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2020年05月14日

佐藤愛子の「沢村校長の晩年」の相関関係について4

A 言語の認知(動から静への思考):1ある、2ない → 3、2
B 人工知能:1認識、2心的操作 → 3、2
 
◆A、Bそれぞれの平均値を出す。 
Aの平均:(3 + 2)÷ 2 = 2.5
Bの平均:(3 + 2)÷ 2 = 2.5
◆A、Bそれぞれの偏差を計算する。偏差=各データ−平均値 
Aの偏差:(3 – 2.5)、(2 – 2.5)= 0.5、-0.5
Bの偏差:(3 – 2.5)、(2 – 2.5)= 0.5、-0.5
◆A、Bの偏差をそれぞれ2乗する。
Aの偏差2乗 = 0.25、0.25
Bの偏差2乗 = 0.25、0.25
◆AとBの偏差同士の積を計算する 
(Aの偏差)x(Bの偏差)= 0.25、0.25
◆AとBを2乗したものを合計する。
Aの偏差を2乗したものの合計 = 0.25 + 0.25 = 0.5
Bの偏差を2乗したものの合計 = 0.25 + 0.25 = 0.5
◆Aの偏差xBの偏差の合計を計算する。0.25 + 0.25 = 0.5

花村嘉英(2020)「佐藤愛子の『沢村校長の晩年』の相関関係について」より

佐藤愛子の「沢村校長の晩年」の相関関係について3

3 小説の場面に適用する

表1 光江のお節介な振舞い

A「世に憎むべきは善意である」正剛は日記にそう書いた。「悪意には立ち向かい様がある。しかし、底抜けの善意には立ち向かいようがない」光江のすることなすことが彼の気に障るのである。性格創造1、人工知能2

B 時折、光江は仏壇の前に座って鉦を鳴らす。必ず三回、「チーン、チーン、チーン」と鳴らすのである、すると彼はムッとした。性格創造2、人工知能1

C 居合わせた柳原がそれを聞いて、「なんだ?そりゃ?」といぶかしんだ。「ばあさんだよ、手伝いの」吐き捨てるようにいった。性格創造2、人工知能2

D 柳原は尚もいぶかしんでいった。「なんで鉦を鳴らすんだ?」「知らんよ」正剛はまた吐き捨てた。「オレは知りたいよ・・・」それ以来、柳原は光江を気に留めるようになった。性格創造1、人工知能1

E 「あれは例の秋葉原のメイド喫茶の真似かね?」といったこともある。光江は黒々と染めた前髪にレースの縁取りをした白い布をつけている。「知らんよ」その時も吐き捨てるように正剛はいった。
性格創造1、人工知能1

花村嘉英(2020)「佐藤愛子の『沢村校長の晩年』の相関関係について」より

佐藤愛子の「沢村校長の晩年」の相関関係について2

2 相関の作り方

 シナジーのメタファーのために作成しているデータベースは、データの種類で見ると、俗に言う測れないカテゴリーデータからなる。数量データといわれる身長、体重、気温、湿度などとは異なり、値が連続ではなく飛び飛びで離散的となる。前野(2012)によると、カテゴリーデータは、対象の性質を表したり、現象や区別を表したりする。性別、好き、嫌い、うまい、まずい、おもしろいなどあるものの性質や現象が示される。
 相関とは原因から結果が生じ、それが互いに関係しあっていることをいう。また、相関関係があるとは、ある測定値の変化に対して他の測定値も変化する場合に使われる。相関の強さは、ピアソンの相関係数で表す。合わせて共分散という統計用語が重要になる。 

(1) 共分散の公式
共分散=[(xの各データ−xの平均値)x(yの各データ−yの平均値)]の和/データ数
   =[(xの偏差)x(yの偏差)]の和/データ数
   = xとyの偏差積の和/データ数

正の相関があると0より大きく、負の相関があると0より小さくなる。

(2) 相関係数(ピアソン)
相関係数=XYの偏差平方和/√(Xの偏差平方和)x(Yの偏差平方和)

「沢村校長の晩年」の問題解決の場面を使用して、簡単な例を見てみよう。

花村嘉英(2020)「佐藤愛子の『沢村校長の晩年』の相関関係について」より

佐藤愛子の「沢村校長の晩年」の相関関係について1

1 先行研究  

 一人暮らしになった私立の女子高校の元校長沢村正剛を描いた「沢村校長の晩年」の一場面を使用し、既存の研究と照合すると、執筆時の佐藤愛子(1923年−)には、性格を創造するための表現を駆使しながら何人もの登場人物を調節する作風が確認できる。
 沢村正剛は、30年間私立の女子高校の校長を勤め、退職後は趣味を楽しんでいる。すでに75歳になり、妻の正子は亡くなり、晩年を一人で過ごしている。一人暮らしになった正剛のために、長男の妻忍が初老の赤松光江に手伝いを依頼する。しかし、働き者でも神経質で小うるさい正剛とは性格が合わない。余計なお節介で旺盛な善意にいら立つ毎日である。二人の性格のコントラストが面白い。  
 この小論では、自作のデータベースを使用して相関関係を考察する。言語の認知のカラムは、性格の創造とその表現、1あり2なし、情報の認知のカラムは、人工知能が1創造、2認知発達である。 

花村嘉英(2020)「佐藤愛子の『沢村校長の晩年』の相関関係について」より

2020年05月13日

佐藤愛子の「沢村校長の晩年」で執筆脳を考える8

結果

 佐藤愛子は、この場面で正剛が光江の底抜けの善意に辟易していること伝えようとしている。そして、高校からの親友の柳原にも限度を超えていることを説明しているため、「性格の創造とその表現」と「創造と認知発達」という組が相互に作用する。  
 この種の実験をおよそ100人の作家で試みている。その際、日本人と外国人60人対40人、男女比4対1、ノーベル賞作家30人を目安に対照言語が独日であることから非英語の比較を意識してできるだけ日本語以外で英語が突出しないように心掛けている。

4 まとめ

 佐藤愛子の執筆時の脳の活動を調べるために、まず受容と共生からなるLのストーリーを文献により組み立てた。次に、「沢村校長の晩年」のLのストーリーをデータベース化して、最後に特定したところを実験で確認した。そのため、テキスト共生によるシナジーのメタファーについては、一応の研究成果が得られている。
 この種の実験は、およそ100人の作家で試みている。その際、日本人と外国人65人対35人、男女比4対1、ノーベル賞作家30人を目安に対照言語が独日であることから非英語の比較を意識して、できるだけ日本語以外で英語が突出しないように心掛けている。 

参考文献

日本成人病予防協会 健康管理士一般指導員受験対策講座テキスト3 ヘルスケア出版 2014
花村嘉英 計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか? 新風社 2005
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む 華東理工大学出版社  2015
花村嘉英 日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用 日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで 南京東南大学出版社 2017
花村嘉英 从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默−ナディン・ゴーディマと意欲 華東理工大学出版社 2018
花村嘉英 シナジーのメタファーの作り方−トーマス・マン、魯迅、森鴎外、ナディン・ゴーディマ、井上靖 中国日語教学研究会上海分会論文集  2018  
花村嘉英 川端康成の「雪国」に見る執筆脳について−「無と創造」から「目的達成型の認知発達」へ 中国日語教学研究会上海分会論文集  2019
花村嘉英 社会学の観点からマクロの文学を考察する−危機管理者としての作家について 中国日語教学研究会上海分会論文集  2020
佐藤愛子 院長の恋(解説 河野多恵子) 文春文庫 2012

佐藤愛子の「沢村校長の晩年」で執筆脳を考える7

表3 情報の認知
A 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 1、情報の認知3 2
B 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
C 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2
D 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 1、情報の認知3 2
E 表2と同じ。 情報の認知1 3、情報の認知2 2、情報の認知3 2

A:情報の認知1はB条件反射、情報の認知2は@旧情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。
B:情報の認知1はB条件反射、情報の認知2はA新情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。
C:情報の認知1はB条件反射、情報の認知2はA新情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。
D:情報の認知1はB条件反射、情報の認知2は@旧情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。
E:情報の認知1はB条件反射、情報の認知2はA新情報、情報の認知3はA問題未解決から推論へである。

花村嘉英(2020)「佐藤愛子の『沢村校長の晩年』の執筆脳について」より

佐藤愛子の「沢村校長の晩年」で執筆脳を考える6

【連想分析2】

情報の認知1(感覚情報)  
 感覚器官からの情報に注目することから、対象の捉え方が問題になる。また、記憶に基づく感情は、扁桃体と関係しているため、条件反射で無意識に素振りに出てしまう。このプロセルのカラムの特徴は、@ベースとプロファイル、Aグループ化、B条件反射である。
 
情報の認知2(記憶と学習)  
 外部からの情報を既存の知識構造へ組み込む。この新しい知識はスキーマと呼ばれ、既存の情報と共通する特徴を持っている。未知の情報は、またカテゴリー化される。このプロセスは、経験を通した学習になる。このプロセルのカラムの特徴は、@旧情報、A新情報である。

情報の認知3(計画、問題解決、推論)  
 受け取った情報は、計画を立てるプロセスでも役に立つ。その際、目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。しかし、獲得した情報が完全でない場合は、推論が必要になる。このプロセルのカラムの特徴は、@計画から問題解決へ、A問題未解決から推論へである。

花村嘉英(2020)「佐藤愛子の『沢村校長の晩年』の執筆脳について」より

佐藤愛子の「沢村校長の晩年」で執筆脳を考える5

分析例

1 お手伝いの光江が仏壇で鉦を鳴らす場面。
2 この小論では、「沢村校長の晩年」の購読脳を「性格の創造とその表現」と考えているため、意味3の思考の流れ、性格の創造からその表現へに注目する。
3 意味1@視覚A聴覚B味覚C嗅覚D触覚 、意味2 @喜A怒B哀C楽、意味3@性格の創造からAその表現へ、意味4振舞い @直示A隠喩B記事なし
4 人工知能 @創造、A認知発達 

テキスト共生の公式

ステップ1:意味1、2、3、4を合わせて解析の組「性格の創造とその表現」を作る。
ステップ2:性格の創造とその表現の精神状態から「創造と認知発達」という組を作り、解析の組と合わせる。

A:B哀+@視覚+@性格の創造+@直示という解析の組を、@創造A認知発達という組と合わせる。
B:A怒+A聴覚+A性格の表現+@直示という解析の組を、@創造A認知発達という組と合わせる。
C:A怒+A聴覚+A性格の表現+@直示という解析の組を、@創造A認知発達という組と合わせる。 
D:A怒+A聴覚+@性格の創造+@直示という解析の組を、@創造A認知発達という組と合わせる。
E:A怒+@視覚+@性格の創造+@直示という解析の組を、@創造A認知発達という組と合わせる。

結果  表2については、テキスト共生の公式が適用される。

花村嘉英(2020)「佐藤愛子の『沢村校長の晩年』の執筆脳について」より

佐藤愛子の「沢村校長の晩年」の執筆脳について4

【連想分析1】
表2 受容と共生のイメージ合わせ
お手伝いの光江のお節介な振舞い

A 「世に憎むべきは善意である」正剛は日記にそう書いた。「悪意には立ち向かい様がある。しかし底抜けの善意には立ち向かいようがない」光江のすることなすことが彼の気に障るのである。
意味1 3、意味2 1、意味3 1、意味4 1、創造認知 2
B 時折、光江は仏壇の前に座って鉦を鳴らす。必ず三回、「チーン、チーン、チーン」と鳴らすのである、すると彼はムッとした。意味1 2、意味2 2、意味3 2、意味4 1、創造認知 1
C 居合わせた柳原がそれを聞いて、「なんだ?そりゃ?」といぶかしんだ。「ばあさんだよ、手伝いの」吐き捨てるようにいった。意味1 2、意味2 2、意味3 2、意味4 1、創造認知 2
D 柳原は尚もいぶかしんでいった。「なんで鉦を鳴らすんだ?」「知らんよ」正剛はまた吐き捨てた。「オレは知りたいよ・・・」それ以来、柳原は光江を気に留めるようになった。
意味1 2、意味2 2、意味3 1、意味4 1、創造認知 1
E 「あれは例の秋葉原のメイド喫茶の真似かね?」といったこともある。光江は黒々と染めた前髪にレースの縁取りをした白い布をつけている。「知らんよ」その時も吐き捨てるように正剛はいった。
意味1 2、意味2 1、意味3 1、意味4 1、創造認知 1

花村嘉英(2020)「佐藤愛子の『沢村校長の晩年』の執筆脳について」より

佐藤愛子の「沢村校長の晩年」の執筆脳について3

3 データベースの作成・分析

 データベースの作成法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。データベースの数字は、登場人物を動かしながら考えている。
 こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容は、それぞれの言語ごとに構文と意味を解析し、何かの組を作ればよい。しかし、共生は、作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。

【データベースの作成】

表1 「沢村校長の晩年」のデータベースのカラム
項目名 内容   説明
文法1 名詞の格  愛子の助詞の使い方を考える。
文法2 態     能動、受動、使役。
文法3 時制、相  現在、過去、未来、進行形、完了形。
文法4 様相  様相の表現。可能、推量、義務、必然。
意味1 五感  視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
意味2 喜怒哀楽  情動との接点。瞬時の思い。
意味3 思考の流れ 性格の創造とその表現、ありなし
意味4 振舞い  ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。
医学情報 病跡学との接点 受容と共生の共有点。構文や意味の解析から得た組「性格の創造とその表現」と病跡学でリンクを張るためにメディカル情報を入れる。
情報の認知1 感覚情報の捉え方  感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。例えば、ベースとプロファイルやグループ化または条件反射。
情報の認知2 記憶と学習 外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。その際、未知の情報についてはカテゴリー化する。学習につながるため。記憶の型として、短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述)を考える。
情報の認知3 計画、問題解決、推論 受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。
人工知能 エキスパートシステム 創造と認知発達。

花村嘉英(2020)「佐藤愛子の『沢村校長の晩年』の執筆脳について」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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