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2014年02月13日

ジスプロシウム

移動: 案内、 検索




テルビウム ← ジスプロシウム → ホルミウム

-

Dy

Cf



Element 1: 水素 (H), 非金属

Element 2: ヘリウム (He), 希ガス


Element 3: リチウム (Li), アルカリ金属

Element 4: ベリリウム (Be), 卑金属

Element 5: ホウ素 (B), 金属

Element 6: 炭素 (C), 非金属

Element 7: 窒素 (N), 非金属

Element 8: 酸素 (O), 非金属

Element 9: フッ素 (F), ハロゲン

Element 10: ネオン (Ne), 希ガス


Element 11: ナトリウム (Na), アルカリ金属

Element 12: マグネシウム (Mg), 卑金属

Element 13: アルミニウム (Al), 卑金属

Element 14: ケイ素 (Si), 金属

Element 15: リン (P), 非金属

Element 16: 硫黄 (S), 非金属

Element 17: 塩素 (Cl), ハロゲン

Element 18: アルゴン (Ar), 希ガス


Element 19: カリウム (K), アルカリ金属

Element 20: カルシウム (Ca), アルカリ土類金属

Element 21: スカンジウム (Sc), 遷移金属

Element 22: チタン (Ti), 遷移金属

Element 23: バナジウム (V), 遷移金属

Element 24: クロム (Cr), 遷移金属

Element 25: マンガン (Mn), 遷移金属

Element 26: 鉄 (Fe), 遷移金属

Element 27: コバルト (Co), 遷移金属

Element 28: ニッケル (Ni), 遷移金属

Element 29: 銅 (Cu), 遷移金属

Element 30: 亜鉛 (Zn), 卑金属

Element 31: ガリウム (Ga), 卑金属

Element 32: ゲルマニウム (Ge), 金属

Element 33: ヒ素 (As), 金属

Element 34: セレン (Se), 非金属

Element 35: 臭素 (Br), ハロゲン

Element 36: クリプトン (Kr), 希ガス


Element 37: ルビジウム (Rb), アルカリ金属

Element 38: ストロンチウム (Sr), アルカリ土類金属

Element 39: イットリウム (Y), 遷移金属

Element 40: ジルコニウム (Zr), 遷移金属

Element 41: ニオブ (Nb), 遷移金属

Element 42: モリブデン (Mo), 遷移金属

Element 43: テクネチウム (Tc), 遷移金属

Element 44: ルテニウム (Ru), 遷移金属

Element 45: ロジウム (Rh), 遷移金属

Element 46: パラジウム (Pd), 遷移金属

Element 47: 銀 (Ag), 遷移金属

Element 48: カドミウム (Cd), 卑金属

Element 49: インジウム (In), 卑金属

Element 50: スズ (Sn), 卑金属

Element 51: アンチモン (Sb), 金属

Element 52: テルル (Te), 金属

Element 53: ヨウ素 (I), ハロゲン

Element 54: キセノン (Xe), 希ガス


Element 55: セシウム (Cs), アルカリ金属

Element 56: バリウム (Ba), アルカリ土類金属

Element 57: ランタン (La), ランタノイド

Element 58: セリウム (Ce), ランタノイド

Element 59: プラセオジム (Pr), ランタノイド

Element 60: ネオジム (Nd), ランタノイド

Element 61: プロメチウム (Pm), ランタノイド

Element 62: サマリウム (Sm), ランタノイド

Element 63: ユウロピウム (Eu), ランタノイド

Element 64: ガドリニウム (Gd), ランタノイド

Element 65: テルビウム (Tb), ランタノイド

Element 66: ジスプロシウム (Dy), ランタノイド

Element 67: ホルミウム (Ho), ランタノイド

Element 68: エルビウム (Er), ランタノイド

Element 69: ツリウム (Tm), ランタノイド

Element 70: イッテルビウム (Yb), ランタノイド

Element 71: ルテチウム (Lu), ランタノイド

Element 72: ハフニウム (Hf), 遷移金属

Element 73: タンタル (Ta), 遷移金属

Element 74: タングステン (W), 遷移金属

Element 75: レニウム (Re), 遷移金属

Element 76: オスミウム (Os), 遷移金属

Element 77: イリジウム (Ir), 遷移金属

Element 78: 白金 (Pt), 遷移金属

Element 79: 金 (Au), 遷移金属

Element 80: 水銀 (Hg), 卑金属

Element 81: タリウム (Tl), 卑金属

Element 82: 鉛 (Pb), 卑金属

Element 83: ビスマス (Bi), 卑金属

Element 84: ポロニウム (Po), 金属

Element 85: アスタチン (At), ハロゲン

Element 86: ラドン (Rn), 希ガス


Element 87: フランシウム (Fr), アルカリ金属

Element 88: ラジウム (Ra), アルカリ土類金属

Element 89: アクチニウム (Ac), アクチノイド

Element 90: トリウム (Th), アクチノイド

Element 91: プロトアクチニウム (Pa), アクチノイド

Element 92: ウラン (U), アクチノイド

Element 93: ネプツニウム (Np), アクチノイド

Element 94: プルトニウム (Pu), アクチノイド

Element 95: アメリシウム (Am), アクチノイド

Element 96: キュリウム (Cm), アクチノイド

Element 97: バークリウム (Bk), アクチノイド

Element 98: カリホルニウム (Cf), アクチノイド

Element 99: アインスタイニウム (Es), アクチノイド

Element 100: フェルミウム (Fm), アクチノイド

Element 101: メンデレビウム (Md), アクチノイド

Element 102: ノーベリウム (No), アクチノイド

Element 103: ローレンシウム (Lr), アクチノイド

Element 104: ラザホージウム (Rf), 遷移金属

Element 105: ドブニウム (Db), 遷移金属

Element 106: シーボーギウム (Sg), 遷移金属

Element 107: ボーリウム (Bh), 遷移金属

Element 108: ハッシウム (Hs), 遷移金属

Element 109: マイトネリウム (Mt), 遷移金属

Element 110: ダームスタチウム (Ds), 遷移金属

Element 111: レントゲニウム (Rg), 遷移金属

Element 112: コペルニシウム (Cn), 卑金属

Element 113: ウンウントリウム (Uut), 卑金属

Element 114: フレロビウム (Fl), 卑金属

Element 115: ウンウンペンチウム (Uup), 卑金属

Element 116: リバモリウム (Lv), 卑金属

Element 117: ウンウンセプチウム (Uus), ハロゲン

Element 118: ウンウンオクチウム (Uuo), 希ガス


Dysprosium has a hexagonal crystal structure



66Dy

周期表




外見

銀白色
Dy chips.jpg

一般特性


名称, 記号, 番号
ジスプロシウム, Dy, 66

分類
ランタノイド

族, 周期, ブロック
n/a, 6, f

原子量
162.500 g・mol-1

電子配置
[Xe] 4f10 6s2

電子殻
2, 8, 18, 28, 8, 2(画像)

物理特性



固体

密度 (室温付近)
8.540 g・cm-3

融点での液体密度
8.37 g・cm-3

融点
1680 K,1407 °C,2565 °F

沸点
2840 K,2562 °C,4653 °F

融解熱
11.06 kJ・mol-1

蒸発熱
280 kJ・mol-1

熱容量
(25 °C) 27.7 J・mol-1・K-1

蒸気圧


圧力(Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度 (K) 1378 1523 (1704) (1954) (2304) (2831)


原子特性


酸化数
3, 2(弱塩基性酸化物)

電気陰性度
1.22 (ポーリングの値)

イオン化エネルギー
第1: 573.0 kJ・mol-1
第2: 1130 kJ・mol-1
第3: 2200 kJ・mol-1

原子半径
178 pm

共有結合半径
192 ± 7 pm

その他


結晶構造
六方晶系

磁性
常磁性 (300 K)

電気抵抗率
(r.t.) (α, poly) 926 nΩ・m

熱伝導率
(300 K) 10.7 W・m-1・K-1

熱膨張率
(r.t.) (α, poly) 9.9 μm/(m・K)

音の伝わる速さ
(微細ロッド)
(20 °C) 2710 m/s

ヤング率
(α form) 61.4 GPa

剛性率
(α form) 24.7 GPa

体積弾性率
(α form) 40.5 GPa

ポアソン比
(α form) 0.247

ビッカース硬度
540 MPa

ブリネル硬度
500 MPa

CAS登録番号
7429-91-6

最安定同位体

詳細はジスプロシウムの同位体を参照


同位体

NA

半減期

DM

DE (MeV)

DP

154Dy syn 3.0 × 106 y α 2.947 150Gd
156Dy 0.06 % 1 × 1018 y α ? 152Gd
158Dy 0.10 % 中性子92個で安定
160Dy 2.34 % 中性子94個で安定
161Dy 18.91 % 中性子95個で安定
162Dy 25.51 % 中性子96個で安定
163Dy 24.90 % 中性子97個で安定
164Dy 28.18 % 中性子98個で安定


表示


ジスプロシウム (英: dysprosium、ディスプロシウムとも言うことあり) は原子番号66の元素。元素記号は Dy。希土類元素の一つ(ランタノイドにも属す)。きわめて偏在しており、現在99%が中国で産出されている。



目次 [非表示]
1 性質
2 用途
3 歴史
4 ジスプロシウムの化合物
5 同位体
6 参考文献


性質[編集]

銀白色の金属で、常温、常圧で安定な結晶構造は六方最密充填構造 (HCP)。比重は8.56、融点は1407 °C、沸点は2562 °C。

空気中で表面が酸化され、高温で燃焼して Dy2O3 となる。水にゆっくりと溶ける。酸に易溶。ハロゲンと反応する。安定な原子価は、4f9 の電子配置を取る+3価である。

低温では強磁性を示し、強磁性転移温度 TN は−188 °C (85 K) である。

用途[編集]

中性子吸収断面積が大きいので原子炉の制御用材料として利用される(→鉛または鉛、ガドリニウムとの合金)。光磁気ディスク(光メモリ)の材料や磁石、蓄光剤の添加剤としても利用される。他に伸縮合金にも使われる。また、ヨウ化ジスプロシウム(III)や臭化ジスプロシウム(III)といった塩は高輝度放電ランプの光の赤色領域の貴重なスペクトル線を出すのに使われている。

近年はネオジム磁石の保磁力を高めるための添加物としての利用が急増しており、安定供給の確保に懸念が生じているため、日本では経済産業省主導の「希少金属代替材料開発プロジェクト」で2011年度までに使用量を現状から30 %削減するための技術開発を目指すなどしている[1]。

歴史[編集]

1886年、ポール・ボアボードランによりホルミウム化合物から単離された[2]。単離は難しく大変な労力を要した。このため、ギリシャ語の「近づき難い」を意味する dysprositos が語源となった[2]。

2013年、当時の一大生産拠点であった中華人民共和国がレアアースの輸出制限を実施し、ジスプロシウムも価格が高騰。日本では対前年度比で10倍超となる3,500円/kgに迫る月も出た。翌年には1,000円/kg台へ下落したが、高騰を契機にジスプロシウムの使用量を抑えたモーターの製造などの技術革新が進んだ[3] 。

ジスプロシウムの化合物[編集]
DyB2C2

同位体[編集]

詳細は「ジスプロシウムの同位体」を参照

参考文献[編集]

1.^ 「希少金属代替材料開発プロジェクト」基本計画
2.^ a b 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、285頁。ISBN 4-06-257192-7。
3.^ “レアアース「想定外」の暴騰、一部3カ月で約4倍に−企業は対策急ぐ”. Bloombrg.co.jp (Bloombrg). (2011年8月29日) 2013年9月16日閲覧。

テルビウム

テルビウム (英: terbium) は原子番号65の元素。元素記号は Tb。スウェーデンの小さな町イッテルビー (Ytterby) にちなんで名づけられた。イッテルビーからは、テルビウムの他、イットリウム、イッテルビウム、エルビウムと合計四つの新元素が発見されている。これらの元素はいずれも、イッテルビー から名称の一部をとって命名された。希土類元素の一つ(ランタノイドにも属す)。



目次 [非表示]
1 性質
2 用途
3 テルビウムの化合物
4 同位体


性質[編集]

銀白色の金属で、常温、常圧で安定な結晶構造は六方最密充填構造 (HCP)。比重は8.25、融点は1356 °C、沸点は3123 °C(2750 °Cという実験値もあり)。

水にゆっくりと溶ける。酸に易溶。空気中で表面が酸化され、高温で燃えて Tb2O3、更に Tb4O7 となる。ハロゲンとも激しく反応する。原子価は+3、+4価で、4f8 の電子配置を取る淡紅色の+3価のイオン Tb3+ が安定である。水溶液中では+4価は不安定であり、Tb4O7 など高酸化状態のものを含む酸化物を酸に溶解すると酸素を発生して分解し、+3価に変化する。
4 Tb4+(aq) + 2 H2O = 4 Tb3+(aq) + 4 H+(aq) + O2
低温では強磁性を示し、キュリー温度 TN は-52 °C (221 K) である。

地殻中の存在量は希土類としては比較的少ない。ガドリン石、セル石、ゼノタイムなどに含まれる。

用途[編集]

テレビのブラウン管、水銀灯の蛍光体の材料に利用される。鉄-コバルト-テルビウム合金は光磁気ディスクの磁性膜の材料として、鉄-ジスプロシウム-テルビウム合金はプリンターの印字ヘッドに利用される。磁性ガラスには磁性を担う酸化テルビウムが添加される。

テルビウムの化合物[編集]
酸化テルビウム(III) (Tb2O3)
酸化テルビウム(III,IV) (Tb4O7)
テルビウムガリウムガーネット (Tb3Ga5O12)

同位体[編集]

詳細は「テルビウムの同位体」を参照

ユウロピウム (英: europium) は、原子番号63の元素である。元素記号は Eu。ヨーロッパにちなんで名づけられた。希土類元素の1つで、ランタノイドにも属する。

動: 案内、 検索




ユウロピウム ← ガドリニウム → テルビウム

-

Gd

Cm



Element 1: 水素 (H), 非金属

Element 2: ヘリウム (He), 希ガス


Element 3: リチウム (Li), アルカリ金属

Element 4: ベリリウム (Be), 卑金属

Element 5: ホウ素 (B), 金属

Element 6: 炭素 (C), 非金属

Element 7: 窒素 (N), 非金属

Element 8: 酸素 (O), 非金属

Element 9: フッ素 (F), ハロゲン

Element 10: ネオン (Ne), 希ガス


Element 11: ナトリウム (Na), アルカリ金属

Element 12: マグネシウム (Mg), 卑金属

Element 13: アルミニウム (Al), 卑金属

Element 14: ケイ素 (Si), 金属

Element 15: リン (P), 非金属

Element 16: 硫黄 (S), 非金属

Element 17: 塩素 (Cl), ハロゲン

Element 18: アルゴン (Ar), 希ガス


Element 19: カリウム (K), アルカリ金属

Element 20: カルシウム (Ca), アルカリ土類金属

Element 21: スカンジウム (Sc), 遷移金属

Element 22: チタン (Ti), 遷移金属

Element 23: バナジウム (V), 遷移金属

Element 24: クロム (Cr), 遷移金属

Element 25: マンガン (Mn), 遷移金属

Element 26: 鉄 (Fe), 遷移金属

Element 27: コバルト (Co), 遷移金属

Element 28: ニッケル (Ni), 遷移金属

Element 29: 銅 (Cu), 遷移金属

Element 30: 亜鉛 (Zn), 卑金属

Element 31: ガリウム (Ga), 卑金属

Element 32: ゲルマニウム (Ge), 金属

Element 33: ヒ素 (As), 金属

Element 34: セレン (Se), 非金属

Element 35: 臭素 (Br), ハロゲン

Element 36: クリプトン (Kr), 希ガス


Element 37: ルビジウム (Rb), アルカリ金属

Element 38: ストロンチウム (Sr), アルカリ土類金属

Element 39: イットリウム (Y), 遷移金属

Element 40: ジルコニウム (Zr), 遷移金属

Element 41: ニオブ (Nb), 遷移金属

Element 42: モリブデン (Mo), 遷移金属

Element 43: テクネチウム (Tc), 遷移金属

Element 44: ルテニウム (Ru), 遷移金属

Element 45: ロジウム (Rh), 遷移金属

Element 46: パラジウム (Pd), 遷移金属

Element 47: 銀 (Ag), 遷移金属

Element 48: カドミウム (Cd), 卑金属

Element 49: インジウム (In), 卑金属

Element 50: スズ (Sn), 卑金属

Element 51: アンチモン (Sb), 金属

Element 52: テルル (Te), 金属

Element 53: ヨウ素 (I), ハロゲン

Element 54: キセノン (Xe), 希ガス


Element 55: セシウム (Cs), アルカリ金属

Element 56: バリウム (Ba), アルカリ土類金属

Element 57: ランタン (La), ランタノイド

Element 58: セリウム (Ce), ランタノイド

Element 59: プラセオジム (Pr), ランタノイド

Element 60: ネオジム (Nd), ランタノイド

Element 61: プロメチウム (Pm), ランタノイド

Element 62: サマリウム (Sm), ランタノイド

Element 63: ユウロピウム (Eu), ランタノイド

Element 64: ガドリニウム (Gd), ランタノイド

Element 65: テルビウム (Tb), ランタノイド

Element 66: ジスプロシウム (Dy), ランタノイド

Element 67: ホルミウム (Ho), ランタノイド

Element 68: エルビウム (Er), ランタノイド

Element 69: ツリウム (Tm), ランタノイド

Element 70: イッテルビウム (Yb), ランタノイド

Element 71: ルテチウム (Lu), ランタノイド

Element 72: ハフニウム (Hf), 遷移金属

Element 73: タンタル (Ta), 遷移金属

Element 74: タングステン (W), 遷移金属

Element 75: レニウム (Re), 遷移金属

Element 76: オスミウム (Os), 遷移金属

Element 77: イリジウム (Ir), 遷移金属

Element 78: 白金 (Pt), 遷移金属

Element 79: 金 (Au), 遷移金属

Element 80: 水銀 (Hg), 卑金属

Element 81: タリウム (Tl), 卑金属

Element 82: 鉛 (Pb), 卑金属

Element 83: ビスマス (Bi), 卑金属

Element 84: ポロニウム (Po), 金属

Element 85: アスタチン (At), ハロゲン

Element 86: ラドン (Rn), 希ガス


Element 87: フランシウム (Fr), アルカリ金属

Element 88: ラジウム (Ra), アルカリ土類金属

Element 89: アクチニウム (Ac), アクチノイド

Element 90: トリウム (Th), アクチノイド

Element 91: プロトアクチニウム (Pa), アクチノイド

Element 92: ウラン (U), アクチノイド

Element 93: ネプツニウム (Np), アクチノイド

Element 94: プルトニウム (Pu), アクチノイド

Element 95: アメリシウム (Am), アクチノイド

Element 96: キュリウム (Cm), アクチノイド

Element 97: バークリウム (Bk), アクチノイド

Element 98: カリホルニウム (Cf), アクチノイド

Element 99: アインスタイニウム (Es), アクチノイド

Element 100: フェルミウム (Fm), アクチノイド

Element 101: メンデレビウム (Md), アクチノイド

Element 102: ノーベリウム (No), アクチノイド

Element 103: ローレンシウム (Lr), アクチノイド

Element 104: ラザホージウム (Rf), 遷移金属

Element 105: ドブニウム (Db), 遷移金属

Element 106: シーボーギウム (Sg), 遷移金属

Element 107: ボーリウム (Bh), 遷移金属

Element 108: ハッシウム (Hs), 遷移金属

Element 109: マイトネリウム (Mt), 遷移金属

Element 110: ダームスタチウム (Ds), 遷移金属

Element 111: レントゲニウム (Rg), 遷移金属

Element 112: コペルニシウム (Cn), 卑金属

Element 113: ウンウントリウム (Uut), 卑金属

Element 114: フレロビウム (Fl), 卑金属

Element 115: ウンウンペンチウム (Uup), 卑金属

Element 116: リバモリウム (Lv), 卑金属

Element 117: ウンウンセプチウム (Uus), ハロゲン

Element 118: ウンウンオクチウム (Uuo), 希ガス


Gadolinium has a hexagonal crystal structure



64Gd

周期表




外見

銀白色
Gadolinium-3.jpg

一般特性


名称, 記号, 番号
ガドリニウム, Gd, 64

分類
ランタノイド

族, 周期, ブロック
n/a, 6, f

原子量
157.25 g・mol-1

電子配置
[Xe] 4f7 5d1 6s2

電子殻
2, 8, 18, 25, 9, 2(画像)

物理特性



固体

密度 (室温付近)
7.90 g・cm-3

融点での液体密度
7.4 g・cm-3

融点
1585 K,1312 °C,2394 °F

沸点
3546 K,3273 °C,5923 °F

融解熱
10.05 kJ・mol-1

蒸発熱
301.3 kJ・mol-1

熱容量
(25 °C) 37.03 J・mol-1・K-1

蒸気圧(推定)


圧力(Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度 (K) 1836 2028 2267 2573 2976 3535


原子特性


酸化数
1, 2, 3(弱塩基性酸化物)

電気陰性度
1.20 (ポーリングの値)

イオン化エネルギー
第1: 593.4 kJ・mol-1
第2: 1170 kJ・mol-1
第3: 1990 kJ・mol-1

原子半径
180 pm

共有結合半径
196 ± 6 pm

その他


結晶構造
六方晶系

磁性
強磁性/常磁性
292 K で転移[1]

電気抵抗率
(r.t.) (α, poly) 1.310 μΩ・m

熱伝導率
(300 K) 10.6 W・m-1・K-1

熱膨張率
(100 °C) (α, poly) 9.4 μm/(m・K)

音の伝わる速さ
(微細ロッド)
(20 °C) 2680 m/s

ヤング率
(α form) 54.8 GPa

剛性率
(α form) 21.8 GPa

体積弾性率
(α form) 37.9 GPa

ポアソン比
(α form) 0.259

ビッカース硬度
570 MPa

CAS登録番号
7440-54-2

最安定同位体

詳細はガドリニウムの同位体を参照


同位体

NA

半減期

DM

DE (MeV)

DP

152Gd 0.20 % 1.08 × 1014 y α 2.205 148Sm
154Gd 2.18 % 中性子90個で安定
155Gd 14.80 % 中性子91個で安定
156Gd 20.47 % 中性子92個で安定
157Gd 15.65 % 中性子93個で安定
158Gd 24.84 % 中性子94個で安定
160Gd 21.86 % > 1.3 × 1021 y β-β- 1.7 160Dy


表示


ガドリニウム (英: gadolinium) は原子番号64の元素。元素記号は Gd。希土類元素の一つ(ランタノイドにも属す)。



目次 [非表示]
1 性質
2 歴史
3 ガドリニウムの化合物
4 同位体
5 出典


性質[編集]

銀白色(白色)の金属。常温、常圧で安定な結晶構造は、六方最密充填構造 (HCP)。比重は7.9、融点は1312 °C、沸点は約3000 °C。水にゆっくりと溶け、酸には易溶。安定な原子価は+3価。

ガドリニウムは、最大14個の電子が入る 4f 軌道が、占有可能な電子数の半分にあたる7個の電子で占有されており、7つの不対電子を持つ。そのため、7つの異なる軌道に合成スピン角運動量による磁気モーメントが最大となる。このことからガドリニウム錯体(Gd-DOTA 等)は磁性材料や MRI 検査用の造影剤に利用されている。

3価の陽イオン Gd3+ も 4f7 の球対称な電子配置を取るため、化合物中の原子価も無色の3価が唯一安定な状態となる。

室温以下で強磁性も示し、そのキュリー点は20 °C (292 K) である[1]。

また、ガドリニウムは中性子吸収断面積が非常に大きいので、原子炉の制御材料などに使われる。

歴史[編集]

ジャン・マリニャック (J.C.G.de Marignac) が1880年に発見[2]。語源は、ガドリニウムを分離した鉱石、イットリア鉱石の主成分イットリウムの発見者である、フィンランドの鉱物学者ヨハン・ガドリン (J.Gadolin, 1760-1852) から[2]。

ガドリニウムの化合物[編集]
酸化ガドリニウム(III) (Gd2O3) - ガドリニアとも呼ばれる
ガドリニウムガリウムガーネット (Gd3Ga5O12)

同位体[編集]

詳細は「ガドリニウムの同位体」を参照

153Gd は、X線吸光光度分析法や骨粗鬆症のための骨密度測定等のX線源として用いられる。

出典[編集]

1.^ a b Charles Kittel (1996). Introduction to Solid State Physics. New York: Wiley. p. 449.
2.^ a b 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、279頁。ISBN 4-06-257192-7。

ユウロピウム

ユウロピウム (英: europium) は、原子番号63の元素である。元素記号は Eu。ヨーロッパにちなんで名づけられた。希土類元素の1つで、ランタノイドにも属する。



目次 [非表示]
1 性質
2 用途
3 歴史
4 ユウロピウムの化合物
5 同位体
6 出典


性質[編集]

銀白色の金属。常温、常圧で安定な結晶構造は体心立方構造 (BCC) で、比重は5.24、融点は822 °C、沸点は1527 °C(融点、沸点とも異なる実験値あり)。希土類元素中でも反応性が高いことで知られ、単体は空気中で速やかに酸化され、水に対してはカルシウムと同程度の反応性を持つ。熱水、酸には易溶。アンモニア(液体)に溶ける。ハロゲン元素と反応し3価のハロゲン化物を生成する。

原子価は+2, +3価があり、一般的には3価のほうが安定で、無色の2価のイオンは水溶液中では酸化されやすく、淡桃色の3価のイオンになる。標準酸化還元電位は以下の通りである。


Eu3+(aq) + e- = Eu2+(aq) (E°= -0.35 V)

しかし希土類元素中では最も安定な2価状態をとり、硫酸ユウロピウム(II) EuSO4 が水に難溶性であるなど2価の化合物はストロンチウムに類似の性質を示す。このため自然界ではユウロピウムは斜長石などアルカリ土類金属を含む鉱物中に見出されることが多く、モナズ石など通常の希土類鉱物中の含有率は異常に少ない(ユウロピウム異常)。

用途[編集]

カルコゲン化ユウロピウムは磁性半導体として重要。なお、カルコゲンとは第16族元素のことである(酸素は除かれる場合がある)。

酸化イットリウム(III) Y2O3などに酸化ユウロピウム(III) Eu2O3 をドープした化合物はカラーテレビの発光面、3波長形蛍光灯の蛍光体などに使われている。青色発光ダイオードが製品化されてからは、Eu ドープのαサイアロンが青色の補色である黄色―琥珀色蛍光体として用いられ、白色ダイオードを実現するのに用いられている。

歴史[編集]

ウジェーヌ・ドマルセー (E.A.Demarçay) が1896年に発見し[2]、1901年に単離に成功した。

ユウロピウムの化合物[編集]

原子価は2価および3価のものがある。
酸化ユウロピウム(III) (Eu2O3)
酸化ユウロピウム(II) (EuO)
硫化ユウロピウム(II) (EuS)
セレン化ユウロピウム(II) (EuSe)
テルル化ユウロピウム(II) (EuTe)

同位体[編集]

詳細は「ユウロピウムの同位体」を参照

ユウロピウムの安定同位体は、153Euのみである。しかし、151Euは長い半減期を持った核種であるため、現在の地球において、151Euも天然に比較的まとまった量が存在している。

出典[編集]

1.^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds, in Lide, D. R., ed. (2005), CRC Handbook of Chemistry and Physics (86th ed.), Boca Raton (FL): CRC Press, ISBN 0-8493-0486-5
2.^ 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、277頁。ISBN 4-06-257192-7。

サマリウム

サマリウム (英: samarium) は原子番号62の元素。元素記号は Sm。希土類元素の一つ(ランタノイドにも属す)。単体は灰白色の軟らかい金属であり、空気中では徐々に酸化されて表面に酸化被膜を形成する。標準状態における安定構造は三方晶系。希土類元素の中では珍しく+2価の酸化状態を取る。最も安定な酸化物はSm2O3であり、常温で常磁性を示す。ハロゲンやホウ素、酸素族元素、窒素族元素などと化合物を形成し、多くの金属元素と合金を形成する。天然に存在するサマリウムは4つの安定同位体および3つの放射性同位体からなり、128 Bq / g の放射能を有する。

1879年にポール・ボアボードランによってサマルスキー石から発見され、鉱物名にちなんでサマリウムと名付けられた。サマルスキー石の鉱物名は鉱物の発見者であるワシーリー・サマルスキー=ビホヴェッツに由来しており、サマリウムは人名が元素名の由来となった初めての元素である。他の軽ランタノイドと共にモナズ石(モナザイト)に含まれ、地殻中における存在度は40番目。主にサマリウムコバルト磁石や触媒、化学試薬として利用され、放射性同位体は放射性医薬品などにも利用される。サマリウムは人体内における生物学的な役割を持たないが、溶解性のサマリウム塩類はわずかに毒性を示す。



目次 [非表示]
1 性質 1.1 物理的性質
1.2 化学的性質
1.3 同位体

2 化合物 2.1 酸化物
2.2 他のカルコゲナイド
2.3 ハロゲン化物
2.4 ホウ化物 2.4.1 六ホウ化サマリウム

2.5 他の無機化合物
2.6 有機金属化合物
2.7 サマリウム化合物の一覧

3 歴史
4 存在と生産
5 用途 5.1 非商業的、潜在的用途

6 生理作用
7 出典
8 参考文献
9 関連項目


性質[編集]

物理的性質[編集]

灰白色の軟らかい金属であり、比重は7.54。サマリウムのこの硬さおよび比重は亜鉛に類似している。融点は1072 °C、沸点は1800 °C(沸点は異なる実験値あり)。サマリウムの沸点は希土類元素の中でもイッテルビウム、ユウロピウムに次いで低いため、希土類鉱石からのサマリウムの単離を容易なものとしている。常温、常圧の安定構造は三方晶系(六回対称をもった三方配列の層が、ACACBCBAB のスタッキングで9層ずつ繰り返す構造)であり、これはα型と呼ばれる。731 °C以上に加熱すると六方最密充填 (hcp) となるが、この転移温度は金属の純度に依存する。さらに922 °Cまで加熱すると体心立方構造 (bcc) に転移する。40 kbarに加圧した状態で300 °Cまで加熱すると二重六方最密充填 (dhcp) となる。また、数百から数千 kbarに加圧していくことで一連の相変化を示し、特におよそ900 kbarにおいて正方晶系の相が現れる[2]。700 °Cから400 °Cまで急激に冷却する焼戻しを行うことによって、圧力を加えることなく二重六方最密充填の相を生じさせることができる。また、蒸着によって得られるサマリウムの薄膜は周囲の状態によって六方最密充填もしくは二重六方最密充填の相を含んでいる可能性がある[2]。

サマリウムおよびそのセスキ酸化物(三二酸化物、Sm2O3)は常温で常磁性を示す。それらに対応する有効磁気モーメントはランタン、ルテチウム(およびそれらの酸化物)に次いで希土類中3番目に低く、ボーア磁子は2 μB以下である。14.8 K以下に冷却されると反強磁性に転移する[3][4]。個々のサマリウム原子はフラーレンを用いることで単離することができる[5]。サマリウム原子はまたフラーレンにドープすることもでき、そのようなサマリウムをドープされたフラーレンは8 K以下の温度で超伝導性を示す[6]。高温超電導物質である鉄系超伝導物質(SrFeAsF)にサマリウムをドープさせることで超伝導転移温度を56 Kまで高めることができ、これは報告のなされた2008年11月時点では鉄系超電導物質の中で最も転移温度の高い物質であった[7]。

化学的性質[編集]

サマリウムの新しい表面は銀色の光沢を持つが、空気中においては室温で徐々に酸化され、150 °Cで自然発火する[8][9]。鉱油中に保存していたとしても徐々に酸化され、灰黄色の酸化物と水酸化物の混合物で表面が覆われる。サマリウムの金属表面は試料をアルゴン雰囲気下で保存することによって維持することができる。

サマリウムは電気的に陽性であり、冷水とは徐々に、温水となら直ちに反応して水酸化物を形成する[10]。
2 Sm (s) + 6 H2O (l) → 2 Sm(OH)3 (aq) + 3 H2 (g)
サマリウムは希硫酸に容易に溶解して黄色[11]から薄緑色をしたSm+3イオンとなり、それは[Sm(OH2)9]3+錯体として存在している[10]。
2 Sm (s) + 3 H2SO4 (aq) → 2 Sm3+ (aq) + 3 SO2−
4 (aq) + 3 H2 (g)
サマリウムは希土類元素の中では珍しく+2価の酸化状態を取り、Sm2+イオンは溶液中で赤血色を示す[12]。安定なのは 4f5 の電子配置をとる+3価であるため+2価のイオン Sm2+ は極めて酸化されやすく、水溶液中においては水を還元して水素を発生し+3価のイオン Sm3+ へと酸化される。その標準酸化還元電位は以下のように見積もられている。
Sm3+(aq) + e- = Sm2+(aq) (E°= -1.55 V)
サマリウムは単体でも原子価揺動 (Valence fluctuation、混合原子価化合物も参照) を起こす。固体では、(4f)5(5d6s)3であるが、遊離状態の原子、固体表面のサマリウム原子は、(4f)6(5d6s)2となっている。

同位体[編集]

詳細は「サマリウムの同位体」を参照

天然に存在するサマリウムは4つの安定同位体および3つの放射性同位体からなり、128 Bq / g の放射能を有する。144Sm、150Sm、152Smおよび154Smの4つがその安定同位体であり、3つの放射性同位体の半減期はそれぞれ147Sm(半減期 = 1.06×1011年)、148Sm(7×1015 年)、149Sm(2×1015年)と非常に長い。天然存在比の最も大きな同位体は26.75 %を占める152Smである[13]。149Smは様々な資料で安定同位体であるとも[13][14]、放射性同位体であるとも[15]される。

長寿命な放射性同位体である146Sm、147Smおよび148Smは、主にネオジムの同位体のアルファ崩壊によって生成する。それらよりも軽い放射性同位体は主にプロメチウムの同位体の電子捕獲によって生成し、より重いものはユウロピウムの同位体のベータ崩壊によって生成する[13]。

147Smは1.06×1011年の半減期でアルファ崩壊し143Ndとなり、放射年代測定法の一つであるサマリウム−ネオジム法(英語版)として利用される。

151Smおよび145Smの半減期はそれぞれ90年および340日である。残りの放射性同位体の半減期はいずれも2日未満であり、それらの大部分は48秒未満である。サマリウムはまた5つの核異性体を持ち、最も安定な141mSmで半減期22.6分、次いで143m1Smが66秒、139mSmが10.7秒である[13]。

化合物[編集]

酸化物[編集]

サマリウムの最も安定な酸化物はセスキ酸化物であるSm2O3であり、Sm2O3には複数の結晶系のものが存在している。三方晶系のものは溶融させたものを徐冷することによって得られる。Sm2O3の融点は2365°Cと高いため、直接的な加熱ではなく高周波コイルによる誘導加熱によって溶融される。Sm2O3の単斜晶の結晶は火炎溶融法(ベルヌーイ法)によって結晶成長させることができ、粉末のSm2O3から直径1 cm、最大長さ数 cm のブールが得られる。ブールは純粋で格子欠陥などが含まれていなければ透明であるが、そうでなければオレンジ色を呈する。準安定な三方晶のSm2O3を1900°Cまで加熱すると、より安定な単斜晶に転移する[16]。立方晶のSm2O3もまた研究されている[17]。

サマリウムは一酸化物SmOを形成する数少ないランタノイドの一つである。この黄金の光沢を持つ化合物はSm2O3を金属サマリウムを用いて1000°C、50 kbar以上の条件下で還元させることによって得られ、圧力が低いと反応は不完全に終わる。SmOは立方晶の塩化ナトリウム型構造を取る[18][19]。

他のカルコゲナイド[編集]

サマリウムは硫黄、セレン、テルルと反応し、それぞれ3価の硫化物、セレン化物、テルル化物を形成する。2価のSmS、SmSe、SmTeも知られており、それらはSmOと同様に立方晶の塩化ナトリウム型構造を取る。これらのカルコゲナイドは室温において、圧力を加えることで半導体から金属に変化する性質を有している。SmSeおよびSmTeは20–30 kbarほどの圧力で連続的に変化するが、SmSはわずか6.5 kbarの圧力で急激に変化する。SmSの結晶やフィルムが引っ掻かれたり磨かれたりしたときに、この物性の変化は黒色から明るい黄色という劇的な色の変化を引き起こす。この物性変化によって結晶系は変化しないが、結晶の容積は15 %も激減する[20]。圧力から解放されるとSmSは0.4 kbarという非常に低い圧力で半導体に戻り、ヒステリシスを示す[8][21]。

ハロゲン化物[編集]

金属サマリウムは全てのハロゲンと反応して三ハロゲン化物を与える[22]。
2 Sm (s) + 3 X2 (g) → 2 SmX3 (s)
これらの三ハロゲン化物は金属サマリウムもしくは金属リチウム、金属ナトリウムと共に700から900°Cの高温にすることによって更に還元され、二ハロゲン化物を生じる[23]。二ヨウ化物は三ヨウ化物を加熱するか、室温において無水テトラヒドロフランを溶媒として金属サマリウムと1,2-ジヨードエタンを反応させることによっても得ることが出来る[24]。
Sm (s) + ICH2-CH2I → SmI2 + CH2=CH2.
三ハロゲン化物の還元によって生成されるのは二ハロゲン化物に加え、Sm3F7, Sm14F33, Sm27F64[25], Sm11Br24, Sm5Br11およびSm6Br13のような明瞭な結晶構造を有する多数の不定比ハロゲン化物も生成される[26]。

下記#サマリウム化合物の一覧の表にあるように、サマリウムのハロゲン化物はハロゲン元素の種類によってその結晶系が変わるという、大部分の元素では見られないような珍しい挙動を示す。ハロゲン化サマリウムの多くは1つの化合物に2つの主要な結晶相があり、一方は安定相でもう一方は準安定相である。準安定相は急冷後に加圧もしくは加熱することによって形成される。例えば、単斜晶(安定相)のヨウ化サマリウム(II)を加圧し、圧力を開放することで塩化鉛型結晶構造を有する斜方晶のヨウ化サマリウム(II)(密度:5.90 g/cm3)が得られ[27]、類似の方法によりヨウ化サマリウム(III)の新たな結晶相(密度:5.90 g/cm3)も得られる[28]。

ホウ化物[編集]

酸化サマリウムおよびホウ素の粉末を真空下で焼結させることによっていくつかの相のホウ化サマリウムを含んだ粉末が得られ、サマリウムとホウ素の混合比を調整することで任意の組成の物が得られる[29]。この粉末はアーク溶融もしくはゾーンメルト法によって特定のホウ化サマリウムの大きな結晶とすることができ、溶融、結晶化温度を変えることでそれぞれSmB6 (2580°C)、SmB4(およそ2300°C)およびSmB66 (2150°C)が形成される。これらのホウ化サマリウムは全て硬く脆い暗灰色の固体であり、含まれるホウ素の割合が高くなるほど硬さが増す[30]。二ホウ化サマリウムはこれらの方法で製造するには揮発性すぎるため、安定して結晶成長させるためには高圧(およそ65 kbar)かつ低温(1140から1240°C)な条件が必要となる。これよりも高温になるとSmB6が優先されて形成する[31]。

六ホウ化サマリウム[編集]

六ホウ化サマリウムはSm2+とSm3+のサマリウムイオンが3:7の割合で存在する典型的な中間原子価化合物である[29]。それは典型的な近藤絶縁体(近藤効果参照)に属しており、50 Kを越える高温では近藤金属に特有の強い電子散乱による金属的な電気伝導度を示すのに対し、低温ではおよそ4から14 meVという狭いバンドギャップの非磁性絶縁体としてふるまう[32]。六ホウ化サマリウムの冷却によって引き起こされる金属-絶縁体転移には熱伝導率の急激な増加が伴い、それはおよそ15 Kで最大値を示す。この原因は、低温領域における熱伝導は電子が熱の伝導に貢献しないためフォノンのみが熱伝導の要因となり、フォノンは電子による散乱を受けると熱伝導に寄与できなくなるため熱伝導率が低下するが、近藤効果によって金属から絶縁体へと転移することで電子密度が急激に減少するため電子にフォノンが散乱される割合もそれに伴って急激に減少するため、それまで電子による散乱をうけて熱伝導に寄与できなかったフォノンが熱伝導に寄与できるようになるためである[33]。

新しい研究ではトポロジカル絶縁体となるかもしれないことが示されている[34][35][36]。

他の無機化合物[編集]





硫酸サマリウム、Sm2(SO4)3
炭化サマリウムはグラファイトと金属サマリウムを混合し、不活性雰囲気下で溶融させることによって得られる。空気中で不安定な物質であるため、研究もまた不活性雰囲気下で行われる[37]。リン化サマリウムSmPはシリコンと同程度のバンドギャップ1.10 eVを示す半導体であり、N型半導体として高い電気伝導度を示す。それはリンと金属サマリウムの混合粉末を石英アンプル中に真空封管し、1100°Cで焼きなますことによって合成される。リンは高温では非常に揮発性であり爆発の危険があるため、加熱時の昇温ペースは1分間に1°C以下に保たなければならない[38]。ヒ化サマリウムSmAsも類似の方法で合成されるが、合成温度は1800°C以上である[39]。

サマリウムの他の二元化合物としては、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、テルルといった第14族元素、第15族元素、第16族元素との化合物が知られており、また多くのグループの元素との間で合金を作る。それらは全て金属サマリウムおよび対応する元素の粉末を混合し、焼きなますことによって得ることができる。そうやって得られた化合物の多くは不定比化合物であり、SmaXb (b / a は0.5から3の間を変化する) という名目上の組成比を持つ[40][41][42]。

有機金属化合物[編集]

サマリウムはシクロペンタジエニド Sm(C5H5)3 およびその塩化物誘導体 Sm(C5H5)2Cl を形成する。それらは塩化サマリウム(III)をシクロペンタジエニルナトリウムとともにテトラヒドロフラン中で反応させることによって得られる。Sm(C5H5)3は他の大部分のランタノイド元素のシクロペンタジエニル錯体とは異なり、一部のC5H5が隣接するもう一方のサマリウム原子の方へ頂点や辺のみで結合しハプト数η1もしくはη2の配位をすることで架橋し、それによってポリマー鎖を形成する[12]。塩化物誘導体は二量体を形成し、より正確には(η5-C5H5)2Sm(μ-Cl)2(η5-C5H5)2と表される。それらの塩素橋は例えばヨウ素や水素、窒素、もしくはシアン化物イオンなどによって置換される[43]。

シクロペンタジエニド・サマリウム中の (C5H5)– イオンはインデニド (C9H7)– もしくはシクロオクタテトラニド (C8H8)2– 環と置換されてSm(C9H7)3 もしくは KSm(η8-C8H8)2を形成する。これらの化合物はウラノセンと類似した構造を有する。また、およそ85°Cで昇華する2価のシクロペンタジエニド Sm(C5H5)2 も存在する。フェロセンとは正反対に、Sm(C5H5)2中の C5H5 リングは平行でなく45 °傾いている[43][44]。

サマリウムのアルカンおよびアリール化合物はテトラヒドロフランやエーテル中でメタセシス反応によって得ることができる[43]。
SmCl3 + 3 LiR → SmR3 + 3 LiClSm(OR)3 + 3 LiCH(SiMe3)2 → Sm{CH(SiMe3)2}3 + 3 LiOR
ここでRは炭化水素基、Meはメチル基を表す。

サマリウム化合物の一覧[編集]


化学式



結晶系

空間群

No

ピアソン記号

a (pm)

b (pm)

c (pm)

Z

密度
g/cm3

Sm 銀色 三方晶[2] R3m 166 hR9 362.9 362.9 2621.3 9 7.52
Sm 銀色 六方晶[2] P63/mmc 194 hP4 362 362 1168 4 7.54
Sm 銀色 正方晶[45] I4/mmm 139 tI2 240.2 240.2 423.1 2 20.46
SmO 金色 立方晶[18] Fm3m 225 cF8 494.3 494.3 494.3 4 9.15
Sm2O3 三方晶[16] P3m1 164 hP5 377.8 377.8 594 1 7.89
Sm2O3 単斜晶[16] C2/m 12 mS30 1418 362.4 885.5 6 7.76
Sm2O3 立方晶[17] Ia3 206 cI80 1093 1093 1093 16 7.1
SmH2 立方晶[46] Fm3m 225 cF12 537.73 537.73 537.73 4 6.51
SmH3 六方晶[47] P3c1 165 hP24 377.1 377.1 667.2 6
Sm2B5 灰色 単斜晶[48] P21/c 14 mP28 717.9 718 720.5 4 6.49
SmB2 六方晶[31] P6/mmm 191 hP3 331 331 401.9 1 7.49
SmB4 正方晶[49] P4/mbm 127 tP20 717.9 717.9 406.7 4 6.14
SmB6 立方晶[30] Pm3m 221 cP7 413.4 413.4 413.4 1 5.06
SmB66 立方晶[50] Fm3c 226 cF1936 2348.7 2348.7 2348.7 24 2.66
Sm2C3 立方晶[37] I43d 220 cI40 839.89 839.89 839.89 8 7.55
SmC2 正方晶[37] I4/mmm 139 tI6 377 377 633.1 2 6.44
SmF2 紫色[51] 立方晶[25] Fm3m 225 cF12 587.1 587.1 587.1 4 6.18
SmF3 白色[51] 斜方晶[25] Pnma 62 oP16 667.22 705.85 440.43 4 6.64
SmCl2 褐色[51] 斜方晶[23] Pnma 62 oP12 756.28 450.77 901.09 4 4.79
SmCl3 黄色[51] 六方晶[25] P63/m 176 hP8 737.33 737.33 416.84 2 4.35
SmBr2 褐色[51] 斜方晶[52] Pnma 62 oP12 797.7 475.4 950.6 4 5.72
SmBr3 黄色[51] 斜方晶[53] Cmcm 63 oS16 404 1265 908 2 5.58
SmI2 緑色[51] 単斜晶 P21/c 14 mP12
SmI3 橙色[51] 三方晶[54] R3 63 hR24 749 749 2080 6 5.24
SmN 立方晶[55] Fm3m 225 cF8 357 357 357 4 8.48
SmP 立方晶[38] Fm3m 225 cF8 576 576 576 4 6.3
SmAs 立方晶[39] Fm3m 225 cF8 591.5 591.5 591.5 4 7.23

歴史[編集]





サマリウムの発見者、ポール・ボアボードラン
ロシアのウラル山脈南部に位置するイリメニ山脈のミアスでワシーリー・サマルスキー=ビホヴェッツが新鉱物を発見し、ロシアの鉱山技術部隊のチーフスタッフであったサマルスキーはドイツの鉱物学者のグスタフ・ローゼおよびハインリヒ・ローゼの兄弟に対して研究のため鉱物標本の利用許可を与えた。1847年にハインリヒ・ローゼはサマルスキーへの献名としてその鉱物をサマルスキー石 (Samarskite, (Y,Ce,U,Fe)3(Nb,Ta,Ti)5O16) と命名した[56][57]。1879年にフランスの化学者であるポール・ボアボードランはパリでサマルスキー石からサマリウムを酸化物や水酸化物の形で単離し、強い吸収線スペクトルによってそれが新しい元素であることを確認した[9]。サマリウムを含むいくつかの希土類元素の発見は19世紀後半に複数の化学者によって発表されたが、ほとんどの情報源においてボアボードランを一番初めの発見者としている[58][59]。例えば1878年にスイスの化学者であるマルク・ドラフォンテーヌによって新しい元素としてdecipium(ラテン語で「あてにならない」「紛らわしい」を意味するdecipiensに由来する)が発表されたが[60][61]、1880年後半から1881年にかけてそれがボアボードランが発見したサマリウムを含むいくつかの元素の混合物であることが証明されている[62][63]。また、ボアボードランが単離したサマリウムも純粋なものではなく相当量のユウロピウムが含まれていた事も判明しており、純粋なサマリウムはユウロピウムの発見者であるウジェーヌ・ドマルセーによって1901年に得られた[64]。

ボアボードランはこの新しい元素をサマリアと呼んだが後に他の元素の命名則に合わせてサマリウムとなり、サマリアという名称はジルコニアやアルミナ、セリア、ホルミアなどのように酸化サマリウムを言及するための名称としてしばしば利用されている。サマリウムの元素記号としてはSmが提案されたが、1920年代頃まではSaが多用されていた[64][65]。サマリウムの名称は鉱石の発見者であるサマルスキーの名前が元素名の由来となっており[57]、サマルスキーは人物名が元素名の由来となった初めての人物である[66][64]。

1950年代にイオン交換による分離技術が出現する以前には、純粋な形でのサマリウムの商業的用途は存在しなかった。しかしネオジムの分別結晶化精製の副産物として生じるサマリウムとガドリニウムの混合物は、それを製造していた会社にちなんで"Lindsay Mix"と名付けられ、初期の原子炉のいくつかで核制御棒として使用された。今日では、これに類似した製品は"サマリウム-ユウロピウム-ガドリニウム" (SEG)と呼ばれている[66]。それはバストネサイト (もしくはモナズ石)から分離されるランタノイドの混合物から溶媒抽出法によって製造される。ランタノイドはより重いものほど溶媒との親和性が高いため、それらは比較的少量の溶媒で容易に抽出される。バストネサイトを処理する全ての希土類製造者が元の鉱石のわずか1、2 %を占めるにすぎないSEGの各構成元素をさらに分離するために十分な規模の設備を持つわけではなく、そのような生産者は専門的な処理業者に売却する目的でSEGを製造している。SEGからは蛍光体メーカーが利用する高価なユウロピウムが回収できる。2012年現在サマリウムは供給過剰であり、酸化サマリウムの価格は鉱石中に含まれるサマリウムの相対的な存在量から予測されるよりも安価に供給されている[67]。

存在と生産[編集]

サマリウムは地殻中において40番目に多く含まれる元素であり、その濃度は平均およそ8 ppm(百万分の1)である。その存在量はランタノイドの中では5番目であり、スズのような元素よりもありふれた元素である。土壌中のサマリウム濃度は2から22 ppmであり、海水中の濃度は0.5から0.8 ppt(1兆分の1)である[8]。環境中のサマリウムの移動はその化学的状態に強く依存し、非常に不均一である。土壌中においてサマリウムは砂粒子の表面に付着しやすく、間隙水(土壌中において砂の粒子の間で保持される水)中のサマリウム濃度と比較して200倍以上も高く、粘土質な土壌においては1000倍におよぶ[68]。

サマリウムの単体は自然には産出しないが、他の希土類元素と同様にモナズ石やバストネサイト、セル石(英語版)、ガドリン石(英語版)、サマルスキー石など多くの鉱物中に含まれる。サマリウム源として商業的に利用されるものの大部分はモナズ石およびバストネサイトであり、モナズ石中のサマリウム濃度は最高2.8 %[9]である。サマリウムの埋蔵量は全世界でおよそ200万トンと推定されており、それらの大部分は中国、アメリカ、ブラジル、インド、スリランカおよびオーストラリアに存在している。サマリウムの年間生産量はおよそ700トン[8]。サマリウムの生産は中国が最も大規模で年間12万トンの鉱石が採掘されており、アメリカの5000トン[68]、インドの2700トンがそれに続いている[69]。サマリウムは通常酸化物の形で販売され、キロ単価30ドルという価格はランタノイド酸化物の中でも最も安価なもののひとつである[67]。サマリウムをおよそ1 %含有する希土類元素混合物であるミッシュメタルが長い間利用されて来たのに対して、比較的純粋なサマリウムはイオン交換法や溶媒抽出法、電気化学的析出法などによって近年単離されるようになったばかりである。金属サマリウムは、しばしば塩化サマリウム(III)を塩化ナトリウムもしくは塩化カルシウムとともに溶融塩電解することによって得られる。サマリウムはまた、酸化サマリウムを金属ランタンで還元させることによっても得られる。この生成物にはランタンが含まれるため、サマリウムの沸点が1794℃、ランタンの沸点が3464℃であることを利用して蒸留によって分離される[59]。

サマリウム-151はウランの核分裂反応によって生成され、その生成割合は全分裂反応の内のおよそ0.4 %である。それはまたサマリウム-149の中性子捕獲によっても生成され、原子炉の制御棒に加えられる。そのため、サマリウム-151は使用済み核燃料および放射性廃棄物に含まれる[68]。

用途[編集]





SmI2を用いたバルビエ反応
サマリウムの最も重要な用途の一つはサマリウムコバルト磁石であり、それはSmCo5もしくはSm2Co17の組成を持つ金属間化合物である。フェライト磁石の1000倍の磁力を有しネオジム磁石に次いで強力な磁石として利用される。ネオジム磁石の方が価格が安く性能もよいが、ネオジム磁石のキュリー温度(磁性がなくなる温度)が300から400 °Cであるのに対してサマリウムコバルト磁石のキュリー温度は約700 °Cと高いため、高温で使用する用途などで使われている。またサマリウムコバルト磁石は、コンピューターのハードディスク、電気自動車やコンプレッサー用のモーター、永久磁石同期電動機、音響機器のスピーカーやヘッドホン、携帯電話、スマートフォン、風力発電等の幅広い用途でも使用されている[70][8]。

サマリウムおよびその化合物のもう一つの重要な用途は触媒および試薬である。サマリウム触媒はポリ塩化ビフェニル (PCBs) のような汚染物質を脱塩素化して分解したり、エタノールの脱水および脱水素化反応を促進する[9]。トリフルオロメタンスルホナトサマリウム (Sm(CF3SO3)3, (Sm(OTf)3) はハロゲンを促進剤とするアルケンのフリーデル・クラフツ反応において最も効果的なルイス酸触媒の一つである[71]。



Friedel-Crafts alkylation by an alkene

サマリウムにヨウ素を作用させて得られるヨウ化サマリウム(II) (SmI2) は非常に一般的な還元剤として用いられる。その用途としては、例えば脱スルホニル反応(英語版)のような有機合成におけるカップリング試薬や環化反応、ダニシェフスキー、桑島(英語版)、向山(英語版)、ホルトンなどによるタキソール全合成、ストリキニーネ全合成(英語版)、バルビエ反応、その他ヨウ化サマリウム(II)による還元反応(英語版)などが挙げられる[72]。

通常酸化物の形で、サマリウムは赤外線の吸収を増加させるために陶器やガラスに添加される。また、サマリウムはミッシュメタルの非主要な構成元素として、ライターやトーチランプを点火するための火打石に用いられる[8][9]。その他、酸化サマリウムから作られるセラミックス材料は電子材料としてコンデンサーや誘電体に用いられるほか、自動車の排気ガス浄化用等、触媒の材料としても注目されている[70]。





サマリウム (153Sm) レキシドロナム(英語版)の化学構造
放射性同位体の153Smは46.3時間の半減期でベータ粒子を放出するβ放射体である。それは肺癌、前立腺癌、乳癌および骨肉腫において癌細胞を殺すのに用いられる。この目的のため、153Smはエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(英語版) (EDTMP) とキレート錯体を形成させて静脈注射される。153Smをキレート化することによって、放射性サマリウムが体内に蓄積して過剰に被曝することで新たな癌細胞が発生するのを防ぐことができる[8]。対応する薬は、サマリウム (153Sm) レキシドロナム(英語版)およびその登録商標であるクアドラメットを含むいくつかの名称を有している[73][74][75]。

149Smは中性子捕獲によって41,000 バーンという高い衝突断面積を有しているため、原子炉の制御棒に用いられる。ホウ素やカドミウムといった他の競合する材料に対する利点は、149Smの核融合および核崩壊生成物の大部分が良好な中性子吸収材であるサマリウムの他の同位体であり、中性子の吸収が安定しているという点にある。例えば151Smの衝突断面積は15,000 バーン、150Sm、152Smおよび153Smの衝突断面積は3桁オーダーであり、各同位体の混合物である自然中のサマリウムの衝突断面積は6,800 バーンである[9][68][76]。原子炉中の崩壊生成物である149Smは原子炉の設計と運用において135Xeに次いで2番目に重要であると考えられている[77]。

非商業的、潜在的用途[編集]

サマリウムをドープしたフッ化カルシウムは初期の固体レーザーの一つにおいて能動媒質として用いられ、それは1960年代初期にIBM研究所で色素レーザー(英語版)の共同開発者であるピーター・ソローキンおよびミレク・スティーヴンソンによって設計、製造された。このサマリウムレーザーは波長708.5 nmの赤色光を放った。それは液体ヘリウムによって冷却する必要があったため、実用的な用途が見つけられなかった[78][79]。

もう一つのサマリウムを用いたレーザーは10 nmよりも短い波長で動作する、初めての飽和X線レーザー(英語版)となった。それは波長7.3 nmおよび6.8 nmでパルス幅50ピコ秒のレーザーを発し、ホログラフィー、生物試料の高分解能顕微鏡法、デフレクトメトリ、干渉法および、閉じ込め核融合や天文物理学に関連した高密度プラズマのX線撮影などの用途に適している。飽和動作は取り得る最大のエネルギーがレーザー媒体から取り出されることを意味しており、その結果3 mJの高ピークエネルギーを示す。能動媒質はサマリウム被覆ガラスにNd:YAGレーザー(波長1.05μm以上)を照射することで生成するサマリウム・プラズマである[80]。

硫化サマリウム (SmS)やセレン化サマリウム (SmSe)などのサマリウムのモノカルコゲナイドは圧力変化に伴って電気抵抗が変化する性質を有しているため、圧力センサーやメモリデバイスに用いることが可能であり[81]、そのようなデバイスは商業的に開発されている[82]。硫化サマリウムはまた、およそ150℃の穏やかな加熱に伴って電圧を生じるため、熱電変換素子として利用することもできる[83]。

サマリウムとネオジムの同位体元素147Sm、144Ndおよび143Ndのそれぞれの相対濃度比の分析によって、岩石や隕石の年代を測定することができる(サマリウム-ネオジム法(英語版))。サマリウムとネオジムは共にランタノイドであり類似した理化学的特性を有している。そのため、これら年代決定の目印となる元素が地質学的なプロセスに影響を受けて分離されるようなことがないか、分離されたとしても十分な知見があり関連元素のイオン半径からモデル化することが可能である[84]。

生理作用[編集]

金属サマリウムは人体内における生物学的な役割を持たない。サマリウム塩類は代謝を促進するが、それが純粋にサマリウムの影響であるのか、もしくは共存する他の希土類元素の影響なのかは不明である。成人の体内に含まれるサマリウムの総量はおよそ50 マイクログラムであり、その大部分は肝臓および腎臓に存在しており、血液中に溶存しているサマリウム濃度はおよそ8 マイクログラム / リットルである。植物はサマリウムを吸収せず測定可能な濃度にまで蓄積されることがないため、サマリウムは通常人間の食事には含まれない。しかしながら、少数の植物や野菜は最大1 ppmのサマリウムを含む可能性がある。サマリウムの不溶性塩類は非毒性であり、溶解性のものはわずかに毒性を示す[8]。

サマリウム塩が摂取された際にはその内のわずか0.05 %のみが血液中に吸収され、残りは排出される。血液からは45 %が肝臓、45 %が骨の表面へと運ばれて10年間残存し、残りの10 %は排出される[68]。

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プロメチウム

プロメチウム (英: promethium) は、原子番号61の元素。元素記号は Pm。希土類元素の一つ(ランタノイドにも属す)。安定同位体は存在しない。発見された同位体の中で最も半減期が長いのは、プロメチウム145の17.7年。ウランの核分裂生成物よりマクロの量で得られているのはプロメチウム147である[2][3]。



目次 [非表示]
1 性質
2 歴史
3 天然での存在
4 参考文献


性質[編集]

銀白色の金属で、常温、常圧で安定な結晶構造は、複六方最密充填構造(ABAC スタッキング)。比重は7.2で、融点は1168 °C、沸点は2460 °C。原子価は 4f4 の電子配置をとる3価が安定で、水和イオン Pm3+ aq は淡紅色である。物理的、化学的性質は不明な部分が多い。

放射性があるため、青白色〜緑色の蛍光を放出するという性質がある[4]。このためプロメチウム147は夜光塗料(→時計の文字盤などに利用)に添加され発光の元として利用されていた(安全性が問題になり、現在では日本国内では使われていない)。他に、蛍光灯のグロー放電管にも利用される。

また、シリコンなどの半導体に挟み、放出されるβ線エネルギーを電気エネルギーに変換する原子力電池の素材としての用途が考えられている[2]。

歴史[編集]

いくつかの発見の報があるが、確実と思われるのは、1947年、マリンスキー (J. A. Marinsky)、グレンデニン (L.E.Glendinin)、コリエル (C.D.Coryell) 等がウラン235が放射性崩壊した後の生成物中からイオン交換法を用いて、プロメチウム147、149を分離して発見したというものである[4]。

プロメチウムという元素名はギリシャ神話に登場するプロメテウス(人類に火を伝えたとされる)にちなんで名付けられた[4]。

天然での存在[編集]

マリンスキーらの発見方法より、天然に於いてプロメチウムは、プロメチウム147が天然のウラン鉱石中に非常にごく僅かに存在が認められている。これはウランの自発核分裂の結果、極僅かに生成したものとされている。

プロメチウムには安定同位体が存在せず、全ての同位体が放射性である。このように放射性同位体しかない元素(放射性元素)は、他にはテクネチウムとビスマス以降の元素がある。

恒星HR 465からは、輝線スペクトル中にプロメチウムが発見されている。

参考文献[編集]

1.^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds, in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
2.^ a b N.E.Topp著、塩川二郎、足立吟也 共訳 『希土類元素の化学』 化学同人、1986年
3.^ FA コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年
4.^ a b c 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、273頁。ISBN 4-06-257192-7。

ネオジム

ネオジム (英: neodymium, 独: Neodym) は原子番号60の金属元素。元素記号は Nd。希土類元素の一つで、ランタノイドにも属する。

日本語の「ネオジム」はドイツ語の Neodym の字訳である。製品名等で「ネオジウム」等の呼称も用いられることがあり、用法の正誤については議論がある。

ネオジムを含む希土類元素の生産量は中華人民共和国が、約98%を占めるが、埋蔵量は30%程度である。近年[いつ?]、希土類元素の価格は、中華人民共和国の鉱物資源政策の変化により外国への輸出量が縮小され高騰した。



目次 [非表示]
1 性質
2 用途
3 歴史
4 化合物
5 同位体
6 呼称(和文名称)についての議論
7 参考文献
8 関連項目


性質[編集]

銀白色の金属で、常温、常圧で安定な結晶構造は、複六方最密充填構造(ABACスタッキング)。比重は7.0、融点は1,024 °C、沸点は3,027 °C。

安定な原子価は、4f3 の電子配置をとる3価である。常温で空気中において表面のみが酸化され、高温では燃焼して淡赤紫色の酸化ネオジム(III) Nd2O3 となる。ハロゲン元素と反応しハロゲン化物 NdX3 を、熱水と徐々に反応して水素および水酸化物を生成する。酸には易溶で3価の淡赤紫色の水和イオン Nd3+(aq) を生成する。
2 Nd + 6 H+(aq) → Nd3+(aq) + 3 H2Nd3+(aq) + 3 e− = Nd (E°= −2.32 V)
なお、ランタノイドの中では比較的イオン半径が大きい(詳しくはランタノイド収縮を参照のこと)。

モナズ石(モナザイト、(Ce,La,Nd,Th)PO4:単斜晶構造のリン酸塩)に含まれる。

単体のネオジムを得るには、無水塩化ネオジムを融解塩電解する方法や、カルシウムやナトリウムを使って還元する方法がある。

用途[編集]

ネオジムの用途で特に重要なのは、強い磁力を持った永久磁石を生産するために使用されることである。ネオジム、鉄、ホウ素の化合物 (Nd2Fe14B) は、大変強力な永久磁石であるネオジム磁石となる。ネオジム磁石は高性能のモーターやスピーカーなどの様々な分野で利用されている。

その他にも、超伝導体の材料としても使われる。YAGレーザーの添加物としても利用される。

また、ガラスに適量のネオジムの酸化物を加えると、可視光の内、黄色系統の光を吸収するのに他の色の光は透過させるという性質を持たせられる。よって、Nd2O3 がガラスの着色剤として使われることがある。

歴史[編集]

カール・アウアー・フォン・ヴェルスバッハが、もともと一つの元素と考えられていた混合物であるジジミウム (didymium) からプラセオジムと共に1885年に発見[2]。ラテン語の『新しい』を意味する neos と、ジジミウム(元は、ギリシャ語で双子を意味する didymos から命名された)を合成したのが語源[2]。

化合物[編集]

化合物中の原子価は 4f3 の電子配置をとる3価が唯一安定なものである。4価を含む化合物が合成されたという報告もいくつかあるが、いずれも疑わしい[3]。
酸化ネオジム(III) (Nd2O3)
水酸化ネオジム(III) (Nd(OH)3)
塩化ネオジム(III) (NdCl3)
硫酸ネオジム(III) (Nd2(SO4)3・8H2O)

同位体[編集]

詳細は「ネオジムの同位体」を参照

呼称(和文名称)についての議論[編集]

「ネオジム」はドイツ語の neodym の字訳とされる一方、英語等で更に語尾「-ium」が付く neodymium は字訳すると「ネオジミウム」となることから、物質名の語尾に用いる「〜(イ)ウム」を「-ium」の訳と解する立場からは、製品名等に用いられている「ネオジウム」という呼称は誤用とされている。但し「ネオジウム」という呼称についてはドイツ語の発音に近い等とする立場からの肯定意見との間で議論があり、用法には注意を要する。
(尚、外国語発音記号を擬似的にカタカナ表記すると英語 neodimium [nìːoʊdímiəm|nìːəʊ‐/.][4] =「ニーオゥディミァム」、ドイツ語 Neodym [neodˈyːm][5] =「ネオディーム」又は「ネオドゥーム」となり、日本語のどの呼称とも必ずしも一致しない。訳語表記も辞書により様々であり一定しない[6]。)

参考文献[編集]

1.^ Gschneidner, K. A.; Eyring, L. (1978). Handbook on the Physics and Chemistry of Rare Earths. Amsterdam: North Holland. ISBN 0444850228.
2.^ a b 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、268頁。ISBN 4-06-257192-7。
3.^ FA コットン, G. ウィルキンソン著, 中原勝翻訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年
4.^ 研究社 新英和中辞典
5.^ 小学館 独和大辞典
6.^ neodymiumの意味 - 英和辞典 Weblio辞書

プラセオジム

プラセオジム (英: praseodymium) は原子番号59の元素。元素記号は Pr。希土類元素の一つ(ランタノイドにも属す)。

和名のプラセオジムとは、ドイツ語の praseodym からきている。なお、プラセオジウムと呼ばれることもあるが、これは間違った呼称である。



目次 [非表示]
1 性質
2 用途
3 歴史
4 プラセオジムの化合物
5 同位体
6 出典


性質[編集]

銀白色の金属で、常温、常圧で安定な結晶構造は、複六方最密充填構造(ABAC スタッキング)。798 °C以上で体心立方構造が安定となる。比重は6.77、融点は935 °C、沸点は3020 °C (3127 °C)。

常温下の空気中で酸化され表面は黄色の酸化物で覆われる。290 °C以上で発火し Pr6O11 の組成の酸化物を生成する。展性、延性があり、熱水と徐々に反応し水素および水酸化物を生成する。酸には易溶で淡緑色の3価の水和イオンを生成する。
2 Pr + 6 H+(aq) → Pr3+(aq) + 3 H2Pr3+(aq) + 3 e- = Pr E°= −2.35 V
加熱下で水素、窒素と反応する。原子価は+3, 4価をとり、4価は固体(化合物)の場合のみ安定である。イオンの色は3価では緑色、4価では黄色。

プラセオジムは極低温下で特殊な磁気構造をとる。

用途[編集]

Pr6O10はガラスの着色剤(黄緑色)に使われる。また黄色顔料のプラセオジムイエローはジルコンに4価のプラセオジムイオンが固溶したものである。

光ファイバの増幅器で、励起光の波長制御のため添加される。

他の用途としてプラセオジム磁石がある。

歴史[編集]

オーストリアのカール・アウアー・フォン・ヴェルスバッハが、もともと一つの元素と考えられていた混合物であるジジミウム (didymium) からネオジムと共に1885年に発見[2]。ギリシャ語でニラを意味する prason と(三価のイオンが緑色を呈することから)、ジジミウム(元は、双子を意味する didymos から命名された)を合成したのが語源[2]。

プラセオジムの化合物[編集]
PrT4X12(T = Fe, Ru, Os、X = P, As, Sb、充填スクッテルダイト化合物)
十一酸化六プラセオジム (Pr6O11) - 3価および4価の混合酸化物
硫酸プラセオジム(III) (Pr2(SO4)3・8H2O) - 淡緑色結晶

同位体[編集]

詳細は「プラセオジムの同位体」を参照

出典[編集]

1.^ M. Jackson "Magnetism of Rare Earth" The IRM quarterly col. 10, No. 3, p. 1, 2000
2.^ a b 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、265頁。ISBN 4-06-257192-7。

セリウム

セリウム (英: cerium) は原子番号58の元素で、元素記号は Ce。軟らかく、銀白色の、延性に富む金属で、空気中で容易に酸化される。セリウムの名は準惑星ケレスに因んでいる。セリウムは希土類元素として最も豊富に存在して、地殻中に質量パーセント濃度で0.046 %含んでいる。さまざまな鉱物中で見つかり、最も重要なのはモナザイトとバストネサイトである。セリウムの商業的な用途はたくさんある。触媒、排出物を還元するための燃料への添加剤、ガラス、エナメルの着色剤などがある。酸化物はガラス研磨剤、スクリーンの蛍光体、蛍光灯などで重要な成分である。



目次 [非表示]
1 概要
2 化学的性質
3 化合物
4 同位体
5 用途
6 産出
7 製造
8 歴史
9 出典
10 関連項目


概要[編集]

灰色がかかった銀白色の金属で、常温・常圧での安定結晶構造は、面心立方格子構造(FCC、β型)だが730 °C以上で体心立方格子構造 (BCC) となり、低温では六方最密充填構造(HCP、α型)、更に-150 °C以下で再び面心立方格子構造が安定となる。比重は6.77、融点は804 °C、沸点は3,470 °Cで、融点と沸点の開きが大きいのが特徴。

空気中で酸化されやすく、次第に酸化セリウム(IV) (CeO2) となるほか、加熱すると160 °Cで発火する。水にはゆっくりと溶け(熱水と反応)、酸(無機酸)には易溶。アンモニアにも溶ける。原子価は+3、+4(ランタノイドで唯一4価が安定なのが特徴)。

モナズ石(モナザイト)やセル石(セライト)に含まれる。最も存在量の多い希土類元素だが、資源としては90 %以上を中国が産出している。

化学的性質[編集]

金属セリウムは空気中でゆっくりと変色し、150 °Cで速やかに燃焼し酸化セリウム(IV)が生成する。
Ce + O2 → CeO2
セリウムは非常に電気的陽性で、冷水とおだやかに、熱水とは速やかに反応して、水酸化セリウム(III)が生成する。
2 Ce (s) + 6 H2O (l) → 2 Ce(OH)3 (aq) + 3 H2 (g)
金属セリウムは全てのハロゲンと反応する。
2 Ce (s) + 3 F2 (g) → 2 CeF3 (s) [白色]2 Ce (s) + 3 Cl2 (g) → 2 CeCl3 (s) [白色]2 Ce (s) + 3 Br2 (g) → 2 CeBr3 (s) [白色]2 Ce (s) + 3 I2 (g) → 2 CeI3 (s) [黄色]
セリウムは希硫酸に速やかに溶け、無色の Ce(III) イオンの溶液ができる。このイオンは [Ce(OH2)9]3+ のような錯体として存在する[3]
2 Ce (s) + 3 H2SO4 (aq) → 2 Ce3+ (aq) + 3 SO42- (aq) + 3 H2 (g)
化合物[編集]





硫酸セリウム(IV)
セリウム(IV)塩は赤橙色か黄色である。一方、セリウム(III)塩はふつうは白色か無色である。両者とも紫外線を非常に吸収する。セリウム(III)は無色のガラスを作るのに使われ、ほぼ完全に紫外線を吸収する。鋭敏な定性的な検査により、セリウムは希土類の混合物から容易に検出できる。アンモニアと過ハロゲン酸をランタノイドの水溶液に加えると、セリウムが存在すれば特徴的な暗褐色に染まる。

セリウムの取りうる酸化数は+2、+3、+4の三つある。+2の状態は珍しく、CeH2、CeI2、CeS などで見られる[4]。最も有名な化合物は酸化セリウム(IV) (CeO2) で、jeweller's rougeとして使われる。滴定で使われる二つの有名な酸化剤は硫酸セリウムアンモニウム(IV) (NH4)2Ce(SO4)3) と硝酸セリウムアンモニウム(IV) (NH4)2Ce(NO3)6)(別名 CAN)である。セリウムは塩化物もつくり、塩化セリウム(III) CeCl3 は有機化学でカルボニル化合物の反応に使われる。他の化合物は以下のとおり。
CeAl3
CeCu6
CeCu2Si2
CeRu2Si2
酸化セリウム(III) (Ce2O3)
酸化セリウム(IV) (CeO2)
塩化セリウム(III)七水和物 (CeCl3・7H2O)
フッ化セリウム(III) (CeF3)
硫酸セリウム(III)八水和物 (Ce2(SO4)3・8H2O)
硫酸セリウム(IV)四水和物 (Ce(SO4)2・4H2O)
硝酸セリウム(III)アンモニウム四水和物、ペンタニトラトセリウム(III)酸アンモニウム ((NH4)2[Ce(NO3)5]・4H2O)
硝酸セリウム(IV)アンモニウム、ヘキサニトラトセリウム(IV)酸アンモニウム ((NH4)2[Ce(NO3)6])
硝酸セリウム(III)六水和物 (Ce(NO3)3・6H2O)
水酸化セリウム(IV)n水和物 (Ce(OH)4・nH2O)
炭酸セリウム(III)八水和物 (Ce2(CO3)3・8H2O)
過塩素酸セリウム(III)八水和物 (Ce(ClO4)3・8H2O)
臭化セリウム(III)六水和物 (CeBr3・6H2O)
六ホウ化セリウム (CeB6)
二ケイ化セリウム (CeSi2)
硫化セリウム(III) (Ce2S3)
ヨウ化セリウム(III)九水和物 (CeI3・9H2O)
シュウ酸セリウム(III)九水和物 (Ce2(C2O4)3•9H2O)
酢酸セリウム(III)一水和物 (Ce(CH3COO)3・H2O)

同位体[編集]

詳細は「セリウムの同位体」を参照

用途[編集]

酸化物が研磨剤として用いられるほか、ガラス添加剤、製鋼原料、触媒としても使用される。化学反応における酸化剤としての用途は、使用量こそ少ないが非常に重要である。
ガラス研磨剤1960年代から鉱物(バストネサイト)酸化物が用いられ、光学レンズ研磨に欠かせないものとなった。単に硬度が高いだけでなく、酸化セリウムやフッ素がガラスと化学反応を起こす、化学機械研磨 (CMP) が生じることが特長で、液晶パネルや水晶・石英などケイ酸系の宝石研磨に利用される。電子部品研磨剤他の希土類を抽出除去した高純度酸化セリウムがフォトマスク、ハードディスクなどのガラス基板、多層化集積回路の層間絶縁膜平滑化に用いられている。紫外線吸収剤酸化セリウムは屈折率が大きく紫外線をよく吸収・遮蔽するため、サングラスなど紫外線遮断(UVカット)ガラスや化粧品に用いられる。蛍光体青い蛍光を発することから、ブラウン管に利用されてきた。1997年、YAG にセリウムを添加した黄色蛍光体を青色発光ダイオードの補色とすることで、白色LED灯が初めて商品化された。また、蓄光材料としても用いられる。顔料酸化セリウムが黄色系顔料の成分として使用されるほか、ガラスに添加して淡い黄色に発色させる着色剤、酸化雰囲気にして鉄分による着色を打ち消す脱色剤として利用される。ミッシュメタル1906年、オーストリアの化学者、カール・ヴェルスバッハ (Carl Auer von Welsbach) が、フェロセリウムが発火合金(ライターの石)として有効であることを発見。現在では、ニッケル・水素蓄電池の負極(水素吸蔵合金)としても利用されている。希土類磁石金属間化合物の CeCo5 が磁性材料として利用される。鉄鋼添加剤フェロセリウムとしてステンレス鋼などの硫黄や酸素原子による還元作用を、酸化作用で抑制する。合金添加剤腐食防止用インヒビターとして、航空機用・高強度アルミニウム合金に添加されるほか、マグネシウム合金にも3-4 %添加される。るつぼ硫化セリウムによる機能性、耐熱るつぼ製品の製造。溶接電極棒交流アーク用にセリウム入りタングステン電極棒(通称セリタン)が重用されている。触媒酸化物の酸素貯蔵能が高いことから、自動車排ガス用三元触媒に、助触媒として添加されている。センサー抵抗型気中酸素濃度センサとして排ガス中の酸素濃度を測定し、エンジンの燃焼効率改善のため空燃比制御に使用される。固体電解質サマリアドープトセリア (SDC) やガドリニアドープトセリア (GDC) は酸素イオン伝導体として固体酸化物燃料電池 (SOFC) に用いられる。ガス灯硝酸セリウムが、発光体であるガスマントル製造に使用された。これが工業的利用の最初の例である。その後も発光材料として利用されている。医薬品シュウ酸セリウムが、鎮静・鎮吐作用を持つとして医薬品に使用される。また、抗血液凝固作用があり、血栓防止などに有用とする研究がある。酸化剤4価のセリウムイオンは3価になるとき、強い酸化性を示す。このことから、硝酸セリウムアンモニウムが有機合成化学やウエットエッチングに利用されている。また、有機セリウム求核試薬やヒ素吸着剤にも利用される。超伝導物質、強磁性物質セリウムの化合物には重い電子系(ヘビーフェルミオン)として注目されているものがある。→CeIrIn5。CeCu2Si2(超伝導体でもある)。CeRu2Si2 や CeCu6 は、近藤効果により極低温まで磁気秩序を示さない。
産出[編集]

レアアースであり資源としては、中国、旧ソ連、アメリカ、西オーストラリア、インドの埋蔵量が多く、日本でも少量産出する。鉱物としてはバストネサイト (Ce,La)(CO3)F、モナザイト (Ce, La, Nd, Th)PO4 が主体であり、それぞれ酸化セリウムとして50%弱と最も多く含まれている。産出量は約90 %を、中国内陸部で磁鉄鉱副産物の複雑鉱石から精製されるものが占めており、次いでアメリカ、旧ソ連、インドとなっている。中間製品の輸出国としては他にフランス、台湾もあげられる。

製造[編集]

汎用研磨剤としては、アメリカ産バストネサイトをそのまま酸化・粉砕し、粒度分級したものが用いられている。

そのほか、焙焼したバストネサイトを塩酸浸出し他の希土類と分離したもの、モナザイトを苛性によるアルカリ分解(リン酸鉱物であるため)する雰囲気で利用が遅れた。水酸化物を塩酸抽出したものから酸化セリウムなどの化合物が製造され、各種用途に用いる。溶融電解や金属カルシウム還元により、金属セリウムが得られる。

フェロセリウムは主にアメリカで生産され、鉄鋼添加剤用途に輸入されている。

歴史[編集]

同じ年に別個に発見されたため、第一発見者を巡って国家間の論争を招いた最初の元素となった[5]。

1803年、スウェーデンのイェンス・ベルセリウス (J.J.Berzelius) とウィルヘルム・ヒージンガー (W.Hisinger) が、スウェーデンのバストネス鉱山でイットリウム鉱石の探索中に未知の酸化物を見いだし、そのころ発見された準惑星(発見当時は惑星とされていた)セレスにちなんでセリア (ceria) と命名された[5]。同年、ドイツのマルティン・ハインリヒ・クラプロート (M.H.Klaproth) も同じ鉱山で新元素を探索した結果、新元素を発見し、その性状から黄色い土という意味でテールオクロイト (terre ochroite) と命名された。その後、学会で、名称としてセリウムが採用された。

出典[編集]

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モナズ石

モナズ石(モナズせき、monazite-(Ce)、モナザイト)は、鉱物(リン酸塩鉱物)の一種。ペグマタイト、花崗岩、片麻岩、砂岩などに含まれる。通常、小さな孤立した結晶として発生する。モナズ石はしばしば砂鉱床で見つかる。インドの鉱床は特にモナズ石に富む。

ふつうのモナズ石は、希土類元素のうちセリウムを最も多く含むので、英名は monazite-(Ce)、化学組成は CePO4 と表す。ネオジムを最も多く含むネオジムモナズ石は、monazite-(Nd)、(Nd,La,Ce)PO4 となる。

実際にはモナズ石は、元素組成によって少なくとも3種類が存在する。
モナズ石(monazite-(Ce)) : (Ce,La,Nd,Th)PO4
ランタンモナズ石(monazite-(La)) : (La,Ce,Nd)PO4
ネオジムモナズ石(monazite-(Nd)) :(Nd,La,Ce)PO4

括弧内の元素は鉱物内の相対的含有率の順に並んでいる。ランタンはランタンモナズ石の中では最も量が多い希土類元素である。

トリウムやウランを含むことが多く、弱い放射能を持つ。トリウム鉱石としても利用される。トリウムとウランのアルファ崩壊のために、モナザイトはかなりの量のヘリウムを含んでおり、加熱するとヘリウムを抽出することができる。

モナザイトの語源は、ギリシア語の μονάζειν (孤立する)であり、結晶が孤立して存在するところから来ている。



目次 [非表示]
1 モナズ石グループ
2 関連項目
3 参考文献
4 外部リンク


モナズ石グループ[編集]
モナズ石(monazite-(Ce)) : CePO4
ランタンモナズ石(monazite-(La)) : (La,Ce,Nd)PO4
ネオジムモナズ石(monazite-(Nd)) : (Nd,La,Ce)PO4
brabantite : Ca0.5Th0.5(PO4)
cheralite-(Ce) : (Ce,Ca,Th)(P,Si)O4
huttonite : ThSiO4
rooseveltite : BiAsO4
gasparite-(Ce) : (Ce,La,Nd)AsO4

関連項目[編集]

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