2011年10月25日
ジェニンの心
パレスチナガザ地区ジェニンで一人の少年がイスラエル軍の誤砲により死亡した。
その父親はその後誰もが驚く行動を取り、世界中に大きなインパクトを与えた。
その誰もが驚く行動とは、少年の心臓を含む5つの臓器を5人のイスラエル人(イスラエル国籍のアラブ人含む)の移植希望者に提供するというものであった。
なぜ父親はそのような行動をとったのか、動機が作品を通じて明らかにされていく。
この父親はかつて活動家で、テロまがいの事を行って投獄された事もある。
しかしその後あらゆる経験によってそれでは状況は変えられないと悟り、最愛の息子の死を無駄にしまいと考え抜いた末の行動であった。
この行動は抵抗運動、攻撃の一種でもあったのだ。
これは実に重要なメッセージだと思う。
憎しみを消す事は無理でも、攻撃を暴力ではない形に変える事はできるという一例である。
臓器提供を受けたイスラエル人家族は、イスラエル人によって殺された憎むべきアラブ人の子供に命を助けられ、その子供の臓器が我が子の体内にあるのである。
「連中は私が自爆テロをしてくれた方がよかったと思ってるハズだ。」と語る父親。
果たして自分の息子が殺されて、この決断に至れるのかと自問した上で、心底この父親の行動に感動した。
臓器提供を受けた側のユダヤ人とこの父親が対面するシーンではお互いが憎しみを抑え、静かに会話する。
しかしながら笑顔は全く無く、一食触発、手に汗握る緊張感があった。
ワイドショーで晒される殺人犯を見て「こんな奴同じ目に合わせてやれ!」と叫ぶ思慮の浅い人達に是非見せたい作品。
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