通常カルシウムを充分補給していると血圧は比較的安定しています。
高血圧の方が良質のカルシウムを毎日充分に補給していくと血圧が下がっていく場合が多いです。
高血圧の方が病院で血圧降下剤を処方してもらいますが、最初は軽めのカルシウム拮抗剤を服用します。
カルシウム拮抗剤とはカルシウムイオンが体内の細胞に取り込まれるのを阻害するお薬です。
細胞内のカルシウム濃度が高くなると、細胞は硬く、血管も弾力性が低下して硬くなります。
そこでカルシウムが大量に細胞内に入るのを阻害して、血圧を下げるためのお薬です。
ここで疑問がおきると思います。
カルシウムを充分摂取すると血圧が下がるのに、血圧が高いとなぜカルシウムが細胞に入るのを阻害するのか?
この矛盾を解くのがカルシウムパラドックスです。
パラドックス【paradox】とは、「逆説」という意味ですが、日本国語大辞典によると、『一見、不合理であったり矛盾したりしていながら、よく考えると一種の真理であるという事柄。』
「私たちの毎日の食生活で、カルシウムの摂取量が不足すると、生命維持のため骨や歯からカルシウムイオンが溶け出します。
その情報をつかさどるのが副甲状腺ホルモンですが副甲状腺ホルモンがいつも出ていると、骨から過剰にカルシウムイオンが放出され、余分なカルシウムイオンが血管や脳、軟骨など通常はカルシウムが存在しないところまで入り込んでしまいます。
その結果、さまざまな病気が引き起こされる事になり、このような仕組みを「カルシウムパラドックス」といっています。
つまり食生活でカルシウムが不足すると、骨や歯からカルシウムイオンが溶け出し、体内(細胞、脳、血管、臓器)ではカルシウムが増えすぎる。
その結果骨はもろくなり、身体の細胞は硬くなるということです。
また結石ができやすくなります。
〔カルシウムパラドックスと病気の関係〕
腎臓結石は、カルシウムの過剰摂取が原因と思われて来ましたが、実際は逆でカルシウムが不足する事で骨からカルシウムが溶け出し、それが結石を作る事がわかって来ました。この溶け出したカルシウムは、腎臓結石の他にも胆嚢結石・膀胱結石・尿管結石などの原因になる事があります。
血管にカルシウムが増えると血管は硬くなり動脈硬化になります。また血液が通りにくくなるため高血圧症を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞の危険性を高めます。
脳の中にカルシウムが増えると脳細胞の働きが阻害されたり、細胞自体が傷つけられたりするため、記憶障害や認知症、アルツハイマー病などを発症しやすくなります。
軟骨にカルシウムが入り込むと、軟骨は古いゴムのように硬くなります。固くなった軟骨は次第にすり減って行き、骨と骨が直接ぶつかって痛みの出る変形性関節症を引き起こします。
免疫細胞の中にカルシウムが入りこむと、免疫のシステムがうまく働かず、がん細胞などの増殖を抑え込む事も難しくなります。
このように、カルシウム不足は殆どの病気に関連するといっても過言ではありません。
若い方も、高齢者の方も健康で長生きするためにも、カルシウムの不足には十分に気をつけましょう。
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