が滞りなく終わるまで、私は道場の隅で大人しく見学させてもらった。
道場の掃除と施錠が済み、
K先輩にクラス会の事を話しながら現場に向かう途中、
私の悪い癖が出てしまった。
私は怖い話が好きで、“そういうのに出くわしそうな人間”に、
『何か怖い話は無いか?後味の悪い話でも良いから聞かせてくれ』
と聞きます。
K先輩は霊感0なのだが、
同僚のNさんが所謂“見える人”なのだそうで、
よく自分に体験を話してくるのでネタは沢山持っているが、
気持ちの良いものではないので誰にも話さなかったそうだ。
(勿体無いと思った)
では、前置きが長くなったが、
以下K先輩から聞いた同僚Nさんの体験談です。
地名は伏せますが、金属製品製造工場で、
18時過ぎにアルミニウムや金属を取り扱う工程で事故が起こり、
工場3棟で火災と爆発を招いたものだったそうです。
工場に設置してある火災報知電話によって通報され、
消防隊と救急隊の到着時には、もう工場棟は殆ど原型を留めておらず、
木造の柱、梁が露出していたそうです。
「化学物質が貯蔵された工場では、無闇に放水出来ないのは知ってるか?」
詳しくは理解してはいなかったが、取りあえずTVや映画で
白い泡のようなものを撒き散らしているシーンを見た事があったのを
思い出しました。
それくらいの知識程度しか持ってなかったので、頷くだけにしておいたが。
「そういう場合、飛び火した民家の消火から始める場合がある。
その間に危険物取り扱い施設の関係者から状況を確認し、
消火方法を変える」
間違った消火活動をして更に大爆発なんて事になったら恐ろしいのですが、
幸いこの火災では起こらなかったようでした。
「で、そこからどう怖い話に結びつくんですか?」
「お前、これだけの火災被害なのに、死傷者が居ないとでも思ってんのか?」
火災による小爆発の影響で近隣住民に数名軽傷、
工場の従業員重度の火傷が数名、死者3名だったそうです。
私は内心
『少ない、原形を留めない程の火災なのに、もっと沢山死んでも・・・』
と思いました。
消火活動は日付をまたいで行われたそうで、早朝より調査が開始され、
Nさんはその調査官の中の一人として同行したらしいです。
水がまだ滴る工場だったところに踏み入ると、ぴちゃぴちゃ足音が数人分と、
マスコミのヘリと野次馬の雑音を無視して調査を開始。
感づいた事は忘れないようにボイスレコーダーで記録し、
火災の原因を調査するために瓦礫をひっくり返すんだそうです。
Nさんも天井の一部をひっくり返し、色々調査していると、
黒い人型が床にクッキリとプリントされていたそうです。
『嗚呼、此処で死んだのか。熱かったろうに』
御遺体は既に検死官が発見して、
解剖するために2体分と1本はお持ち帰りしたのだそうだ。
また疑問に思った私は、また口を挟んでしまった。
「3人死んだと言ったのに、数が合わないじゃないですか。
それに1本て何ですか?」
「右肘」
2人は焼死体として運ばれ、右肘の人は検死の結果で分かった事だが、
爆発によって薬品を浴びたか吸い込んだために、
身動きが取れなくなったとされている。
そして炎に焼かれる前に瓦礫が右肘を切断・押し潰し、
その他は粉々になったそうだ。
Nさんが発見した黒い人型のプリントはまさに、その人が死んだ場所だった。
何か痕跡はないか、火災の痕跡はないかと調査していると、
後ろを誰かが通り過ぎる気配がして振り向いた。
しかし誰も居ないので、首を傾げてまた調査に戻る。
至る所に粉が隙間に入って、黒くなった壁でキラキラ輝いていたそうだ。
Nさんは壁にこびり付いた粉の写真を撮り、
パケに採取して鞄に保管する作業を1週間、場所を変えて行った。
上に報告する前にまず、調査官同士の報告会を行うのだが、
結論は“粉塵爆発”による火災。
室内に粉が舞っていた事、
工場内の死角に粉が積もっていた事などが爆発の一要因であった。
何しろ建物自体が原形を留めていない点と、
この結論以外に可能性が無かったのである。
後はリーダーが4日後の全体報告会にて説明するという段取りなので、
後日、数名の調査官を連れて現場を撮影する事となった。
その晩にNさんは愛車のバンに乗って家に向かっていたそうだが、
眠くなる時間でもないのに段々と瞼が下りてくる。
『何処か、車、止める場所』
近くにセブンがあったので、駐車場にて仮眠を取る事にしました。
その時にNさんが見た夢が、私にとっては心弾ませるものだった。
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Nさんはまだ焼け跡の工場で作業しているのか、
調査官の作業着を着て立っていたそうだ。
『あれ、まだ何か調べるんだっけ?』
そう思い、
自分の鞄の中に入っているであろう書類を確認しようとしたが、
いつも足元に置く鞄がない。
左右の足元に目を配らせても見当たらない。
首をかしげて、
鞄探しのために焼け跡になった床を歩き続ける。
「すみませぇん!」
声の方向を見ると、帽子を深く被り、
工場の作業着を着た男性が此方に来ようとしていた。
もしかして、火災事故があったと知らないで
そのまま出勤してきたらこの有様で、動転してるのかと思ったらしい。
そして、一般市民を事故現場に入れてはならないので、Nさんは注意しました。
「駄目ですよ、此処は危ないから入って来ないで下さい!」
Nさんは歩きながら、安全な場所まで連れて行こうと青年に近寄った。
男性はなおも瓦礫を気にしながら近づいてきており、
帽子も被っているので全く表情が認識できない。
「すみません、すみません。でも、困ってるんです」
「ええ分かりますよ、工場がこんなになってしまったんですから」
「すみません、僕の身体って何処にありますか?」
Nさんは男性の顔を見て仰天してしまった。
というか
顔があるべきところに存在しなくて、
でもあるべき高さに帽子は乗っていた。
まるで空気か透明人間が工場の作業着を着て、帽子を被り、
靴を履いて流暢に話しかけているようだった。
「ずっと探してるのに、ずっと探してるのに、何処にもない。
来月までに終わらせないといけないのに、何処にもないんです」
驚いてNさんは振り返って逃げようとしたら、
後ろには真っ黒い人が2人立っていた。
途端に2人から人の髪の毛が燃えるような、たんぱく質が溶ける匂いがして、
Nさんは足が止まってしまったのだそうだ。
もうこれは、火災現場で死んだ3人だとNさんは思ったらしい。
Nさんがこの状況をどう打開しようか思案していると、
黒い人が強めの口調でNさんに突っかかってきた。
「おい、○○の身体は何処にある」
「これじゃ、仕事にならないだろ」
Nさんは
『彼らはまだ、自分が死んだことに気がついていないのか?』
と思ったそうです。
なので
“自分の人生は終わってしまった”
のだと、3人に事の有様を話しました。
そしてNさんは黒い人型のプリントがしてある床を指差して、
○○さんの身体は恐らく右肘以外が粉々になってしまったのだと伝えました。
「私が貴方達に伝えられる事は、全て包み隠さずにお伝えしました」
「じゃ、僕の右肘は何処にあるんですか?」
「私は管轄が違いますから、分かりません。
担当の者に聞いておきますので、明日私のところに来て下さい」
「有難う御座います 必ず伺わせて頂きます」
そう言って3人はNさんに背を向けて立ち去って行きました。
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Nさんは車の中で飛び起き、
セブンの明かりで少し平静を取り戻したそうです。
Nさんはすぐに携帯で、
例の右肘について確認の電話を入れました。
電話向こうの人物は県内の法医学研究室を紹介し、
Nさんはメールで地図と連絡先を送るように頼んだそうです。
通話を終え、一先ずため息を零して、
冷たい缶珈琲と先生への菓子折りを購入して、
その日は入念に身体を洗って、長風呂して寝たそうです。
翌日一旦出勤してから、法医学研究室にアポを取る事に成功し、
ホワイトボードに行き先を記入して出たそうだ。
鞄を持って車を開けると、独特のあの匂いが充満していた。
車に匂いが着くのを恐れて、窓を全開にして、
いざ出発って時にバックミラーを見ると、
後ろに人影が2つと帽子が見えたらしい。
「早いですよ、まだ現地についてないのに」
と独り言を零しながら、
目的地で待っているであろう先生に
“どう説明するのか”を考えていたそうです。
確かに
『幽霊が肘を捜していて、自分も協力しているんです』
なんて、
精神疾患を患っていると思われても仕方が無い。
Nさんは
『一応今後の資料として写真を撮りたい』
という名目で通そうと腹に決めたらしい。
そして先生に案内されるまま遺体安置所に移動中、
後ろから1列で憑いて来ている。
「さ、どうぞ。お仕事大変ですね」
「有難う御座います。突然お邪魔して申し訳ありません」
右肘の写真を数枚撮影して、先生にお礼の菓子折りを渡して、
早々に退散する事にしたそうです。
後ろを振り返ると、まだ3人は憑いて来ている。
人通りのある通路で霊と会話なんて出来ない。
Nさんは無視して帰ろうと背を向けたのだそうです。
「色々親切にしてくれて、有難う御座いました」
3人分聞こえて振り返ると、もう其処には居なかったそうです。
Nさんはそのまま署の方に帰って、通常勤務に戻ったそうです。
以上でその火災事故でのNさんの体験談は終わりです。
しかし私は”黒い人”関係の怪談を腐る程聞いてきましたから、
別段新鮮味もありませんでした。
ですので、私はK先輩にその感想を伝えたところ、思わぬ反論を貰いました。
「お前、焼死体見た事ないだろ」
「嗚呼〜詳しく説明して下さい」
私はこういうのが大好きです、ごめんなさい。
K先輩が言うには、大きく4段階あり、
Lv1=表皮1度の熱傷。
Lv2=表皮(浅い)2度の
熱傷&真皮(深い)2度の熱傷。
Lv3=真皮3度の熱傷と皮下組織の熱傷。
Lv4=4度の熱傷&炭化。
というランクがあるそうです。
よくTVや映画で看護士さんが「患者は○度の〜」ってのが
当てはまるらしいです。
熱によって筋肉の組織が収縮し、
硬直しながら、ぼろぼろと身体から炭化した皮膚や内臓が零れ落ちて、
真っ黒な、でもひび割れたところから少し赤黒いものが覗いていたり
するそうです。
骨も火葬場のように綺麗な白色ではなく、
黒ずんだもの赤いもの黄色いものがあり、
たまに骨が水蒸気か何かで、竹が弾けるように吹き飛んだりするそうです。
・・・とまぁ、
そんな感じの焼死体さんが2人も背後に立たれたら、
恐ろしいのでしょう。
「素敵な話を有難う御座いました。また、その手の話を聞かせて下さい」
クラス会の集合場所のT駅に到着しても話し続けていたので、
先輩にメアドを渡して別れました。
これで、K先輩から聞いた話を終わりにします。
2018年03月17日
古いリサイクルショップ【怖い話】
自称霊感の強い後輩Aと古いリサイクルショップへ行ったとき
リサイクルショップと言っても築30年は軽く経ってそうな
ボロボロの外観の骨董品屋と言ったイメージだ
店の上の看板には「貴金属・骨董品・電化製品・ オーディオ」と
手書きで書かれており、おそらく骨董品屋からなんでも屋になったんだろう
もともとAの電子レンジを買うために出掛けてたので
ちょっとのぞいてみようと俺は店に入った
俺は霊感のなんて全く信じていなくて、
Aの自称霊能力者も合コンで目立つための
技みたいなもんなんだろうと内心バカにしていたが
そんな俺でも店の中に入った瞬間、違和感というか、
なんか嫌な予感がした。
あの感覚はあのとき初めて味わったものでうまく言葉で言い表せない
でも、その嫌悪感の正体はすぐにわかった
神リッチプロジェクト
とにかく品物が乱雑に並べられ,
骨董と骨董の間にパソコンが置かれてたり
古書が並んでる端にブックレスト代わりに皿が置かれてたり
あまりにも規則性がなさすぎて気分が悪い
店主の姿が見えなくて
「万引きし放題だな」
ってAに話しかけたが Aがいない
Aはまだ店先でボーッと上の看板を見てやがる
「おい!あったぞ!電子レンジ5000円」
って声かけたらやっとAが店の中へ入ってきた
A「やっぱり中古はやめとく・・・」
俺「まぁそんな安くもねぇしな5000円」
その後すぐにAがつぶやく
「それに何かいる・・・ここ」
一瞬ドキッとしたがイライラしてきた
いかにも出そうな店でお約束の霊感かよって思いながら
「どこらへんにおるの?」
と聞くと 黙ってAは上を向く
「上?」
俺も真上を見るが薄暗い天井と蛍光灯しか見えない
俺とAは店の奥へ向かうと階段があった
一階が以外と広い事にも気がついた
例の乱雑さで商品が並んでる棚が3列置いてあった
俺が階段を昇ろうとしたときAが小声で
「ヤバい。もう見られてる」
と言った
コイツ、俺を怖がらせて喜んでんじゃねーか?
と思いながら階段を昇った
しかし、一段目を昇ったとき周りの空気が
急にひんやりしてるのに気がついた
階段を昇る度に何か嫌な予感がしてならない
進むのがためらわれる
やっと徐々に2階が見えてきた・・・
意外と明るい・・・
最後は足元に注意しながら一気にのぼった
2階の光景を見て愕然とした
辺り一面全部着物だ
それも成人式や結婚式で着るような派手な晴れ着だった
ズラーッと奥まで案山子みたいに袖に棒を通されて立っている
その時、奥の着物が揺れたように見えて そちらに目を向けた
その時はっきり俺は見た。
あきらかに敵意を持った目の女性の顔だった
ゆれた着物の後ろに女性がいる!
俺は急に息が苦しくなった吐き気がした
後ろから階段であがってきたAが何か言ったが
何を言ったのかわからない
俺はそこで意識を失った
目が覚めるとAとおっさんがしゃべってた
しゃべってる内容はわからなかった
だが自分のいる場所はわかった
まだ二階にいる。
もう着物の方は見れない
またパニック寸前になりながら逃げようとするが
うまく立てず階段の前でコケる
Aとおっさんが支えてくれてやっと階段を降りる
すぐに店の前まで出て排水溝におもいっきり吐いた
まっしろなゲロが排水溝に流れる
苦しくて苦しくてこのまま気を失って死ぬんじゃないかと思った
Aが背中をさすりながら
「あの目を見ましたよね?」
と聞いてきて、また思い出して吐いた。
Aが
「吐けるだけ吐いた方がいいっすよ」
と言ってたが
俺は妙に「なるほど」と納得した
Aの言葉通りひとしきり吐くと楽になってきた
俺「アレが幽霊?」
A「そんなところです」
A「でも、幽霊というよりは 怨霊だと思います」
A「店主とも話したけど あの着物は全部中古だそうです」
俺「もしかしてあの女は 前の持ち主か?」
A「そうだと思います」
A「ここからは推論ですが」
とAが説明してくれた
要するに晴れ着は成人の祝いや結婚式に
親が 娘に買ってくれる大事なもので、
やむにやまれぬ事情を抱えた女性が質入する場合が多いこと
その晴れ着に対する未練やうしろめたい感情が
集中する場所だったこと
俺が見たあの敵意丸出しの目は晴れ着を見に来る客を
遠ざけようとする女性達の目で
俺が店に入ったときから見られていたらしいこと
今もあの顔を思い出すと気分が悪くなります
【JCB/AMEX】1秒スキャルFX
2018年03月16日
神隠しの伝承「怪談100話を話し終わると、妖怪が出るんじゃなくて、そういう物がいる異界への扉が開いてそこに引き込まれる。」【怖い話】
もう十数年前、大学生だった私は、
部活の夏合宿(と言う名目の旅行)に出かけ、その帰り、
大学の合宿施設の近くに実家のある先輩に誘われて、
地元の花火大会を見学していた。
花火大会の後、
会場近くの河原で買い込んだ花火を楽しみ、
そのまま先輩の車に同乗させてもらい、東京に帰ることになった。
河原で花火を楽しみ、
しばらく休んだ後の出発だったので、
時間は、12時を過ぎて、1時になろうとしていた。
今から考えれば危険極まりないが、若さゆえか、
誰もそんなことを気にしていなかった。
YTM∞(MUGEN) YouTube トレンドマーケティング∞(MUGEN)
「先輩、運転疲れたら行ってください、俺ら変わりますから。」
「おお、そんときゃたのむは。
ま、高速乗るまでは、道知ってんの俺だけだし。
高速まではゆっくり行って60分位だし、高速乗った最初のSAで、
運転変わってもらうかも。でもぶつけるなよ。俺の愛車。」
「大丈夫ですよ。」
皆で(と言っても、先輩、私含め4名でしたが)
先輩の車に乗り込み、出発します。
運転席に先輩、助手席にA、私ともう一人のBは後ろ座席です。
走り始めて10分〜15分ぐらいで、車は山道に差し掛かり始めました。
この道を越えるとインターがあるとのこと。
「知ってるか?この辺りにはさ、神隠しの伝承があるんだ。」
と先輩が話し始めます。
「ああ、俺の田舎でも、そういう伝承のある山がありました。」
とB
「ああ、でもさ、ここは、明治になった後、
いや、戦後でも神隠しが発生したらしいんだ。」
「まじっすか?」
「ああ、明治の頃、日本人は迷信にとらわれすぎている、
って考えていた若い帝大の教授が、迷信であることを証明する。
として、ここで、それを実行して、で、神隠しにあったんだと。」
「へえ?で、神隠し、って事は、当然そのまま行方不明なんですよね?」
「ああ、でな、その後、この辺の人達はそれを恐れて、
この山に近づかなくなったんだ。でも戦後になって、
その記憶が薄れたのと、戦後の雰囲気っていうのかな?
30年ごろ、東京の大学院生達がここにきて、
神隠し事件を調べようとしてさ、やはり行方不明になったんだ。」
「でも、戦後じゃ、警察とか動きますよね。
いや、明治でも動くと思いますけど。」
と私
「ああ、警察、消防団とか総動員で山狩りをしたんだけど、
結局何の手がかりもなかったんだって。
まあ、戦後になったとはいえ、田舎だから、
年寄りとかはまだまだ迷信深くて、
最初は山に入りたがらなかったって話だけど。」
「へえ、新聞に載ったんですかね?」
「地元の新聞には載ったらしい。」
「何かの事件に巻き込まれたんですかね?」
「まあ、そんな所かもしれないが、地元の年寄りたちは、
やっぱり神隠しの伝承は本当だった。物見遊山気分だから、
神隠しにあったんだ。って噂し合ったんだ。」
「なんか横溝正史の小説か、浅見光彦みたいですね。」
「神隠し伝説殺人事件とか」
軽く笑う4人。
「そういえば、俺の田舎でも・・・」
Bが話を引き継いで、地元の怪談を話し始めました。
Bが話を終えた後、
Aが、自分が高校時代に聞いた学校の怪談を始めました。
こうなると私も話さないわけにはいきません。
私も中学の頃聞いた怪談話を話します。
で、私が話し終わると、促されたわけでもないのに、
再びBが怪談を始めました。
まあ、眠気覚ましには話をするのが一番と言われているし、
危険な夜間のドライブ、 みんなで、こうやって話し
(しかも怪談)ていれば、眠気も飛ぶかもしれない。
私もそう思い、Bの後、再び怪談を始めた
Aの話が終わった後、怪談を始めました。
B→A→私、の順番で、話を続けます。
途中で先輩も話に巻き込もうとしましたが、運転に集中したい。
また、怪談聞いていれば眠くならないから、聞き手に回っています。
結局、私、A、Bで怪談を続けることになりました。
どのぐらい時間がったったのかは、
時計を見ていなかったので覚えていませんが、
途中で少々妙なことに気が付きました。
もう10回以上私は怪談をしているのです。
B→A→私。
という順番は堅持されていたので、
皆で30以上の怪談を話していることになります。
一つの話に3分としても90分はかかっている計算になります。
もう高速に乗っていてもいい筈ですが、
まだ山道から出た気配すらありません。
『こういう状況だから、時間が長く感じるのかな?』
疑問に思ってもいましたが、同時にそうとも考えました。
「おい、○○、お前の番だぞ。」
「ああ、じゃあ・・・・」
Aに促され、再び私も怪談を始めます。
で、頭に沸いた疑問もそこで打ち切りになり、再び怪談話の輪に戻ります。
「・・・・・・という話だ。」
Aが、何度目になるかは分からない怪談を終えます。
『次は俺の番か』
どの話をしようか考え始めた時、ふと、先ほどの疑問が頭をよぎります。
あの後、10回、いや20回は、怪談を話しています。
合わせれば30回以上は怪談をしていたような気がします。
いや、実際はそんなにしていないかもしれませんが、
かなりの回数の怪談を話したのは事実です。
時間で言えば、1時間、いや、2時間はとっくに経過していていいはずです。
なのに未だに山道から出ていないのです。
『道に迷ったのかな?』
そうも思いましたが、それにしても時間がかかりすぎです。
ここが何処かはわかりません
(カーナビもない時代(一応あるにはあったが、
学生の車に搭載できるような代物ではなかった))
周りは真っ暗。
いや、真っ暗すぎます。
まさに墨を流したような暗闇です。
一気に不安が広がります。
「今のAの話で99話目だ。」
「え?」今まで黙っていた先輩が突然口を開いたので、驚いて聞き返す私。
「だから、今のAの話で、怪談99話目だったんだよ。」
「へえ、そんなに話したんですか俺ら。」
気軽に受けるB
「案外怪談知っているもんなんですね。」
Aも普通に受け答えしている中、私だけが、混乱し始めていました。
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99話、一話3分程として、300分近い時間、
つまり5時間は経過しているはずです。
出発したとき1時なのですから、今の時間は、6時近く。
もう、夜が明けていいはずです。
いや、それほどの時間がたっていなかったとしても、
高速のインターにはとっくに着いているはずです。
なのに相変わらず山道らしいところ、というか、
何処かすらわからない、真っ暗闇の中を車は走り続けているのです。
恐怖の感覚が私を襲いました。
「百物語って知っているか?」
恐怖にパニック寸前の私をしり目に先輩は話を続けています。
「ああ、ろうそく百本立てて、
一話ごとにろうそく消していくって奴でしたよね。」
とB
「俺たちそれできましたね。ま、車内で100本蝋燭立てられないけど。」
とA
「ああ、で、100本目が消えると、妖怪、幽霊が現れる。」
と先輩
「俺たちも蝋燭消していたら、現れますかね?」
とB
『ちょっとまって、ちょっとまって、ちょっとまって』
先輩の話に、平然と相手をしているA、Bに対して、
すでにパニックになりかかっている私。
叫びだしたかったが、恐怖のためか、緊張のためか、声が出ません。
「ああ、出るかもな。でもさ、実は百物語っていうのは、
最初は、真っ暗な中、屋外で、怪談百話を話すものだったんだ。」
「へえ、初めて知った。」とB
「ああ、この辺りでは、少なくともそうだったらしい。
で、100話を話し終わると、妖怪が出るんじゃなくて、
そういう物がいる異界への扉が開いてそこに引き込まれる。
ってものだったんだ。」
先輩が妙に抑揚の、いや、感情のない声で話します。
「へえ、異界への扉って、漫画みたいですね。」
とB
「ああ、で、明治の帝大教授や、昭和の院生も、
この地に伝わるその伝説を聞いて・・・」
「ちょっと待ってよみんな!!」
やっと声を放つ私。
「なんだよ、○○ビビったのか?」とA
「そうじゃないよ、先輩、ここどこですか?
周り真っ暗、街頭ひとつない、何時になったら高速に出るんですか?」
恐怖でほとんど涙声になっていました。
叫んでいるうちに気が付きましたが、この車、一度も止まっていません。
いや、よくよく考えてみると曲がった気配すらないのです。
周りは真っ暗、いや、ヘッドライトすらついて居なのです。
前方も真っ暗な闇です。
『なぜ今頃気が付いているんだ!!』
自分に毒づきましたが、このまま先輩の話し続けさせたら、
危ない、いや、そんな生易しいものですらなくなる。
なんと言うのか、そんな言いようのない、本能的な恐怖に駆られ、
私は、パニックと恐怖で、涙声になりながらもつづけました。
「よく考えろよ。なんでこんな周り真っ暗なんだよ!!
99話怪談話したんろ? いったい何時間たっているんだよ?
なのに、なぜ、何処にもつかないんだよ!!」
「もうすぐ着く。いいから黙ってろ。」
抑揚と感情のない、なんというのか、先輩の声ですが、
先輩でない誰かが話している、そんな感じの声でした。
「その前に車止めてください!!とにかく!!」
ここで黙ったらおしまいだ。
とにかく先輩にこれ以上話をさせてはいけない。
そんな感じで、絶叫に近い声で、先輩に言いました。
「せ、先輩、とにかく車止めましょうよ。」とB
やっと現状に気が付いたのか、Bも少々あわてた声で先輩に言います。
「話しが終わったら着くから黙って聞けって。」
相変わらず抑揚のない声で話す先輩。
「B、ブレーキ踏め、ブレーキ」
完全にパニック状態の私。
「先輩、話の前に止めて、ドア開けてください。
そうしたら、聞いてもいいですから、先輩の話」
Aもすでにパニック状態なのか、大声で叫んでいます。
「この山で、100物語を・・・・」
完全にパニック状態の我々三人をしり目に、
先輩が、抑揚と感情のない声で続けます。
「先輩、すみません!!」
そういって、Bが先輩の横っ面を殴りました。
キキキー
急ブレーキの甲高い悲鳴とともに車が止まりました。
シートベルトは着けていましたが、前席に頭をぶつけました。
「ああ、すまんみんな、大丈夫か?」
と、先輩
周りを見ると、遠くですが、民家の明かりが見え、
道の先にある街頭も見えます。
何よりも、ヘッドライトの明かりが見えます。
『も、戻れた』
なぜそう思ったかは知りませんが、
安堵感と、恐怖から解放された感覚で、
全身の力が抜けていくのを感じました。
先輩は、車から降りて、車の前の方を確認していました。
「すまん、目の前を横切った、白い影が見えたもんで。
って、どうしたんだ、お前ら?」
車内3人の尋常ならざる雰囲気に、先輩が、質問します。
少なくとも、先ほどの先輩ではなく、
何時もの先輩であることに間違えはないようです。
我々3人も外の空気を吸うため車外に出て、落ち着いた後、
今までの経緯を先輩に話します。
「お前ら、俺担いでいるのか?」
先輩の話だと、山道に入って、
「この辺りに神隠しの伝説がある」
って話した時、黒い靄のようなものがかかった感覚があったので、
『眠気に襲われたか?』と思ったら、なんか、白い影が見えたので、
急ブレーキを踏んだとのこと。
そう、その後の話は、先輩の記憶にはないのです。
先輩のはなしだと、確かに、この辺で、明治時代、昭和30年代に、
神隠し事件があったこと。
この辺りの伝承だと、夜中に、屋外で、夜が更けてから、
夜明けまでの間、百話怪談をすると、異界に行ける。
という伝承があること。
地元の郷土史研究家とかは、戦国や、江戸時代、まだまだ過酷で、
飢饉とかに結構頻繁に見舞われていた時代。
(しかも、この辺りは、土地が痩せていて、貧しい地域だったのだとか)
そういう
『苦しい浮世を捨て、別世界に行きたい』
的な信仰があったから、そんな伝承が生まれたのではないか?と、
言っているのだとか。
で、明治時代の教授(と、その助手たちもいたのだとか)、
30年代の大学院生は、それを実行したといわれているのだとか。
「確かに俺も、その話聞いたときは、やってみたいな、って
思った事はあったけど・・・」
先輩もさすがに青い顔をしていました。
時間を見ると、1時30分過ぎ、山道の入り口は、
すぐではありませんが、下に見えました。
そして、車の横には、小さな、石造りの祠が見えました。
皆黙って、その祠にお祈りをした後車に乗りました。
不可思議な体験の後でしたが、なんと言うのか、もう大丈夫という、
妙な安堵感があり、恐怖はあまり感じませんでした。
「わり、左の頬が少し痛むんで高速の入り口で運転変わってくれ。」
「あ、ああ、いいですよ、俺が運転しますんで」とB
その後は何事もなく無事東京につきました。
が、その後、いくら思い出そうとしても、
30話近い怪談話は思い出せません。
最初に話した数話は確かに覚えているのですが、
その後、どんな話をしたのかが、まったく思い出せないのです。
が、その不可思議な体験、何よりも、あの真っ暗な光景は、
今でもありありと覚えています。
最近部のOB会で久しぶりに、先輩、A、Bと会いました。
話題になったのは、やはりあの時の不可思議な経験です。
「まあ、ハイウェイヒュプノシスとか、
集団催眠みたいな状態だったのかも?」
不可思議な体験を、無理やり説明づけようとするわれわれ。
そんな私たち三人に対し、少々ためらったってから、先輩が
「実はな、あの道で、最近、失踪事件が起こったんだ。」
何でも、地元の若者たちの乗った車があの道に入ったのを
目撃されたのを最後に、 その後行方不明になっている人たちがいるのだとか。