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2018年11月01日

カショギ氏殺害事件が国際社会にもたらすもの

サウジアラビア人記者のジャマル・カショギ氏がトルコ・イスタンブールのサウジ総領事館で殺害された事件で、トルコ検察は10月31日、カショギ氏は総領事館に入ってすぐに絞殺され、遺体は切断されて処分されたと発表しました。
犯行は事前に計画された通りに実行されたとしています。
中東発のこの事件は、世界にどのような影響をもたらすのでしょうか。

カショギ氏の殺害事件をめぐっては、トルコ検察が10月29日からトルコでサウジのモジェブ検事総長らと協議を続けてきました。
トルコ検察は「事実究明に向けたトルコの善意の努力」にもかかわらず、モジェブ検事総長との協議は「具体的な成果を出せなかった」と説明しています。
トルコはサウジに対し、サウジ当局が拘束している18人の容疑者の引き渡しを求め、カショギ氏の遺体の行方を問い合わせています。

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子とは、どのような人物なのでしょうか。
現在33歳のムハンマド皇太子は、若き改革者と評されていました。
石油依存の打破、脱石油政策を掲げ、女性の社会進出を一部認めて自動車運転を解禁した他、昨年11月、腐敗撲滅を訴えて王族ら381人を拘束、強権を持って権力集中に努めてきました。

ではムハンマド皇太子が清廉潔白かといえば、そのようなことはなく、彼自身も腐敗にまみれていると言われています。
また皇太子になった経緯は、前任のナーイフ皇太子を監禁した挙句に辞任を迫るなど、かなり強引でした。
海外へ留学経験のないムハンマド皇太子は、国際感覚に乏しく、国内で通じた強引なやり方が世界でも通じると考えていると思われます。

カショギ氏殺害事件のカギを握っているのは、アメリカのトランプ大統領です。
昨年5月に約1100億ドルもの武器購入計画を結んだアメリカにとって、サウジアラビアはこの上ない上得意客です。
また政界入りする前から、長年にわたりビジネスで懇意であったトランプ大統領にとって、サウジアラビア王室との関係悪化は避けたいのが本音でしょう。
孤立するサウジアラビアの擁護に努めるでしょうが、中間選挙に悪影響が出かねないだけに、慎重な舵取りに苦心するでしょう。

そしてムハンマド皇太子は、この危機的状況を脱すべく、今までの政策を大幅に見直すことになるでしょう。
反皇太子派の巻き返しも当然あるでしょう。
どの程度になるかは不明ですが、下手をしたらサウジアラビアは内戦状態になるやもしれません。

思えば、シリアのアサド大統領も、就任当初は改革者と評されていました。
イギリスに留学して医学を学び、医師免許を持つインテリが、今も内戦を戦い、毒ガス兵器を使用した疑いを持たれています。
シリア難民が押し寄せるヨーロッパでは、極右政党が大躍進するに至りました。

サルマン国王は今、どのような思いでいるのでしょう。
サウジアラビアが中東情勢を大きく揺り動かす、新しい不安定要因になる可能性は、決して低くないでしょう。


住んでみたサウジアラビア: サウジアラビアでの3000日 (滞在記)


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