総量規制は緩和・撤廃されるのか?
消費者金融の株価がここ数か月で軒並み上がっていることは知っている人も多いと思います。その根拠となるのは、自民党に政権交代したことで貸金業の規制緩和が行われるという情報からきています。
自民党は貸金業法に対する政権公約として、「2006年12月の改正貸金業法成立、2010年6月の完全施行という一連の流れの中で、市場の収縮・マクロ経済への悪影響、新種のヤミ金の暗躍、返済困窮者の放置といったような影響が顕在化しています。そのため上限金利規制、総量規制といった小口金融市場に対する過剰な規制を見直すことによって利用者の利便性を確保します。同時に多重債務者に対する支援態勢を強化するとともに、ヤミ金融業者の摘発の強化、適正な業者の育成を図り、健全な借り手と健全な貸し手による適正な規模の小口金融市場の実現と真の返済困窮者の救済を目指します。」としている。
しかし、自民党に政権交代した今、小口金融市場の規制緩和・見直しについては、ほとんど話を聞かないのが現状です。又、小口金融市場に対する過剰な規制を見直すとのことですが、その見直しの中心的存在にしなければいけないのは、低所得者層や中小・零細企業の経営者・個人事業主など、貸金業法改正前は借入が可能だった人だということです。利用者の利便性を確保するには本来借入ができていた資金需要者への融資が一番の問題点ではないでしょうか?
今回は総量規制の緩和・撤廃を含め、今後の小口金融規制緩和について書いていきたいと思います。
規制改革会議で金利・総量規制が検討項目に
総量規制緩和・撤廃・見直しの現状はどうなのか?日本金融新聞(2013年3月20日号)では内閣府の規制改革会議は三月八日の第四回会議でいくつかの「ワーキング・グループ(WG)」の中の「創業等WG]で出資法・利息制限法による利率規制・総量規制等種々の安全性にかかわる規制の合理化を図るべきではないかとして、出資法・利得制限法金利及び総量規制を検討課題として組み込んだとしている。
ただし、この項目は優先的に検討すべき事項(六月までに一定の結論を出す必要のある緊急性の高いテーマ)とはされていない。優先検討事項でないものでも六月までに解決することができるならば新たに追加することも可能としているが、それ以外は六月以降の検討に送られるとのこと。(日本金融新聞より引用)
上記の記事を見れば金利・総量規制は検討項目に入っているが六月以降の検討に送られると書いてあります。確かに検討項目に入っているものの、実際に消費者金融等の貸金業に勤務する人達は総量規制・金利規制の緩和はあまり期待していないのが大半ではないかと思われます。
なぜなら、貸金業は今までに規制が繰り返し強化されることはあっても、緩和することはほとんどなく、特に消費者金融は社会的に高金利や過酷な取り立てのイメージがまだ根付いており、いくら資金需要者への融資をするのにあたり、いまの上限金利では採算がとれないと説明しても、一般の世論の感覚では上限20%はまだまだ高金利と考える人がほとんどだからです。
それに加え、上限金利引き上げは日弁連の反発が当然予想され、総量規制緩和は実際に多重債務者が減っているという根拠(実際に減っているかは見解の違いで分かれる)を持って、すんなりと緩和・撤廃になるとは考えにくく、検討しても結局は現状のままになるのではないかと専業の人は考えているように思えます。
総量規制の影響は表面上分かりにくい?
総量規制に対する成果は賛否両論ありますが、現場での感想は思ったほどに混乱やクレームの電話が少なかったという印象を受けます。追加融資が停止となり、その件で電話があった顧客には「法律で融資はできないことになりました」と説明することになりますが、自社の貸付基準ではなく、法律として融資禁止となった旨の説明でほとんどの人はすんなり電話を終えることになります。
総量規制が導入されて今年で3年経過になりますが、規制により借入ができなくなった人達はどうなっているのか?貸金業者の数は年々減り、残っている中でも廃業して回収のみをしている会社も多くあります。その会社は宣伝・広告もしておらず、融資は一切行っていないのにもかかわらず、いまだに新規融資の問い合わせの電話がかかってくると聞いたことがあります。その多くは大手等の貸金業者に断られた人が借りれる会社を探して一握りの希望を持って電話してくるよう聞こえるらしいのです。
当然融資はしていないことを告げて断るらしいのですが、その断られた資金需要者の人はどうするのか?借りること自体を諦めるのか、他の消費者金融へまた電話をするのか、ヤミ金に借入を依頼するのか。その行く末は分かりませんが、はっきりと言えることは規制強化で借入ができなくなった人達は実際にかなりの人数になるということです。
資金需要者への融資のことを考えるのであれば、見直すのは上限金利・総量規制だけではありません。今の貸金業法の新規参入の規制基準を緩和することで貸し手の数を増やすこと、完済者からの過払い返還請求に対しての基準を作り、いつまで続くか分からない過払い返還請求への見通しを明確にさせること。そして上限金利を見直し、低所得者層へのリスクヘッジ体制を変えることが重要なのではないでしょうか。
当初、総量規制で借入困難になる人は全体利用者の約半数と言われており、借入困難となった人達への受け皿を銀行等の金融機関が積極的に融資をするよう政府は求めていましたが、銀行等の融資残高は大幅に増加していることもなく、貸金業の貸付残高の減少と比較すれば、規制により満足に借入ができなくなった人は多くいるのが現実です。今後小口金融規制が緩和することで、自民党公約にもある「利用者の利便性の確保、健全な借り手と健全な貸し手による適正な規模の小口金融市場の実現」ができることを期待したいと思います。
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