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2014年02月13日

鉛(なまり、英: lead、羅: plumbum、独: blei)とは、典型元素の中の金属元素に分類される、原子番号が82番の元素である。なお、元素記号は Pb である。



目次 [非表示]
1 特徴
2 同位体
3 性質
4 天然における存在
5 製錬 5.1 湿式法
5.2 乾式法

6 用途
7 毒性 7.1 鉛中毒の歴史

8 鉛害問題の対策
9 化合物 9.1 酸化物
9.2 その他

10 参考文献
11 関連項目
12 外部リンク


特徴[編集]





ローマ帝国属州ブリタンニア時代の鉛の地金
炭素族元素の1つ。原子量は約207.19、比重は11.34である。錆で覆われた表面は鉛色と呼ばれる青灰色となる。元素記号はラテン語での名称 plumbum に由来する。人類の文明とともに広く使われてきた代表的な重金属である。主に、鉛の硫化鉱物である方鉛鉱の形で産出する。

西洋占星術や錬金術などの神秘主義哲学では土星を象徴するが、これは(錆を生じて)黒く重い鉛が、肉眼で確認できる惑星のなかで最も暗く動きの遅い土星と相似していると考えられたためである。また、魂の牢獄としての肉体、老化、鈍さなども象徴する。

同位体[編集]

詳細は「鉛の同位体」を参照

全元素中で最も質量数の大きい安定同位体を持つ元素としてビスマスが挙げられることも多いものの、長らくビスマス唯一の安定同位体だと信じられてきた209Biは、実際には安定同位体ではなかったことが確認された。このため、通常、鉛が全元素中で最も質量数の大きい安定同位体を持つ元素として挙げられ、鉛の同位体の1つである208Pbが、最も質量数の多い安定同位体と言われている。また、ウランやトリウムなどの鉛よりも原子番号の大きな放射性元素が壊変すると、一般的には最終的には鉛の同位体のうち、206Pbか207Pbか208Pbを生じるとされている。しかし、実は鉛にも安定同位体は1つも存在しないのではないかとも言われ始めている。事実、長らく安定同位体と信じられてきた204Pbも、実は安定同位体ではなかった。

なお、元になった親核種により最終的に生成する鉛の同位体が異なるため(崩壊系列を参照)、鉛の同位体組成は産地ごとに違った特徴を持つ。つまり、ウランやトリウムが集まりやすい場所で産出した鉛は、これらが崩壊した結果生成する同位体を多く含む。これを利用して、出土品や汚染物質の起源を推定することができる。

性質[編集]

比較的錆びやすく、すぐに黒ずむが、酸化とともに表面に酸化皮膜が形成されるため、腐食が内部に進みにくい。また、多くの無機塩が水に不溶であるため水中でも腐蝕されにくい。

ハロゲンおよびカルコゲンなどと加熱により直接反応して化合物を生成する。希塩酸および希硫酸とは表面に難溶性塩を生じて反応しにくいが、硝酸とは容易に反応する。酢酸イオンとの親和力が比較的強く、空気(酸素)の存在下において酢酸水溶液にも溶解して酢酸鉛を生成する[1]。


2 Pb + 4 CH3COOH + O2 → 2 Pb(CH3COO)2 + 2 H2O

また鉛は軟らかい金属であり、紙などに擦り付けると文字が書けるため、古代ローマ人は羊皮紙に鉛で線および文字を書き、これが鉛筆 (lead pencil) の名称の起源となった[2]。

低融点で柔らかく加工しやすいこと、高比重であること、比較的製錬が容易であることなどから、古代から広く利用されてきた。しかし、生物に対して毒性と蓄積性があるために、近年は利用が避けられる傾向が強い。詳しくはRoHS参照。電気回路で用いられるはんだなどでも鉛フリーのものが多く市販されている。

7.2Kにおいて超伝導転移を示し、この転移温度が20GPa程度までの印加圧力にほぼ比例して低下していくため、高圧物理学においては鉛の超伝導転移温度から圧力を決定するのに使用されることがある。

天然における存在[編集]





世界の鉛、および亜鉛の分布図(アメリカ地質調査所の調査による)
地球の地殻における鉛の含有率は約8 ppmと推定されており[3]、これは決して多いとは言えない。しかし、硫化鉱物として広く存在し、採掘および製錬が比較的容易なことから亜鉛と同様に安価な金属である。

単体の自然鉛として存在することは稀であり、硫化物の方鉛鉱として広く分布し、黒鉱鉱床など銅、亜鉛などと共存することが多い。また方鉛鉱が酸化した硫酸鉛鉱、炭酸塩である白鉛鉱、クロム酸塩である紅鉛鉱なども産出する。また火成岩中、特に花崗岩に微量含まれ、イオン半径が近い長石中のカリウムを置換している[4]。

製錬[編集]

原料は方鉛鉱が最も重要であり、焙焼工程および還元を経て粗鉛が取り出され、ついで湿式法または乾式法により精錬される[2]。 まず選鉱により純度を高めた方鉛鉱を焙焼により酸化鉛とし、ついでコークスにより還元して粗鉛を得る。


2 PbS + 3 O2 → 2 PbO + 2 SO2


PbO + C → Pb + CO


PbO + CO → Pb + CO2

また直接製錬法では、焙焼により一部を酸化鉛とし、これを残りの硫化鉛と反応させるもので、エネルギー的に有利な反応であるが選鉱の度合いを高める必要がある。


2 PbO + PbS → 3 Pb + SO2

湿式法[編集]

湿式法は電解精錬によるもので、電解液にヘキサフルオロケイ酸水溶液、陽極に粗鉛、陰極に純鉛を使用して電気分解を行う。鉛よりイオン化傾向が小さいヒ素、アンチモン、ビスマス、銅、銀、金などの不純物はスライム状の陽極泥として沈殿する。


Pb → Pb2+ + 2 e−(陽極)


Pb2+ + 2 e− → Pb(陰極)

酸化還元電位の接近している不純物であるスズは電解精錬では分離しにくいため、鎔融状態で水酸化ナトリウムで処理しスズの除去を行う。これにより99.99 %程度の純度の地金が得られる。

乾式法[編集]

粗鉛を鎔融状態として脱銅→柔鉛→脱銀→脱亜鉛→脱ビスマス→仕上げ精製の順序による工程で不純物が除去される。
脱銅鎔融粗鉛を350 °Cに保つと鎔融鉛に対する溶解度が低い銅が浮上分離する。さらに硫黄を加えて撹拌し、硫化銅として分離する。この工程により銅は0.05 - 0.005 %まで除去される。柔鉛700 - 800 °Cで鎔融粗鉛に圧縮空気を吹き込むと、より酸化されやすいスズ、アンチモン、ヒ素が酸化物として浮上分離する。柔鉛(ハリス法)500℃程度の鎔融粗鉛に水酸化ナトリウムを加えて撹拌すると不純物がスズ酸ナトリウム Na2SnO3、ヒ酸ナトリウム Na3AsO4、アンチモン酸ナトリウム NaSbO3 になり分離される。脱銀(パークス法)450 - 520 °Cに保った鎔融粗鉛に少量の亜鉛を加え撹拌した後、340 °Cに冷却すると、金および銀は亜鉛と金属間化合物を生成し、これは鎔融鉛に対する溶解度が極めて低いため浮上分離する。この工程により銀は0.0001 %まで除去される。鎔融鉛中に0.5 %程度残存する亜鉛は空気または塩素で酸化され除去される。脱ビスマス鎔融粗鉛に少量のマグネシウムおよびカルシウムを加えるとビスマスはこれらの元素と金属間化合物 CaMg2Bi2 を生成し浮上分離する。この工程によりビスマスは0.002 %まで除去される。
用途[編集]





鉛レンガは、放射線の遮蔽材として用いられる




ローマ帝国の水道管には鉛が使用されていた




鉛蓄電池(ジーエス・ユアサコーポレーション製)
鉛の現在の用途は、鉛蓄電池の電極、金属の快削性向上のための合金成分、鉛ガラス(光学レンズやクリスタルガラス)、美術工芸品(例えばステンドグラスの縁)、防音・制振シート、銃弾、電子材料(チタン酸鉛)などである。また、金属の中では比較的比重が大きいので放射線遮蔽材として鉛ガラスや鉛シートなどの形で用いられる。例えば核戦争を想定した戦車の内壁や、X線撮影施設の窓ガラス、ブラウン管用ガラスには鉛が含まれている。

また、釣りなどで用いられるおもり(シンカー)の材料としても鉛は用いられている。しかし、近年鉛の毒性が問題となったために、鉛に代わるおもりの素材としてタングステンなどの導入が進められている。それでも、加工のしやすさやコストの面から、未だにこの用途での鉛の需要は根強い。この他、灯油やホワイトガソリンなどの液体燃料を加圧・気化して燃焼させるポータブルストーブやブロートーチ、ランタンでは、気密性と耐熱性の高さから継ぎ目のガスケットに現在でも鉛が用いられる。さらに、路面表示用白色塗料としても利用されている。

なお、かつては水道管やはんだ、おしろいなどに用いられた顔料についても鉛は大量に利用されていたものの、鉛を用いないものへの置き換えが進められている。この事情については無鉛化の項目も参照のこと。

毒性[編集]

鉛化合物は、無機化合物は水に溶けにくいものが多いため急性中毒を起こす事は稀だが、テトラエチル鉛のような脂溶性の有機物質は細胞膜を通過して直接取り込まれるため、非常に危険である。長期的に見た場合、鉛は自然な状態の食物にも僅かに含まれるため常時摂取されており、一定量ならば尿中などに排泄されるので鉛に対して必要以上に神経質になる必要は無いとされる。しかし、有機化合物を摂取してしまったり、排泄を上回る鉛を長期間摂取すると体内に蓄積されて毒性を持つ。

生物に対する毒性としては、体表[要出典]や消化器官に対する曝露(接触・定着)により腹痛・嘔吐・伸筋麻痺・感覚異常症など様々な中毒症状を起こすほか、血液に作用すると溶血性貧血・ヘム合成系障害・免疫系の抑制・腎臓への影響なども引き起こす。遺伝毒性も報告されている。主に呼吸器系からの吸引と、水溶性の鉛化合物の消化器系からの吸収によって体内に入り、骨に最も多く定着する。生体に取り込まれた鉛の生物学的な半減期は資料によって異なるが、一例として生体全体で5年、骨に注目すると10年という値が示されている。呼吸器からの吸引に対しては、鉛を扱う工場や、鉛を含む塗料や顔料を扱う作業などに多く、職業病としての側面がある[5][6][7]。

本項目については、鉛中毒の項目も参照のこと。

鉛中毒の歴史[編集]

鉛が原因でもたらされる鉛疝痛に関する最初の記述は、古代ギリシャのヒポクラテスによってなされている[8]。古代ローマ時代は膨大な量の鉛が生産され、陶磁器の上薬、料理器具、配管などにも使われていたために、ローマ人には死産、奇形、脳障害といった鉛中毒が普通に見られたと言われていた。しかしこの件は[8]、現在では俗説扱いされている。かつて西洋では鉛は「灰吹き法」など、金・銀・銅などを製錬するための媒介としてもさかんに利用された。このため、鉱毒問題の主要な原因になった[要出典]。

古代ローマでも、貴族たちが鉛製のコップでワインを飲むのを好んだため、鉛中毒者が続出したといわれる[8]。17世紀ごろから、ワインによる鉛中毒が論じられるようになってきたが、当時はワインを甘くする目的で、鉛の白い酸化物が添加されていた[9]。例えば、ワインを愛飲していたベートーヴェンの毛髪からは、後の調査によって通常の100倍近い量の鉛が検出されたことから、その晩年にほぼ耳が聴こえなくなってしまった原因として、現在では鉛中毒が有力視されている[10]。

また、鉛ガラスを指でこすって奏でる楽器アルモニカが大流行した際には、原因不明の神経障害や痙攣、早産、謎の死などが続出したため、その楽器が警察によって使用禁止されたという歴史がある[要出典]が、現代でも楽器からの経皮摂取が原因であるかどうかは解明されていない。しかし、一般にガラスの成分であるケイ酸塩化合物は、アルカリ金属塩の場合を除けば非常に溶解度が小さいため、接触しただけで問題となる量の鉛溶出が起こるとするには非常に無理がある。

鉛害問題の対策[編集]

鉛害問題の対策として、次のような例がある。
鉛とスズの合金としてはんだが知られ、低融点などの利点を持つため、古くから金属同士の接合に多用されてきた。電気回路の組み立てなどにもはんだは多用されてきたが、近年では鉛を含まない「鉛フリーはんだ」に置き換えられつつある。
欧州連合 (EU) では、RoHS指令により、2006年7月1日以降、高温溶融はんだなどの例外を除き、電気・電子製品への鉛の使用が原則として禁止された。このため、日本のメーカーでも鉛を含有しない部材の使用を原則としつつあるが、代替ハンダの強度不足・融点上昇の問題に起因する電気製品の製造不良(部品の中には熱に弱い物もあり、融点が上がった分ハンダ付けの際により高温に曝され部品が壊れる)が問題となっている。
ガソリンのオクタン価向上及び吸排気バルブと周辺部品の保護にテトラエチル鉛 (C2H5)4Pb が添加されていたが、排気中に鉛が含まれてしまうことから汚染源となって問題視された。現在では鉛を含まない添加剤によるオクタン価向上策が選択されるようになり、日本など先進諸国では法的規制により有鉛ガソリンは使われなくなった。しかし日本自動車工業会[11]によると、およそ50か国で有鉛ガソリンの使用が認められており、今なお有鉛ガソリンの問題は終結していない。また、航空機のレシプロエンジンにも有鉛ガソリン (Avgas) が多用されている。
鉛は、狩猟やクレー射撃に使われる散弾(多数の小さな金属粒を飛ばすタイプの銃に使われる銃弾。単体の金属弾であるライフル弾やスラッグ弾と比べると、威力は劣るが、高い命中精度を要求されないという利点がある)にも使われてきた。しかし鉛散弾は環境中に鉛の粒をばらまくものであり、土壌汚染を引きこしたり(クレー射撃の場合)、鉛散弾を打ち込まれて死んだ上で放置された動物や鳥の死体を食べた鳥獣が鉛中毒を引き起こすなどしたため(狩猟の場合)、威力は劣るが汚染の少ない鉄、銅散弾への切り替えが進められている。また、自衛隊の射撃場等弾頭部が地中に残りやすい箇所に隣接する河川等で高濃度の鉛の成分が検出される事も多く、近年では廃弾の回収や射場の改修工事などで周辺に鉛による被害が出ないように対策されている事もある。
鉛製水道管については、2005年7月時点の厚生労働省調査で約547万世帯に残っているが、本管から分かれた引き込み管については、水道メーターを除き個人の所有とされていることから交換費用は自己負担となり、交換は進んでいない。
安価な鋳造のペンダント、メダル、バッジ、ネックレスなどのアクセサリーには、低融点・低価格であることから鉛を含む錫合金(ホワイトメタルと通称される)が用いられる場合がある[12]。また、金属小物のベースに使われる黄銅には切削性を良くする目的で鉛が添加されているものがある[13]。近年、先進国では鉛への規制が強くなり上記のような素材は利用される事が少なくなったが、安価な輸入玩具にはいまだ利用されている場合があり、これらを子供が口に含んだりすることで健康被害が起こる可能性が指摘されている。
産業の副産物であるスラグ(鉱滓)には鉛を含んでいるものが存在しており、スラグからの溶出する場合がある。そのため、建材試験センターの土工用製鋼スラグ砕石の規格には溶出量と含有量を規定した環境基準が設けられている[14]。

化合物[編集]

Category:鉛の化合物 も参照。

酸化物[編集]
一酸化鉛 (PbO)
二酸化鉛 (PbO2)
四酸化三鉛 (Pb3O4) - 赤色顔料・鉛丹(光明丹)として使用される
クロム酸鉛 (PbCrO4) - 黄色顔料・黄鉛(クロムイエロー)として使用される
チタン酸ジルコン酸鉛 (Pb(Zrx, Ti1-x)O3) - 代表的な圧電材料

その他[編集]
アジ化鉛 (Pb(N3)2)
酢酸鉛(II) (Pb(OCOCH3)2)
酢酸鉛(IV) (Pb(OCOCH3)4)
テトラエチル鉛 ((C2H5)4Pb)
砒酸鉛 (Pb2As2O7)
塩化鉛 (PbCl2, PbCl4)

参考文献[編集]

1.^ 『化学大辞典』 共立出版、1993年
2.^ a b 西川精一 『新版金属工学入門』 アグネ技術センター、2001年
3.^ Taylor & McLennan, 1985
4.^ 松井義人、一国雅巳 訳 『メイスン 一般地球化学』 岩波書店、1970年
5.^ 「医学大辞典 第18版」南山堂、2004年、1540頁
6.^ 化学物質安全性(ハザード)評価シート 酸化鉛
7.^ 環境保健クライテリア 165 無機鉛 (国立医薬品食品衛生研究所による日本語抄訳)
8.^ a b c Hernberg S. Lead poisoning in a historical perspective. Am J Ind Med. 2000;38:244-54.
9.^ Pearce JM. Burton's line in lead poisoning. Eur Neurol. 2007;57:118-9.
10.^ 2001年10月放送 日本テレビ「特命リサーチ200X」ベートーヴェンの謎の死亡原因を調査せよ!
11.^ 社団法人 日本自動車工業会による2002年12月19日発表のニュースリリース
12.^ http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/02/s0216-5.html 鉛含有金属製アクセサリー類等の安全対策に関する検討会報告書について
13.^ 株式会社大王製作所の「鉛を含む有害物質への取組」より
14.^ JSTM H 8001(土工用製鋼スラグ砕石)の制定について 建材試験センター

タリウム

タリウム (英: thallium) は原子番号81の元素。元素記号は Tl。第13族元素の一つ。



目次 [非表示]
1 歴史
2 特徴
3 タリウムの化合物
4 同位体
5 出典


歴史[編集]

ウィリアム・クルックス (W.Crookes) によって硫酸工場の残留物から1861年に発見され、1862年にクルックスおよびクロード・オーギュスト・ラミー (C.A.Lamy) により単体分離された[2]。名前の由来はギリシア語の「緑の小枝」を表す thallos で、これは、原子スペクトルが緑色のためである。

1898年、パリのレイモン・サブローにより、タリウム塩に脱毛作用があることが発見される。このため1950年代に至るまで、頭皮の皮膚病を治療する際に用いられる標準的な軟膏となった。タリウム塩自体には皮膚病を治療する効果はないが、強力な脱毛作用によって頭髪が抜け落ちてしまえば、治療用の薬品を塗布しやすくなるためである。第二次世界大戦以前には、顔面の脱毛クリームとして販売されていた。

KGB は、放射性タリウムを毒殺用の毒物として使用していた。有名な例では、元 KGB 工作員のニコライ・ホフロフ (Nikolai Khokhlov) が1957年に放射性タリウムを盛られ、瀕死の重態となったが一命を取り留めた例がある(ホフロフは2007年に死去)。これは、初めて公式に確認された KGB の放射性元素による殺人(未遂)事件である(二番目が2006年にポロニウムを盛られて死亡したアレクサンドル・リトヴィネンコ)。[要出典]

特徴[編集]

単体は常温では銀白色の柔らかい金属として存在し、六方最密充填構造(αタリウム)が最安定であるが、約230 °C以上では体心立方構造(βタリウム)が最安定となる。比重11.85、融点302.5 °C、沸点1473 °C。13族の元素であるがイオンは1価 (Tl+) が安定である(不活性電子対効果を参照のこと)。

硫化鉱物(硫化バナジウムや黄鉄鉱)中に微量に存在する。重金属の中でも特に強い毒性を持ち、摂取すると神経障害を起こす。

タリウムの化合物[編集]
硫酸タリウム(I) (Tl2SO4) - 殺鼠剤の原料
酢酸タリウム(I) (CH3COOTl) - 殺鼠剤の原料
硝酸タリウム(I) (TlNO3) - 殺鼠剤の原料
ヨウ化タリウム(I) (TlI)
塩化タリウム(I) (TlCl)
水素化タリウム(III) (TlH3)
クレリチ溶液:ギ酸タリウムとマロン酸タリウムの混合水溶液。比重が大きいため比重選鉱法(重液選鉱)に用いられていた。

硫酸タリウム、酢酸タリウム及び硝酸タリウムは毒物及び劇物取締法で劇物に指定されている。

同位体[編集]

詳細は「タリウムの同位体」を参照

出典[編集]

1.^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds, in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
2.^ 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、333頁。ISBN 4-06-257192-7。

辰砂

辰砂(しんしゃ、cinnabar)は硫化水銀(II)(HgS)からなる鉱物である。別名に賢者の石、赤色硫化水銀、丹砂、朱砂、水銀朱などがある。日本では古来「丹(に)」と呼ばれた。水銀の重要な鉱石鉱物。



目次 [非表示]
1 概要
2 黒辰砂
3 硫化水銀
4 漢方薬
5 脚注
6 参考文献
7 関連項目
8 外部リンク


概要[編集]

不透明な赤褐色の塊状、あるいは透明感のある深紅色の菱面体結晶として産出する。『周禮』天官冢宰[1]の鄭注に「五毒 五藥之有毒者」のひとつにあげられる[2]など、中国において古くから知られ、錬丹術などでの水銀の精製の他に、古来より赤色(朱色)の顔料や漢方薬の原料として珍重されている。『史記』巻128貨殖列伝[3]に「而巴寡婦清 其先得丹穴 而擅其利數世」、巴の寡婦清、その先んじて丹を得るも、しかしてその利を擅(ほしいまま)にすること数世と、辰砂の発掘地を見つけた人間が巨利を得た記述がある。

中国の辰州(現在の湖南省近辺)で多く産出したことから、「辰砂」と呼ばれるようになった。日本では弥生時代から産出が知られ、いわゆる魏志倭人伝の邪馬台国にも「其山 丹有」と記述されている。古墳の内壁や石棺の彩色や壁画に使用されていた。漢方薬や漆器に施す朱漆や赤色の墨である朱墨の原料としても用いられ、古くは吉野川上流や伊勢国丹生(現在の三重県多気町)などが特産地として知られた。平安時代には既に人造朱の製造法が知られており、16世紀中期以後、天然・人工の朱が中国から輸入された。現在では奈良県、徳島県、大分県、熊本県などで産する。ただし、現在の日本では水銀及びその化合物は、全量廃乾電池などのリサイクルで賄われており、鉱石からの製錬は行われていない。

辰砂を空気中で 400–600 ℃ に加熱すると、水銀蒸気と亜硫酸ガス(二酸化硫黄)が生じる。この水銀蒸気を冷却凝縮させることで水銀を精製する。古代から水銀製錬の原理は変わっておらず、時代を経てレトルト炉や重油を用いたロータリーキルン炉に変更していったが、これらは主として生産能力に関する改良であった。炉から放出された水銀蒸気を含むガスは脱硫装置を経て、「コンデンサー」と呼ばれる冷却・凝集装置に集められる。コンデンサーは、黒鉛製のパイプを楯状に複数立てた、上の穴が開けられていない煙突のような独特の構造であり、ガスはここに滞留して温度が低下していくうちにガス中に含まれている水銀が液化し、パイプの内側に付着する。定期的にパイプ内部には水が通されており、水によって「洗い流される」形で底部に落とされる。回収された水銀は、水と分離した後に粗製水銀として製品化される。水銀及び有害成分を除去されたガスは煙突を通って大気に放出された。水銀鉱山や製錬所にはこのコンデンサーが必ず立てられており、シンボル的存在となっていた。

硫化水銀(II) + 酸素 → 水銀 + 二酸化硫黄
{\rm {HgS+O_{2}\longrightarrow Hg+SO_{2}}}
陶芸で用いられる辰砂釉は、この辰砂と同じく美しい赤色を発色する釉薬だが、水銀ではなく銅を含んだ釉薬を用い、還元焼成したものである。また、押印用朱肉の色素としても用いられる。

黒辰砂[編集]

黒辰砂(くろしんしゃ、metacinnabar)の化学組成は同じ HgS だが、結晶構造が異なる。辰砂を 344 ℃に加熱すると黒辰砂が生成し、温度が下がると辰砂に戻る。

硫化水銀[編集]

硫化水銀には、赤色の辰砂と黒色の黒辰砂とが天然に存在するが、いずれも硫化水銀(II)(HgS)である。また硫化水銀には、酸化数の異なる黒色の硫化水銀(I)(Hg2S)も存在するが不安定で、速やかに単体水銀と硫化水銀(II) に不均化する。

漢方薬[編集]

伝統中国医学では「朱砂」や「丹砂」等と呼び、鎮静、催眠を目的として、現在でも使用されている。有機水銀や水に易溶な水銀化合物に比べて、辰砂のような水に難溶な化合物は毒性が低いと考えられている。

辰砂を含む代表的な処方には「朱砂安神丸」等がある。

脚注[編集]

1.^ Wikisource-logo.svg 周禮: 周禮/天官冢宰 - ウィキソース
2.^ 中国医学・日本漢方における〈毒〉
3.^ Wikisource-logo.svg 司馬遷: 史記/卷129 - ウィキソース

参考文献[編集]
松原聰 『フィールドベスト図鑑15 日本の鉱物』 学習研究社、2003年、ISBN 4-05-402013-5。
国立天文台編 『理科年表 平成19年』 丸善、2006年、ISBN 4-621-07763-5。
小葉田淳 「朱」『日本史大事典 第3巻』 平凡社、1993年、ISBN 4-582-13103-4。

関連項目[編集]

水銀

水銀(すいぎん、英: mercury、羅: hydrargyrum)は原子番号80の元素。元素記号は Hg。汞とも書く。第12族元素に属す。常温、常圧で凝固しない唯一の金属元素[1]で、銀のような白い光沢を放つことからこの名がついている。

硫化物である辰砂 (HgS) 及び単体である自然水銀 (Hg) として主に産出する。



目次 [非表示]
1 名称
2 性質 2.1 同位体

3 毒性 3.1 許容摂取量
3.2 底質における水銀の蓄積

4 水銀の基準
5 生産 5.1 水銀鉱石

6 用途 6.1 産業用、研究用
6.2 医療用など
6.3 その他の日用品など

7 分析法
8 化合物
9 脚注
10 関連項目
11 外部リンク


名称[編集]

元素記号の Hg は、古典ギリシア語: ὕδράργυρος (hydrargyros ; < ὕδωρ 「水」 + άργυρος 「銀」)に由来する ラテン語: hydrargyrum の略。また、古くは ラテン語: argentum vivum (「生きている銀」、流動する点を「生きている」と表現した)ともいい、この言い方は 英語: quicksilver(古語。なお形容詞 quick は古くは「生きている」の意味であった[2])、ドイツ語: Quecksilber などへ翻訳借用された。

古来の日本語(大和言葉)では「みずかね」と呼ぶ。 漢字では古来「汞」(拼音: gǒng)の字をあて、標準中国語(普通話)でもこの表記が正式である(中国では「水銀」は通称として用いられる)。

英語名 mercury は14世紀から用例があり[3]、占星術や錬金術の分野で最初用いられたものである[3]。 これは、天球上をせわしなく移動する水星を流動する水銀に結びつけたもの[3]とも、また、液体で金属であるという流動性が、神々の使者として天地を自由に駆け巡ったヘルメース(ギリシア神話の神で、ローマ神話のメルクリウス(Mercurius)と同一視される)の性格と関連づけられたためともいわれる[4]。

性質[編集]

水銀は、各種の金属と混和し、アマルガムと呼ばれる合金をつくる。これは水銀が大半を占める場合には液体、水銀の量が少なければ固体となる。白金、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、タングステンとは合金を形成しないので、水銀の保存には鉄の容器が用いられる。

生物に対して毒性が強いため、使用が控えられている金属である。

また、その特異な性質から様々な科学者の興味の対象となり、多くの現象の発見にかかわっている。
トリチェリの実験では水銀柱が用いられ、圧力の単位「トル」(Torr、別名:水銀柱ミリメートル mmHg)の基準となった。
超伝導は水銀の冷却中に初めて発見された現象である(そのため、かつては超伝導材として使用されていたが、現在ではほとんど使われていない)。
電気化学に重要な発展をもたらしたポーラログラフィーでは、水銀が電極として使用される。
電気抵抗の単位であるオームの由来となったのは、水銀の抵抗値であった(現在の定義には用いられていない)。
酸素の発見は水銀と酸素がある温度以下では酸化水銀に、ある温度以上では単体に分離する性質によるものである。

同位体[編集]

詳細は「水銀の同位体」を参照

7種の安定同位体が存在する。同位体は、中性子の数が異なることから、僅かに質量が異なる。従って、同じ元素であっても物理学的な特性に違いを持つ。この特性を利用し、環境中に蓄積された水銀の同位対比を精密に測定する事で、水銀の循環を解明することが可能になる[5]。

毒性[編集]

詳細は「水銀中毒」を参照

古代においては、辰砂(主成分は硫化水銀:鮮血色をしている)などの水銀化合物は、その特性や外見から不死の薬として珍重されてきた。特に中国の皇帝に愛用されており、不老不死の薬、「仙丹」の原料と信じられていた(錬丹術)。それが日本に伝わり飛鳥時代の持統天皇も若さと美しさを保つために飲んでいたとされる。しかし現代から見ればまさに毒を飲んでいるに等しく、始皇帝を始め多くの権力者が命を落としたといわれている。中世以降、水銀は毒として認知されるようになった。

世界中において有機水銀はかつて農薬として広く使われ、1970年代にイラクでは、メチル水銀で消毒した小麦の種を食用に流用したパンによって有機水銀中毒で400人以上が死亡する事件がおきた。そして、その毒性から現在は使用が禁止され、代わりに無機水銀などが使われるようになった。さらに、水銀化合物自体の使用が環境汚染につながるとして忌避されるようにもなった。

2001年にアメリカ合衆国では「乳児の際に受けた予防接種中のチメロサール(エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム・ワクチンの防腐剤として使用される)によって自閉症になった」として製薬会社に対する訴訟が発生した。三種混合ワクチン、日本脳炎ワクチン、インフルエンザワクチン、B型肝炎ワクチンなどの保存剤としてチメロサールが使われていたためである。そのためチメロサールを使わないか低濃度のものに替えるなど規制が強化されたが、その後の大規模調査で自閉症との関連は否定され[6]、関連を示唆した発端の論文は科学的不正があったとして撤回されている。

有機水銀は無機水銀に比べ毒性が非常に強い。特にメチル水銀の中枢神経系(脳)に対する毒性は強力で、日本で起きた水俣病(熊本県八代海)や阿賀野川流域(新潟県)でおきた工場排水に起因する有機水銀中毒(第二水俣病)の原因物質である。

地球上においては地殻などに水銀が比較的豊富に存在する。これら自然界に存在する水銀は水系環境において非酵素的反応や微生物の作用によって有機水銀に変化し、食物連鎖を通じて、大形魚類や、深海魚、海洋動物に蓄積される。日本の厚生労働省はキンメダイやカジキ、マグロなどの魚類、クジラ、イルカなどの海棲哺乳類に含まれる水銀が胎児の発育に影響を及ぼす恐れがあるとして、妊娠中かその可能性のある女性は、魚介類の摂取量や回数を制限するように注意を喚起している[7]。

栄養摂取に占める魚介類の割合が多い日本では、メチル水銀の摂取量が他国と比較して高いことが知られている。メチル水銀の摂取量の地域的特徴は、マグロ類の消費傾向とよく一致し、関東地方などを中心とする東日本で高く、中国地方から九州北部にかけて比較的低くなっている。一方で、魚介類は栄養的にも優れた食品であり、バランスの取れた食生活をしている限りは、通常は微量の汚染物質による健康影響を心配する必要はあまりない。一方、発育途中にある胎児の神経系は、メチル水銀の影響を最も受けやすいと考えられる。魚介類にはある種の不飽和脂肪酸など、胎児の発育などにも有効な成分も多く含まれており、魚介類中に含まれる微量のメチル水銀が、胎児の発達にどれほどの影響を及ぼしているかは、研究者によっても見解が分かれるところである。欧米の政府機関は、基準を設けて、マグロやカジキなどの摂取制限を行っている[8]。特に妊婦や妊娠する可能性のある女性は、メチル水銀を多く含む大形食魚やイルカ、キンメダイなどの魚介類などを、基準より食べ過ぎないよう注意するとよい[9]。なお、マグロなどの魚介類はセレンを含んでおり、これがメチル水銀の毒性を軽減させているとの可能性も指摘されているが、詳細は不明である。

自然界では無機水銀及び有機水銀を処理して、金属状態の水銀に変化させる菌が存在する。この菌は通称水銀耐性菌と呼ばれ、水俣病の発生した地域の土壌から単離された。水銀耐性菌において無機水銀及び有機水銀を金属水銀に代謝するのは、この菌の産生するタンパク質によるものであることが遺伝子工学的な解析により判明しており、その担当遺伝子の解析も行われている(メタロチオネインも参考のこと)。環境汚染の浄化技術として、いわゆるバイオレメディエーションへの応用も行われている。

体温計に使われている水銀は金属水銀なので安全だと言われている。金属水銀は間違って飲み込んだとしても、消化管からはほとんど吸収されないので、急性中毒を起こすことはない(ただし、一部が腸内細菌叢により酸化されたり、有機水銀に転換されて吸収される余地が示唆されている)。しかし、気化した場合には肺から吸収されやすく、体内に吸収された場合にはヘモグロビンや血清アルブミンと結合し毒性を示す。このため水銀を含有する物(蛍光灯・体温計・血圧計、朱肉など)を焼却することは危険である。

許容摂取量[編集]

許容摂取量は、国際専門会議 (JECFA) において、胎児を保護するため、暫定的耐容量 (PTWI) 1.6 μg/kgと定められており[10]諸外国[11]、においても、妊婦等への摂食制限の啓蒙や規制強化が行われている[12][13]。

底質における水銀の蓄積[編集]

水銀の外部環境への排出抑制は取組が進んでいるが、過去に排出された水銀や現在でも水銀を含む農薬が許可されている国域では河口や湖などの底質に蓄積されていることがある。日本国については産業技術総合研究所で全国の河川の底質を分析して日本の地球化学図としてそのデーターを公開している[14]。また環境省は基準値以上の水銀化合物を含む底質を除去するように政令で通達している[15]。

水銀の基準[編集]
環境基準としては0.0005 mg/L以下とされており、地下水や公共用水域の水銀の濃度が定められている。
土壌汚染対策法における土壌含有量基準は15 mg/kg以下と定められている。
底質暫定除去基準は河川及び湖沼においては25 ppm=mg/kg以上と定められている。

生産[編集]

水銀の鉱山としては、スペインのシウダ・レアルにある国営アルマデン鉱山が有名。古代ローマの紀元前372年からイスラム帝国時代、そして2004年7月の生産停止に至るまで辰砂及び自然水銀を産出していた。日本では、北海道留辺蘂町にあったイトムカ鉱山(自然水銀の産出が多いことでも有名)や古代から産出記録がある丹生鉱山が知られている。

水銀地金は液体であるため、アマルガムを生じさせない素材の容器に入れて流通させる。国際市場では34.5kgの鉄製フラスコ(ボンベと呼ばれる事もある)に充填して流通する事が慣習となっている。ただし、国内向けや小口向けでは他の試薬同様、ガラス製や樹脂製の瓶に入れて出荷される事が多い。

水銀鉱石[編集]

水銀鉱石を構成する鉱石鉱物には次のようなものがある。
自然水銀 (Hg)
辰砂 (HgS)(三方晶系)
黒辰砂 (HgS)(等軸晶系)
リビングストン鉱 (HgSb4S8)

商業的には辰砂及び自然水銀が主要な鉱石となっている。

用途[編集]

産業用、研究用[編集]
かつてはスイッチに水銀が使われていた(水銀スイッチ)。
大電力用の整流器(水銀整流器)や、高速動作用リレー用の接点材料としても重宝されていた。
砂金の採掘では金を含む砂に水銀を通し、砂中の金を溶け込ませた後に水銀を回収・蒸発させて金を回収するという手法がとられることがある。このような採掘方法はしばしば設備の整っていない環境で行なわれるため、水銀汚染が問題になる[16]。
金とのアマルガムは、金の採掘や精錬、金めっきに用いられることがある[17]。
灯台の投光機に使用され、水銀が満たされた器にレンズを付けた台を浮かし、回転を滑らかにしていた。近年、地震などで水銀がこぼれることが問題視され、水銀を使わない投光機へと置き換えが進んでいる。
気圧(気圧計)、真空度(真空計)の測定に広く用いられている(液柱型水銀気圧計、U字管マノメーター、マクラウド真空計など)。
研究機関の化学実験室などにおいて、ガスラインを一定以上の圧力に保つために水銀を入れた管にガスをバブリングさせることがある。
殺菌に使われる殺菌灯に水銀が使われている。近年は水銀を用いない深紫外線LEDも登場し始めた。
塩化ナトリウムの電解に水銀を使う手法がある(水銀法)。現在、日本では行われていない。
かつて雷酸水銀(II)が雷管の起爆剤(点火薬)として使われていた。

医療用など[編集]
単体の水銀は熱膨張性の良さと、温度に対する膨張係数が線形に近いことから体温計に用いられる。現在ではデジタル式に圧されて廃れつつある。
血圧計では、水銀柱を利用して圧を読みとるものが伝統的であり、現在でも医療現場や医療教育で広く使われている。しかし、現在は都立病院などで電子式の血圧計が普及してきている(医療用の電子式血圧計ならば聴診法にも対応している)[18]。ちなみに、血圧の単位は、国際単位系の例外として、mmHg(水銀柱ミリメートル)を用いるのが標準となっている。
銀・スズ・銅などとのアマルガムは、歯科治療において歯を削った後の詰め物として一般に用いられていた時期がある。これはアマルガム修復と呼ばれる手法で、該当金属粉末と水銀を混合した直後はアマルガム化が進んでいないためにシャーベット状であり、アマルガムが形成されて全体が固化するまでにしばらく時間がかかることを利用していた。
国内において、かつては消毒薬マーキュロクロム (C20H8Br2HgNa2O6) の材料として使用されていた。現在はほとんど使われていない。
硫化物は辰砂と呼ばれ、催眠、鎮静効果のある生薬として漢方の処方に用いられることがある。
密かに堕胎薬としても使われた(無論極めて危険である)[19]。
チメロサール、ワクチンの防腐剤として使用される[20]。

その他の日用品など[編集]
蛍光灯や水銀灯などでは、水銀蒸気が発光体として使用されている。
辰砂は朱色の顔料としても用いられる。ただし、そのまま用いるケースは稀となり、金属水銀から工業的に製造された硫化水銀(銀朱)が用いられるようになった。この銀朱は、代替品が見つからないので、銀朱を用いた絵画や工芸品などの修繕に使用されている。
かつては電池(乾電池、水銀電池など)の亜鉛と混合しアマルガム化することによって負極の化学反応抑制用として使用された。現在国内では酸化銀電池、アルカリボタン電池等に使用されているのみである。なお、日本でマンガン電池の水銀が0使用になったのは1991年、アルカリ電池では1992年であり、古い電池の破棄には注意を要する。(各市町村の処分方法に従うこと)
鏡が銅などの金属を磨いて作られていた時代には、鏡の表面にアマルガムを形成させることで鏡研ぎの仕上げとしていた。

分析法[編集]

水銀は常温で容易に気化するため、分析法は還元気化原子吸光法が主である。測定機器としては原子吸光分析装置のバーナヘッド部を石英セルに置き換えるほか、水銀測定専用の装置が市販されている。有機水銀の場合は試料を分解せず溶媒抽出後、ガスクロマトグラフィーで分離し電子捕獲検出器や質量分析装置で検出する場合もある。

総水銀の分析手順は概ね次のようなものである。詳細は成書を参照されたい。
1.試料を強酸で分解する。硝酸-過塩素酸、硝酸-過塩素酸-硫酸、硝酸-硫酸の系がよく用いられる。
2.さらにペルオキソ二硫酸カリウム、過マンガン酸カリウム等で有機水銀と残余の有機物を完全に酸化分解する。
3.分解液を還元気化装置の容器に採り、還元剤を加え通気する。
4.水銀イオンが水銀原子に還元され、気相中にパージされてくる。
5.水銀原子の波長253.7 nmにおける吸光度を測定する。

化合物[編集]
塩化水銀(I)(甘汞)(Hg2Cl2)
塩化水銀(II)(昇汞)(HgCl2)
酸化水銀 (HgO)
メチル水銀 (CH3HgX)
雷酸水銀 (Hg(ONC)2)
硫化水銀(I) (Hg2S)
硫化水銀(II) (HgS)
辰砂(硫化水銀(II)の鉱物)

水銀(IV)の化合物は存在が予言されるにとどまっていたが、2007年に初めて HgF4 の合成が報告された。固体 Ar または Ne マトリクス中の極低温下で水銀と F2 との反応により合成された[21]。

脚注[編集]

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1.^ 常温常圧で液体状態をとりうる金属としては他にガリウム(融点30℃)、ルビジウム(融点39℃)、セシウム(融点28℃)、フランシウム(融点27℃(理論推定))などがあるが、融点が常温より十分に低いものは現在発見されている金属元素の中では水銀が唯一である。
2.^ Online Etymology Dictionary
3.^ a b c Online Etymology Dictionary
4.^ 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、326〜327頁。ISBN 4-06-257192-7。
5.^ 武内章記、柴田康行、田中敦「水銀同位体生物地球化学」、『環境化学』第19巻第1号、日本環境化学会、2009年3月17日、 1-11頁、 doi:10.5985/jec.19.1、 NAID 10024803660。
6.^ メチル水銀ばく露による健康被害に関する国際的レビュー (PDF) 有村公良
7.^ 厚生労働省・魚介類等に含まれる水銀について
8.^ 水銀 渡辺和男氏(浜松医大)
9.^ 水俣病からメチル水銀中毒症へ 熊本大学
10.^ Opinion of the CONTAM Panel related to mercury and methylmercury in food JECFA
11.^ Mercury Levels in Commercial Fish and Shellfish アメリカ合衆国 FDA
12.^ 妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項 日本国 厚生労働省
13.^ FDA ANNOUNCES ADVISORY ON METHYL MERCURY IN FISH アメリカ合衆国 FDA
14.^ 日本の地球化学図
15.^ 法令・告示・通達>底質の暫定除去基準について 日本国 環境省
16.^ 世界の水銀汚染問題(世界の水銀汚染研究の現状)
17.^ 東大寺盧舎那仏像(奈良の大仏)の金めっきは金アマルガムを大仏に塗った後、加熱して水銀を蒸発させることにより行われた。一説には、この際起こった水銀汚染が平城京から長岡京への遷都の契機となったという。しかし2013年東大大気海洋研究所が現地で当時の土壌を採取調査をしたところ、現代の環境基準よりはるかに低かったという。(朝日新聞デジタル版2013年6月1日0時24分)
18.^ 水銀の処理等に関する検討会 とりまとめ 東京都 2012年2月
19.^ 川柳に「水銀(みずかね)で心の曇りを研いでおき」などと詠まれている。
20.^ メロサールとワクチンについて 横浜市感染症情報センター
21.^ Wang, Xuefang; Andrews, Lester; Riedel, Sebastian; Kaupp, Martin (2007). “Mercury Is a Transition Metal: The First Experimental Evidence for HgF4”. Angewandte Chemie International Edition 46 (44): 8371–8375. doi:10.1002/anie.200703710. ISSN 14337851.

遷移元素

遷移元素(せんいげんそ、transition elements)とは、周期表で第3族元素から第11族元素の間に存在する元素の総称である[1][2]。遷移金属(せんいきんぞく、transition metals)とも呼ばれる。第12族元素(亜鉛族元素、Zn、Cd、Hg)は化学的性質が典型元素の金属に似ており、またイオン化してもd軌道が10電子で満たされ閉殻していることから日本では一般に典型元素に分類されるが、遷移元素に分類される例も多く見られる[3]。

遷移元素の単体は一般に高い融点と固さを有する金属である。常磁性を示すものも多い。鉄、コバルト、ニッケルのように強磁性を示すものも存在する。

また化合物や水和イオンが色を呈するものが多い。種々の配位子と錯体を形成することができ、触媒として有用なものも多い。



目次 [非表示]
1 歴史
2 特徴
3 遷移金属
4 遷移元素の電子配位一覧
5 電気伝導性
6 磁性
7 触媒活性
8 色
9 脚注
10 関連項目
11 参考文献


歴史[編集]





メンデレーエフの短周期表。まずVIII族元素が遷移金属と呼ばれるようになる。




IUPAC分類に従い3族から11族までを遷移元素とした長周期表。
ドミトリ・メンデレーエフが周期表(短周期表)を作成した当時はまだ希ガスが同定されておらず、今日の第3族–第7族元素で発見されているものも少なく、また発見されていたものが多い第8–第10族元素に属する元素であっても1つの族(VIII族)にまとめられていた。というのも、短周期表を区分する物性や化学的性質は、s電子やp電子など、主に最外殻電子の性質に由来するものであり、d電子やf電子などの内殻電子の構成に由来する元素の変化は目だって現れなかったためである。メンデレーエフは原子量順に並べると、化学的性質の異なるVII族とI族の間に、性質の似通った3つの元素の組から構成されるVIII族元素が配置できることを見出し、これら金属元素は19世紀の最終四半世紀ごろからVII族とI族を繋ぐ元素グループという意味で「遷移金属」(de:Übergangsmetalle/en:transitional metal)と呼ばれるようになった[3]。

その後第3族–第7族元素の発見により周期表も改良され、今日の第1・2および12–18族元素から構成される典型元素(短周期族名の後にAをつけて区別する)と第3族–11族元素から構成される遷移元素(短周期族名の後にBをつけて区別する)が短周期表の中で分類されるようになった。

その後、量子化学により元素のもつ電子殻の構造が理解され、K、L、M電子殻やそれを構成するs、p、d、f電子軌道など電子ブロック分類に基づく長周期表や拡張周期表で元素が分類されるようになり、第3–第11族元素を指して「遷移元素」と呼ぶようになった。

特徴[編集]

遷移元素は典型元素とは異なりd軌道あるいはf軌道が閉殻になっていない。そして原子番号の増加によって変化するのは主に、d軌道ないしはf軌道電子である[4]。

s軌道ないしはp軌道電子においては、主量子数の小さい軌道は大きい軌道を超えて外側にほとんど分布しないのに対して、d軌道ないしはf軌道電子はより主量子数が大きいs軌道、p軌道の内側にも外側にも分布する。この性質は遷移元素の特徴に大きく影響を与えている。

d軌道ないしはf軌道電子が, より主量子数の大きいs軌道の外側にも分布するということは、そのs軌道電子に対する核電荷遮蔽(しゃへい)の効果が弱いことを意味している。その為にd軌道ないしはf軌道が閉核でない元素では, s軌道準位が, それより主量子数の小さいd軌道あるいはf軌道よりも低くなる。この効果により、遷移元素では原子番号の増加に対して、s軌道よりもエネルギー準位の高いd軌道やf軌道が変化することになる[5]。

d軌道ないしはf軌道の外部にも広く分布する電子が多数存在するという性質は、金属結合に関与しうる電子が多いということも意味する。その多数の電子が結合力を増大させるため、遷移金属では典型元素金属に比べて融点が高いものが多く、とりうる酸化数も多数存在することになる。

遷移元素においては第4・第5周期はd軌道に電子が存在するが、第6・第7周期にはd軌道とf軌道に電子が存在することになる。このことは、ランタノイド系列やアクチノイド系列が存在するという理由以上には電子配置や核遮蔽による準位への影響度合いが、第4・第5周期の場合と第6・第7周期の場合とでは異なることを意味する。したがって、典型元素では同じ族の元素の性質が似通っていたのに対して、遷移元素においては第4・第5周期と第6・第7周期とでは性質が異なる場合もしばしば見られる。

むしろ同じ周期であれば、s軌道電子の構造が等しい隣接する族と性質が似通う面も多く、三組元素の鉄族元素や白金族元素のように同じ属だけではなく、同じ周期でも区分される場合もある。

遷移金属[編集]

遷移元素は全て金属元素であるが、d軌道またはf軌道など内殻に空位の軌道を持つため、典型元素の金属とは異なる化学的性質を持つ。そのため、これら金属元素は「遷移金属」とも呼ばれる。

例えば、内殻のd軌道に安定な不対電子を持つことが可能なため、遷移金属の多くは常磁性であったり、複数の酸化数をとることが容易である。あるいはd軌道はさまざまな配位子と結合して、同じ元素でも多様な錯体を形成する。

一方、内殻軌道が閉殻の亜鉛、カドミウム、水銀(亜鉛族元素)は電子配置も化学的性質も典型元素の金属に近いので遷移元素とはされない。

遷移元素の電子配位一覧[編集]

第一遷移元素(3d遷移元素)


元素記号

元素名

電子配位(基底状態、中性原子)

Sc スカンジウム 3d4s2
Ti チタン 3d24s2
V バナジウム 3d34s2
Cr クロム 3d54s
Mn マンガン 3d54s2
Fe 鉄 3d64s2
Co コバルト 3d74s2
Ni ニッケル 3d84s2
Cu 銅 3d104s
Zn 亜鉛 3d104s2

第二遷移元素(4d遷移元素)


元素記号

元素名

電子配位(基底状態、中性原子)

Y イットリウム 4d15s2
Zr ジルコニウム 4d25s2
Nb ニオブ 4d45s1
Mo モリブデン 4d55s1
Tc テクネチウム 4d55s2
Ru ルテニウム 4d75s1
Rh ロジウム 4d85s1
Pd パラジウム 4d10
Ag 銀 4d105s1
Cd カドミウム 4d105s2

第三遷移元素は、ランタン(La)から金(Au)までの元素をいう[1][6]。

第三遷移元素(4f遷移元素)


元素記号

元素名

電子配位(基底状態、中性原子)

La ランタン 5d16s2
Ce セリウム 4f15d16s2
Pr プラセオジム 4f36s2
Nd ネオジム 4f46s2
Pm プロメチウム 4f56s2
Sm サマリウム 4f66s2
Eu ユウロピウム 4f76s2
Gd ガドリニウム 4f75d16s2
Tb テルビウム 4f96s2
Dy ジスプロシウム 4f106s2
Ho ホルミウム 4f116s2
Er エルビウム 4f126s2
Tm ツリウム 4f136s2
Yb イッテルビウム 4f146s2
Lu ルテチウム 4f145d16s2
Hf ハフニウム 4f145d26s2
Ta タンタル 4f145d36s2
W タングステン 4f145d46s2
Re レニウム 4f145d56s2
Os オスミウム 4f145d66s2
Ir イリジウム 4f145d76s2
Pt 白金 4f145d96s1
Au 金 4f145d106s1


第四遷移元素は、アクチニウムからレントゲニウムまでの元素をいう[1][6]。

電気伝導性[編集]

遷移金属とも呼ばれるように、遷移元素は単体では良導体であるが、酸化物になると配位数や格子間距離などに応じて、様々な電気的特性を示す。

例えば PrNiO3 や NdNiO3 は低温では絶縁体であるが、室温になると金属になる。これらは典型的なモット絶縁体であり、低温では価電子がNiサイトに局在している。しかし、温度が上昇するとPr、Ndのイオン半径が増加するため、結晶構造に歪みが生じる。これにより、Niサイトに局在していた電子が波動性を回復して結晶全体に広がり、金属に転移する。

磁性[編集]

遷移元素において安定な不対電子が存在しやすい性質は、磁性を持つ元素が多数含まれることの理由の一つとなっている。すなわち、典型元素では最外殻の不対電子は他の原子と共有結合することで安定化し不対電子の磁気的性質が容易に打ち消されるのに対して遷移金属では不対電子を持つ単体やイオンが安定である為に典型元素に比べて磁気的性質を発現するものが多い。

また電子配置の面だけでなく、磁性は結晶構造や錯体構造とも密接な関連があり、このことが多様な構造を持つ遷移元素においてさまざまな磁気的性質を発現する要因にもなっている。

触媒活性[編集]

遷移元素は良い均一系・不均一系触媒となりうる。例えば鉄はハーバー・ボッシュ法の触媒である。また、酸化バナジウム(V) は硫酸製造の接触法に、ニッケルはマーガリン製造の水素添加に、白金は硝酸製造に、それぞれ用いられる。遷移元素は反応中にさまざまな酸化状態をとりながら錯体を形成し、活性化エネルギーの低い経路を提供する。

色[編集]





遷移元素化合物の水溶液。左から
Co(NO3)2 (赤)、K2Cr2O7 (橙)、K2CrO4 (黄)、NiCl2 (緑)、CuSO4 (青)、KMnO4 (紫)
光は電場と磁場の振動であり、その振動数が異なると、目を通して違った色として認識される。色の変化は、ある物質に入射した光が反射・透過・吸収されることによって起こる。遷移元素のイオンや錯体は、その構造に由来してさまざまに着色している。同じ元素であっても構造が違えばその色は異なる。例えば7価のマンガンのイオン MnO4− は紫だが、Mn2+ は薄い桃色である。

遷移元素の錯体では、配位子が化合物の色を決定する要素となる。これは配位によってd軌道のエネルギーが変化するためである。配位子が遷移元素イオンと結びつくと、縮退していたd軌道は高エネルギー準位の組と低エネルギー準位の組に分かれる。配位子を持つイオン、つまり錯体に光を当てると、低エネルギー準位にあった電子が高エネルギーの準位に移動する(遷移する)。このとき吸収される光が色として認識される。吸収される光はエネルギー準位の差とちょうどエネルギーを持つものに限られるため、準位差の違いは吸収する光の波長、すなわち色の違いとして現れる。

錯体の色は以下の要素によって決まる。
中心となる遷移元素イオンの性質、特にd電子の数。
中心イオンの周りの配位子の位置。幾何異性体は異なる色を示すことがある。
配位子の性質。強い配位子が結合すると、エネルギー準位の分裂幅は大きい。

亜鉛の場合、3d軌道がすべて満たされているため低エネルギーのd軌道から高エネルギーのd軌道への遷移が起こらない。そのため亜鉛の錯体は無色である。

脚注[編集]

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1.^ a b c (英語) transition element IUPAC. Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed. (the "Gold Book"). Compiled by A. D. McNaught and A. Wilkinson. Blackwell Scientific Publications, Oxford (1997). XML on-line corrected version: http://goldbook.iupac.org (2006-) created by M. Nic, J. Jirat, B. Kosata; updates compiled by A. Jenkins. ISBN 0-9678550-9-8. doi:10.1351/goldbook.T06456.
2.^ IUPAC REDBOOK p.43:IUPAC Nomenclature of Inorganic Chemistry. Third Edition, Blackwell Scientific Publications, Oxford, 1990.
3.^ a b (英語) Jensen, William B. (2003). “The Place of Zinc, Cadmium, and Mercury in the Periodic Table”. Journal of Chemical Education 80 (8): 952–561. doi:10.1021/ed080p952.
4.^ 原子番号増加でs軌道、d軌道ないしはf軌道電子が変化する箇所も存在する
5.^ d軌道やf軌道が閉殻の場合は核遮蔽が強く、準位が高くなったs軌道電子が変化する
6.^ a b Chapter_7._d-Metal Complexes

金(きん、英: gold, 羅: aurum)は原子番号79の元素。元素記号は Au。第11族元素に属する金属元素。



目次 [非表示]
1 概要
2 性質
3 利用の歴史
4 用途 4.1 工業用品としての利用
4.2 通貨・投資対象としての利用
4.3 装飾品としての用途

5 カラーゴールド
6 純度 6.1 カラット (Karat)
6.2 千分率(‰ パーミル)

7 金鉱床
8 金鉱山 8.1 産出国

9 化合物と同素体
10 同位体
11 毒性
12 金の地上在庫
13 日本にある金の総量
14 金に関連する作品
15 脚注
16 関連項目
17 外部リンク


概要[編集]

貴金属の一種であり、単体の金属として古くから知られてきた。元素記号は Au であり、これはラテン語で金を意味する aurum に由来する[1]。

柔らかく、可鍛性があり、重く、光沢のある黄色(金色)をしており、展性と延性に富み、非常に薄くのばすことができる。「こがね/くがね(黄金: 黄色い金属)」とも呼ばれる。同族の銅と銀が比較的反応性に富むこととは対照的に、標準酸化還元電位に基くイオン化傾向は全金属中で最小であり反応性が低い。熱水鉱床として生成され、そのまま採掘されるか、風化の結果生まれた金塊や沖積鉱床(砂金)として採集される。

金は多くの時代と地域で貴金属としての価値を認められてきた。化合物ではなく単体で産出されるため装飾品として人類に利用された最古の金属である。銀や銅と共に貨幣用金属の一つであり、貨幣(金貨)として使用され、流通してきた。ISO通貨コードでは XAU とあらわす。また、医術、エレクトロニクスなどの分野で利用されている。

性質[編集]

金は単体では金色と呼ばれる光沢のある黄色い金属であるが、非常に細かい粒子状(コロイド)にすると黒やルビー色に見える場合があり、時には紫色になる。これらの色は金のプラズモン周波数によるもので、主に黄色と赤を反射し青を吸収する。このため、薄い金箔を光にかざすと、反射と吸収の谷間にあたる緑色に見える。

展性・延性に優れ、最も薄くのばすことができる金属であり、1 gあれば数平方メートルまでのばすことができ、長さでは3000 mまで伸ばすことができる。平面状に伸ばしたものを「金箔」(きんぱく)、糸状に伸ばしたものを「金糸」(きんし)と呼ぶ。豪華な衣装を作るために、金糸は綿や絹など一般的な繊維素材と併用される。

他の金属と溶け合いやすいため、混ぜて合金とすることが容易である。これにより他の金属の伸長性が増し、変化に富んだ色の金属を作ることができる。銅との合金は赤く、鉄は緑、アルミニウムは紫、白金やパラジウムやニッケルは白、ビスマスと銀が混ざった物では黒味を帯びた色調になる。自然に存在する金には通常10 %程度の銀が含まれており、20 %を超える物は、エレクトラム、青金または琥珀金と呼ばれる。さらに銀の量を増やして行くと色は次第に銀白色になり、比重はそれにつれて下がる。

金は熱伝導、電気伝導ともに優れた性質を持ち、空気では浸食されない。熱、湿気、酸素、その他ほとんどの化学的腐食に対して非常に強い。そのため、貨幣の材料や装飾品として古くから用いられてきた。ハロゲンは金と反応を起こし、王水やヨードチンキは金を溶かすことができる。
Au + HNO3 + 4 HCl → H[AuCl4] + NO + 2 H2O
また強力な酸化作用を有する熱濃セレン酸にも溶解する。さらに酸素の存在下でシアン化物の水溶液に錯体を形成して溶解する。この反応は金鉱石から金を抽出するために応用されている。
4 Au + 8 NaCN + O2 + 2 H2O → 4 Na[Au(CN)2] + 4 NaOH
金で安定な原子価は+1, +3であり、化合物あるいは水溶液中において Au3+ など単純な水和イオンは安定でなく、[Au(CN)2]− および [AuCl4]− など主に錯体として存在する。AuCl など1価の金化合物はシアノ錯体を除いて一般的に水溶液中で不安定であり不均化しやすい。
3 AuCl + H2O → H[Au(OH)Cl3] + 2 Au
また金化合物は一般的に熱力学的に不安定であり、光の作用により分解し、単体の金を遊離しやすい。合金中において金はイオン化したとしても直ちに他の金属によって還元され、添加された金属は酸化される。

利用の歴史[編集]

金は有史以前から貴重な金属として知られていた。貴金属の一種である金は、そのままの形で自然界に存在しているため、精錬が必要な鉄などよりも早く人類が発見できた。他の貴金属や隕鉄とともに人類最初期から利用された金属とされる。

金は紀元前3000年代に使われ始めた。最古の金属貨幣は紀元前7 - 6世紀にリディアでつくられたエレクトロン貨で、天然の金銀合金に動物や人物を打刻している。金は中国で商時代に已に装飾品として使われ、春秋戦国時代には貨幣や象嵌材料として使用された。

日本では福岡県志賀島にて発見された漢委奴国王印がある。古墳時代には奈良県東大寺山古墳出土の「中平」銘鉄剣や埼玉県稲荷山古墳出土の「辛亥」銘鉄剣など、鉄地に線を彫って金線を埋め込んだ金象嵌がある。平安時代には奥州(現在の東北地方)で大量の砂金が産出され、奥州を支配した奥州藤原氏によって平泉が平安京に次ぐ日本第二の都市として栄えた。奥州産の金は、京都や北宋、沿海州などとの交易や、中尊寺金色堂・東大寺盧舎那仏像などに使用された。平泉・金色堂はマルコ・ポーロが東方見聞録で 紹介した、黄金の国ジパングのモデルになったともされる。

古代エジプトのヒエログリフでは、紀元前2600年頃から金についての記述が見られる。ミタンニの王トゥシュラッタが、通常は粒として請求をしている。エジプトとヌビアは、史上でも有数の金産出地域である。旧約聖書でも、金について多く触れられている。黒海の南西部は、金の産出地として名高い。金を利用した物としては、ミダスの時代にまでさかのぼると言われている[誰によって?]。この金は、紀元前643年から630年のリディアでの、世界で初めての貨幣成立に大きく影響を及ぼしたと言われている[誰によって?]。

ヨーロッパのアメリカ探検家達による金の強奪は、当時のアメリカ先住民達が持っていた金の量から見ても膨大な量に上った。とくに中央アメリカ、ペルー、コロンビアを原産とする物が多い。

歴史上の評価を総括するならば、金は最も価値のある金属と考えられてきた。そして多くの通貨制度において、その基準とされてきた(金本位制)。また純粋、価値、特権階級の象徴としてもとらえられてきた。金の採掘は比較的容易であり、1910年からこれまでに、究極可採埋蔵量のうち75 %ほどの金が産出されてきたと考えられている。地質学的に、地球上にある採掘可能な金の埋蔵量は、一辺が20 mの立方体に収まる程度と考えられている。

初期の科学者達の目指した目標は、水銀など他の物質から金を作り出す錬金術だった。金を生み出すことができる物質は賢者の石と名付けられ、賢者の石を作ることに多くの努力がなされた。その試みの全ては失敗に終わったが、その過程で発見された多くの事象を元にして、今日の化学は成り立っている。現代では、金を始めとする貴金属原子の合成は、加速器などを用いて、他の元素から核種変換することで可能なことが分かっている。

錬金術師達は、中心に点が描かれた円の記号で金を現していた。これは占星術の記号でもあり、エジプトのヒエログリフ、および初期の漢字では太陽を現す記号としても用いられた。

19世紀のゴールドラッシュ以降、カリフォルニア州、コロラド州、オタゴ、オーストラリア、サウスダコタ州ブラックヒルズ、カナダのクロンダイクなどで大きな金の鉱脈が発見されてきた。

用途[編集]

金は金属としては非常に軟らかい物質であり、通常は銅や銀、その他の金属と鍛錬されて用いられる。金とその他の金属の合金は、その見栄えの良さや化学的特性を利用して指輪などの装飾品として、また美術工芸品や宗教用具等の材料として利用されてきた。さらに貨幣、または貨幣的を代替する品物として用いられてきた。

フィクションの世界では金製品の武具が多く登場するが、現実には特殊な使用法を除いて殆ど実戦に役立つ物では無い(軟らか過ぎ、重過ぎる、高価過ぎる、という特性のため、武具の素材としては不適切、良くて装飾程度)ただし富の象徴と力の象徴として飾られていた事はある。

工業用品としての利用[編集]

金は、前述のような耐食性、導電性、低い電気抵抗などの優れた特性を持ち、20世紀になってからは工業金属として様々な分野で使用されている。近年では、廃棄された工業用品(おもに携帯電話などの電子基板)を溶解し、金、リチウムなどの貴金属や希少金属(レアメタル)を抽出する事業(いわゆる都市鉱山)も展開されている。





性能向上の為に金メッキが施された端子電気抵抗が小さく、延性が高いためコンピュータ (CPU) などの回路、電子部品のワイヤ・ボンディングなどに用いられる。ただし、最近は安くて導電率が高い銅を使ったワイヤ・ボンディングが台頭している。
高い導電性と酸化による腐食に対する強い耐性から、表面を金メッキしたものは年月を経ても錆びないため、電子部品の電導体やコネクタの部品として広く利用されている(銀のほうが導電性は高いが、空気中では表面に硫化物を生成して導電性が低下するため、金のほうがコネクタの材料としては優れている)。
歯科の治療に用いる歯冠として古くから利用されている。金歯や金パラ(金銀パラジウム合金。銀歯の一つ)として使われていたが、現在はコバルト・クロム合金やセラミック材料などのより安いものに置き換えらつつあり、金の使用は減少しつつある[2]。しかし、日本では金銀パラジウム合金が保険適用となっているため、日本での歯科用途での金の使用は減少していない[2]。
多くの競技や賞の賞品メダルの材質の一つとしても用いられている。オリンピックにおける金メダル(スターリングシルバー若しくはブリタニアシルバーの土台に総量6グラム以上めっき)、ノーベル賞など。銀や銅も同様に使用される。
コロイド状金(粒状金)は、非常に強烈な色素として多くの研究室で応用が研究されている。
触媒として広く利用されている。表面化学の研究の進展により主に単結晶表面での反応性が調べられ、極めて不活性であると考えられてきた。しかし、春田正毅らによって、金の粒子径(1 - 10 nmでの)制御により一酸化炭素を-78 °Cの低温下でも二酸化炭素に酸化できるという発見および酸素水素混合ガスを酸化剤に用いてプロピレンを選択的にエポキシ化できるという発見がなされてから一転、金触媒ブームが巻き起こった[3]。また、金の様々な合金はこの分野で作られたのが初めである。
放射性同位体 Au-198(半減期2.7日)はいくつかの癌の抑制治療に用いられている。
生物学分野では、走査型電子顕微鏡で用いる生物のコーティング材として用いられている。
可視光、非可視光ともによく反射するため、人工衛星の保護剤として全体に貼られている。
同様の性質を利用して、宇宙飛行士の船外服のヘルメットのバイザーに薄膜として蒸着させることで紫外線を防ぐことが可能である。
鍼治療用として、金を含む材質の鍼が製造されている。一般的なステンレスの鍼に比べて高価なため、金の鍼を使うのが効果的とされる特異な症状に対してコスト面で折り合いがつく場合に用いられる。
フルートをはじめとした管楽器などの材質(管やキィ部分)に用いられる。一般的である洋銀、銀よりも響きが豊かになる。

通貨・投資対象としての利用[編集]





USドル表示の価格推移グラフ
流通目的の金貨として利用する場合は、単体では軟らかすぎる(因みにこの軟性を利用して、嘗ては金貨などを噛む事で歯形が付くかどうかで本物か紛い物かを判別していた時期がある(すなわち歯形が付かないほど不純物が混ざっている事になるため)。オリンピックなどの競技で優勝者が金メダルを咥えて見せる事があるが、この名残である。あるいは金地金を充分に用意できないなどの理由で、銀や銅など他の金属と混ぜた合金として利用されてきたが、最近の主に投資目的の地金型金貨においては純金製のものが一般的になっている。日本でも江戸時代には小判、一分判などの金貨が流通していた。明治時代になっても、金は銀行が発行する紙幣との交換が可能で、その価値が保証されていた(兌換貨幣、金本位制。日本の金貨を参照)。

現在は、紙幣との交換はできないが、今なお各国の中央銀行が支払準備金として金を保有している。また、鉱山会社や証券会社や銀行や地金商などの貴金属専門業者、商品取引員等で、金を投資対象とする金融商品(金ETF、純金積立など)が取り扱われている。キロバーの購入の場合は、地金商や鉱山会社などの貴金属専門業者等で購入するよりも商品取引員で購入するほうが、東京商品取引所の金先物市場の期近を活用しているため、東京商品取引所の受渡供用品且つ受渡供用品の商号又は商標の指定は出来ないが中間マージンが低い分安いコストで購入できる。逆にキロバーを鋳造する地金商からの購入の場合は、自社で溶解し自社ブランドの刻印を刻んで販売するため、その分コストを上乗せされ販売されている。金本位制が崩壊した今も、(恐らくはその名残として)貨幣のような価値をまだ認められていると考えられる。

他の貴金属と同様、金も取引の際にはトロイオンス、またはグラム建で価格が決定される。


金の価格は、公開された市場取引によって決められる。現在一般に「金価格」と呼ばれているものには、1919年にロンドンで設立された The London Gold Market Fixing Ltd. (TLGMFL) にて1日2回(午前と午後)決定される現物価格(呼値1トロイオンス当たり0.25US $(USD)) と、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX。旧ニューヨーク商品取引所(COMEX)から承継)及び同取引所の親会社に当たるCMEグループが運営する24時間稼働の電子取引システム「グローベックス」で決められる金先物取引中心限月価格(呼値1トロイオンス当たり0.10US $(USD)標準品純度99.50%以上の金地金) の2つがある。後者は経済指標として用いられることもある。その他、世界各地で相対取引(Over The Counter(OTC))されているロコ・ロンドン(Loco London)取引(建値1トロイオンス当たりUS $(USD)受渡品最低純度99.50%以上の金地金「グッドデリバリーゴールドバー」) 、インドのマルチ商品取引所(呼値10グラム当たり1ルピー(INR)標準品純度99.50%以上の金地金) 、ドバイ金商品取引所(呼値1トロイオンス当たり0.10US $(USD)標準品純度99.50%以上の金地金) 、東京商品取引所(呼値1グラム当たり1円(JPY)標準品純度99.99%以上の金地金)や上海期貨交易所(呼値1グラム当たり0.01元(RMB)標準品純度99.95%以上の金地金)などでの先物取引など世界各地で取引されている。日本での金価格は、ドル円相場、ロコ・ロンドン価格及び国内要因等により形成され(東京金先物価格)、加え、東京金先物の受渡など流通段階で金価格に対する消費税が加算され、小売価格では業者への手数料等が加算される。

TLGMFL設立時のメンバーはN・M・ロスチャイルド&サンズ (N.M.Rothschild & Sons)、モカッタ&ゴールドスミド (Mocatta & Goldsmid)、ピクスリー&アベル (Pixley & Abell)、サミュエル・モンタギュー・アンド・カンパニー (Samuel Montagu & Co)、シャープス・ウィルキンズ (Sharps Wilkins) であった。TLGMFL 会員権はその後変遷を辿り、2011年現在のメンバーはバークレイズ(子会社のバークレイズ・キャピタル Barclays Capital が加入[4])、香港上海銀行 (HSBC)[5]、スコシアバンク(子会社のスコシア・モカッタ Scotia-Mocatta[6] が加入)、ドイツ銀行[7]、ソシエテ・ジェネラル[8]である。

歴史的には、貨幣の価値によって同等の重さの金と交換できる金本位制として知られる、経済システムの裏を支える物として使われてきた。この方式では、政府および中央銀行は、通貨と金の交換価値を定めることになる。長い間アメリカ合衆国では1トロイオンスを$20.67 ($664.56/kg) で交換可能としていたが、1934年に1トロイオンスあたり$35.00 ($1125.27/kg) となった。だが1961年には経済力に対して金が不足し、価格の調整が困難になった。

金を背景とした経済環境の崩壊を受け、1968年3月7日、国際取引単位である1トロイオンスあたり$35.00 ($1.13/g) と個人間取引の変動価格の二段階の価格が設定された。この方式は1975年には破綻をきたし、金は自由取引されるようになった。中央銀行は歴史的理由から価値が下がってはいるが、金を保有し続けている。最も多くの金を保有しているのはアメリカ合衆国連邦準備制度下の各連邦準備銀行である。金価格は比較的安定した貨幣によって定められ、米ドル建で決定され各国通貨に換算される。

1968年以降、公開市場での金の価格が大きく動く。2008年3月17日にNYMEXが$32,713/g ($1,017.50/oz) を記録して以来、金価格はロンドン現物、NYMEX/グローベックス先物共に歴史的な高値圏にある。特に2011年はチュニジアのジャスミン革命を引き金とした中東情勢の緊張、日本の東日本大震災、アメリカの連邦債務上限額引き上げ問題を背景とした米国債ショック、ギリシャ経済危機を発端とするユーロ圏ソブリン危機の再燃などの影響を受け金価格は急騰。グローベックス先物は2011年8月22日2200GMTに$59,199/g ($1,903.30/oz。KITCO調べ。参考資料)を記録。ロンドン現物も2011年9月2日午後の値決めで金価格がプラチナ価格を初めて上回り、9月5日午前の値決めで$58,987/g ($1,896.50/oz。KITCO調べ。推移)に達した。その後、2011年9月22日のアメリカ連邦公開市場委員会後に300米ドル近く値を下げ、2011年10月現在$1,600/oz台で推移している。
また、東京商品取引所の金(標準取引)の上場来最高値(先物、金価格に対する消費税抜きの価格)は、期近2013年2月7日の5,065円/g、期先2013年2月7日の5,081円/g (2013年4月現在)である(1982年3月23日上場)。そして、国内小売価格(田中貴金属工業)の最高価格は1980年1月21日に6,495円/gを記録している。

なお、日本での金取引自由化後における最安値は、NYMEX先物(終値ベース)は1999年7月19日の$7,866/g ($252.90/oz) 、ロンドン現物は同年7月20日午後の$7,862/g ($252.80/oz)(いずれもKITCO調べ)、東京商品取引所の金(標準取引)の上場来最安値(先物、金価格に対する消費税抜きの価格)は、期近同年9月16日の865円/g、期先同年9月16日の836円/g である。そして、国内小売価格(田中貴金属工業)の最安値は同年9月17日に917円/g(税抜)を記録している。

装飾品としての用途[編集]

キャスト、プレスを用いた量産タイプの指輪やブローチ、手作りの一品ものなどジュエリーとしての用途が多い。

線状にした金は繊維状の刺繍に用いられる。

展延性がよいため金箔として美術工芸品建造物に用いられる。また金箔を粉にしたものは味や栄養に影響しないが華やかに見えるという点から、飲料や料理の食材にあるいは酒に混ぜるなどして用いられる。この場合の金粉は銅抜きと呼ばれ割り金として銅は含まれていない。 また食器類に用いる場合は、見栄えをよくするのみならず、食品に金属の味をつけない意味でも有用になることがある。

金は通常錆びることがなく、アレルギーの発現率が小さいことから、アクセサリーとして手入れしやすく安心して身につけられることも人気の理由となっている。 しかし、厚生労働省の病院モニター制度の報告によると、パッジテストでは金もアレルギー反応があり、金合金のジュエリーによるアレルギーの報告がある。そのうちの、ニッケルを含むホワイトゴールドは特にアレルギーを起こしやすい金属と言われているが、しかし一般社団法人日本ジュエリー協会の調査では、この合金による金属アレルギーの報告は届いていない。但し、ニッケルめっきによる金属アレルギーの例は多い。


金を使った装飾品は特にインドや中国で需要が高い[2]。また、日本製の金装飾品は品質が高く、アジアからの観光客に人気がある[2]。現在は貴金属を使わないコスチュームジュエリーなどが伸びてきており、金装飾品の需要を減らしている[2]。

純金は軟らかいそのままでは装飾品として機能しづらい。従ってほとんどの場合、別の金属(割り金)を添加した合金を用いて装飾品を作る(純度に関しては当該項目を参照)。国内の装飾品では K18 や K14 が一般的であるが、欧米ではK9やK8も市場に多い。




カラーゴールド[編集]





金−銀−銅三元合金の色相図
金合金は、割り金の銅、パラジウム等の配合率によって様々な色調を示す。これらを総称してカラーゴールドと呼ぶ。 カラーゴールドの代表的なものをあげる。
イエローゴールドK18 の場合、金750‰、残りを銀銅等量のものをイエローゴールドと称している。しかし、銀4〜6、銅6〜4の比率の範囲も、イエローゴールドの範疇としている(ISO8654)。一般的に認知されている金色に近い。グリーンゴールドK18 の場合、金750‰で残りが銀の合金をグリーンゴールドと称している。日本語では青割り、又は青金という。ISO8654 の金の色と名称の範囲で、グリーンゴールドの成分比率と色名を定めている。ピンクゴールドK18 の金750‰、残りの割り金の80 %銅の合金を一般的に、ピンクゴールドと称している。パラジウムを加えることがある。レッドゴールドK18 の金750‰、残りの割り金が全て銅の合金をレッドゴールドと称している。グリーンゴールド同様、ISO8654 で成分比率と色名を指定している。日本語では赤割り、又は赤金と言う。パープルゴールド金800‰に対してアルミニウム約200‰程度の割合の合金[9]で、地金は紫色を呈する。脆いという性質があったが近年の加工技術により宝飾品として部分的に利用されている。ホワイトゴールド 白色金ニッケル系とパラジウム系があり、金にそれぞれの元素と、前者は、さらに銅、亜鉛を、後者はさらに銀、銅を加えて、白色化した金合金をホワイトゴールドと称している。K18 の場合、ニッケル系、パラジウム系ともそれぞれ50‰以上を含まないと、白色度が不足する。一般社団法人日本ジュエリー協会は色差を用い、ホワイトゴールドの色の範囲を指定している。以前はプラチナの代用品として装飾品に用いられたが、現在はカラーゴールドの一種としての地位を得て、イエローゴールド以上に普及している。
このほか、黒味がかったブラック・ゴールドや、柔らかな金茶色のベージュ・ゴールドなどもある。

純度[編集]

合金の主成分の含有率を純度、又は品位という。金の品位は、24分率で表される習慣がある。その場合、純金は24金、24カラット (Karat)、あるいは、K24 と表す。そして、金の含有率に従い数値を変える。例えば、18金は金の含有率が18/24、すなわち750‰であることを表し、装飾品に750と刻印される。なお、このカラットは宝石の重量を表すカラット (carat・1ct=0.2g) とは異なるものである。

日本では99.99 %以上の純度の金を24カラット、又は純金と表示して良いことになっている。

また、ジュエリー用金合金の場合は、999以上を純金と表示してもよい。但し、1000分の1に硬化材が添加されている可能性があるので、地金取引に用いるインゴットの純金とは異なる。

このほか、純金の度合いを0.995などのように0から1の間の数値で表すこともある。

カラット (Karat)[編集]

現在でも金の装飾品や万年筆のペン先の純度表示に使われている。

ちなみに金の純度を24分率で表す単位のことで、K24(24金)とは純度の24分の24を表す(純金)。K22(22金)なら24分の22 (91.67 %、ジュエリー用916‰)、K18(18金)なら24分の18 (75 %、ジュエリー用750‰)となる。

千分率(‰ パーミル)[編集]

ジュエリー用金合金は、次のように千分率で表すと決められている。また、その単位は最低値であり、マイナスは不可とされる。 多くの国は、ISOやCIBJOの定める品位区分に基づいた製品を作っているが、日本国内では市場に合わせて品位が開発されているので、下に明記された区分以外の品位も存在する。

ISO9202 JIS-H6309 の品位区分

916(K22に相当) 750(K18に相当) 585(K14に相当) 375(K9に相当)

CIBJO(国際貴金属宝飾品連盟)の品位区分

999 986 916 750 585 416 375 333

造幣局貴金属製品品位証明区分

999 916 750 585 416 375

金鉱床[編集]





カリフォルニア産(上) オーストラリア産 (下)八面体型をしている
酸化をほとんど受けない金は、主に自然金(しぜんきん、native gold、金の単体)として得られることがほとんどである。また金は、火成岩中にも極微量に含まれる。ただし、採算が取れるほど固まって産出されるのはまれであるため、銅や鉛などの精製過程における副産物として通常は得られる。金鉱山として金を産出する場合は、金の鉱脈、あるいは鉱染を受けた岩体に沿って掘っていく。そのほかに、金を含む鉱石が風化した、砂状のものをパンニング皿(側面に一定間隔で凹凸の刻みが入れてある皿)などの道具によってより分ける砂金掘りの方法もある。

通常、石英、炭酸塩、まれに硫化物の鉱脈(英:vein)の中に自然金として存在する。硫化物では黄鉄鉱、黄銅鉱、方鉛鉱、閃亜鉛鉱、硫砒鉄鉱、輝安鉱、磁硫鉄鉱などの鉱床に含まれていることが多い。非常に稀であるがペッツ鉱、カラベラス鉱、シルバニア鉱、ムスマン鉱、ナギヤグ鉱、クレンネル鉱などの鉱脈に含まれていることもある。また、金は鉱化流体として存在していることが多く、間隙の多い岩体を金を含む熱水が通過した場合は鉱染状に金が産出する。この場合、鉱石単位量当たりの金含有量は少ないものの、総量が多くなることがある。





金鉱石
金は地球全体の地殻内に広く分布して存在しており、存在比は0.003 g/1000 kg程度 (0.003 ppm) である。熱水鉱床は変成岩と火成岩のなかに生成する。

金鉱床は銀、銅や水銀、硫化鉄、テルルなどのレアメタル、砒素を同時に産出することが多い。銀やレアメタルは鉱山の収益を補えるが、脈石となる水銀や砒素はそのまま廃棄されると公害の原因になり、公害対策や公害処理の費用のために逆に収益に影響を及ぼすことがある。

鉱床は風化や浸食されていることもあり、その場合、金は砂金として小河などに流されるが比重が大きいために沈殿しやすく、重い鉱物の漂砂鉱床や砂鉱床に集まっている。もう一つ重要な鉱床は堆積頁岩または石灰岩の鉱脈で、これはまばらに単体の金がプラチナなどの金属とともに散在する形で存在する。

また、海水中にも金は含まれており、その割合は1000 kgあたり0.1 - 2 μg (1×10−4 - 2×10−3 ppb) 程度である。

金鉱山[編集]





オーストラリア、ビクトリアにある金鉱山の入り口
経済的に金鉱山と言える物は平均して1000 kgあたり0.5 gの金を産出する必要がある。典型的な鉱山では、露天掘りで1 - 5 g/1000 kg (1 - 5 ppm)、通常の鉱山で3 g/1000 kg (3 ppm) 程度である。人間の目で見て金と分るには鉱脈型の鉱床で少なくとも30 g/1000 kg (30 ppm) 程度の濃度が必要で、それ以下の金鉱石では鉱石内に金があることを人間の目で見分けることはほとんどできない。

沖積層の鉱床では砂鉱床採掘が用いられ、堅い岩の鉱脈では金属抽出が用いられる。金の精製を完了するには塩素処理または電解精錬を用いる。海水中には前述の通り金が含まれているが、2005年現在採算の取れる抽出方法は見つかっていない。

1880年代から南アフリカが金産出の2/3を占めていたが、2004年時点では1/3まで比率が低下した。ヨハネスブルグが世界で最も多くの金を産出する都市と言われている。オレンジ自由州とトランスバール州にある金鉱山は世界で最も深く掘られた鉱山となっている。1899年から1901年までのボーア戦争はイギリスとボーアの鉱山労働者の権利と、南アフリカの金の所有権に関する争いである。その他の主な金の産出地としてはロシア、カナダ、アメリカ、オーストラリア西部にある。

日本ではかつて、比較的多く金が産出した。マルコ・ポーロの東方見聞録などで「黄金の国」と呼ばれていたのも、日本産の金が出回っていたからである。

戦国期には甲斐国において黒川金山や湯之奥金山が稼業し、金山衆により採掘された金鉱石を粉成、精錬し金生産を行なっていたと考えられている。

しかしながら、江戸時代前期、すなわち寛永年間以降は国産の金山は徐々に衰え始めた。たとえば有名な佐渡金山もすでに採掘をやめ、現在は観光地化している。大正・昭和初期の頃には東洋一の金山と言われた北海道の鴻之舞金山は採算ベースに乗る金を全て掘り尽くし1973年(昭和48年)に閉山。現在では、辛うじて1985年(昭和60年)から菱刈鉱山が採掘されるなどのみである。この一方、現在海底の熱水鉱床からの産出が将来的に期待されている。

産出国[編集]

2009年の金産出国ランキング上位10カ国は下記のとおり。数値は産出量(トン)、世界シェア(出典: 二宮書店『地理統計要覧 2012年版』)。南アフリカ共和国では、Witwatersrand 地方に先カンブリア時代に形成された鉱山が集中している。金鉱床は約400kmに及ぶ露頭に沿っている。金の生産は安定しており、年度ごとの増減は少ない[10]。南アフリカ共和国での電気供給不安などのサプライ懸念がある上に、新規の鉱山開発などが年々難しくなっており、実際に過去10年の供給量は微減しているとも言われる(ワールドゴールドカウンシル発表)。
1.中華人民共和国 320 (13.1 %)
2.アメリカ合衆国 223 (9.1 %)
3.オーストラリア 222 (9.1 %)
4.南アフリカ共和国 198 (8.1 %)
5.ロシア 191 (7.8 %)
6.ペルー 182 (7.4 %)
7.インドネシア 130 (5.3 %)
8.カナダ 97 (4.0 %)
9.ウズベキスタン 90 (3.7 %)
10.ガーナ 86 (3.5 %)
世界合計 2,450
化合物と同素体[編集]

塩化金(III) (AuCl3) とテトラクロロ金(III)酸(塩化金酸)(HAuCl4) は最も有名な金化合物の一つである。金を含む化合物は多くの場合、金原子は+1または+3の酸化状態として存在する。金イオンは1価、3価ともに軟らかい酸であり、軟らかい塩基と錯体を形成しやすい。またフッ素との反応では+5価の酸化状態もとり、フッ化金(V) (AuF5) を形成する。さらに金疹とよばれる Au− のアニオンを含む CsAu や RbAu、およびテトラメチルアンモニウム金 (CH3)4N+ Au−) のような化合物を形成する。これは水素化ナトリウムにおけるヒドリドのように、主に非金属元素がとる-1価と同形式のものである。

これまで合成された金の化合物の種類は同族の銀や銅とくらべると少ない。下記に主な化合物を列挙する。
テトラクロロ金(III)酸 (H[AuCl4])(金は王水に溶けて AuCl4− イオンを作る)
ハロゲン化金(フッ化金、塩化金、臭化金、ヨウ化金)(AuX, AuX3)
カルコゲン化金(酸化金、硫化金、セレン化金、テルル化金)(Au2X, Au2X3)
ジシアノ金(I)酸カリウム (K[Au(CN)2])
雷金 (Au2O3・nNH3) - イミドあるいはアミド基を含む爆発しやすい緑色または黄褐色の粉末である。
水酸化金(III) (Au(OH)3)

同位体[編集]

詳細は「金の同位体」を参照

毒性[編集]

単体の金は化学的反応性が低い金属であるが、必須ミネラルであるカルシウムやカリウム、鉄等と異なり健康な人体には必須な元素ではないとされている。金イオンは安定な単体の金(0)とは異なり酸化力が強く、無機金塩類は毒物及び劇物取締法等により劇物に指定されている。また、一部の有機金塩類は自己免疫疾患を抑えるのに有効であり、日本ではリウマチ性関節炎に有効な治療薬(ミオクリシン、オーラノフィン等)が医療保険適用として薬価収載されている。金剤によるリウマチ治療は「クリソテラピー」と呼ばれる。

金をイオン化するには王水(濃塩酸と濃硝酸とを3:1の混合液)に金を溶かすのが最も有名な反応である。このイオン化状態の金は安定な単体の金(0)とはまったく異なり強力な酸化力がある。金による中毒(金中毒)としては接触皮膚炎、接触アレルギーがあげられる。これらは単体の金の装飾品を皮膚につけることによって起こるものであるが、装飾品から溶解した微量金イオンに対してアレルギーが形成された人のみに見られる。金化合物によるアレルギーとしては腎臓障害・肝臓障害・貧血等がみられる。

金中毒の解毒剤としてはジメルカプロール (HSCH2CHSHCH2OH) が使われる。ジメルカプロールは金と安定な錯体を形成して、速やかに体外に除去する働きをもつ。

金イオンは人間に限らず、ほとんどの生物に対して毒性を示す。しかし、一部の真正細菌は金イオンに対して耐性を示す。デルフチア・アシドボランスは、自身が出す代謝物で金イオンから自身を保護し、金イオンを無害な金の単体に変える能力を持つ[11]。

金の地上在庫[編集]

イギリスの GFMS の統計によれば2009年末時点で総量は165,600トンである(金の地上在庫とはこれまでに採掘され精製加工された金の総量のこと)。
(参考)主要各国の保有量[12]アメリカ合衆国[13]:8134トン(外貨準備に占める割合は78.2 %)
ドイツ:3413トン(同66.3 %)
フランス:2541トン(同59.4 %)
イタリア:2452トン(同68.1 %)
スイス:1064トン(同39.8 %)
日本:765トン(同2.1 %)
オランダ:621トン(同61.2 %)
中国:600トン(同1 %)
インド:358トン(同3.3 %)

日本にある金の総量[編集]

2008年1月現在、日本に「地上資源」ないし「都市鉱山」として存在する金は約6800トンで、これは全世界の金の現有埋蔵量の約16 %にも及ぶ量である[14]。

金に関連する作品[編集]
ドキュメンタリー『NHKスペシャル 宇宙 未知への大紀行』 第5集『150億年の遺産 〜生命に刻まれた星の生と死〜』 (NHK) - 超新星爆発、星の誕生といった天文現象と金の元素生成との関連について解説。
映画『007 ゴールドフィンガー』
映画『秘境』
ミダース#神話(イソップ寓話の一篇としても知られる)

脚注[編集]

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1.^ 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、322頁。ISBN 4-06-257192-7。
2.^ a b c d e ゴールド・デマンド・トレンド 2012年第2四半期 World Gold Council
3.^ T. Ishida, M. Haruta, Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 7154.
4.^ 2004年にN・M・ロスチャイルド&サンズから会員権譲受。
5.^ 1992年のミッドランド銀行 Midland Bank(現 HSBC バンク HSBC Bank plc)買収に際し、同行系列にあったサミュエル・モンタギュー・アンド・カンパニーを傘下に収める。
6.^ モカッタ&ゴールドスミドはハンブロス・バンク Hambros Bank(現在はソシエテ・ジェネラル傘下)、スタンダードチャータード銀行と親会社の変遷を経て1997年にスコシアバンク傘下に入った。
7.^ ピクスリー&アベルとシャープス・ウィルキンズは1966年に合併してシャープス&ピクスリーとなり、2001年にドイツ銀行傘下に入った。
8.^ シャープス&ピクスリー発足により空席となった会員権はジョンソン・マッセイ Johnson Matthey、クレディ・スイス・ファースト・ボストンを経てソシエテ・ジェネラルに移った。
9.^ Weblio辞書 新語時事用語辞典
10.^ 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (World Metal Statistics) PDF
11.^ Gold biomineralization by a metallophore from a gold-associated microbe Nature Chemical Biology
12.^ 朝倉慶 『恐慌第2幕 – 世界は悪性インフレの地獄に堕ちる』 ゴマブックス 2009年
13.^ 1999年5月の上院銀行委員会で、当時の FRB 議長であったグリーンスパンは「金(ゴールド)の、売却はいたしません。ゴールドは究極の通貨だからです」と述べている。
14.^ (物質・材料研究機構「わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵」)
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触媒

触媒(しょくばい)とは、特定の化学反応の反応速度を速める物質で、自身は反応の前後で変化しないものをいう[1]。また、反応によって消費されても、反応の完了と同時に再生し、変化していないように見えるものも触媒とされる。「触媒」という用語は明治の化学者が英語の catalyser、ドイツ語の Katalysator を翻訳したものである[2]。今日では、触媒は英語では catalyst[1]、触媒の作用を catalysis[3] という。

今日では反応の種類に応じて多くの種類の触媒が開発されている。特に化学工業や有機化学では欠くことができない。また、生物にとっては酵素が重要な触媒としてはたらいている。



目次 [非表示]
1 解説
2 機構
3 種類 3.1 均一系触媒
3.2 不均一系触媒
3.3 生体触媒

4 有名な触媒反応
5 身近なところで使用されている触媒反応の例
6 脚注
7 関連項目


解説[編集]

1823年にドイツの化学者であるヨハン・デーベライナーは、白金のかけらに水素を吹き付けると点火することに気がついた。白金は消耗せず、その存在によって水素と空気中の酸素とを反応させることを明確にした。スウェーデンの化学者であるイェンス・ベルセリウスは、この白金の作用と同じ原因が他の化学反応や生物体の中にも広く存在するとし、καταλυω(私は壊す)から導いて「katalytische Kraft(触媒力)」と名付けた[4]。

触媒は反応の速度を増加させる。適切な触媒を用いれば、通常では反応に参加しないような活性の低い分子(例えば水素分子)を反応させることができる。しかし原系(反応基質側)や生成系(生成物側)の化学ポテンシャルを変化させないため、反応の進行する方向(化学平衡)を変えることはない。すなわち自発的に進行する方向に反応の速度を増加させる働きを持つ。言い換えれば、自発的に起こり得ない方向への反応は触媒を用いても進行しない。例えば、室温において水素と酸素から水が生成する反応は、反応前後でのギブズ自由エネルギー変化 ΔG < 0 であるため自発的に進行し、白金触媒を用いると反応速度を増加させることができる。一方、水が水素と酸素に分解する反応は室温では ΔG > 0 であるため、どのような触媒を用いても自発的には進行しない。 ΔG > 0 となる反応を進行させるには生成物を連続的に系外に排出するか、外部から電気や光などのエネルギーを与える必要があり、場合によっては電極触媒や光触媒を利用して反応速度を向上させる(記事 化学ポテンシャルに詳しい)。

触媒の良否は目的物質の収率や鏡像体過剰率で判断され、これらの率が 100% に近いほど良い触媒とされる。また副生成物の種類や量も重要なファクターになる場合もある。触媒活性と耐久性は、ターンオーバー数 (TON)、そして単位時間当たりのTON (= TOF)、そしてその活性を維持した時間や使用回数で評価でき、これらが高い触媒ほど優れている。また、反応設計の良否として、原子効率が高いこと、反応条件が穏和であること、後処理において生成物の分離が容易であること、反応全体の環境負荷が低いこと、なども評価基準となる。

機構[編集]





炭酸脱水酵素が触媒する反応のエネルギーダイヤグラム。触媒は反応に必要な活性化エネルギーを減少させる。
触媒は反応物と反応中間体を形成することで、反応に必要とされる活性化エネルギーの低い別の反応経路を生み出す。例えば水素分子 H2 は強い H−H 結合を持つため反応性に乏しいが、水素化や燃料電池の触媒となる白金の表面では水素分子よりも遥かに反応性の高い H・種を形成する。これにより、触媒が存在しない場合よりも著しく高速に反応が進行する。

また、反応を早くするだけではなく、複数の反応が起こりうる状態において、目的とする物質を選択的に得るために触媒を用いる場合も多い。触媒は特定の反応のみ高速化させるためである。例えば一酸化炭素 (CO) を水素化する場合、用いる触媒により主生成物をメタン(ルテニウム触媒)、エタンなどの直鎖アルカン(コバルト触媒(FT合成))、メタノール(銅触媒)など変化させることができる。また、光学活性体の合成を行う場合には、不斉源となる BINAP やサレン錯体などの触媒を用いることにより立体選択性を発現させる。2001年のノーベル化学賞が金属錯体触媒を用いた不斉合成に授与されたように、その重要性はきわめて高く評価されている。

触媒は、物質表面の特定の部位、あるいは分子上の特定の位置(活性サイト)に、反応させたい物質が吸着・配位することで効果を発揮する。このため、目的とする物質よりも吸着・配位力が強い物質が共存すると、触媒の活性サイトが消失し、効果が著しく弱められる。このような物質を触媒毒という[5]。

触媒とは反対に、存在によってある化学反応を遅らせる物質を、かつては負触媒(逆触媒)と呼んだ。しかし、負触媒自体が化学反応によって構造変化することなど、一般的な触媒の性質とは異なることから、現在では負触媒という用語は推奨されず、単に阻害剤と呼ばれる[6]。

種類[編集]

触媒は目的の反応によって多くの種類が開発されている。状態での分類としては、溶液に溶かして用いる均一系触媒 (homogeneous catalyst) と、固相のままで用いる不均一系触媒 (heterogeneous -) に分類される。例えば、洗剤に配合されているタンパク質を分解するための酵素は前者、過酸化水素水を酸素と水へ分解する二酸化マンガンは後者である。均一系触媒は有機合成で比較的多く用いられ、不均一系触媒は化学工業で用いられることが多い。

化学・工業で用いられる触媒はほとんどが人工的に作られた物質であるが、生体内で進行する化学反応を触媒する物質も多く存在し、まとめて生体触媒と呼ぶ。生体触媒で最も重要なものはタンパク質を母体とする酵素であるが、生命の起源においてはRNAの触媒(リボザイム)が極めて重要な役割を果たしていたと言われている。また、抗体を触媒として利用した抗体触媒の研究も、1990年代から盛んに行われている。

均一系触媒[編集]

均一系触媒には、適当な酸や塩基を触媒(酸触媒、塩基触媒)とするものや、金属錯体を利用するもの(錯体触媒)がある。金属錯体では配位子を替えることなどによって反応性の制御が可能である。例えば、カルボン酸とアルコールのエステル化反応には酸触媒が有効である。酸としては硫酸などの H+ を放出するブレンステッド酸を用いる場合が多いが、不斉反応などでは金属錯体などのルイス酸を使うことも多い。

また多核金属酸化物(アニオン)であるポリオキソメタレート(ヘテロポリ酸)も構造制御が可能であり、反応性を制御できる。有機金属錯体は一般に酸化雰囲気および熱に弱いが、多くのポリオキソメタレートはそれらに対し高い安定性を有している。

不均一系触媒[編集]

化学工業など、基礎的な化学物質を大量に生産する施設では、気相での固定床もしくは流動床流通式反応装置がしばしば用いられること、液相反応においても生成物の分離回収が容易であること、一般に錯体触媒よりも耐久性が高いなどの理由から、不均一系触媒が多く用いられている。不均一系触媒は、白金やパラジウム、酸化鉄のような単純な物質から、それらを担持したもの(後述)、ゼオライトのような複雑な構造の無機化合物、あるいは金属錯体を固定化したものなど、多種多様である。

多くの場合、反応は不均一系触媒の表面で進行する。したがって、触媒の効率を良くするためには、表面積を大きくすることが重要となる。このため、高価な金属(白金、パラジウムなど)を触媒として用いる場合は、1–100 nm 程度の微粒子にして活性炭やシリカゲルなど(担体という)の表面に分散させ(担持し)て使用する。金属錯体触媒を表面に固定化する場合には、担体の表面官能基をアンカーにして化学結合させる場合が多い。担体は単に活性成分を微粒子化(高表面積化)するだけでなく、触媒活性にも多大な影響を与える場合がある。そのため、適切な担体との組み合わせが必要である。

具体例として、自動車には排気ガスに含まれる HC(炭化水素)、CO、NOxを分解・浄化するために白金、パラジウム、ロジウムもしくはイリジウムを主成分とする三元触媒が不均一系触媒として使用されている。

生体触媒[編集]

生体中で触媒として機能するタンパク質を酵素という。酵素を使った反応は水中で行えるため有機溶媒の使用を減らすことができ、また室温付近で作用し、しばしば人工的には困難な反応に高い選択性を示すことから、環境負荷の低い触媒として期待されている。実際にブタの肝臓などから得られる酵素は工業的にも生体触媒として利用されている。

有名な触媒反応[編集]

新しい触媒が開発されると、社会的にも非常に大きな影響を与えることがある。
ハーバー・ボッシュ法 - 史上初めて人工的に窒素をアンモニアへと変換した反応。二重促進鉄触媒を用いる。1918年ノーベル化学賞。
チーグラー・ナッタ触媒 - ポリエチレンなど、優れた特性を持つ高分子の生産を可能とした。チタン錯体を触媒とする。1963年ノーベル化学賞。
メタセシス反応 - 有機合成で極めて多用される、2つのオレフィンの結合を組み替える反応。ルテニウムを中心とするグラブス触媒が用いられる。2005年ノーベル化学賞。
クロスカップリング反応 - 炭素-炭素結合を作るうえで欠かせない反応。辻二郎によるパラジウムを用いた炭素-炭素結合形成反応の発見を契機に、多くの日本人化学者が関与した。鈴木・宮浦カップリング、右田・小杉・スティルカップリング、根岸カップリングなど、パラジウム錯体の用例が多い。2010年ノーベル化学賞。
不斉反応 - 対掌体の一方のみを選択的に得る。金属錯体を中心に、数々の触媒が開発されている。2001年ノーベル化学賞。
燃料電池 - 水素やメタノールを燃料として発電する装置。固体高分子型燃料電池 (PEFC) は室温付近の温和な条件で機能するが、2006年現在では、電極触媒として高価かつ資源量の少ない白金やCO耐性のある白金ルテニウム合金を使用しないと高い電力を取り出すことができず、普及には貴金属使用量の劇的な削減が必要である。

身近なところで使用されている触媒反応の例[編集]

全ての石油製品は触媒反応により合成されていると言っても過言ではないが、身近なところでは、以下のものが広く利用されている。
自動車の三元触媒 - 先述の不均一系触媒の節を参照。
プラチナ(白金)を触媒とし、炭化水素燃料との反応熱を利用するカイロ。廃棄物を出さない触媒反応カイロは近年見直されつつある。
発酵 - 微生物は数々の触媒(酵素)反応を組み合わせて、糖からアルコールや乳酸を合成する。

脚注[編集]

1.^ a b IUPAC (2012-03-23). “catalyst”. Compendium of Chemical Terminology (the Gold Book) (2nd ed.). Oxford: Blackwell Scientific Publications. doi:10.1351/goldbook.C00876. ISBN 0-9678550-9-8.
2.^ 尾崎萃. “「触媒」の名付け親は誰か”. 2012年7月12日閲覧。
3.^ IUPAC (2012-03-23). “catalysis”. Compendium of Chemical Terminology (the Gold Book) (2nd ed.). Oxford: Blackwell Scientific Publications. doi:10.1351/goldbook.C00874. ISBN 0-9678550-9-8.
4.^ ベルセリウス著(田中豊助、原田紀子訳)「化学の教科書」p145、内田老鶴圃、ISBN 4-7536-3108-7
5.^ IUPAC (2012-03-23). “poison in catalysis”. Compendium of Chemical Terminology (the Gold Book) (2nd ed.). Oxford: Blackwell Scientific Publications. doi:10.1351/goldbook.P04706. ISBN 0-9678550-9-8.
6.^ IUPAC (2012-03-23). “inhibitor”. Compendium of Chemical Terminology (the Gold Book) (2nd ed.). Oxford: Blackwell Scientific Publications. doi:10.1351/goldbook.I03035. ISBN 0-9678550-9-8.

白金

白金(はっきん、羅: platinum[1])は原子番号78の元素。元素記号は Pt。白金族元素の一つ。

学術用語としては白金が正しいが、現代日本の日常語においてはプラチナと呼ばれることも多い。ただしホワイトゴールドは異なる合金である。

単体では、白い光沢(銀色)を持つ金属として存在する。化学的に非常に安定であるため、装飾品に多く利用される一方、触媒としても自動車の排気ガスの浄化をはじめ多方面で使用されている。酸に対して強い耐食性を示し、金と同じく王水以外には溶けないことで知られている。



目次 [非表示]
1 歴史
2 用途
3 産出 3.1 鉱山
3.2 白金鉱石

4 同位体
5 その他 5.1 純度(品位)
5.2 表記による誤解
5.3 和名
5.4 宝飾品の刻印
5.5 国際キログラム原器

6 関連項目
7 外部リンク
8 脚注


歴史[編集]

古くは古代エジプト第18王朝時代にファラオの装身具としてわずかながら利用されていた。

現存する最古の白金製品は、ルーブル美術館収蔵の、通称「テーベの小箱」である。これはエジプトのテーベにある女性神官シェペヌペットの墓から出土した小箱で、紀元前720年から紀元前659年頃のものと思われる。

また、10世紀頃には、南米でも装身具として利用されていた。これは純度80 %以上もあるもので、当時すでに高度な精錬技術があったことを示す。

ただ合金状のものでも融点まで加熱するのは当時の技術水準では不可能であったが、貴金属ゆえに酸素では酸化されない性質を利用し粉末状・粒状のものを現在の粉末冶金などと呼ばれる方法で成型していたものと考えられている。

スペイン人による南米への侵略の際に、当時ヨーロッパで珍重されていた銀と勘違いされて略奪され持ち帰られた。しかし、銀よりも融点が高い白金は銀用の加工設備では溶かすことができず、大量に廃棄された。

スペインの軍人、探検家、天文学者であるアントニョ・デ・ウリョーアが、フランス科学アカデミーによる子午線弧長の測量隊の一員として1735年にホルヘ・フワン (Jorge Juan y Santacilia) とともにペルーに渡り、1736年から1744年まで南米に留まっていた。この間に、コロンビアのピント川河畔で銀に似た白い金属を発見し、本国に帰国後、1748年にフワンとの共著として『南米諸王国紀行』を出版した際に、白金鉱石について記述している。これが白金の「再発見」となった。スペイン人達は、これを「ピント川の小さな銀 (platina del Pinto)」と呼び、これが元素名 platinum の語源となっている[2]。

これまでに人類によって産出された白金の総量は約4,000トン、体積にして約200m3(一辺が約6メートルの立方体)ほどである。稀少な貴金属なため、「プラチナチケット」のように入手しにくい、貴重なもののたとえに使われることもある。

用途[編集]

宝飾品として利用されるほか、化学的に極めて安定しており酸化されにくいこと、融点が1,769 °C(理化学辞典)と高いことなどから、電極、るつぼ、白金耳、度量衡原器(キログラム原器、メートル原器)などに利用されている。

また触媒として高い活性を持ち、自動車には排気ガスの浄化触媒として多くの量が使用されており[3]、さらにはその高い耐久性により同じく自動車の点火プラグや排気センサーなど過酷な環境に晒される部品にも多用される。その他では化学工業でも水素化反応の触媒などとして利用されるほか、燃料電池への利用も盛んに行われている。なじみ深い所では ハクキンカイロの発熱装置としても利用されている。

白金の電気抵抗と温度との関係を使い、白金抵抗温度計に使われている。13.81 - 1234.93 Kまでの範囲で標準温度計として利用されている。

また、白金磁石など磁性体の材料としても有名である。マンガンとの合金は GMR(巨大磁気抵抗効果)が磁気記録ヘッドに用いられているほか、鉄やコバルトとの合金は、L10 規則相において非常に強い結晶磁気異方性を示す。

医療分野においてはアンモニウムイオンおよび塩化物イオンとの化合物であるcis-ジクロロジアンミン白金 (cis-[Pt(NH3)2Cl2]) がシスプラチンの名で抗ガン剤 として広く用いられている[3]。

産出[編集]

主な産出国は南アフリカ共和国、ロシアである。南アフリカに偏在している。レアメタルのなかでも特に稀少で、地殻1トンあたり0.001 gの産出である。1 kgあたりの価格は5.2万ドル(2010年)。

白金はパラジウム (Pd) やロジウム (Rh) といった白金と化学的な性質の似た元素と一緒に鉱石に含まれている。これらの元素は白金を含めた6元素で「白金族元素」と呼ばれる。(白金 Pt、パラジウム Pd、ロジウム Rh、ルテニウム Ru、イリジウム Ir、オスミウム Os)

南アフリカのブッシュフェルトには、東西400 km、南北300 kmの広大な岩体がある。その中に、白金族を多く含む厚さ数十cmの地層が見つかっている。この地層には、白金族元素の中でも白金とロジウムが多く含まれている[4]。

日本でも僅かであるが埋蔵されていることが確認されている。北海道の天塩川、石狩川の川砂中で認められた(砂白金の項を参照)他、新潟県で発見されている。

2004年の白金産出国ランキング上位6か国は下記のとおり。数値は産出量 (kg)、世界シェア(出典:アメリカ合衆国内務省「ミネラル・イヤーブック2004」)。
1.南アフリカ共和国 160,013 (74.8 %)
2.ロシア 36,000 (16.8 %)
3.カナダ 7,000 (3.3 %)
4.ジンバブエ 4,438 (2.1 %)
5.アメリカ合衆国 4,040 (1.9 %)
6.コロンビア 1,400 (0.7 %)

(世界産出計 214,000 kg)

鉱山[編集]
ブッシュフェルト (南アフリカ)
ウラル (ロシア)
ノリルスク・タルナフ (ロシア)
スティルウォーター (アメリカ)
サドベリー (カナダ)
グレートダイク (ジンバブエ)
マムート (マレーシア)
オケテディ (パプアニューギニア)
ポルティモ (フィンランド)
クッファーシーファ (ポーランド)
ブレグイビベス (アルバニア)
チョコ (コロンビア)
カショエイラ鉱山 (ブラジル)

白金鉱石[編集]

白金鉱石を構成する鉱石鉱物には、次のようなものがある。
自然白金 (Pt)
砒白金鉱 (PtAs2)

同位体[編集]

詳細は「白金の同位体」を参照

その他[編集]

純度(品位)[編集]

ISO9202, JIS H6309 により、金、銀、パラジウム同様、ジュエリー用白金合金の純度(品位)は、千分率‰(パーミル)で表記する。この規格には Pt950, Pt900, Pt850 の3区分がある。日本国内では、宝飾品として販売される白金(合金)の品位は、上記のほか、Pt999(最低値をあらわすので999が正しい。2012年4月から造幣局も1000を999に変更) を加えた4区分が一般的である。ISO および一般社団法人日本ジュエリー協会は、プラチナジュエリーと呼称できるのは、Pt850 以上とさだめている。また、造幣局の品位証明区分もこの4区分を採用している。

しかし、地金価格高騰の影響を受け、実際には、K18 の品位にあたる Pt750、K14 にあたる Pt585、さらに Pt505 製品が市場に供給され、議論を巻き起こしている。これは、海外でも同じ傾向である。物品税(貴金属製品とされる Pt700 以上は15 %課税)撤廃までは、少ないが Pt700 以下の製品も製造されていた。白金合金の品位の定義は千分率だが、他の金属などの百分率と混同されることがあり、この錯誤を意図的に誘発させる詐欺的な Pt100 製品もあるので注意が必要である。

表記による誤解[編集]

「白金」の表記は「白い金」と解釈されてしまう事、また英語に逐字訳すると「ホワイトゴールド」 (white gold) となることなどから、白金=ホワイトゴールドとされる事がよくあるが、これは誤りである。ホワイトゴールドは金をベースとした合金であり、本項で言及している白金とは全く異なる金属である。

和名[編集]

プラチナの和名「白金」は、江戸時代の蘭学者、宇田川榕庵(ようあん)が著した化学書「遠西医方名物考補遺巻八」(えんせいいほうみょうぶつこうほい)に、白金(一種銀色の金属、原名プラチナ)の訳語があり、榕庵が命名し日本で最初に使われた用語と言われている。

宝飾品の刻印[編集]

宝飾品へ打刻される、素材などを表す略号に関しては、現在では元素記号と共通の Pt という表記が使われるが、以前は Pm という表示が用いられることがあった。一説に Platinum metal の略であったという。「プラチナを使用しています」というほどの意味で、Pm900 のように純度を表す数字を添えるケースが多い。ただし信憑性には欠けるとされる。

東南アジアなどでは「白金」と打刻されることもある。なお、「Pm」「白金」ともにパラジウムの意味でも使われ、パラジウムが主体のジュエリー類にそのように打刻されることもあるので、注意が必要である。

国際キログラム原器[編集]

キログラム(記号:kg)は、国際単位系 (SI) における質量の基本単位であり、「国際キログラム原器の質量」として定義されている。国際キログラム原器は化学的に安定な白金90 %、イリジウム10 %からなる合金で作られ、国際度量衡局に、二重の気密容器で真空中に保護された状態で保管されている(詳細は当該記事参照のこと)。

関連項目[編集]

ウィキメディア・コモンズには、白金に関連するメディアがあります。
白金族元素
パラジウム
砂白金
貴金属
白金ナノコロイド
プラチナ通り - 東京・白金付近を通る道路の愛称

外部リンク[編集]
国際化学物質安全性カード 白金 - 国立医薬品食品衛生研究所
プラチナナノコロイド、白金ナノコロイド - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)

脚注[編集]

1.^ http://www.encyclo.co.uk/webster2/search.php
2.^ スペイン語で「銀」は plata、これに縮小辞をつけたのが、プラチナの語源となった platina で、あえて意訳すれば“銀のようなもの”。物質名の慣例にあわせてこれをラテン語・中性名詞化したのが platinum で、英語などではこのまま借用している。これの複数形は規則的に platina で、偶然にも語源と同じ -a の形。ちなみにスペイン語における「プラチナ」は platinum を自国語化した platino であり、platina と呼ぶことはない。
3.^ a b 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、317〜318頁。ISBN 4-06-257192-7。
4.^ 「MCS2010」,アメリカ地質調査所(USGS)

イリジウム

イリジウム (英: iridium) は原子番号77の元素。元素記号は Ir。



目次 [非表示]
1 概要
2 用途
3 歴史
4 産出する場所・物質 4.1 産出国
4.2 鉱物
4.3 その他

5 地層に含まれるイリジウム
6 同位体
7 出典
8 関連項目


概要[編集]

白金族元素の一つ。貴金属、レアメタル(希少金属)として扱われている(地球の地殻中での濃度は0.001 ppm)。単体は銀白色の金属(遷移金属)で、比重は22.42、融点は2454 °C(異なる実験値あり)、沸点は4500 °C以上。常温、常圧で安定な結晶構造は面心立方構造 (FCC)。比重は全元素中二番目に大きい(最大はオスミウム)。酸、アルカリに不溶で、常温では王水にも溶けない(粉末にすればわずかに溶ける)。高温でフッ素、塩素と反応する。展延性に乏しく、加工も難しい。-1, 0, +2, +3, +4, +6価の原子価を取り得る。

用途[編集]

白金とイリジウムの合金は硬度が高く、キログラム原器、メートル原器の材料として使われている。耐熱性に優れていることから工業用のるつぼや自動車の点火プラグの電極、耐食性・耐摩耗性に優れていることから高級万年筆のペン先の材料として用いられている。また近年は、希少性の高さから、結婚指輪など宝飾品の材料として用いられることもある。

また人工的に作った放射性同位体のイリジウム192は、非破壊検査の際の線源として利用される。

歴史[編集]

1804年にオスミウムと共にテナント (S.Tennant) が発見した[3]。

「イリジウム」という名は、その塩類が、虹のように様々な色調を示す事から、ギリシャ神話の虹の女神イリスにちなんで名付けられた[3]。

産出する場所・物質[編集]

産出国[編集]
南アフリカ共和国

鉱物[編集]
自然イリジウム、(Ir,Os,Ru) (自然オスミウム)、(Os,Ir,Ru)
(自然ルテニウム)、(Ru,Ir,Os)

輝イリジウム鉱、IrAs2

その他[編集]
隕石
K-T境界層
北極の氷の中

地層に含まれるイリジウム[編集]

恐竜絶滅に関する議論で、白亜紀と第三紀の境界の地層中に大量のイリジウムを含んだ層がある。イリジウムは、地表では非常に少ない金属であるため、これは隕石または地殻の深部由来のものと判断され、そのことから隕石の衝突を示す証拠であると言及されることが多い。

同位体[編集]

詳細は「イリジウムの同位体」を参照

イリジウムの安定同位体は、191Irと193Irの2核種のみで、天然に存在するイリジウムの同位体は、この2種である。

出典[編集]

1.^ J. W. Arblaster: Densities of Osmium and Iridium, in: Platinum Metals Review, 1989, 33, 1, S. 14–16; Volltext.
2.^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds, in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
3.^ a b 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、314頁。ISBN 4-06-257192-7。

関連項目[編集]
ツングースカ大爆発 - 爆発地点でイリジウムが検出された。
K-T境界 - イリジウムを高濃度に含む地層が見つかっている。

オスミウム

オスミウム (英: osmium) は原子番号76の元素。元素記号は Os。白金族元素の一つ(貴金属でもある)。



目次 [非表示]
1 概要
2 歴史
3 素材としての利用
4 オスミウムの化合物
5 同位体
6 ギャラリー
7 出典
8 外部リンク


概要[編集]

青灰色の金属(遷移金属)で、比重は22.57、融点は3045 °C(2700 °Cという実験値もあり)。沸点は5000 °Cを越える。常温、常圧で安定な結晶構造は六方最密充填構造 (HCP)。比重は全元素中最も大きい(イリジウムは二番目)。

酸化数は+1〜+8価まで取り得る(+4価が最も安定)。白金族中では最も酸化され易い。高温でハロゲンと反応するが、王水にはあまり溶けない。レアメタル(希少金属)である。

粉末は空気中に放置または加熱すると猛毒の酸化オスミウム(VIII)を容易に生じる。

最も密度が高い元素である。[1]

歴史[編集]

1803年、イギリスのテナント (Smithson Tennant, 1761-1815) によって粗白金の王水溶解残留物から、イリジウムと共に発見された。加熱すると生じる四酸化オスミウムが特有の匂いを放つことからギリシャ語の οσμη (osmè、におい)にちなんで命名された。

素材としての利用[編集]

白金やイリジウムとの合金は硬く耐食性に優れていて、特に天然に産するイリジウムとの合金は、どちらの含有率が高いかによってオスミリジウムやイリドスミンと呼ばれる。万年筆のペン先に用いられ、日本では北海道に多く産する。また、酸化オスミウムと有機物が反応(還元)しオスミウム単体(黒色)を生成する性質を利用し指紋検出に用いられることがある。

オスミウムの化合物[編集]
酸化オスミウム(IV) (OsO2)
酸化オスミウム(VIII) (OsO4) - 触媒になるが有毒

同位体[編集]

詳細は「オスミウムの同位体」を参照

ギャラリー[編集]





特徴的な貫入三連双晶が観察できる人工結晶






人工結晶


出典[編集]

1.^ a b セオドア・グレイ『世界で一番美しい元素図鑑』武井摩利訳、創元社、2010年、177頁
2.^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds, in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.

外部リンク[編集]

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