ではなぜ、この「ユマニチュウード」が、奇跡のような効果をもたらしたのでしょうか?
それは、脳のストレスに関係があると考えられます。
ワシントン大学での研究によると、アルツハイマー型認知症では脳の中にストレスホルモンが多くなり、脳が興奮することによって、暴行、暴言などの攻撃的な行為や徘徊が起こることがわかっています。
このストレスホルモンをコントロールしているのが「海馬」で、アルツハイマー病が海馬を委縮させることから、ストレスホルモンの分泌ができなくなるのです。
暴行や徘徊などから患者さんの安全を守るため、やむを得ず体を拘束する処置がとられることがありますが、これはさらにストレスホルモンを増やし、攻撃的な行動を悪化させることになります。
一方、アメリカのアザサパシフィック大学の研究では、やさしく触れるケアのよって、ストレスホルモンの分泌が減り、徘徊や暴力の減ることが報告されています。心地よいと感じることによってストレスホルモンが減るのです。「ユマニチュウード」は、まさに、脳内のストレスホルモンを減少させ、脳の興奮を鎮めることによって、患者さん本来の姿を取り戻させているといえます。
これらを通じて、人間はたとえ認知症を患っても「人間らしくありたい」という強い願いがあり、人間として尊重されることが脳に大きな働きをもたらすことがわかります。
イブ・ジネスト氏とロゼット・マレスコッテイ氏の「ユマニチュウード」は、私たちがテーマとする「生涯、人間さ示唆を保ち幸せであり続ける」ということを、重度の認知症の方々に体現するものと言えるでしょう。
認知症に対する喜ばしい効果は、「ユマニチュウード」のようなケアの方法だけでなく、認知症の治療法や、認知力の低下を抑える方法に対しても次々と発見され、日本、そして、世界各国から報告されています。
イギリスでは、心筋梗塞や虚血性心疾患を減らすため大々的に取られた政策で、副次的に認知症をかなり抑えたというデータが発表されました。井桐氏の高齢者7500人を対象とした調査で、ふえるいっぽうとおもわれていた認知症患者数が、1990年代と比べ2010年代では、明らかに減少したのです。
その原因を調べたところ、イギリスが国家政策として行った心筋梗塞や虚血性心疾患などの心臓病を減らす対策が、脳にも良い影響を及ぼしたことが分かったのです。これは、私たち研究者から見ても驚く内容でした。以前は一度なってしまったらもう回復しないと考えられていた認知症を、そもそも抑えることができる、また、発症したとしても、あるところで、急激な認知力低下を抑え、できるだけゆるやかにすることができるであろうことを確信できるようになったのです。
また日本では、2014年2月、兵庫県淡路市名で行われた調査から、「シロスタゾール」という動脈硬化の再発を防ぐ薬があると敗まー病の進行を抑えることがわかりました。
アルツハイマー型認知症の方の中で、進行が止まっている、また進行が遅い人がいることがわかり、その人たちを調べてみると、真名動脈硬化の再発を防ぐために、この薬を服用しているという共通点が見つかりました。 紺の薬は、血液をサラサラにし、血液の塊が血管の中に詰まらないようにするものですが、アルツハイマー病の原因となるアミノロイドベータを減少させる働きがあることが分かったのです。
また、ワシントン大学では、アルツハイマー病の場合、脳が糖をえなるぎーとして取り込むことができない、すなわち、の糖尿病の症状が脳に起きていることをつき止めました。そして、糖尿病で使われるインスリンを、鼻腔からスプレーで噴射し、直接脳に送り込む実験を行ったところ、認知機能の低下が抑えられることがわかりました。
「ユマニチュウード」は見る、話しかける、触れる、立つの柱とし、150の具体的な手法から作られており、「様々な機能が低下して誰かに頼らねばならない状況になったとしても、最期の日まで尊厳をもって暮らし、その生涯を通じて”人間らしい”存在であり続ける」−そのためにケアを行う人々が、ケアの対象の方に「あなたのことを、私は大切に思っています」というメッセージを発信する、つまり”人間としての尊厳”をどこまでも大切にし続けるケア手法です
2020年10月21日
2020年10月19日
薬を飲むほど病気が治りにくく、危険が高くなる
高齢になればなるほど、病院から降下剤(高血圧治療薬)、コレステロールの薬はもちろんのこと、さらに胃腸薬、消炎鎮痛剤、入眠剤、抗不安薬などいろいろな薬を処方されて、混乱するほど多くの薬を飲んでいます。医師から出された薬を飲医むのが当たり前になってくすりが切れると不安になるので、薬をもらうために日常的に病院通いをしている恒例の方が多いのです。
しかし、コレステロールや血圧については、歳をとれば多少高くなるのは当たり前ですし、薬を飲まなければならないほど高い例は少ないはずです。コレステロール値は下がっても、がんになったり寝たきりになる危険性がたかくなるかもしれません。一般に使われる消炎鎮痛剤なども、飲まないですませば、痛みが治まり熱が下がるというように、確かに薬を飲めばその場の症状を抑えることができます。痛みは血管が拡張することで生じるので、消炎鎮痛剤は血流を抑えることによって痛みを抑えます。
ただし、それによって血流が少なくなれば、組織を再生させる物質も少なくなるので回復が遅くなります。 一時的に痛みが治まっても、なかなか治りにくくなるのです。
病気もケガも、血流を良くして老廃物を排出して、組織を治す物質を患部に行き渡るようにしなければ治らないのです。ですから、痛み止めなどの消炎鎮痛剤は、使うにしても、高熱の時、痛みがひどい時などに限り、せいぜい数日程度のとどめておくことです。継続的に使い続けると、かえって病気が治りくいのです。
降圧剤を慢性的に飲んで血圧を下げると血流障害をおこす<ので、脳の血流障害に結び付いたり、抹消の循環障害が起こって体が冷えます。つまり、血流が悪くなって低体温になり、活力もなくなり、ふらつきが出たり、眼の影響を与えることにもなりかねません。また、血流障害によって、認知症になる危険性も高くなります。一年に約四千人の方が風呂場で倒れてなくなるようですが、脳梗塞と同じで血圧の薬のせいかもしれません。
ちなみに、高血圧の基準値(血圧目標値)は、1978年に160mmhgでしたが、2009年には65歳以上の人は140/90mmhg未満、65歳未満の人は130/85mmhg未満に引き下げられています。
2008年の時点(厚生労働省の2008年統計調査)で、継続的に治療を受けていると推測される高血圧の総患者数は796万7千人、さらに潜在的な高血圧患者を含めると3千万以上と言われています。
基準値が上がった今では、さらに増えていると推測されます。となると、高血圧とされるのは、日本人全体の約四分の一以上にも達することになります。
基準値を百三十に下げたのは、脳血管系の病気をなくそうということですが、降圧剤の使用によって、かえって脳梗塞やがんの危険性が高くなると考えられます。
脳疾患には「出血性」と「虚血性」があります。 「出血性」は脳血管が破れて脳組織内に出血するもので、「脳出血」「脳内出血」や「クモ膜下出血」などがあります。高血圧によって引き起こされるのは、この血管が破れて出血する疾患のほうです。
「虚血性」は脳内の血管が詰まって血流が悪くなるもので「脳梗塞」「脳血栓、脳塞栓」や「一過性脳虚血発作」などです。この「虚血性」が血流障害の病気です。
血圧を下げれば、脳の血管が破れる危険性は確かに減って「出血性」の危険は減ります。ただし、それで「虚血性」の危険が減るわけではありません。実際、「出血性」の脳出血は減ってきているのですが,「虚血性」の脳梗塞は増えているのです。其れは、血圧を低くするのが健康だという間違った指導によるものと考えられます。<
しかし、コレステロールや血圧については、歳をとれば多少高くなるのは当たり前ですし、薬を飲まなければならないほど高い例は少ないはずです。コレステロール値は下がっても、がんになったり寝たきりになる危険性がたかくなるかもしれません。一般に使われる消炎鎮痛剤なども、飲まないですませば、痛みが治まり熱が下がるというように、確かに薬を飲めばその場の症状を抑えることができます。痛みは血管が拡張することで生じるので、消炎鎮痛剤は血流を抑えることによって痛みを抑えます。
ただし、それによって血流が少なくなれば、組織を再生させる物質も少なくなるので回復が遅くなります。 一時的に痛みが治まっても、なかなか治りにくくなるのです。
病気もケガも、血流を良くして老廃物を排出して、組織を治す物質を患部に行き渡るようにしなければ治らないのです。ですから、痛み止めなどの消炎鎮痛剤は、使うにしても、高熱の時、痛みがひどい時などに限り、せいぜい数日程度のとどめておくことです。継続的に使い続けると、かえって病気が治りくいのです。
降圧剤を慢性的に飲んで血圧を下げると血流障害をおこす<ので、脳の血流障害に結び付いたり、抹消の循環障害が起こって体が冷えます。つまり、血流が悪くなって低体温になり、活力もなくなり、ふらつきが出たり、眼の影響を与えることにもなりかねません。また、血流障害によって、認知症になる危険性も高くなります。一年に約四千人の方が風呂場で倒れてなくなるようですが、脳梗塞と同じで血圧の薬のせいかもしれません。
ちなみに、高血圧の基準値(血圧目標値)は、1978年に160mmhgでしたが、2009年には65歳以上の人は140/90mmhg未満、65歳未満の人は130/85mmhg未満に引き下げられています。
2008年の時点(厚生労働省の2008年統計調査)で、継続的に治療を受けていると推測される高血圧の総患者数は796万7千人、さらに潜在的な高血圧患者を含めると3千万以上と言われています。
基準値が上がった今では、さらに増えていると推測されます。となると、高血圧とされるのは、日本人全体の約四分の一以上にも達することになります。
基準値を百三十に下げたのは、脳血管系の病気をなくそうということですが、降圧剤の使用によって、かえって脳梗塞やがんの危険性が高くなると考えられます。
脳疾患には「出血性」と「虚血性」があります。 「出血性」は脳血管が破れて脳組織内に出血するもので、「脳出血」「脳内出血」や「クモ膜下出血」などがあります。高血圧によって引き起こされるのは、この血管が破れて出血する疾患のほうです。
「虚血性」は脳内の血管が詰まって血流が悪くなるもので「脳梗塞」「脳血栓、脳塞栓」や「一過性脳虚血発作」などです。この「虚血性」が血流障害の病気です。
血圧を下げれば、脳の血管が破れる危険性は確かに減って「出血性」の危険は減ります。ただし、それで「虚血性」の危険が減るわけではありません。実際、「出血性」の脳出血は減ってきているのですが,「虚血性」の脳梗塞は増えているのです。其れは、血圧を低くするのが健康だという間違った指導によるものと考えられます。<
2020年10月17日
認知症の脳に働きかけるユマニチュード
今、「まるで、魔法のようだ」と、その効果が話題になっている認知症ケアの手法があります。体育学を専攻した、フランスのイブ・ジネスト氏とロゼット・マレスコッテイ氏によって開発された「ユマニチュード」です。 認知力が低下して語り掛けても反応がない、自分がいる場所も理解できない、また立つこともできないで寝たきり状態の認知症患者の方々が、この手法でケアを受けると、話し、笑い、そして自分の力で立ち上がり、歩くことができるようになるというものです。
この「ユマニチュード」は、「見る」「話しかける」「触れる」「立つ」の四つを柱とし、150の具体的な手法から作られています。
「さまざまな機能が低下して誰かに頼らなければならない状況になったとしても、最後の日まで尊厳をもって暮らし、その生涯を通じて””人間らしい””存在であり続ける」−−−そのためにケアの対象の方に「あなたのことを<私は大切に思っています」というメッセ-ジを発信する、つまり””人間としての尊厳””をどこまでも大切にし続けるというケア手法です。
見つめる時は、患者さんの中に「支配されている」という感情が起きないように、見下ろすことは絶対せず、必ず正面から目の高さを合わせて対等であることを印象付けます。
体を拭くなどのケアをするときは、「タオルを温かくしてきましたよ」「左手を上げますねえ」「大きく動きましたねえ」「次は足を動かしますねえ」と実況中継をするように,優しく話しかけながら進めます。触れる時も決して手首た腕をつかむのではなく、下からそっと支えます。これらによって患者の中に、「自分は受け入れられている」という感情が生まれ安心できるのです。
そして、からだを拭いたり、歯磨きなどは、できるだけ立って行うようにし、筋力を高めることに力を入れています。このように、人間としての尊重が全てのケアの込められています。
NHKの番組「クローズアップ現代」で、イブ・ジネスト氏が、実際に日本の病院で、認知症が進行してしまった患者の方と触れ合う場面が紹介されました。
日中ほとんど反応がないか逆に攻撃的になるといった症状で、ほとんど寝たきり状態の高齢の男性がジネスト氏と触れ合うと、30分ほどでみるみる意欲を取り戻し、通訳を介した「病気を治したいですか」という質問に「Ýes」と英語で答え、ジネスト氏との別れ際にピースサインまで見せていました。
また、病院の場所が故郷と思い込むなど、認知力が低下し歩くこともできない高齢の女性は、ジネスト氏が車いすに座る女性の真正面にしゃがみ、やさしく腕をなでながら「OK、マダム」と紳士が女性を大切に扱うようにやさしくケアを行うと、車いすから立ち上がり歩くことができたのです。そして、ジネスト氏がやさしく頬を差し出すと、左右両方の頬にキスまでしたのです。
それをそばで見ていた息子さんは、まるで夢を見ているように「1時間くらいですか、認知症というものを全然感じなかったですよね」と取材スタッフに向かって語り掛けていました。
この「ユマニチュード」は、「見る」「話しかける」「触れる」「立つ」の四つを柱とし、150の具体的な手法から作られています。
「さまざまな機能が低下して誰かに頼らなければならない状況になったとしても、最後の日まで尊厳をもって暮らし、その生涯を通じて””人間らしい””存在であり続ける」−−−そのためにケアの対象の方に「あなたのことを<私は大切に思っています」というメッセ-ジを発信する、つまり””人間としての尊厳””をどこまでも大切にし続けるというケア手法です。
見つめる時は、患者さんの中に「支配されている」という感情が起きないように、見下ろすことは絶対せず、必ず正面から目の高さを合わせて対等であることを印象付けます。
体を拭くなどのケアをするときは、「タオルを温かくしてきましたよ」「左手を上げますねえ」「大きく動きましたねえ」「次は足を動かしますねえ」と実況中継をするように,優しく話しかけながら進めます。触れる時も決して手首た腕をつかむのではなく、下からそっと支えます。これらによって患者の中に、「自分は受け入れられている」という感情が生まれ安心できるのです。
そして、からだを拭いたり、歯磨きなどは、できるだけ立って行うようにし、筋力を高めることに力を入れています。このように、人間としての尊重が全てのケアの込められています。
NHKの番組「クローズアップ現代」で、イブ・ジネスト氏が、実際に日本の病院で、認知症が進行してしまった患者の方と触れ合う場面が紹介されました。
日中ほとんど反応がないか逆に攻撃的になるといった症状で、ほとんど寝たきり状態の高齢の男性がジネスト氏と触れ合うと、30分ほどでみるみる意欲を取り戻し、通訳を介した「病気を治したいですか」という質問に「Ýes」と英語で答え、ジネスト氏との別れ際にピースサインまで見せていました。
また、病院の場所が故郷と思い込むなど、認知力が低下し歩くこともできない高齢の女性は、ジネスト氏が車いすに座る女性の真正面にしゃがみ、やさしく腕をなでながら「OK、マダム」と紳士が女性を大切に扱うようにやさしくケアを行うと、車いすから立ち上がり歩くことができたのです。そして、ジネスト氏がやさしく頬を差し出すと、左右両方の頬にキスまでしたのです。
それをそばで見ていた息子さんは、まるで夢を見ているように「1時間くらいですか、認知症というものを全然感じなかったですよね」と取材スタッフに向かって語り掛けていました。
2020年10月16日
知的好奇心を刺激する『趣味』を持つ
脳にとって「知的好奇心)「続きを読む
2020年10月15日
2020年10月14日
おかげさまで
夏が来ると冬がいいと思う
冬になると夏がいいと思う
ふとると痩せたいと思う
痩せると太りたいと思う
閑になると忙しい方がいいと思う
自分に都合のいい人はいいひとだとほめ
自分が都合が悪くなると悪人だと敗す
借りた傘も雨が上がれば邪魔になる
金を持てば古びた女房が邪魔になる
衣食住は昔に比べればてんごくだが
上を見て不平不満の明け暮れ
隣を見て愚痴ばかり
どうして自分を見つめないのか
静かに考えてみるがよい 一体自分は何なのか
親のお陰、先生のお陰、
世間様の塊が自分ではないか
つまらぬ自我忘執をすてて、得手、勝手を慎んだら
俺が、俺がをすてて
お陰様で、お陰様で暮らしたい
わたしたちが忘れていた生き方を改めて知らしめてくれたし、そうあるべきだと思うような気がした。
2020年10月13日
2020年10月12日
「じょうずにできたね!!」がさらに子供の脳に好影響を与える
私たちは、親子の調理体験による適切な間合いが、子ども自身の認知機能や親の子育て態度にどのような影響を与えるかを検証するために、子どもとその両親を対象とした調査研究を、それぞれ大阪ガス(株)、森永製菓(株)との産学連携研究として行いました。
2004年より開始した大阪ガスとの産学連携研究では、最初にさまざまな調理を行っているときの前頭前野の活動の計測実験を行いました。脳活動の測定には、光トポグラフイーと呼ばれる装置を使いました。この装置の開発は日本で始まり、現在も日本の技術が最も進んでいます。光トポグラフィー装置では、近赤外光を頭皮上から脳に向かって照らし、その光が脳内には行った後に反射して戻ってくる光を計測することによって、主に大脳表面の活動を測定することができます。
近年、私たちは化学技術振興機構「先端計測分析技術・機器開発」の研究として、(株)日立製作所と共同で超小型(重量約100グラム)の装置の開発に成功しました。こうした装置を使うことで、普段の生活の中で人間の脳活動の情報を評価し、それをさまざまな形で利用できる社会がすぐそこまで来ています。
調理と前頭前野の関係は医学の世界では比較的古くからしわれていて、病気で大脳右半球の前頭前野が損傷を受けた場合に、調理ができなくなることが報告されていました。また認知症介護の現場でも、認知症が進んでいくと調理がうまくできなくなり、結果として自分で食事の支度がなくなることは知られています。
脳損傷の場合でも、調理ができなくなる主な理由は、調理の手順がわからなくなることです。
作業の手順を思い浮かべ、作業を行うのは、背外側前頭前野の中核的機能である作動記憶という記憶力を昼用とします。
調理ができなくなることの障害は、作動記憶のトラブルと考えられており、逆に調理を積極的に行うということは、作動記憶を積極的に使い、その力を増す効果があるのではないかと考えました。
大人を対象として、様々な調理を行っているときの背外側前頭前野の活動を計測した結果、全般に大脳右半球のほうがより強い傾向がみられたものの、ほとんどの調理の過程で左右両側半球の背外側前頭前野に強い活動が表れました。しかし、皮むき器を使って果物ややさいのかわをむくときには、背外側前頭前野がほとんど活動しませんでした。一方、包丁を使って皮をむくと背外側前頭前野に強い活動が認められます。
手先の細かい運動と作業の「易しさ」の双方が影響したと考えられます。手順とはすなわち作戦とも考えることができますので、何も考えずにさっとできてしまう行為では、脳が働かないのです。
面白いことに、ハンバーグの種をこねているときには、背外側前頭前野はテレビを見ているときと同じように抑制がかかりました。人によっては違うのでしょうが、私はこうした柔らかなものを無心で子猫根しているときは、なんとなく気持ちはよく安らぐので、このデータは納得しています。
様々な調理をしているときの脳活動に興味ある方は、「脳を鍛える大人の料理ドリル」(くもん出版2005年版)に詳しく書いてありますので参照してください。
子どもを対象とした計測でも、大人とまったく同様に、ほとんどの調理の過程で背外側前頭前野が強く働くことがわかりました。全般的に、子どもたちのほうが前頭前野が働く傾向が強く、特に火を使う調理を行うと背外側前頭前野の活動が顕著になることもわかりました。火を利用することができるのは人間だけです。
そこから考えると、ほかの動物と違い、すなわち発達した前頭前野が火を扱う能力と直結しているのではないかと考えます。キャンプファイヤーなど、火を見つめていると気分が高揚シタリ、菱木な気持ちになったりするのは、皆さんも感じていたのではないでしょうか? 比や炎が人間の心にどのような影響を及ぼすのか、いつか脳科学の側面から研究してみたいテーマです。
親子で調理をしているときの実験では、調理の過程をビデオに記録しておき、後から背外側前頭前野に活動都庁りちゅの行動の関係の分析を行いました。そうしたところ、調理中に親が子供に褒める声掛け、例えば「上手にできたね!」をしたときに、非常に強い脳活動が前頭前野全体に表れることを発見しました。この活動は、面白いことに子供が作業を終えた瞬間の声掛けでのみ観察され、時間を空けてしまうと現われません。 子供が何かをしたときに、すぐにその場でみとめて褒める声掛けをすると子供の意欲を延ばすことは、即時フィードバック効果とし教育の世界では知られています。この脳活動のデータは、即時フィードバック効果を説明するものです。<
2004年より開始した大阪ガスとの産学連携研究では、最初にさまざまな調理を行っているときの前頭前野の活動の計測実験を行いました。脳活動の測定には、光トポグラフイーと呼ばれる装置を使いました。この装置の開発は日本で始まり、現在も日本の技術が最も進んでいます。光トポグラフィー装置では、近赤外光を頭皮上から脳に向かって照らし、その光が脳内には行った後に反射して戻ってくる光を計測することによって、主に大脳表面の活動を測定することができます。
近年、私たちは化学技術振興機構「先端計測分析技術・機器開発」の研究として、(株)日立製作所と共同で超小型(重量約100グラム)の装置の開発に成功しました。こうした装置を使うことで、普段の生活の中で人間の脳活動の情報を評価し、それをさまざまな形で利用できる社会がすぐそこまで来ています。
調理と前頭前野の関係は医学の世界では比較的古くからしわれていて、病気で大脳右半球の前頭前野が損傷を受けた場合に、調理ができなくなることが報告されていました。また認知症介護の現場でも、認知症が進んでいくと調理がうまくできなくなり、結果として自分で食事の支度がなくなることは知られています。
脳損傷の場合でも、調理ができなくなる主な理由は、調理の手順がわからなくなることです。
作業の手順を思い浮かべ、作業を行うのは、背外側前頭前野の中核的機能である作動記憶という記憶力を昼用とします。
調理ができなくなることの障害は、作動記憶のトラブルと考えられており、逆に調理を積極的に行うということは、作動記憶を積極的に使い、その力を増す効果があるのではないかと考えました。
大人を対象として、様々な調理を行っているときの背外側前頭前野の活動を計測した結果、全般に大脳右半球のほうがより強い傾向がみられたものの、ほとんどの調理の過程で左右両側半球の背外側前頭前野に強い活動が表れました。しかし、皮むき器を使って果物ややさいのかわをむくときには、背外側前頭前野がほとんど活動しませんでした。一方、包丁を使って皮をむくと背外側前頭前野に強い活動が認められます。
手先の細かい運動と作業の「易しさ」の双方が影響したと考えられます。手順とはすなわち作戦とも考えることができますので、何も考えずにさっとできてしまう行為では、脳が働かないのです。
面白いことに、ハンバーグの種をこねているときには、背外側前頭前野はテレビを見ているときと同じように抑制がかかりました。人によっては違うのでしょうが、私はこうした柔らかなものを無心で子猫根しているときは、なんとなく気持ちはよく安らぐので、このデータは納得しています。
様々な調理をしているときの脳活動に興味ある方は、「脳を鍛える大人の料理ドリル」(くもん出版2005年版)に詳しく書いてありますので参照してください。
子どもを対象とした計測でも、大人とまったく同様に、ほとんどの調理の過程で背外側前頭前野が強く働くことがわかりました。全般的に、子どもたちのほうが前頭前野が働く傾向が強く、特に火を使う調理を行うと背外側前頭前野の活動が顕著になることもわかりました。火を利用することができるのは人間だけです。
そこから考えると、ほかの動物と違い、すなわち発達した前頭前野が火を扱う能力と直結しているのではないかと考えます。キャンプファイヤーなど、火を見つめていると気分が高揚シタリ、菱木な気持ちになったりするのは、皆さんも感じていたのではないでしょうか? 比や炎が人間の心にどのような影響を及ぼすのか、いつか脳科学の側面から研究してみたいテーマです。
親子で調理をしているときの実験では、調理の過程をビデオに記録しておき、後から背外側前頭前野に活動都庁りちゅの行動の関係の分析を行いました。そうしたところ、調理中に親が子供に褒める声掛け、例えば「上手にできたね!」をしたときに、非常に強い脳活動が前頭前野全体に表れることを発見しました。この活動は、面白いことに子供が作業を終えた瞬間の声掛けでのみ観察され、時間を空けてしまうと現われません。 子供が何かをしたときに、すぐにその場でみとめて褒める声掛けをすると子供の意欲を延ばすことは、即時フィードバック効果とし教育の世界では知られています。この脳活動のデータは、即時フィードバック効果を説明するものです。<
2020年10月11日
親子関係には「間合い」が大事
親子関係という点からは、平日に親子で過ごす時間の長さと、親子で調理する頻度と、前頭前野機能検査特典の向上にも正の相関関係がありました。詳細にデータを解析すると見えてくるのは、子どもへの期待と配慮といった養育態度は、子どもの前頭前野機能を延ばしていましたが、子どもの生活の世話が高頻度になると逆に前頭前野機能にはマイナスの影響が出始めることも明らかになりました。
子育て(孫育て)においては、子どもとの適切な「間合い」が大切であることがわかります。子の「間合い」は、他者の子育てを見ているとよくわかるのですが、自分の子や孫と接していると往々にして「間合い」の見切りをしくじるものです。具体的な生活行為の中で、どうすれば適切な間合いの触れ合いをつくりだすことができるのか? 私たちは、親子で調理をする頻度が高い子供の前頭前野機能が高い傾向にあることに注目しました。
私たちは、健常児の調査と同時に、さまざまな認知発達障害のある児童・生徒の調査も行いました。
1年間の成長を追いかけたところ、自閉症や高機能自閉症との診断を受けた子供たちは、様々な前頭前野機能検査、頭頂連合野、側頭連合野それぞれの機能を調べる検査の成績は向上していました。しかし、ダウン症と診断された子供たちと認知機能の伸びはあまりはっきりしませんでした。
生活習慣と前頭前野機能検査成績の伸びの関係性を解析すると、「家族との会話の時間」「休日に親子で過ごす時間の長さ」「親子でスポーツをする頻度」の各項目が高いほど、特に自閉症と高機能自閉症の子供たちで、より伸びていることがわかりました。健常者と同様に、親子の関係が認知機能発達のカギになっているようです。
子育て(孫育て)においては、子どもとの適切な「間合い」が大切であることがわかります。子の「間合い」は、他者の子育てを見ているとよくわかるのですが、自分の子や孫と接していると往々にして「間合い」の見切りをしくじるものです。具体的な生活行為の中で、どうすれば適切な間合いの触れ合いをつくりだすことができるのか? 私たちは、親子で調理をする頻度が高い子供の前頭前野機能が高い傾向にあることに注目しました。
私たちは、健常児の調査と同時に、さまざまな認知発達障害のある児童・生徒の調査も行いました。
1年間の成長を追いかけたところ、自閉症や高機能自閉症との診断を受けた子供たちは、様々な前頭前野機能検査、頭頂連合野、側頭連合野それぞれの機能を調べる検査の成績は向上していました。しかし、ダウン症と診断された子供たちと認知機能の伸びはあまりはっきりしませんでした。
生活習慣と前頭前野機能検査成績の伸びの関係性を解析すると、「家族との会話の時間」「休日に親子で過ごす時間の長さ」「親子でスポーツをする頻度」の各項目が高いほど、特に自閉症と高機能自閉症の子供たちで、より伸びていることがわかりました。健常者と同様に、親子の関係が認知機能発達のカギになっているようです。