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2014年02月13日

金(きん、英: gold, 羅: aurum)は原子番号79の元素。元素記号は Au。第11族元素に属する金属元素。



目次 [非表示]
1 概要
2 性質
3 利用の歴史
4 用途 4.1 工業用品としての利用
4.2 通貨・投資対象としての利用
4.3 装飾品としての用途

5 カラーゴールド
6 純度 6.1 カラット (Karat)
6.2 千分率(‰ パーミル)

7 金鉱床
8 金鉱山 8.1 産出国

9 化合物と同素体
10 同位体
11 毒性
12 金の地上在庫
13 日本にある金の総量
14 金に関連する作品
15 脚注
16 関連項目
17 外部リンク


概要[編集]

貴金属の一種であり、単体の金属として古くから知られてきた。元素記号は Au であり、これはラテン語で金を意味する aurum に由来する[1]。

柔らかく、可鍛性があり、重く、光沢のある黄色(金色)をしており、展性と延性に富み、非常に薄くのばすことができる。「こがね/くがね(黄金: 黄色い金属)」とも呼ばれる。同族の銅と銀が比較的反応性に富むこととは対照的に、標準酸化還元電位に基くイオン化傾向は全金属中で最小であり反応性が低い。熱水鉱床として生成され、そのまま採掘されるか、風化の結果生まれた金塊や沖積鉱床(砂金)として採集される。

金は多くの時代と地域で貴金属としての価値を認められてきた。化合物ではなく単体で産出されるため装飾品として人類に利用された最古の金属である。銀や銅と共に貨幣用金属の一つであり、貨幣(金貨)として使用され、流通してきた。ISO通貨コードでは XAU とあらわす。また、医術、エレクトロニクスなどの分野で利用されている。

性質[編集]

金は単体では金色と呼ばれる光沢のある黄色い金属であるが、非常に細かい粒子状(コロイド)にすると黒やルビー色に見える場合があり、時には紫色になる。これらの色は金のプラズモン周波数によるもので、主に黄色と赤を反射し青を吸収する。このため、薄い金箔を光にかざすと、反射と吸収の谷間にあたる緑色に見える。

展性・延性に優れ、最も薄くのばすことができる金属であり、1 gあれば数平方メートルまでのばすことができ、長さでは3000 mまで伸ばすことができる。平面状に伸ばしたものを「金箔」(きんぱく)、糸状に伸ばしたものを「金糸」(きんし)と呼ぶ。豪華な衣装を作るために、金糸は綿や絹など一般的な繊維素材と併用される。

他の金属と溶け合いやすいため、混ぜて合金とすることが容易である。これにより他の金属の伸長性が増し、変化に富んだ色の金属を作ることができる。銅との合金は赤く、鉄は緑、アルミニウムは紫、白金やパラジウムやニッケルは白、ビスマスと銀が混ざった物では黒味を帯びた色調になる。自然に存在する金には通常10 %程度の銀が含まれており、20 %を超える物は、エレクトラム、青金または琥珀金と呼ばれる。さらに銀の量を増やして行くと色は次第に銀白色になり、比重はそれにつれて下がる。

金は熱伝導、電気伝導ともに優れた性質を持ち、空気では浸食されない。熱、湿気、酸素、その他ほとんどの化学的腐食に対して非常に強い。そのため、貨幣の材料や装飾品として古くから用いられてきた。ハロゲンは金と反応を起こし、王水やヨードチンキは金を溶かすことができる。
Au + HNO3 + 4 HCl → H[AuCl4] + NO + 2 H2O
また強力な酸化作用を有する熱濃セレン酸にも溶解する。さらに酸素の存在下でシアン化物の水溶液に錯体を形成して溶解する。この反応は金鉱石から金を抽出するために応用されている。
4 Au + 8 NaCN + O2 + 2 H2O → 4 Na[Au(CN)2] + 4 NaOH
金で安定な原子価は+1, +3であり、化合物あるいは水溶液中において Au3+ など単純な水和イオンは安定でなく、[Au(CN)2]− および [AuCl4]− など主に錯体として存在する。AuCl など1価の金化合物はシアノ錯体を除いて一般的に水溶液中で不安定であり不均化しやすい。
3 AuCl + H2O → H[Au(OH)Cl3] + 2 Au
また金化合物は一般的に熱力学的に不安定であり、光の作用により分解し、単体の金を遊離しやすい。合金中において金はイオン化したとしても直ちに他の金属によって還元され、添加された金属は酸化される。

利用の歴史[編集]

金は有史以前から貴重な金属として知られていた。貴金属の一種である金は、そのままの形で自然界に存在しているため、精錬が必要な鉄などよりも早く人類が発見できた。他の貴金属や隕鉄とともに人類最初期から利用された金属とされる。

金は紀元前3000年代に使われ始めた。最古の金属貨幣は紀元前7 - 6世紀にリディアでつくられたエレクトロン貨で、天然の金銀合金に動物や人物を打刻している。金は中国で商時代に已に装飾品として使われ、春秋戦国時代には貨幣や象嵌材料として使用された。

日本では福岡県志賀島にて発見された漢委奴国王印がある。古墳時代には奈良県東大寺山古墳出土の「中平」銘鉄剣や埼玉県稲荷山古墳出土の「辛亥」銘鉄剣など、鉄地に線を彫って金線を埋め込んだ金象嵌がある。平安時代には奥州(現在の東北地方)で大量の砂金が産出され、奥州を支配した奥州藤原氏によって平泉が平安京に次ぐ日本第二の都市として栄えた。奥州産の金は、京都や北宋、沿海州などとの交易や、中尊寺金色堂・東大寺盧舎那仏像などに使用された。平泉・金色堂はマルコ・ポーロが東方見聞録で 紹介した、黄金の国ジパングのモデルになったともされる。

古代エジプトのヒエログリフでは、紀元前2600年頃から金についての記述が見られる。ミタンニの王トゥシュラッタが、通常は粒として請求をしている。エジプトとヌビアは、史上でも有数の金産出地域である。旧約聖書でも、金について多く触れられている。黒海の南西部は、金の産出地として名高い。金を利用した物としては、ミダスの時代にまでさかのぼると言われている[誰によって?]。この金は、紀元前643年から630年のリディアでの、世界で初めての貨幣成立に大きく影響を及ぼしたと言われている[誰によって?]。

ヨーロッパのアメリカ探検家達による金の強奪は、当時のアメリカ先住民達が持っていた金の量から見ても膨大な量に上った。とくに中央アメリカ、ペルー、コロンビアを原産とする物が多い。

歴史上の評価を総括するならば、金は最も価値のある金属と考えられてきた。そして多くの通貨制度において、その基準とされてきた(金本位制)。また純粋、価値、特権階級の象徴としてもとらえられてきた。金の採掘は比較的容易であり、1910年からこれまでに、究極可採埋蔵量のうち75 %ほどの金が産出されてきたと考えられている。地質学的に、地球上にある採掘可能な金の埋蔵量は、一辺が20 mの立方体に収まる程度と考えられている。

初期の科学者達の目指した目標は、水銀など他の物質から金を作り出す錬金術だった。金を生み出すことができる物質は賢者の石と名付けられ、賢者の石を作ることに多くの努力がなされた。その試みの全ては失敗に終わったが、その過程で発見された多くの事象を元にして、今日の化学は成り立っている。現代では、金を始めとする貴金属原子の合成は、加速器などを用いて、他の元素から核種変換することで可能なことが分かっている。

錬金術師達は、中心に点が描かれた円の記号で金を現していた。これは占星術の記号でもあり、エジプトのヒエログリフ、および初期の漢字では太陽を現す記号としても用いられた。

19世紀のゴールドラッシュ以降、カリフォルニア州、コロラド州、オタゴ、オーストラリア、サウスダコタ州ブラックヒルズ、カナダのクロンダイクなどで大きな金の鉱脈が発見されてきた。

用途[編集]

金は金属としては非常に軟らかい物質であり、通常は銅や銀、その他の金属と鍛錬されて用いられる。金とその他の金属の合金は、その見栄えの良さや化学的特性を利用して指輪などの装飾品として、また美術工芸品や宗教用具等の材料として利用されてきた。さらに貨幣、または貨幣的を代替する品物として用いられてきた。

フィクションの世界では金製品の武具が多く登場するが、現実には特殊な使用法を除いて殆ど実戦に役立つ物では無い(軟らか過ぎ、重過ぎる、高価過ぎる、という特性のため、武具の素材としては不適切、良くて装飾程度)ただし富の象徴と力の象徴として飾られていた事はある。

工業用品としての利用[編集]

金は、前述のような耐食性、導電性、低い電気抵抗などの優れた特性を持ち、20世紀になってからは工業金属として様々な分野で使用されている。近年では、廃棄された工業用品(おもに携帯電話などの電子基板)を溶解し、金、リチウムなどの貴金属や希少金属(レアメタル)を抽出する事業(いわゆる都市鉱山)も展開されている。





性能向上の為に金メッキが施された端子電気抵抗が小さく、延性が高いためコンピュータ (CPU) などの回路、電子部品のワイヤ・ボンディングなどに用いられる。ただし、最近は安くて導電率が高い銅を使ったワイヤ・ボンディングが台頭している。
高い導電性と酸化による腐食に対する強い耐性から、表面を金メッキしたものは年月を経ても錆びないため、電子部品の電導体やコネクタの部品として広く利用されている(銀のほうが導電性は高いが、空気中では表面に硫化物を生成して導電性が低下するため、金のほうがコネクタの材料としては優れている)。
歯科の治療に用いる歯冠として古くから利用されている。金歯や金パラ(金銀パラジウム合金。銀歯の一つ)として使われていたが、現在はコバルト・クロム合金やセラミック材料などのより安いものに置き換えらつつあり、金の使用は減少しつつある[2]。しかし、日本では金銀パラジウム合金が保険適用となっているため、日本での歯科用途での金の使用は減少していない[2]。
多くの競技や賞の賞品メダルの材質の一つとしても用いられている。オリンピックにおける金メダル(スターリングシルバー若しくはブリタニアシルバーの土台に総量6グラム以上めっき)、ノーベル賞など。銀や銅も同様に使用される。
コロイド状金(粒状金)は、非常に強烈な色素として多くの研究室で応用が研究されている。
触媒として広く利用されている。表面化学の研究の進展により主に単結晶表面での反応性が調べられ、極めて不活性であると考えられてきた。しかし、春田正毅らによって、金の粒子径(1 - 10 nmでの)制御により一酸化炭素を-78 °Cの低温下でも二酸化炭素に酸化できるという発見および酸素水素混合ガスを酸化剤に用いてプロピレンを選択的にエポキシ化できるという発見がなされてから一転、金触媒ブームが巻き起こった[3]。また、金の様々な合金はこの分野で作られたのが初めである。
放射性同位体 Au-198(半減期2.7日)はいくつかの癌の抑制治療に用いられている。
生物学分野では、走査型電子顕微鏡で用いる生物のコーティング材として用いられている。
可視光、非可視光ともによく反射するため、人工衛星の保護剤として全体に貼られている。
同様の性質を利用して、宇宙飛行士の船外服のヘルメットのバイザーに薄膜として蒸着させることで紫外線を防ぐことが可能である。
鍼治療用として、金を含む材質の鍼が製造されている。一般的なステンレスの鍼に比べて高価なため、金の鍼を使うのが効果的とされる特異な症状に対してコスト面で折り合いがつく場合に用いられる。
フルートをはじめとした管楽器などの材質(管やキィ部分)に用いられる。一般的である洋銀、銀よりも響きが豊かになる。

通貨・投資対象としての利用[編集]





USドル表示の価格推移グラフ
流通目的の金貨として利用する場合は、単体では軟らかすぎる(因みにこの軟性を利用して、嘗ては金貨などを噛む事で歯形が付くかどうかで本物か紛い物かを判別していた時期がある(すなわち歯形が付かないほど不純物が混ざっている事になるため)。オリンピックなどの競技で優勝者が金メダルを咥えて見せる事があるが、この名残である。あるいは金地金を充分に用意できないなどの理由で、銀や銅など他の金属と混ぜた合金として利用されてきたが、最近の主に投資目的の地金型金貨においては純金製のものが一般的になっている。日本でも江戸時代には小判、一分判などの金貨が流通していた。明治時代になっても、金は銀行が発行する紙幣との交換が可能で、その価値が保証されていた(兌換貨幣、金本位制。日本の金貨を参照)。

現在は、紙幣との交換はできないが、今なお各国の中央銀行が支払準備金として金を保有している。また、鉱山会社や証券会社や銀行や地金商などの貴金属専門業者、商品取引員等で、金を投資対象とする金融商品(金ETF、純金積立など)が取り扱われている。キロバーの購入の場合は、地金商や鉱山会社などの貴金属専門業者等で購入するよりも商品取引員で購入するほうが、東京商品取引所の金先物市場の期近を活用しているため、東京商品取引所の受渡供用品且つ受渡供用品の商号又は商標の指定は出来ないが中間マージンが低い分安いコストで購入できる。逆にキロバーを鋳造する地金商からの購入の場合は、自社で溶解し自社ブランドの刻印を刻んで販売するため、その分コストを上乗せされ販売されている。金本位制が崩壊した今も、(恐らくはその名残として)貨幣のような価値をまだ認められていると考えられる。

他の貴金属と同様、金も取引の際にはトロイオンス、またはグラム建で価格が決定される。


金の価格は、公開された市場取引によって決められる。現在一般に「金価格」と呼ばれているものには、1919年にロンドンで設立された The London Gold Market Fixing Ltd. (TLGMFL) にて1日2回(午前と午後)決定される現物価格(呼値1トロイオンス当たり0.25US $(USD)) と、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX。旧ニューヨーク商品取引所(COMEX)から承継)及び同取引所の親会社に当たるCMEグループが運営する24時間稼働の電子取引システム「グローベックス」で決められる金先物取引中心限月価格(呼値1トロイオンス当たり0.10US $(USD)標準品純度99.50%以上の金地金) の2つがある。後者は経済指標として用いられることもある。その他、世界各地で相対取引(Over The Counter(OTC))されているロコ・ロンドン(Loco London)取引(建値1トロイオンス当たりUS $(USD)受渡品最低純度99.50%以上の金地金「グッドデリバリーゴールドバー」) 、インドのマルチ商品取引所(呼値10グラム当たり1ルピー(INR)標準品純度99.50%以上の金地金) 、ドバイ金商品取引所(呼値1トロイオンス当たり0.10US $(USD)標準品純度99.50%以上の金地金) 、東京商品取引所(呼値1グラム当たり1円(JPY)標準品純度99.99%以上の金地金)や上海期貨交易所(呼値1グラム当たり0.01元(RMB)標準品純度99.95%以上の金地金)などでの先物取引など世界各地で取引されている。日本での金価格は、ドル円相場、ロコ・ロンドン価格及び国内要因等により形成され(東京金先物価格)、加え、東京金先物の受渡など流通段階で金価格に対する消費税が加算され、小売価格では業者への手数料等が加算される。

TLGMFL設立時のメンバーはN・M・ロスチャイルド&サンズ (N.M.Rothschild & Sons)、モカッタ&ゴールドスミド (Mocatta & Goldsmid)、ピクスリー&アベル (Pixley & Abell)、サミュエル・モンタギュー・アンド・カンパニー (Samuel Montagu & Co)、シャープス・ウィルキンズ (Sharps Wilkins) であった。TLGMFL 会員権はその後変遷を辿り、2011年現在のメンバーはバークレイズ(子会社のバークレイズ・キャピタル Barclays Capital が加入[4])、香港上海銀行 (HSBC)[5]、スコシアバンク(子会社のスコシア・モカッタ Scotia-Mocatta[6] が加入)、ドイツ銀行[7]、ソシエテ・ジェネラル[8]である。

歴史的には、貨幣の価値によって同等の重さの金と交換できる金本位制として知られる、経済システムの裏を支える物として使われてきた。この方式では、政府および中央銀行は、通貨と金の交換価値を定めることになる。長い間アメリカ合衆国では1トロイオンスを$20.67 ($664.56/kg) で交換可能としていたが、1934年に1トロイオンスあたり$35.00 ($1125.27/kg) となった。だが1961年には経済力に対して金が不足し、価格の調整が困難になった。

金を背景とした経済環境の崩壊を受け、1968年3月7日、国際取引単位である1トロイオンスあたり$35.00 ($1.13/g) と個人間取引の変動価格の二段階の価格が設定された。この方式は1975年には破綻をきたし、金は自由取引されるようになった。中央銀行は歴史的理由から価値が下がってはいるが、金を保有し続けている。最も多くの金を保有しているのはアメリカ合衆国連邦準備制度下の各連邦準備銀行である。金価格は比較的安定した貨幣によって定められ、米ドル建で決定され各国通貨に換算される。

1968年以降、公開市場での金の価格が大きく動く。2008年3月17日にNYMEXが$32,713/g ($1,017.50/oz) を記録して以来、金価格はロンドン現物、NYMEX/グローベックス先物共に歴史的な高値圏にある。特に2011年はチュニジアのジャスミン革命を引き金とした中東情勢の緊張、日本の東日本大震災、アメリカの連邦債務上限額引き上げ問題を背景とした米国債ショック、ギリシャ経済危機を発端とするユーロ圏ソブリン危機の再燃などの影響を受け金価格は急騰。グローベックス先物は2011年8月22日2200GMTに$59,199/g ($1,903.30/oz。KITCO調べ。参考資料)を記録。ロンドン現物も2011年9月2日午後の値決めで金価格がプラチナ価格を初めて上回り、9月5日午前の値決めで$58,987/g ($1,896.50/oz。KITCO調べ。推移)に達した。その後、2011年9月22日のアメリカ連邦公開市場委員会後に300米ドル近く値を下げ、2011年10月現在$1,600/oz台で推移している。
また、東京商品取引所の金(標準取引)の上場来最高値(先物、金価格に対する消費税抜きの価格)は、期近2013年2月7日の5,065円/g、期先2013年2月7日の5,081円/g (2013年4月現在)である(1982年3月23日上場)。そして、国内小売価格(田中貴金属工業)の最高価格は1980年1月21日に6,495円/gを記録している。

なお、日本での金取引自由化後における最安値は、NYMEX先物(終値ベース)は1999年7月19日の$7,866/g ($252.90/oz) 、ロンドン現物は同年7月20日午後の$7,862/g ($252.80/oz)(いずれもKITCO調べ)、東京商品取引所の金(標準取引)の上場来最安値(先物、金価格に対する消費税抜きの価格)は、期近同年9月16日の865円/g、期先同年9月16日の836円/g である。そして、国内小売価格(田中貴金属工業)の最安値は同年9月17日に917円/g(税抜)を記録している。

装飾品としての用途[編集]

キャスト、プレスを用いた量産タイプの指輪やブローチ、手作りの一品ものなどジュエリーとしての用途が多い。

線状にした金は繊維状の刺繍に用いられる。

展延性がよいため金箔として美術工芸品建造物に用いられる。また金箔を粉にしたものは味や栄養に影響しないが華やかに見えるという点から、飲料や料理の食材にあるいは酒に混ぜるなどして用いられる。この場合の金粉は銅抜きと呼ばれ割り金として銅は含まれていない。 また食器類に用いる場合は、見栄えをよくするのみならず、食品に金属の味をつけない意味でも有用になることがある。

金は通常錆びることがなく、アレルギーの発現率が小さいことから、アクセサリーとして手入れしやすく安心して身につけられることも人気の理由となっている。 しかし、厚生労働省の病院モニター制度の報告によると、パッジテストでは金もアレルギー反応があり、金合金のジュエリーによるアレルギーの報告がある。そのうちの、ニッケルを含むホワイトゴールドは特にアレルギーを起こしやすい金属と言われているが、しかし一般社団法人日本ジュエリー協会の調査では、この合金による金属アレルギーの報告は届いていない。但し、ニッケルめっきによる金属アレルギーの例は多い。


金を使った装飾品は特にインドや中国で需要が高い[2]。また、日本製の金装飾品は品質が高く、アジアからの観光客に人気がある[2]。現在は貴金属を使わないコスチュームジュエリーなどが伸びてきており、金装飾品の需要を減らしている[2]。

純金は軟らかいそのままでは装飾品として機能しづらい。従ってほとんどの場合、別の金属(割り金)を添加した合金を用いて装飾品を作る(純度に関しては当該項目を参照)。国内の装飾品では K18 や K14 が一般的であるが、欧米ではK9やK8も市場に多い。




カラーゴールド[編集]





金−銀−銅三元合金の色相図
金合金は、割り金の銅、パラジウム等の配合率によって様々な色調を示す。これらを総称してカラーゴールドと呼ぶ。 カラーゴールドの代表的なものをあげる。
イエローゴールドK18 の場合、金750‰、残りを銀銅等量のものをイエローゴールドと称している。しかし、銀4〜6、銅6〜4の比率の範囲も、イエローゴールドの範疇としている(ISO8654)。一般的に認知されている金色に近い。グリーンゴールドK18 の場合、金750‰で残りが銀の合金をグリーンゴールドと称している。日本語では青割り、又は青金という。ISO8654 の金の色と名称の範囲で、グリーンゴールドの成分比率と色名を定めている。ピンクゴールドK18 の金750‰、残りの割り金の80 %銅の合金を一般的に、ピンクゴールドと称している。パラジウムを加えることがある。レッドゴールドK18 の金750‰、残りの割り金が全て銅の合金をレッドゴールドと称している。グリーンゴールド同様、ISO8654 で成分比率と色名を指定している。日本語では赤割り、又は赤金と言う。パープルゴールド金800‰に対してアルミニウム約200‰程度の割合の合金[9]で、地金は紫色を呈する。脆いという性質があったが近年の加工技術により宝飾品として部分的に利用されている。ホワイトゴールド 白色金ニッケル系とパラジウム系があり、金にそれぞれの元素と、前者は、さらに銅、亜鉛を、後者はさらに銀、銅を加えて、白色化した金合金をホワイトゴールドと称している。K18 の場合、ニッケル系、パラジウム系ともそれぞれ50‰以上を含まないと、白色度が不足する。一般社団法人日本ジュエリー協会は色差を用い、ホワイトゴールドの色の範囲を指定している。以前はプラチナの代用品として装飾品に用いられたが、現在はカラーゴールドの一種としての地位を得て、イエローゴールド以上に普及している。
このほか、黒味がかったブラック・ゴールドや、柔らかな金茶色のベージュ・ゴールドなどもある。

純度[編集]

合金の主成分の含有率を純度、又は品位という。金の品位は、24分率で表される習慣がある。その場合、純金は24金、24カラット (Karat)、あるいは、K24 と表す。そして、金の含有率に従い数値を変える。例えば、18金は金の含有率が18/24、すなわち750‰であることを表し、装飾品に750と刻印される。なお、このカラットは宝石の重量を表すカラット (carat・1ct=0.2g) とは異なるものである。

日本では99.99 %以上の純度の金を24カラット、又は純金と表示して良いことになっている。

また、ジュエリー用金合金の場合は、999以上を純金と表示してもよい。但し、1000分の1に硬化材が添加されている可能性があるので、地金取引に用いるインゴットの純金とは異なる。

このほか、純金の度合いを0.995などのように0から1の間の数値で表すこともある。

カラット (Karat)[編集]

現在でも金の装飾品や万年筆のペン先の純度表示に使われている。

ちなみに金の純度を24分率で表す単位のことで、K24(24金)とは純度の24分の24を表す(純金)。K22(22金)なら24分の22 (91.67 %、ジュエリー用916‰)、K18(18金)なら24分の18 (75 %、ジュエリー用750‰)となる。

千分率(‰ パーミル)[編集]

ジュエリー用金合金は、次のように千分率で表すと決められている。また、その単位は最低値であり、マイナスは不可とされる。 多くの国は、ISOやCIBJOの定める品位区分に基づいた製品を作っているが、日本国内では市場に合わせて品位が開発されているので、下に明記された区分以外の品位も存在する。

ISO9202 JIS-H6309 の品位区分

916(K22に相当) 750(K18に相当) 585(K14に相当) 375(K9に相当)

CIBJO(国際貴金属宝飾品連盟)の品位区分

999 986 916 750 585 416 375 333

造幣局貴金属製品品位証明区分

999 916 750 585 416 375

金鉱床[編集]





カリフォルニア産(上) オーストラリア産 (下)八面体型をしている
酸化をほとんど受けない金は、主に自然金(しぜんきん、native gold、金の単体)として得られることがほとんどである。また金は、火成岩中にも極微量に含まれる。ただし、採算が取れるほど固まって産出されるのはまれであるため、銅や鉛などの精製過程における副産物として通常は得られる。金鉱山として金を産出する場合は、金の鉱脈、あるいは鉱染を受けた岩体に沿って掘っていく。そのほかに、金を含む鉱石が風化した、砂状のものをパンニング皿(側面に一定間隔で凹凸の刻みが入れてある皿)などの道具によってより分ける砂金掘りの方法もある。

通常、石英、炭酸塩、まれに硫化物の鉱脈(英:vein)の中に自然金として存在する。硫化物では黄鉄鉱、黄銅鉱、方鉛鉱、閃亜鉛鉱、硫砒鉄鉱、輝安鉱、磁硫鉄鉱などの鉱床に含まれていることが多い。非常に稀であるがペッツ鉱、カラベラス鉱、シルバニア鉱、ムスマン鉱、ナギヤグ鉱、クレンネル鉱などの鉱脈に含まれていることもある。また、金は鉱化流体として存在していることが多く、間隙の多い岩体を金を含む熱水が通過した場合は鉱染状に金が産出する。この場合、鉱石単位量当たりの金含有量は少ないものの、総量が多くなることがある。





金鉱石
金は地球全体の地殻内に広く分布して存在しており、存在比は0.003 g/1000 kg程度 (0.003 ppm) である。熱水鉱床は変成岩と火成岩のなかに生成する。

金鉱床は銀、銅や水銀、硫化鉄、テルルなどのレアメタル、砒素を同時に産出することが多い。銀やレアメタルは鉱山の収益を補えるが、脈石となる水銀や砒素はそのまま廃棄されると公害の原因になり、公害対策や公害処理の費用のために逆に収益に影響を及ぼすことがある。

鉱床は風化や浸食されていることもあり、その場合、金は砂金として小河などに流されるが比重が大きいために沈殿しやすく、重い鉱物の漂砂鉱床や砂鉱床に集まっている。もう一つ重要な鉱床は堆積頁岩または石灰岩の鉱脈で、これはまばらに単体の金がプラチナなどの金属とともに散在する形で存在する。

また、海水中にも金は含まれており、その割合は1000 kgあたり0.1 - 2 μg (1×10−4 - 2×10−3 ppb) 程度である。

金鉱山[編集]





オーストラリア、ビクトリアにある金鉱山の入り口
経済的に金鉱山と言える物は平均して1000 kgあたり0.5 gの金を産出する必要がある。典型的な鉱山では、露天掘りで1 - 5 g/1000 kg (1 - 5 ppm)、通常の鉱山で3 g/1000 kg (3 ppm) 程度である。人間の目で見て金と分るには鉱脈型の鉱床で少なくとも30 g/1000 kg (30 ppm) 程度の濃度が必要で、それ以下の金鉱石では鉱石内に金があることを人間の目で見分けることはほとんどできない。

沖積層の鉱床では砂鉱床採掘が用いられ、堅い岩の鉱脈では金属抽出が用いられる。金の精製を完了するには塩素処理または電解精錬を用いる。海水中には前述の通り金が含まれているが、2005年現在採算の取れる抽出方法は見つかっていない。

1880年代から南アフリカが金産出の2/3を占めていたが、2004年時点では1/3まで比率が低下した。ヨハネスブルグが世界で最も多くの金を産出する都市と言われている。オレンジ自由州とトランスバール州にある金鉱山は世界で最も深く掘られた鉱山となっている。1899年から1901年までのボーア戦争はイギリスとボーアの鉱山労働者の権利と、南アフリカの金の所有権に関する争いである。その他の主な金の産出地としてはロシア、カナダ、アメリカ、オーストラリア西部にある。

日本ではかつて、比較的多く金が産出した。マルコ・ポーロの東方見聞録などで「黄金の国」と呼ばれていたのも、日本産の金が出回っていたからである。

戦国期には甲斐国において黒川金山や湯之奥金山が稼業し、金山衆により採掘された金鉱石を粉成、精錬し金生産を行なっていたと考えられている。

しかしながら、江戸時代前期、すなわち寛永年間以降は国産の金山は徐々に衰え始めた。たとえば有名な佐渡金山もすでに採掘をやめ、現在は観光地化している。大正・昭和初期の頃には東洋一の金山と言われた北海道の鴻之舞金山は採算ベースに乗る金を全て掘り尽くし1973年(昭和48年)に閉山。現在では、辛うじて1985年(昭和60年)から菱刈鉱山が採掘されるなどのみである。この一方、現在海底の熱水鉱床からの産出が将来的に期待されている。

産出国[編集]

2009年の金産出国ランキング上位10カ国は下記のとおり。数値は産出量(トン)、世界シェア(出典: 二宮書店『地理統計要覧 2012年版』)。南アフリカ共和国では、Witwatersrand 地方に先カンブリア時代に形成された鉱山が集中している。金鉱床は約400kmに及ぶ露頭に沿っている。金の生産は安定しており、年度ごとの増減は少ない[10]。南アフリカ共和国での電気供給不安などのサプライ懸念がある上に、新規の鉱山開発などが年々難しくなっており、実際に過去10年の供給量は微減しているとも言われる(ワールドゴールドカウンシル発表)。
1.中華人民共和国 320 (13.1 %)
2.アメリカ合衆国 223 (9.1 %)
3.オーストラリア 222 (9.1 %)
4.南アフリカ共和国 198 (8.1 %)
5.ロシア 191 (7.8 %)
6.ペルー 182 (7.4 %)
7.インドネシア 130 (5.3 %)
8.カナダ 97 (4.0 %)
9.ウズベキスタン 90 (3.7 %)
10.ガーナ 86 (3.5 %)
世界合計 2,450
化合物と同素体[編集]

塩化金(III) (AuCl3) とテトラクロロ金(III)酸(塩化金酸)(HAuCl4) は最も有名な金化合物の一つである。金を含む化合物は多くの場合、金原子は+1または+3の酸化状態として存在する。金イオンは1価、3価ともに軟らかい酸であり、軟らかい塩基と錯体を形成しやすい。またフッ素との反応では+5価の酸化状態もとり、フッ化金(V) (AuF5) を形成する。さらに金疹とよばれる Au− のアニオンを含む CsAu や RbAu、およびテトラメチルアンモニウム金 (CH3)4N+ Au−) のような化合物を形成する。これは水素化ナトリウムにおけるヒドリドのように、主に非金属元素がとる-1価と同形式のものである。

これまで合成された金の化合物の種類は同族の銀や銅とくらべると少ない。下記に主な化合物を列挙する。
テトラクロロ金(III)酸 (H[AuCl4])(金は王水に溶けて AuCl4− イオンを作る)
ハロゲン化金(フッ化金、塩化金、臭化金、ヨウ化金)(AuX, AuX3)
カルコゲン化金(酸化金、硫化金、セレン化金、テルル化金)(Au2X, Au2X3)
ジシアノ金(I)酸カリウム (K[Au(CN)2])
雷金 (Au2O3・nNH3) - イミドあるいはアミド基を含む爆発しやすい緑色または黄褐色の粉末である。
水酸化金(III) (Au(OH)3)

同位体[編集]

詳細は「金の同位体」を参照

毒性[編集]

単体の金は化学的反応性が低い金属であるが、必須ミネラルであるカルシウムやカリウム、鉄等と異なり健康な人体には必須な元素ではないとされている。金イオンは安定な単体の金(0)とは異なり酸化力が強く、無機金塩類は毒物及び劇物取締法等により劇物に指定されている。また、一部の有機金塩類は自己免疫疾患を抑えるのに有効であり、日本ではリウマチ性関節炎に有効な治療薬(ミオクリシン、オーラノフィン等)が医療保険適用として薬価収載されている。金剤によるリウマチ治療は「クリソテラピー」と呼ばれる。

金をイオン化するには王水(濃塩酸と濃硝酸とを3:1の混合液)に金を溶かすのが最も有名な反応である。このイオン化状態の金は安定な単体の金(0)とはまったく異なり強力な酸化力がある。金による中毒(金中毒)としては接触皮膚炎、接触アレルギーがあげられる。これらは単体の金の装飾品を皮膚につけることによって起こるものであるが、装飾品から溶解した微量金イオンに対してアレルギーが形成された人のみに見られる。金化合物によるアレルギーとしては腎臓障害・肝臓障害・貧血等がみられる。

金中毒の解毒剤としてはジメルカプロール (HSCH2CHSHCH2OH) が使われる。ジメルカプロールは金と安定な錯体を形成して、速やかに体外に除去する働きをもつ。

金イオンは人間に限らず、ほとんどの生物に対して毒性を示す。しかし、一部の真正細菌は金イオンに対して耐性を示す。デルフチア・アシドボランスは、自身が出す代謝物で金イオンから自身を保護し、金イオンを無害な金の単体に変える能力を持つ[11]。

金の地上在庫[編集]

イギリスの GFMS の統計によれば2009年末時点で総量は165,600トンである(金の地上在庫とはこれまでに採掘され精製加工された金の総量のこと)。
(参考)主要各国の保有量[12]アメリカ合衆国[13]:8134トン(外貨準備に占める割合は78.2 %)
ドイツ:3413トン(同66.3 %)
フランス:2541トン(同59.4 %)
イタリア:2452トン(同68.1 %)
スイス:1064トン(同39.8 %)
日本:765トン(同2.1 %)
オランダ:621トン(同61.2 %)
中国:600トン(同1 %)
インド:358トン(同3.3 %)

日本にある金の総量[編集]

2008年1月現在、日本に「地上資源」ないし「都市鉱山」として存在する金は約6800トンで、これは全世界の金の現有埋蔵量の約16 %にも及ぶ量である[14]。

金に関連する作品[編集]
ドキュメンタリー『NHKスペシャル 宇宙 未知への大紀行』 第5集『150億年の遺産 〜生命に刻まれた星の生と死〜』 (NHK) - 超新星爆発、星の誕生といった天文現象と金の元素生成との関連について解説。
映画『007 ゴールドフィンガー』
映画『秘境』
ミダース#神話(イソップ寓話の一篇としても知られる)

脚注[編集]

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1.^ 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、322頁。ISBN 4-06-257192-7。
2.^ a b c d e ゴールド・デマンド・トレンド 2012年第2四半期 World Gold Council
3.^ T. Ishida, M. Haruta, Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 7154.
4.^ 2004年にN・M・ロスチャイルド&サンズから会員権譲受。
5.^ 1992年のミッドランド銀行 Midland Bank(現 HSBC バンク HSBC Bank plc)買収に際し、同行系列にあったサミュエル・モンタギュー・アンド・カンパニーを傘下に収める。
6.^ モカッタ&ゴールドスミドはハンブロス・バンク Hambros Bank(現在はソシエテ・ジェネラル傘下)、スタンダードチャータード銀行と親会社の変遷を経て1997年にスコシアバンク傘下に入った。
7.^ ピクスリー&アベルとシャープス・ウィルキンズは1966年に合併してシャープス&ピクスリーとなり、2001年にドイツ銀行傘下に入った。
8.^ シャープス&ピクスリー発足により空席となった会員権はジョンソン・マッセイ Johnson Matthey、クレディ・スイス・ファースト・ボストンを経てソシエテ・ジェネラルに移った。
9.^ Weblio辞書 新語時事用語辞典
10.^ 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (World Metal Statistics) PDF
11.^ Gold biomineralization by a metallophore from a gold-associated microbe Nature Chemical Biology
12.^ 朝倉慶 『恐慌第2幕 – 世界は悪性インフレの地獄に堕ちる』 ゴマブックス 2009年
13.^ 1999年5月の上院銀行委員会で、当時の FRB 議長であったグリーンスパンは「金(ゴールド)の、売却はいたしません。ゴールドは究極の通貨だからです」と述べている。
14.^ (物質・材料研究機構「わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵」)
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