2011年07月01日
放射性廃棄物はどこへ 終わらない悪夢 前後編
世界一の原子力発電大国フランスを中心に、放射性廃棄物がどのように扱われているかを丁寧に追った作品。
前編は核技術がどのような危険を与えてきたかを示す為に各地の放射能被害をレポートする。
アメリカでは原爆に使用するウランを濃縮する工場で汚染された水をそのまま川に流し、その後タンクに貯蔵するも漏れて未だに流出しているという。
旧ソ連ではチェルノブイリよりも前に原発事故が起こり、汚染された周辺地域に現在も人が住んでいる。
また、フランスでは再処理施設から放射性物質を含むガスが継続的に排出されており、周辺地域だけでなくヨーロッパ全土に影響を与えていると言う。
肝心の廃棄物は最近まで海に直接捨てられており、反対運動が活発となった結果なんとか今は禁止されている。
ただ、汚染されていると言っても、どの程度なのかあまりはっきりしない。測定値自体もあまり示さないし、健康被害の統計データも示さない。
放射能汚染は他の環境破壊と若干違っていて、目に見える汚染は無く、癌(病気)の発生確率が上昇する。」という被害が問題になるので、そういうデータは重要だと思う。
しかも調査機関がグリーンピースだったりして、ちょっと素直に驚けない。
もちろん問題が無いわけでは無いと思うが。
後編はいよいよ現在廃棄物がどのように扱われているかを追う。
前述の再処理施設ではわずか数%のみ再利用できる燃料として抽出されるだけで、残りは全てロシアに送られていた。
ロシアは財政難から廃棄物処理という役目を引き受け、更に数%だけ再利用可能燃料として抽出し、フランスに送り返す。
残り、つまり廃棄物の90%はなんとそのままとある地域にコンテナに詰めて野ざらしにされている。
担当者は平気な顔で「周りに誰も住んでいないから大丈夫」と言う。
その他の地域ではプールにて「とりあえず貯蔵」が一般的だ。
これは最終的にどのように処理するか決まるまでの暫定処理で、フランスの元環境大臣は「かつて将来処理技術が確立される事を見越して原子力エネルギーに踏み込んだが、40年たってもその目処は立たず、完全に行き詰っている。」と話す。
そしてフィンランドのオンカロと同じように地中奥深くに埋めてしまう計画が現在進行中との事。
これはオンカロと同じく「10万年も管理は不可能」「未来につけを回しているに過ぎない。」という指摘があり、抜本的な解決になってはいないという結論である。
オンカロの作品の時にも思ったのだが、原子力エネルギーは事故などの危険性よりも、廃棄物の問題の方がより重要な問題で、解決策が無いまま始めたのが最大の間違いだったんじゃないだろうか。
そうするとエネルギー需要が世界的に増え続ける中原発を短期間でストップし、代替発電に強引に一気に切り替えるのは結局同じ問題を抱えてしまう事になったりしないだろうか。
「今さら言ってもしょうがない」ではなく、しっかり過去を反省し、今後は何事も慎重に進めていくべきなんだと思う。
それにしてもエネルギー問題は八方塞で、少なくとも先進国には消費中心文化を見直す必要ありといつもの思いを新たにしました。
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