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2024年01月17日

阿城の『孩子王』で執筆脳を考える9

4 まとめ    
 
 阿城の執筆時の脳の活動を調べるために、まず受容と共生からなるLのストーリーを文献により組み立てた。次に、「孩子王」のLのストーリーをデータベース化し、最後に文献で止めたところを実験で確認した。そのため、テキスト共生によるシナジーのメタファーについては、一応の研究成果が得られている。  
 この種の実験をおよそ100人の作家で試みている。その際、日本人と外国人6対4、男女比4対1、ノーベル賞作家30人を目安に対照言語が独日であることから非英語の比較を意識してできるだけ日本語以外で英語が突出しないように心掛けている。

参考文献

阿城 孩子王 民族文化派小説(立野祥介訳) 時代文芸出版社 1989
後藤岩奈 阿城「該子王」(子供たちの王様)原作作品と映画化作品を比較する
     県立新潟女子短期大学研究紀要第37号2000
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 
     新風舎 2005
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む 華東理工大学
     出版社 2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 
     日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデー
     タベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默−ナディン・ゴーディマと意欲 
     華東理工大学出版社 2018
花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方−トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 
     中国日語教学研究会上海分会論文集2018  
花村嘉英 小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へ シナジーのメタファーのために 
     V2ソリューション 2023

花村嘉英(2023)「阿城の『孩子王』で執筆脳を考える」より

阿城の『孩子王』で執筆脳を考える8

表3 情報の認知  
 
  同上    情報の認知1  情報の認知2  情報の認知3 
A 表2と同じ。  3      2     1
B 表2と同じ。  2      2     1
C 表2と同じ。  2      1      1
D 表2と同じ。  2      2      1
E 表2と同じ。  2      2      1

A:情報の認知1はBその他の条件、情報の認知2はA新情報、情報の認知3は計画から問題解決へである。    
B:情報の認知1はAグループ化、情報の認知2はA新情報、情報の認知3は計画から問題解決へである。  
C:情報の認知1はAグループ化、情報の認知2は@旧情報、情報の認知3は計画から問題解決へである。  
D:情報の認知1はAグループ化、情報の認知2はA新情報、情報の認知3は@計画から問題解決へである。  
E:情報の認知1はAグループ化、情報の認知2はA新情報、情報の認知3は@計画から問題解決へである。        
 
結果      
 学歴も低いのに教壇に立ち、作文を通して自身の教育理念を生徒たちに伝える物語。聾啞でも力持ちな父が大好きな子供王福は、先生が黒板に書く教材を写して勉強してきた。真面目でクラスの仲間のためによく働き、先生が使っていた字典を貰えることになった。しかし、記録の道理に負けたといい、字典を受け取らずにこれまで通り写すと主張するため、購読脳の「自身の教育理念と面白さの追及」から執筆脳の「ユーモアとプラス思考」という組を引き出すことができる。    
 
花村嘉英(2023)「阿城の『孩子王』で執筆脳を考える」より

阿城の『孩子王』で執筆脳を考える7

【連想分析2】 
 
情報の認知1(感覚情報)   
 感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、@ベースとプロファイル、Aグループ化、Bその他の条件である。 
  
情報の認知2(記憶と学習)   
 外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。未知の情報は、またカテゴリー化される。このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、@旧情報、A新情報である。 
 
情報の認知3(計画、問題解決、推論)   
 受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、@計画から問題解決へ、A問題未解決から推論へである。

花村嘉英(2023)「阿城の『孩子王』で執筆脳を考える」より

阿城の『孩子王』で執筆脳を考える6

分析例 
 
1 王福がクラスのために真面目に働き字典を渡される。     
2 この小論では、「孩子王」の購読脳を「自身の教育理念と面白さの追及」と考えているため、意味3の思考の流れ、プラス思考に注目する。    
3 意味1@視覚A聴覚B味覚C嗅覚D触覚 、意味2 @喜A怒B哀C楽、意味3知恵の結集@ありAなし、意味4振舞い @直示A隠喩B記事なし、人工知能 @ユーモアAプラス思考。   
  
テキスト共生の公式       
  
ステップ1:意味1、2、3、4を合わせて解析の組「自身の教育理念と面白さの追及」を作る。 
ステップ2:王福がクラスのために真面目に働き字典を渡される。何かを記録するときは、何かをした後に書く道理がある。王福は、作文も労働も昨日のうちにやってしまい、自分の負けなので字典を写すといい、執筆脳の「ユーモアとプラス思考」と組になるため、解析の組と相互に作用する。 
 
A:[@視覚+D触覚]+C楽+@あり+@直示という解析の組を、@ユーモアとAプラス思考という組と合わせる。   
B:@視覚+C楽+@あり+@直示という解析の組を、@ユーモアとAプラス思考という組と合わせる。  
C:@視覚+A怒+@あり+@直示という解析の組を、@ユーモアとAプラス思考という組と合わせる。  
D:@視覚+C楽+@あり+@直示という解析の組を、@ユーモアとAプラス思考という組と合わせる。  
E:@視覚+C楽+@あり+@直示という解析の組を、@ユーモアとAプラス思考という組と合わせる。    
 
結果  表2については、テキスト共生の公式が適用される。 

花村嘉英(2023)「阿城の『孩子王』で執筆脳を考える」より

阿城の『孩子王』で執筆脳を考える5

【連想分析1】  
表2 受容と共生のイメージ合わせ 

先生が王福に字典を渡す場面

A 王福看着 班长。班长望望我,慢慢从挎包里取出一个纸包,走过去,递到王福手上。
意味1 1+5、意味2 4、意味3 1、意味4 1、人工知能 1
B 王福看看我,我叹了已扣气,说;王福,这字典是我送你的,不赢的。王福急了,说;我把作文拿来。
意味1 1、意味2 4、意味3 1、意味4 1、人工知能 1
C 我说;不消了。我们说好是你昨天的。记录一件事,永远在事后,这个道理是扳不动的。
意味1 1、意味2 2、意味3 1、意味4 1、人工知能 1
D 你是极认真的孩子,并且为班上做了这么多事,我就把字典送给你吧。
意味1 1、意味2 4、意味3 1、意味4 1、人工知能 1
E 学生们都不说话。王福慢慢把纸包打开,字典露出来,方方的一块。忽然王福极快地将纸包包好,一下塞到班长手里,抬眼望我,说; 意味1 1、意味2 4、意味3 1、意味4 1、人工知能 1

花村嘉英(2023)「阿城の『孩子王』で執筆脳を考える」より

阿城の『孩子王』で執筆脳を考える4

【データベースの作成】  
 
表1 「孩子王」のデータベースのカラム  

項目名  内容     説明 
文法1  態     能動、受動、使役。  
文法2 時制、相  現在、過去、未来、進行形、完了形。 
文法3 様相   可能、推量、義務、必然。 
意味1   五感   視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
意味2   喜怒哀楽   情動との接点。瞬時の思い。 
意味3   思考の流れ  実現ありなし 
意味4  振舞い   ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。 
医学情報  病跡学との接点 受容と共生の共有点。構文や意味の解析から得た組「自身の教育理念と面白さの追及」と病跡学でリンクを張るためにメディカル情報を入れる。 
情報の認知1  感覚情報の捉え方  感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。
情報の認知2  記憶と学習  外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。その際、未知の情報については、学習につながるためカテゴリー化する。記憶の型として、短期、作業記憶、長期を考える。 
情報の認知3  計画、問題解決、推論  受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。 
人工知能 ユーモアとプラス思考 エキスパートシステム  ユーモアとは、上品な洒落、諧謔、プラス思考とは、ポジティブシンキング、物事を前向きに捉えること。

花村嘉英(2023)「阿城の『孩子王』で執筆脳を考える」より

阿城の『孩子王』で執筆脳を考える3

3 データベースの作成・分析

 データベースの作成方法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。データベースの数字は、登場人物を動かしながら考えている。
 こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容は、それぞれの言語ごとに構文と意味を解析し、何かの組を作ればよい。しかし、共生は、作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。 

花村嘉英(2023)「阿城の『孩子王』で執筆脳を考える」より

阿城の『孩子王』で執筆脳を考える2

2 「孩子王」でLのストーリーを考える 

 不当な差別を受けていた人々に暖かいまなざしを注ぐことで抗議を表す鋭い社会への批判が阿城の目線である。「孩子王」は、上山下郷運動の末期、1977年の文革の終わりに時代の設定がある。傍観者のぼくが正面に出てきて、子供との交流を通して真の教育を探り、教育空洞化の原因といえる文教行政関係者による官僚主義と末端の関系者の事勿れ主義を描いていく。 
 また「孩子王」は、今日の中国で小中学校の教師の代名詞として広く使われている。阿城の文章には、現代風の新しい言い回しがあり、前後の文脈から推測可能である。また、人物の身体的な特徴を侮辱的に指摘した差別用語にあたることばがあだ名として使われている。全体的にのんびりとした、いわば牧歌的な雰囲気があり、ユーモラスな描写が多い。世間一般の価値基準、常識では、些細な取るに足りないと思われるような物事、時として低く見られるようなものに良さ、面白さを見い出そうとする。
 後藤(2000)によると、例えば、豚や鶏などの動物や、それらに対する主人公の思いや行為などの描写である。「小便をする」という一般的に言って、あまり表に出せない、隠すべきとされている行為により集団の統率者となるということも逆説的な発想に違いない。また差別を受け、蔑視されているものについても、やはりその良さを見い出そうとする鏡点があるように思われる。例えば、王福の父親王七穂のエピソードなどがそうである。
 さらに、文革期の山奥の農村における、物資、設備などの面での不便さをも、そのまま受け入れて肯定的に見て行こうとする、一種の楽天的な弾老の哲学のようなものが感じられる。人間以外のものを擬人化したり、人や動物を総体化した表現が多く見られる。例えば、校庭の子豚が思索したり、人から何をされても食べ続ける牛を「哲学者」に模したり、豚や鶏を見て自分がこの世で人間であることを喜び、もし動物だったら人に見られて恥ずかしい思いをするだろう、と考える場面などである。
 主人公は、最後に教師の職を解かれることになるが、「思わず身が軽くなったように感じられた」と表現されているように、一種晴れやかな終わり方になっている。主人公が学校で行った授業のやり方も、自分なりの教育理念、教育論をもっていて、それに基づいて行ったというよりは、自分がそのようなやり方が納得がいくから、生徒たちがそのような状態になるのが好きだから、作品に描かれたような授業のやり方をやったと受け取れる。
 そこで購読脳は「自身の教育理念と面白さの追及」、執筆脳は「ユーモアとプラス思考」、阿城の「孩子王」のシナジーのメタファーは、「阿城とプラス思考」である。 

花村嘉英(2023)「阿城の『孩子王』で執筆脳を考える」より

阿城の『孩子王』で執筆脳を考える1

1 はじめに

 文学分析は、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロに通じる分析方法である。基本のパターンは、まず縦が購読脳で横が執筆脳になるLのイメージを作り、次に、各場面をLに読みながらデータベースを作成し、全体を組の集合体にする。そして最後に、双方の脳の活動をマージするために、脳内の信号のパスを探す、若しくは、脳のエリアの機能を探す。これがミクロとマクロの中間にあるメゾのデータとなり、狭義の意味でメタファーが作られる。この段階では、副専攻を増やすことが重要である。 
 執筆脳は、作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読み及びそれに対する共生の読みと定義する。そのため、この小論では、トーマス・マン(1875−1955)、魯迅(1881−1936)、森鴎外(1862−1922)の執筆脳に関する私の著作を先行研究にする。また、これらの著作の中では、それぞれの作家の執筆脳として文体を取り上げ、とりわけ問題解決の場面を分析の対象にしている。さらに、マクロの分析について地球規模とフォーマットのシフトを意識してナディン・ゴーディマ(1923−2014)を加えると、“The Late Bourgeois World”執筆時の脳の活動が意欲と組になることを先行研究に入れておく。
 筆者の持ち場が言語学のため、購読脳の分析の際に、何かしらの言語分析を試みている。例えば、トーマス・マンには構文分析があり、魯迅にはことばの比較がある。そのため、全集の分析に拘る文学の研究者とは、分析のストーリーに違いがある。文学の研究者であれば、全集の中から一つだけシナジーのメタファーのために作品を選び、その理由を述べればよい。なおLのストーリーについては、人文と理系が交差するため、機械翻訳などで文体の違いを調節するトレーニングが推奨される。
 なお、メゾのデータを束ねて何やら予測が立てば、言語分析や翻訳そして資格に基づくミクロと文理共生からなるクラウドからの社会学とを合わせて、広義の意味でシナジーのメタファーが作られる。
 この種の分析は、作者の執筆脳を予測するためのものである。ここでの分析が大きな人工知能の入力となり、AIの出力が作家の執筆脳と認識されれば、シナジーのメタファーが将来的にはサイエンスと呼ばれるようになっていく。

花村嘉英(2023)「阿城の『孩子王』で執筆脳を考える」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
プロフィール