2011年07月28日
最愛の敵 カダフィ 前後編
BS世界のドキュメンタリーにて視聴
チュニジア、エジプトから発した一連の革命で日本でもその名を広く知られるようになった「カダフィ大佐」。
独特のカリスマ性と強烈な交渉力を持つ彼の半生を追う。
話を細かくすると非常に複雑になってしまうので、作品で語られるカダフィ大佐とリビアが歩んで来た道をざっとまとめる。
69年27歳の若さでクーデターにより政権奪取。
石油利権をコントロールする事で欧米の干渉をもコントロールし、軍事力を高めていく。
次第に欧米との緊張が高まっていき、テロ→報復→報復という負の連鎖が始まっていく。
最終的にアメリカとフランスそれぞれの航空機が乗客もろとも爆破されるところまで行き着き、国連による経済制裁が始まる。
カダフィは中東の過激派の支援を長く行なっていたため沢山の情報を持っており、核兵器の開発も進めていた。
その情報の提供や容疑者の引渡し、核開発の放棄、そしてなんといっても石油利権などを交渉の材料とし、欧米の譲歩を引き出し始める。
そんじょそこらの独裁者と訳が違うのはアメリカ、フランス、イギリスという超大国相手にそれぞれ独自で交渉し、条件を変え、3国が協調しないように仕向けていた事だ。
石油利権に引きずられる形で3国はカダフィのペースに乗せられ、カダフィの地位は向上。
経済制裁はやがて解かれ、各国がリビアに媚を売り始め、終いには国連の議長国にまで上り詰める。
そんなカダフィも自国の統制に関してはスキがあり、一連の革命によって存亡の危機にさらされているという話。
作品ではだいぶはしょられていた印象だが、それでも自国の利益の為にそれぞれが色々勝手な事しているという実情は垣間見られる。
特筆すべきはリビアの国民やテロによる被害者など、民衆が軽んじられた上での「自国の利益」である事。
また、作品中一切登場しない日本であるが、登場しないって所に意味があるように思う。
9条がどうとか外交がどうとか日本の消極性はいつも批判されているが、ことこの件に関してはその消極性が功を奏している面があるのではないか。
列強は強欲に関わった結果テロに会い、国民に対して不義理な選択を強いられていく。
もちろん日本もビジネスレベルで色々関わってるんだろうが、結果的には被害に会う事なくうまくやったという見方もできるのではないか。
これらの問題は一概に何かを言う事はできないが、「民衆への支援」がもっとも「正義」に近い対応なのではないか。
列強と対等に対峙してきたカダフィも、民衆の力で追い詰められつつある。
革命成功にインターネットが一役買った事は有名だが、情報、物資、受け入れ等、民衆への支援でできる事は多い。
列強としては相手が独裁者であった方がメリットを渡せばメリットで返してくれるから本当は何かと都合が良いのだ。
何か問題が起き、その対応を迫られた時、列強の巧妙な利権争いに巻き込まれる事なく、「民衆支援!」の一点を主張する事がより平和で安定した世界に向かう一番の方法ではなかろうか。
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