多量栄養素(別名マクロ栄養素)すなわちタンパク質、炭水化物、脂肪は、特に健康やフィットネスの分野を中心に、マスコミでよく取り上げられています。ところが実際には、体に活力を与え、肌をつややかに保ち、代謝を促進するのは、ビタミンB群、ビタミンD、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEといった微量栄養素です。さらに、ミネラルは気持ちを落ち着かせるのに役立ち、メンタルヘルスを向上させる可能性があり、激しい運動のサポートにも期待できます。

では、特に健康に重要な微量栄養素にはどのようなものがあり、また、毎日十分な量を摂取するにはどうすれば良いのでしょうか。この記事では、そんな疑問にお答えしていきます。

微量栄養素とは


微量栄養素とは、生命維持に必要な500種類以上の酵素反応の一つ一つを進行させるビタミン、ミネラル、ポリフェノールなどの小さな分子を指します。通常、人体はこれらのビタミンやミネラルを自ら生成できないため、その働きだけでなく、どのように食生活に取り入れるかを知ることも重要です。自然療法医である私は、患者の体内の自然なプロセスを促し、癒し、最適な状態に保つお手伝いをすることを専門分野の一つとしています。

ビタミン:体に必要なものとは


多くの野菜や果物に含まれるビタミンCや、日光を浴びることで生成されるビタミンDは既におなじみかと思いますが、毎日の食生活で摂取量を管理したいビタミンにはどんなものがあるのでしょうか。ここでは、私が特に患者に勧めるビタミンの中からいくつかご紹介していきたいと思います。

ビタミンA


ビタミンAは、健康な視力と精力的生活 、さらには強力な丈夫な体づくり に不可欠であり、心臓、肺、腎臓の機能もサポートし、毎日の健康と活力維持に必須の栄養素でもあります。

ビタミンAは、葉物野菜の他、ブロッコリーやカボチャなどの野菜、マンゴーやアプリコットといった果物を食べる習慣があれば、食事から簡単に摂取できます。野菜が苦手な方は、ビタミンAを含むマルチビタミン(ほとんどのマルチビタミンに含まれています)を毎日摂取すると良いでしょう。

ビタミンB群


ビタミンB群は複数のビタミンからなり、それぞれが共生する形で私達の健康を支えています。

  • まず、ビタミンB1はチアミンとも呼ばれ、体が食物をエネルギーに変換するのを助けます。通常、ビタミンB1は、栄養強化パンのような全粒穀物の他にも、朝食用シリアル、肉類、豆類に含まれています。アルコールを摂取するとビタミンB1が消耗され、チアミン欠乏になりやすいため、お酒をよく飲む方は毎日のサプリメント習慣にB1を取り入れることが大切です。

  • ビタミンB12は、健康で丈夫な血球を保つだけでなく、DNAの生成もサポートします。魚や肉類(牛、豚、鶏)などの食品には天然由来のビタミンB12が含まれていますが、製品にB12を添加している食品メーカーも少なくありません(そのため、必ず食品表示ラベルを確認しましょう)。一方、ビタミンB12が豊富なヴィーガン食品といえば、栄養酵母(ニュートリショナルイースト、別名ビール酵母)があります。栄養酵母はビタミンが豊富でチーズのような風味がするため、私の患者の多くがおやつやサラダに加えて楽しんでいます。

  • ビタミンB2はリボフラビンとも呼ばれ、B12と同様に血球機能をサポートしやすくして、B1のように食物のエネルギー変換に役立つため、かなり重要なビタミンと言えるでしょう。幸い、ビタミンB2は、ホウレンソウ、ブロッコリー、脂肪の少ない肉(鶏や七面鳥など)、卵といった調理しやすい食物に含まれています。それでもやはり、多くの食品メーカーは、シリアルやパンなどの製品にもビタミンB2を添加していますので、くれぐれもラベルを確認しましょう。

  • ビタミンB3はB2と非常によく似ていますが、B3はナイアシンと呼ばれており、血球機能や細胞呼吸(食物をエネルギーに変換)をサポートします。ただし、一般にナイアシンは、鶏肉、魚、牛肉などの動物性食品の他、ナッツ類や豆類などに含まれています。

  • ビタミンB6は、代謝機能に関わる100種類以上の反応に利用され、乳児の脳の発達になくてはならないため、特に妊娠中の女性にとって重要な栄養素です。鶏肉や魚の他、ジャガイモなどのでんぷん質は特にB6が豊富で、柑橘類以外の果物にも多く含まれています。このことから、アメリカでは、果物やでんぷん質の野菜がビタミンB6の主な摂取源となっています。

  • ビタミンB7(別名ビオチン)は、多量栄養素のエネルギー変換を助けます。ただ、ビタミンB7を食事から摂取するのは、ビオチンの仲間であるB2やB3ほど簡単ではないかもしれません。ビタミンB7を十分に摂取するには、サツマイモ、ホウレンソウ、ブロッコリーなどの野菜を毎日の食事に取り入れるように心がけましょう。その他にも、種子類やナッツ類をはじめ、レバーのような動物の臓器からもビタミンB7を摂取できます。ビオチンは、髪、肌、爪の成長を助け、肌のハリや弾力を保つ働きもあるため、髪、肌、爪用のサプリメントの多くに含まれています。

  • ビタミンB9は葉酸とも呼ばれています。葉酸は、牛レバー、葉物野菜、アスパラガス、芽キャベツ、果物、果汁、ナッツ類、豆類、エンドウ豆などの食品に自然に含まれています。また、胎内で神経系が発達する赤ちゃんにとって欠くことのできない栄養素である葉酸は、ほとんどの妊婦用ビタミンに含まれています。


ビタミンC


ビタミンCはアスコルビン酸とも呼ばれ、還元成分として機能し、タバコの煙、大気汚染、紫外線から守ります。また、ビタミンCは創傷治癒(そうしょうちゆ。傷を治すこと)を促し、肌の明るさとハリを保ち、丈夫な体づくり にも不可欠です。アメリカ人のほとんどは、特に柑橘類や果汁をはじめとする果物や野菜から一日に必要なビタミンCを摂取しています。

ビタミンD


ビタミンDは、カルシウムの吸収を助けることから、丈夫な骨の形成と維持に役立つ上に、神経から脳への情報伝達にも役立つため、いわば「オールスター」ビタミンの一つでもあります。自然にビタミンDを含む食品はごくわずかですが、その代表としてマス、サケ、マグロといった脂肪の多い魚が挙げられます。とはいえ、多くの食品はビタミンDが強化されているため、購入時に栄養成分表示を確認することをお勧めします。

ビタミンE


ビタミンEは、フリーラジカルから細胞を保護するという点で、ビタミンCと同様の働きがありますが、丈夫な体づくり をサポートするように体を助け、血管を広げやすくして血栓を防ぐ働きがあります。ヒマワリ油や小麦胚芽油などの植物油の他、ナッツ・種子類にもビタミンEが多く含まれ、濃緑色葉野菜からもある程度摂取できます。

ビタミンK


ビタミンKは、骨のカルシウム基質にカルシウムを取り込みやすくすることで、細胞の健康と骨の強度をサポートします。他の多くの必須ビタミンと同様に、ビタミンKは、葉物野菜や植物油、さらにはブルーベリーやイチジクなどの果物にも含まれています。通常、ビタミンKは、ビタミンDと合わせてサプリメントとして摂取できます。なお、抗凝固薬(抗凝血薬)を服用中の方や血栓ができやすい方は、必ず主治医に相談した上でビタミンKを摂取することをお忘れなく。

ミネラル:体に必要なものとは


アメリカ国立衛生研究所(NIH)は、(栄養における)ミネラルを「地球上に存在する無機物で、健康を維持するために必要なもの」と定義しています。理論上は、必要なミネラルをすべて食物から供給できるはずですが、商業的農業により、土壌に含まれるミネラルが減少しています。その結果、アメリカの食料品店で見かける食品には、体が必要とするミネラルを十分に含むものはほとんどありません。

念押しとして、たびたび患者にサプリメントを勧めるのはそのためです。そこで、ここからは、私が患者に推奨する最も一般的なミネラルと、それらのミネラルを特に豊富に含む食物をご紹介しましょう。

マグネシウム


マグネシウムは健康維持と病気の予防に欠かせないミネラルであり、リラックス効果もあります。マグネシウムを最も多く含む食品は、未精製(全粒)穀物、ホウレンソウ、ナッツ類、豆類、ジャガイモですが、ただし、健康的な方法で調理されたものに限られます。一方、マグネシウムをサプリメントで摂る場合は、過剰に摂取すると下痢を起こしやすいため注意が必要です。自分に合ったマグネシウムのサプリメントを選ぶには、自然療法医、栄養士、機能性医学の専門家などにご相談ください。

クロム


体内でのクロムの働きについてはまだ解明されていないことも多いのですが、血糖値の調整に役立つことはわかっています。日常的に肉類、野菜、穀物を食べていれば、食事から十分なクロムを摂るのは簡単ですが、サプリメントで摂取しても良いでしょう。

カルシウム


前述の通り、カルシウムはビタミンDと共に作用し、骨の強度を高めて維持します。ほとんどの乳製品はカルシウムを多く含み、その他にも多くの食品(ジュースや代替乳製品など)がカルシウム強化されています。なお、カルシウムのサプリメントは、既存の動脈プラークの石灰化リスクがないことをかかりつけ医に確認した上で摂取してください。また、喫煙者は特に注意が必要で、医師の指示がない限りカルシウムを摂取しないようにしましょう。

カリウム


カリウムは、体液のバランスを調整し、細胞にエネルギーを与え、日常生活を送る上でも、運動をする上でも欠かせないミネラルです。カリウムは、ドライアプリコット、バナナ、オレンジジュースを筆頭に、ほとんどの果物や野菜に含まれています。このミネラルは、血中濃度によって(多すぎても少なすぎても)心臓の電気信号に影響を及ぼす可能性があるため、カリウムのサプリメントはごく低用量で提供されています。そのためにも、自分に合ったカリウムの摂取量は、かかりつけ医または栄養士にお尋ねください。

セレン


セレンは甲状腺ホルモンの生成に必要なミネラルです。つまり、体内でカロリーが消費される速度を調整しやすくする働きがあるということです。ほとんどのアメリカ人は、肉類(牛、豚、鶏)や卵が豊富な食事を摂ることで、十分な量のセレンを摂取しています。

オメガ3


オメガ3は、体がエネルギー源として使用する脂肪酸で、抗炎症作用があり、脳の健康サポートにも期待できます。オメガ3は、脂肪の多い魚(サケ、ニシン、イワシなど)の他、チアシードやフラックスシード(亜麻仁種子)、ナッツオイルなどの食品から簡単に摂取できます。このような食品を食べる習慣がない方は、オメガ3のサプリメントを利用することで楽にオメガ3を摂取できます。ただし、適切な摂取量については、必ずかかりつけ医にご相談ください。また、オメガ3のサプリメントは、血液凝固を妨げる可能性があるため、大きな手術を予定している方は、少なくとも数週間前に摂取を中止してください。

アミノ酸


アミノ酸はタンパク質の構成要素であり、脳と体の間の情報伝達を助ける神経伝達物質を生成するのに役立ちます。また、骨の形成を促進し、代謝を上げる働きもあります。牛肉、鶏肉、魚などの高タンパク食品にはすべてアミノ酸が含まれていますが、これらの食品を摂る習慣がない方は、プロテインパウダーやコラーゲンパウダーを飲み物に混ぜたり、焼き菓子の材料として加えて、1日に必要な量を補ってみてはいかがでしょうか。

食物繊維


食物繊維は、厳密には微量栄養素とは言えないかもしれませんが、非常に重要な栄養素であることに変わりはありません。食物繊維は、季節による不快感、重金属毒性、うっかり・ぼんやり、ぜんそく、皮膚の発疹、炎症性腸疾患、骨粗しょう症などのサポートに関与すると考えられます。野菜や果物は食物繊維の優れた供給源であり、水分も多く含むため、食物繊維と相まって毎日のすっきりをサポートします。食物繊維のサプリメントを摂取する際は、多量の水と一緒に摂ると、毎日のスッキリ習慣へとつながります。

まとめ:よく調べましょう


活力にあふれ、健康的で、かつ環境に優しい生活を送るには、何よりも食事が重要です。適切な食品を選ぶことで、まさに食は薬となります。食事が健康に与える影響についてより詳しく知りたい方は、かかりつけ医や栄養士など、有資格の医療専門家にご相談ください。