抗体カクテル療法は、厚生労働省が7月に特例承認した。妊婦への投与について、薬の添付文書では「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与」とし、医師の裁量に委ねられている。米国立衛生研究所(NIH)は、治験などのデータはないが、他の抗体を使った薬は問題なく妊婦に使われていることから、指針で投与対象に入れている。
感染妊婦を治療する医師らによると、8月以降、抗体カクテル療法が国内で本格的に使われ始め、有効性や安全性のデータが蓄積するなかで、妊婦にも徐々に投与する動きが出てきたという。
りんくう総合医療センター(大阪府泉佐野市)では9月、肥満などで重症化リスクがあった2人の感染妊婦に投与し、症状は悪化せずに回復した。 倭(やまと)正也・感染症センター長は「妊娠後期で何らかの症状があったり、持病があったりする場合に有効な治療だ」と語る。
心臓病などの持病がある感染妊婦も受け入れる国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)は9月、2人に使い、ともに投与後1〜2日で熱が下がるなどの効果があった。吉松淳・産婦人科部長は「投与で症状が治まれば自宅療養が可能になり、妊婦の受け入れが可能な病床の 逼迫も防げるのではないか」と指摘する。
厚労省が作成した新型コロナの「診療の手引き」などでは、中等症・重症向けの治療薬のうち、抗炎症薬「バリシチニブ」は、胎児に悪影響をもたらす恐れがあるとして、妊婦への使用を禁じている。ステロイド薬では、薬の成分が胎盤を通過して胎児に移る量が多い「デキサメタゾン」は使用せず、通過する量が少ない「プレドニゾロン」を薦めている。
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image