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事業者向け融資の厳しい現実

事業者向け融資

事業者向け融資とは、個人事業主や中小企業・小規模事業者向けの融資のことですが、貸金業者による事業者向け貸付市場は2006年3月末の99万6千件から、2013年3月末の41万9千件へと大幅に減少したとを日本金融新聞が報じています。


それによると、2006年3月末の約100万件から、2013年3月末の約40万件へ約60万件も減少している中、月の事業者向け融資の月間貸付件数は全業態で見ても1千件を割る低水準でしか貸付しておらず、60万件もの市場がなくなってもわずか月、数百件しか貸付が行われていない現実があるとのこと。


貸金業者には総量規制と言う年収3分の1までしか貸付できない法律があるものの、個人事業主に対する貸付は総量規制例外貸付として、年収3分の1を超えても認められていることから、総量規制導入前は、個人事業主への貸付に力を入れていく消費者金融が出てくるものと思っていました。


しかし、総量規制導入してから来年で4年経過しますが、実際には個人事業主への総量規制例外貸付は横ばいになっており、増加しているとは言い難い状況なのです。それから分かることは、やはり総量規制によって、低所得の人や個人事業主などは満足に消費者金融からも借入ができなくなってしまったと言うことなのです。


今回は事業者向け融資の厳しい現実について書いていきます。

消費者金融が個人事業主などの自営業者に貸付しない理由

個人事業主に融資しない理由

総量規制には個人事業主への貸付は例外貸付として認められており、年収1/3の制限はありません。しかし、個人事業主への総量規制例外貸付件数はほとんど増えていない状況というのは、それだけ消費者金融会社が個人事業主への融資をしていないとことになります。


個人事業主からの融資需要が少ないわけではありません。法改正の直前の2006年3月末までは事業者向け金融は多く存在しており、貸付残高も多くありました。もっと昔でいえば、日栄や、商工ファンドと言った、商工ローンは大きく融資残高があり、それだけ個人事業主などからの資金需要は多いはずなのです。


ではなぜ、今の消費者金融は個人事業主への貸付をしていないのか?それは様々な要因がありますが、一番はやはり金利利が引き下がったことが大きいと思います。貸金業法(昔は貸金業規制法)は繰り返し規制を強化してきており、その度に上限金利は引き下がってきました。


【出資法上限金利の歴史】
・54.75%(〜1992年4月)
・40.004%(1992年5月〜1994年7月)
・39.931%(1994年8月〜2000年5月)
・29.2%(2000年6月〜2010年5月)
・20.0%(2010年6月〜)←2013.12.29時点現在


上記の表は消費者金融などの貸金業者の上限金利の推移です。今現在は利息制限法と出資法の上限金利は同じとなったことで、グレーゾーン金利は無くなりましたが、それ以前は利息制限法の上限金利20%に対し、出資法では20%を上回る金利で貸付していました。


消費者金融会社も銀行から資金を借りて融資をしています(それが全てではありませんが)。その為、消費者金融は資金調達コストが低ければ低いほど利ざやが大きくなり、利益が出る仕組みになっています。単純に考えれば、銀行から5%で借りたものを、顧客へ29.2%で融資すれば、24.2%が利ざやとなりのですが、その24.2%の中には従業員への給料などの人件費、家賃、貸倒費用、福利厚生など、すべて含まれてくるのです。


貸金業法が改正される前であれば、出資法上限金利は29.2%だったため、まだ経営は可能な範囲でしたが、上限金利が20%へ引き下がったことで利ざやも少なくなり、中小の消費者金融会社はことごとく倒産・廃業となってしましました。


消費者金融の利ざやが少なくなることで、リスクある貸付ができなくなったことも、審査が厳しくなったと言われる原因です。今の上限金利20%では貸倒コストを減らすことも重要となってくるため、以前は貸付ができていた層に対しても融資ができない状況になっています。それが個人事業主への貸付ができなくなっている最大の要因ではないでしょうか?


個人事業主は所得が少ないから貸せない?

所得が低いから貸せない?

個人事業主への貸付ができていない理由は他にもあり、個人事業主は法人化していませんので、確定申告により所得を証明しますが、所得が多ければ当然税金も高くなりますので、多くの個人事業主は経費を増やすことで所得を減らしている人が多いです。


消費者金融が確定申告書を見た場合でも、実際にはもっと所得があると思われる人でも、年間の所得が200万円以下で申告している人も多くいます。そうなると、総量規制によって貸付できる金額は1/3になりますので、最大でも66万円しか貸付ができなくなるのです。


個人事業主への貸付は事業所得が安定している場合には、事業所得の1/3まで貸付できるよう、総量規制例外貸付に後に含まれました。(詳しくは個人事業主は総量規制関係無し?を参照してください。)


しかし、消費者金融側の審査で事業所得が多くても、所得が少ない場合、経費を多くして所得を少なくしているのか、本当に所得が少ないのか判断するには確定申告書だけでは難しいのです。全ての帳簿等を見れば判断できるかもしれませんが、申込みが多い消費者金融において、1件の審査に時間をかけることは効率的ではなく、時間も手間もかかる審査は断り、次の審査に移った方が効果的なのです。


そして、申込みのほとんどはサラリーマンなどの給与所得者であり、消費者金融会社が審査で重要視することは、年収の多さではなく、あくまで収入の安定性なのです。自営業者の個人事業主ははいつ収入が無くなるか分かりません。しかし、サラリーマンであれば、会社が倒産しなければ毎月給料の収入があり、その会社の規模が大きければ倒産する可能性も低く、より安定していると見なされます。


審査で属性が重要視されるのは上記の理由からです。そう考えた場合、個人事業主への審査はやはり厳しくならざるを得ないのが現状なのです。


事業者向け融資の厳しい現実まとめ

総量規制によって、借りられなくなった人達はどうしているのか?事業者向け貸付残高だけ見ても、法改正前と法改正後では60万件の市場が無くなっており(60万件のほとんどは中小企業・小規模事業者向けの短期小口融資だが)、個人事業主への総量規制例外貸付は増加していない状況、そして、個人向け貸付では消費者金融・クレジット会社の消費者ローンの残高減少は底をついた感じで、今後上昇していく様子はあるが、法改正前と後では、ものすごい大きな残高の減少となっています。


総量規制によって、多重債務者が減り、自己破産も減ったと言っている人もいますが、多重債務者が減ったという証拠は信用情報機関の情報だけであり、その信用情報機関は貸金業者が倒産・廃業して、信用情報から脱退してしまえば、その時点で消えてしまします。今までどれほどの中小・地元密着の消費者金融が無くなったのか、貸金業者の登録件数を見れば一目瞭然です。


また、自己破産については、過払い返還請求を認めた最高裁判決より減り続けており、総量規制が完全施行になった2010年6月の時点で、既に債務整理の手法は破産から過払い返還請求(任意整理)に変わっているのです。


総量規制と上限金利引下げの改正貸金業法の恩恵を受けているのは、所得が多い人や、公務員や大会社などの属性が良い人だけです。そのような人達は、年収も与信も高いことから、通常に申込みすれば消費者金融からは借りられるでしょう。そして上限金利が下がったことで、今までよりも低金利で融資をうけることができます。


しかし、低所得者の人や個人事業主は審査はより一層厳しくなり、総量規制によって借りられなくなった人はかなりの数になるはずです。銀行などの金融機関は総量規制対象外で年収規制がないことから、そのような人達の受け皿になってほしいですが、銀行カードローンは、そもそも利用条件に事業性融資は利用できないと書いてあります。その為、あくまで個人事業主は一般のフリーローンで申込みしなければならず、銀行のフリーローンの審査は決して優しいものではありません。


総量規制によって市場は大きく様変わりしていますが表面的にはその影響はあまり分かりません。今後どのようになるのかは、時間が経過しなければはっきり分からない問題とも言えるのです(もうすぐ4年経過しますが・・)。事業者向け融資が今後増加するにはやはり金利を上げることが、もっとも手っ取り早いのですが、なかなかそう上手くもいかないものです・・。貸金業界の金融緩和は本当に訪れるのでしょうか?



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