おはようございます。本日はこちら不朽の傑作「マブラヴ」とその続編「マブラヴ オルタネイティブ」について一緒にレビューします。ちなみに続編の方も傑作でございます。
このマブラヴシリーズ、長い歴史があるようで、古くはPC版テキストゲーム「君が望む永遠」(通称きみのぞ)から続くようです。私はこちらは未プレイですが、本作は存分に楽しめたと思っています。きみのぞでは重要な位置にいたキャラクターが、今作では脇役として登場します(脇役と侮ってはいけません。が、一つのストーリーを経て来ただけあって若干、達観している嫌いがあります)。
また、現在ではマブラヴ→オルタネイティブに続く三作目「トータルイクリプス」が発売されていますが、未プレイのためこちらには触れません。
まずはマブラヴの紹介からですが、こちらのパッケージには一枚のディスクに「マブラヴ エクストラ」(学園編)と、「マブラヴ アンリミテッド」(異世界編)の二つのストーリーが収録されています。
どちらも非常に濃密な出来でして、この二つのソフトを細分化して、エクストラ、アンリミテッド、オルタネイティブと分けることも出来ます。
そしてこの三つのストーリーは各話がはっきりと独立しており、それぞれのお話として楽しむことが出来る一方、この三つが揃って初めて「マブラヴ」という壮大なストーリーが完成するのだと言えるほど、密接な繋がりを持っていまして、その妙技、緻密さ、神懸り的な計画性が本作品群の魅力であり、傑作あるいは神ゲーと評される点です。
マブラヴ公式サイト
「マブラヴ」起動後最初に選べるのはエクストラ編で、キャッチコピーの通り王道的なストーリーが展開されます。
私は初め、このマブラヴのイラストに結構なクセを感じまして、悪く言えば「絵が受け付けない」状態だったのですが、この手のゲームの不思議なところで、序盤を越えれば絵は気にならなくなります。中盤頃に愛着が湧き、終盤にもなると「この絵じゃなきゃダメなんだ」と思うようになります。
不思議ですね。ずっと同じ立ち絵を見ているからでしょうか。
エクストラ編自体は後のストーリーに比べるとインパクトはどうしても弱くなるのですが、「王道」を正しく理解し、丁寧に構成されたストーリーは、とても面白かったです。特に、登場する女の子たちが「血の通った人間」として描かれているのが顕著で、彼女たちの良い部分と悪い部分も受け入れて愛していくことになります。雰囲気は違えど、「車輪の国(略)」のようなヒューマンドラマを感じられると思います。
逆の面として、ラノベ風王道学園ものを意識しているので、やや大げさな個性付けや、あまりにもべったりな幼馴染「純夏(すみか)」に若干の苛立ちを感じるかもしれません。
しかしてプレイヤーが感じたマイナスイメージをも、プレイヤーのシンクロ性、ストーリーの掘り下げに活用してしまうところが本作のすごいところ。
エクストラ編をある程度攻略すると、次にアンリミテッド編が選べるようになります。この話は、主人公・武(たける)が、ある日目を覚ますと別の場所にいた、といういわゆる異世界ものの話に転換していまして、一見、エクストラで積み上げた知識や記憶を切り捨てているように思えます。
しかし、ここで出会う人物は、かつてエクストラ編で武(=自分)と一緒にストーリーを編み上げた少女たちで、まったく異なる世界の中で、彼女たちが普遍的に持つ悩みに対して、もう一度向き合うことになるわけです。
エクストラ編で一人一人を攻略し、彼女たちのことをわかったつもりでいたとしても、世界の状況が一変しており右往左往しながらも、また新しい発見にありつけます。
まるで古き良きものを大切にしながら、どんどん新しいものに切り替わっていく(逼迫した世界状況)、そんな新しい物への好奇心と懐かしさ(知っているようで知らない彼女の一面、でもそれもやっぱり彼女)が同居するような、「時代の流れ」に似た感慨を持ってプレイできるのです。
製作者のこだわりを感じさせる愛の詰まった軍事オタ的な世界観を満喫しつつも、そこで懸命に「生き」る、知っているようで知らない彼女たちをもう一度攻略していくわけです。
お話の都合上、ラストの展開が誰を選んでも似たような状況になってしまうのはやや残念なところですが、「少しだけエクストラ編の記憶を持ちつつ、突然異世界、それも似ているようで似ていない、世界にやってきてしまった」という、あの楽しかった学園はどこへ……という寂寥感、郷愁を、武とともに感じながら、この世界に生きていく、という話はとてもショッキングで、印象的で、とにかく感情移入が半端なかったです。
ここまでが最初のソフト「マブラヴ」の話。
次は「オルタネイティブ」についてです。
このオルタ、アンリミテッド編でピリオドが付いたかに見えたお話を再度ほじくり返します。
それも、アンリミテッドでピリオドを付けた上で、「もう一周」という設定です。なんじゃそりゃ、と思うかもしれませんが、そんな奇抜な設定でありながら、涙なくしては見ていられない物語へと昇華させちゃうのですから、もう脱帽ものです。
エクストラ、アンリミテッドを一纏めにし、このオルタと比較してみると、前者は武も勿論そうですが、登場人物、専ら攻略可能な少女たちに重きを置いている気がします。エクストラ、アンリミテッドと二回ずつ同じ娘を攻略するので当然と言えば当然ですが、そのため少女たちの成長というものをより感じます。
だとすれば、今作オルタネイティブは武自身の成長の物語と言えます。おぼろげになりつつも、自分のいた世界の記憶と、この世界の未来の記憶を持ち合わせた武は、自分の望むハッピーエンドを探し、再び荒廃したこの世界に「挑む」のです。
エクストラもアンリミテッドも、掛け値なしに素晴らしいお話でした。そしてその記憶をプレイヤーも持っているわけで、積み上げてきた強固な基盤をもとに展開していく、武の奮闘は本当に涙なくして語れません。
マブラヴ オルタ公式サイト
エクストラは勿論のこと、アンリミテッドにおいても、実は越えてはいけない一線というものがきちんと意識されています。
しかし、このオルタではここぞとばかりその一線を踏み越えてきます。とてもショッキングです。これ以上は言えませんが、ここでそうするために、あえて踏みとどまっていたのだと容易に想像がつきます。
このオルタの話の流れといい、全体を俯瞰してのストーリーの構成力には驚愕します。「あんたたち、本当に最初からここまで考えて作っていたの?」と、答えは決まっていますが思わず聞いてみたくなります。
突然ですが覚えていますか? 既プレイの方はことあるごとにヒシヒシと感じていたでしょうが、とりわけオルタに関してはより顕著に感じられると思います。
それは、「純夏がいない」という設定です。
エクストラであれだけべたべたべたべたしていた幼なじみが、この異世界には存在しないという設定が、武だけでなく、プレイヤーの心理にもぐさりぐさりと突き刺さってくるのです。
ただ作った、舞台としてだけの役割しかない世界……ではなく、彼らは本当に、ここで生きている、生活しているのだ、という描写が素晴らしいです。その上で、泣いて笑って感動できる、インパクトもありつつ王道も忘れない……。
オルタネイティブのパッケージ裏にあるキャッチコピー、
「人類を無礼(なめ)るな」
は、もしかしたらクリエイター(作り手)達の心の叫びかもしれません。
選択肢が仕事していないからつまらない、というのは大いなる誤解です。逆に言えば、ここまで緻密に計算して、プレイヤーへのストレスやカタルシスのバランスを取るには、お話に分岐を作ってはならなかった、と取れます。
エクストラ、アンリミテッド、オルタネイティブと遊びつくすにはかなりの時間を要しますが、お話の展開だけで一喜一憂させるだけでなく、プレイヤーの記憶や印象をも上手に引き出して感情に揺さぶりをかける、それはそれは素晴らしい体験を約束します。
極上のエンターテインメントですよ。
【このカテゴリーの最新記事】
きっとコメントもらえるはず、と半分確信してこの記事をあげました(汗)。
私はこういうテキストゲーをやるとき、やっぱり話の流れや全体を意識して、特定のキャラクターを愛でる、ということはあまりないのですが、強いて言えば、タマが好き、かな?
自分の立ち位置を決められない性格だとか、勝負どころに弱いところとか、共感して読めました。
逆に共感しにくかったのが、榊と彩峰の二人でしょうか。性格は違えど共通する部分の多い二人です。背景の複雑さや、心理形成の過程など、理屈として理解はできても、実感は難しかったです。
この作品についての場合、コメントするだけでも論文クラスの長さになってしまいそうなので、我慢してライトに抑えておこうかと思います(笑)。
旧作メインの私にとっては、数少ない発売日に新品で買った箱ゲーの一つでもあります。
因みにPC版を先にプレイしていました。
PC版のオープニングデモ、超オススメです。
作中のキャラで例えるとですが、
昔の私は「委員長」とかなり近い性格で、今の私は比較的「柏木」に近い性格といった感じでしょうか。
そのためか、好きとか嫌いという括りではなく、この二人に対しては何ともいえない複雑な感情があったりします。
作中で、「委員長が転び方を覚えたら伊隅大尉のようになれるかも」というニュアンスの表現があったかと思いますが、
個人的経験から推し量るに、多分、柏木にもなれるかと思われます(笑)。
最後に個人的なお気に入りキャラランキングを〜。
1・柏木(複雑な感情)
2・夕呼先生(大尊敬せざるを得ない器)
3・月詠中尉(かわいい)
4・京塚曹長(近所の食堂にいて欲しい)
5・小沢提督、ウォーケン少佐(部下になりたい)
特別枠:名も無きおかっぱ(オルタのラストに登場)
柏木と先生が僅差で、5位が同着です。
メインキャラが上位5位にほぼ入らないとか・・・。
私、ひねくれすぎですね(笑)。