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2014年02月13日

ストロンチウム

ストロンチウム (ラテン語: strontium[2]) は原子番号38の元素で、元素記号は Sr である。軟らかく銀白色のアルカリ土類金属で、化学反応性が高い。空気にさらされると、表面が黄味を帯びてくる。天然には天青石やストロンチアン石などの鉱物中に存在する。放射性同位体の 90Sr は放射性降下物に含まれ、その半減期は28.90年である。ストロンチウムやストロンチアン石といった名は、最初に発見された場所であるストロンチアンというスコットランドの村にちなむ。



目次 [非表示]
1 性質
2 用途
3 同位体 3.1 生体に対する影響 3.1.1 家畜への蓄積
3.1.2 放射性ストロンチウムの体外排泄


4 歴史
5 ストロンチウムの化合物
6 参考書籍
7 出典
8 関連項目
9 外部リンク


性質[編集]





酸化ストロンチウムのデンドライト
常温、常圧で安定な結晶構造は面心立方格子構造 (FCC、α-Sr)。銀白色の金属で、比重は2.63、融点は777 °C、沸点は1382 °C。炎色反応で赤色を呈する。空気中では灰白色の酸化物被膜を生じる。水とは激しく反応し水酸化ストロンチウムを生成する。


Sr + 2 H2O → Sr(OH)2 + H2

生理的にはカルシウムに良く似た挙動を示し、骨格に含まれる。

酸化ストロンチウムのアルミニウムによる還元、および塩化ストロンチウムなどの溶融塩電解により金属単体が製造され、蒸留により精製される。


4 SrO + 2 Al → 3 Sr + SrAl2O4

用途[編集]

炎色反応が赤であるため、花火や発炎筒の炎の赤い色の発生には塩化ストロンチウムなどが用いられる。そのほか、高温超伝導体の材料として使われる。

炭酸ストロンチウムは、ブラウン管などの陰極線管のガラスに添加される。また、フェライトなどの磁性材料の原料としても用いられる。

単体のストロンチウムは酸素などとの反応性が高いため、真空装置中のガスを吸着するゲッターとして用いられる。

同位体[編集]

詳細は「ストロンチウムの同位体」を参照

ウランの核分裂生成物など、人工的に作られる代表的な物質放射性同位体としてヨウ素131、セシウム137と共にストロンチウム90(90Sr)がある。ストロンチウム90は、半減期が28.8年でベータ崩壊を起こして、イットリウム90に変わる。原子力電池の放射線エネルギー源として使われる。体内に入ると電子配置・半径が似ているため、骨の中のカルシウムと置き換わって体内に蓄積し長期間にわたって放射線を出し続ける。このため大変危険であるが、揮発性化合物を作りにくく[3]原発事故で放出される量はセシウム137と比較すると少ない。

骨に吸収されやすいという性質を生かして、別の放射性同位体であるストロンチウム89は骨腫瘍の治療に用いられる。ストロンチウム89の半減期は50.52日と短く比較的短期間で崩壊するため、短期間に強力な放射線を患部に直接照射させることができる。

生体に対する影響[編集]

ストロンチウム90は骨に蓄積されることで生物学的半減期が長くなる(長年、体内にとどまる)ため、実効線量係数 (Sv/Bq) は高くなり 2.8×10-8である。そのため、ストロンチウム90は、ベータ線を放出する放射性物質のなかでも人体に対する危険が大きいとされている[3]。例えば、経口で1万Bq のストロンチウム90を摂取した時の実効線量は0.28mSvである。[3]。

家畜への蓄積[編集]

1957年から北海道で行われた調査では、1960年代から1970年代に北海道のウシやウマの骨に蓄積されていた放射性ストロンチウム (90Sr) は2,000-4,000mBq/gを記録していたが、大気圏内核実験の禁止後は次第に減少し、現在では100mBq以下程度まで減少している。また、ウシとウマではウマの方がより高濃度で蓄積をしていて加齢と蓄積量には相関関係があるとしている。屋外の牧草を直接食べるウシとウマは、放射能汚染をトレースするための良い生物指標となる[4]。

放射性ストロンチウムの体外排泄[編集]

1960年代、米ソを中心に大気圏内の核実験が盛んに行われた。これに伴い、体内に取り込まれた放射性物質の除去剤や排泄促進法に関する研究も数多く行われている。放射性ストロンチウムは生体内ではカルシウムと同じような挙動をとる。IAEA(国際原子力機関)は放射性ストロンチウムを大量に摂取した場合、アルギン酸の投与を考慮するように勧告している[5]。アルギン酸は褐藻類の細胞間を充填する粘質多糖で、カルシウムよりもストロンチウムに対する親和性が高いことが知られている。ヒトにアルギン酸を経口投与してから放射性ストロンチウムを投与すると、投与していない場合と比べて体内残留量が約1/8になることが報告されている[6] [7]。また動物実験でも同様の効果があることが確かめられている[8]。

歴史[編集]

元素名は、1787年に発見されたストロンチアン石(ストロンチウムを含む鉱物)の産出地、スコットランドのストロンチアン (strontian) に由来する[9]。単体金属は1808年、英国のハンフリー・デービーにより、電解法を用いて単離される[9]。

ストロンチウムの化合物[編集]
酸化ストロンチウム (SrO) - 塩基性酸化物
水酸化ストロンチウム (Sr(OH)2) - 強塩基
チタン酸ストロンチウム (SrTiO3) - 常誘電体
クロム酸ストロンチウム (SrCrO4) - 黄色顔料・ストロンチウムクロメート(ストロンチウムイエロー、ストロンシャンイエロー)の主成分。
ストロンチアン石 (SrCO3) - 主成分炭酸ストロンチウム
天青石 (SrSO4) - 主成分硫酸ストロンチウム
硝酸ストロンチウム (Sr(NO3)2)
塩化ストロンチウム (SrCl2)
リン酸水素ストロンチウム (SrHPO4) - 蛍光体

参考書籍[編集]
『放射化学』著:古川路明 出版:朝倉書店 1994年03月25日 ISBN978-4-254-14545-8 C3343

出典[編集]

1.^ P. Colarusso et al. (1996). “High-Resolution Infrared Emission Spectrum of Strontium Monofluoride”. J. Molecular Spectroscopy 175: 158.
2.^ http://www.encyclo.co.uk/webster/S/213
3.^ a b c ストロンチウム-90 原子力資料情報室(CNIC)]
4.^ 北海道における90Srの牛馬骨への蓄積状況 農林水産省家畜衛生試験場社団法人 日本アイソトープ協会 RADIOISOTOPES Vol.48 , No.4(1999)pp.283-287
5.^ IAEA Safety Series 47(1978)
6.^ Hesp R. and Ramsbottom, B., Nature(1965)
7.^ 市川竜資「放射性ストロンチウムとアルギン酸」『化学と生物』7(4),208-211(1969)
8.^ 西村ら「放射性Srの代謝に及ぼすキトサンとアルギン酸の影響について」『RADIOISOTOPES』40,244-247(1991)
9.^ a b 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、195頁。ISBN 4-06-257192-7。
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ルビジウム

ルビジウム (ラテン語: rubidium[2]) は原子番号 37 の元素記号 Rb で表される元素である。アルカリ金属元素の1つで、柔らかい銀白色の典型元素であり、原子量は85.4678。ルビジウム単体は、例えば空気中で急速に酸化されるなど非常に反応性が高く、他のアルカリ金属に似た特性を有している。ルビジウムの安定同位体は 85Rb ただ1つのみである。自然界に存在するルビジウムのおよそ28 %を占める同位体の 87Rb は放射能を有しており、半減期はおよそ490億年である。この半減期の長さは、推定された宇宙の年齢の3倍以上の長さである。

1861年、ドイツの化学者ローベルト・ブンゼンとグスターブ・キルヒホッフ、新しく開発されたフレーム分光法によってルビジウムを発見した。ルビジウムの化合物は化学および電子の分野で利用されている。金属ルビジウムは容易に気化し、利用しやすいスペクトルの吸収域を有しているため、原子のレーザ操作のための標的としてしばし用いられる。ルビジウムの生体に対する必要性は知られていない。しかし、ルビジウムイオンはセシウムのように、カリウムイオンと類似した方法で植物や生きた動物の細胞によって活発に取り込まれる。



目次 [非表示]
1 単体の性質
2 存在
3 生産
4 用途
5 歴史
6 分析 6.1 定性分析
6.2 定量分析 6.2.1 重量分析法
6.2.2 機器分析法


7 化合物
8 同位体
9 予防措置と生物学的影響
10 出典
11 参考文献
12 関連項目
13 外部リンク


単体の性質[編集]

銀白色の極めて軟らかい金属で[3]、非放射性アルカリ金属元素の中で2番目に電気陰性度が高い。比重は1.53、融点は39.3 °C。常温、常圧で安定な結晶構造は体心立方構造 (BCC)。化合物中の原子価は+1で、ルビジウムの気体(沸点700 °C)は青色である。

他のアルカリ金属類と類似した性質を有し、ナトリウム、カリウムより反応性は強く、空気中で酸化され過酸化物 Rb2O2 および超酸化物 RbO2 を生成する。ハロゲン元素と激しく反応し、水とは反応によって水素が発生し、さらに発生した水素を点火するのに十分な量の反応熱が生じるため爆発的に反応する[4]。


2 Rb + 2 H2O → 2 RbOH + H2

ルビジウムは他のアルカリ金属類と同様に、空気中で自然発火する[3]。そのため、日本では消防法により自然発火性物質として危険物指定されている物質である。

水銀には発熱的に溶解してアマルガムを形成し、金、カルシウム、ナトリウム、カリウム、セシウムとは合金を作る[4][5]。ルビジウムのイオン化エネルギーは非常に低く、わずか406 kJ/molである[6]。2つの元素を識別するために欠くことのできない分光学的方法において、ルビジウムとカリウムは非常に似たすみれ色の炎色反応を示す。

存在[編集]


リシア雲母のサンプル


ルビジウム源であるリチア雲母
ルビジウムは地殻中に23番目に多く存在する元素である(地殻中の元素の存在度も参照)。おおよそ亜鉛と同程度に豊富であり、いくぶんか銅よりも普遍的である[7]。自然での産出は、白榴石 (en)、ポルサイト (en)、カーナライト (en)、チンワルド雲母などの鉱石に、酸化物として最大で1 %ほど含有されている。リチア雲母は0.3 %から3.5 %のルビジウムを含み、商用ベースのルビジウム源として利用されている[8]。いくつかのカリウム鉱石や塩化カリウムも、商業的に重要な量のルビジウムを含んでいる。

海水中には、平均して1 L当たり125 μgのルビジウムが含まれている。同族の他の元素と比較すると、1 L当たり408 mg含まれるカリウムより大幅に少なく、1 L当たり0.3 μg含まれるセシウムよりは大幅に多い量である[9]。

ルビジウムはそれなりに大きなイオン半径を有しているため、「不適合元素 (en)」の1つである[10]。マグマの結晶分化の間、ルビジウムはルビジウムより重く類似した性質を持つセシウムと共に液相に濃縮され、最後に結晶化する。したがってルビジウムおよびセシウムは、これらの濃縮過程によって形成されるペグマタイト鉱物に堆積する。ルビジウムはマグマの結晶化においてカリウムと置換するため、セシウムの場合ほど効果的には濃縮されない。ポルサイトのようにセシウム鉱床とするに十分な量のセシウムを含むペグマタイト鉱石や、リチウム鉱石であるリチア雲母は、副生物としてのルビジウム源でもある[7]。

2つのルビジウムの重要な産出源は、カナダのマニトバ州にあるバーニック湖(英語版)の豊富なポルサイト鉱床および、イタリアのエルバ島で産出されるルビジウムを17.5 %含んだルビジウム微斜長石(英語版)((Rb, K)AlSi3O8)[11]である。これらはセシウムの産出源でもある。

生産[編集]

ルビジウムは地殻中においてセシウムより豊富に存在するが、用途が限られていることやルビジウムを豊富に含む鉱石の不足から、ルビジウム化合物の年間生産量は2から4トン程度である[7]。カリウムからルビジウムおよびセシウムを分離するにはいくつかの方法がある。ルビジウムセシウムミョウバン (Cs, Rb)Al(SO4)2•12H2 からの分別晶出によって純粋なルビジウムミョウバンが得られる。2つの他の方法の報告では、塩化スズ法およびフェロシアン酸塩法の文献がある[7][12]。1950年代および60年代の数年間は、Alkarb と呼ばれるカリウム製品の副産物がルビジウムの主要な産出源であった。Alkarb には21 %のルビジウムとごくわずかなセシウムが含まれ、残りはカリウムである[13]。現在では、例えばカナダのマニコバ州にあるタンコ鉱山(英語版)のようなセシウムの大きな生産者によって、ポルサイトからの副産物としてルビジウムは生産されている[7]。

用途[編集]





ルビジウムを用いた原子時計(アメリカ海軍天文台)
ルビジウム87(同位体)は、半減期488億年[14]の放射性同位体であり、ベータ崩壊してストロンチウム87となる。これを使って、年代測定が可能である(ルビジウム-ストロンチウム法)。炭酸ルビジウム (Rb2CO3) を原料に混ぜたガラスは丈夫で電気絶縁性に優れているため、ブラウン管用ガラスとして用いられる。

光で励起したルビジウムは原子時計に用いられている。セシウム原子時計に比べ正確さは劣るが、小型で低価格であるため、ルビジウム原子時計は広く利用されている。

通常、ルビジウムは土壌中において非常に低濃度である反面、植物によって吸収されやすく、カリウムに似た挙動を示す。このため、トレーサとして既知濃度のルビジウム水溶液を土壌に注入、一定期間後に植物体を収獲しルビジウム濃度を測定することで、その時点における根の活性を推定できる(ルビジウムトレーサ法)。また、農作物害虫の生態調査における標識として用いられた事例もある。

ルビジウム化合物は時折、花火に紫の色を付けるために用いられる[15]。

ルビジウムは磁気流体力学の原理を応用した熱電変換材料への使用が検討されている[16]。高温の熱でルビジウムをイオン化し磁場を通過させることによって、それらは電気を伝導し、発電機の電機子のように働くことで電流が発生する。

ルビジウム、特に気化された 87Rb は、レーザー冷却やボース=アインシュタイン凝縮の用途において、最も一般的に使用される原子種の1つである。この用途における望ましい性質は、関連した波長における安価な半導体レーザーがいつでも利用できる点および、適度な温度で十分な蒸気圧を得ることのできる点である[17][要出典]。

ルビジウムは、核スピンを一定の方向に整列させた大量の磁化 3He ガスを生産する際に、3He にスピン偏極を与えるために用いられる。ルビジウムの蒸気は、レーザーによる光ポンピング (en:Optical pumping) によってスピンが偏極し、それが超微細構造に影響を与えることで 3He の核スピンを一定の方向に整列させる[18]。スピンが偏極化した 3He は、中性子偏極測定やその他の用途のための偏極中性子ビームを発生させる用途に一般化されてきている[19]。

ルビジウムは、​セル・サイト送信機や他の電子的な送信機、情報網および試験装置における周波数の精度を保つための二次​周​波​数​標​準器​の主要部品である(​ルビジウム発振機)。このルビジウム標準器は GPS において、より正確でセシウム標準器よりも安価な「一次周波数標準器」を製造するためにしばしば用いられる[20][21]。ルビジウム標準機は、データ通信産業のために大量生産されている[22]。

ルビジウムの他の可能性もしくは現在の用途としては、蒸気タービンにおける作動流体や真空管における残留ガスの吸着剤 (en:Getter)、光検出器の部品などがある[23]。ルビジウムのエネルギー準位の超微細構造を利用して原子時計の共鳴元素に用いられる[21]。ルビジウムはまた、特殊ガラスの成分や酸素雰囲気下での燃焼によって生じる超過酸化物の生産、生物学におけるカリウムイオンチャネルの研究、原子磁気センサーの蒸気の発生などに用いられる[24]。87Rbは現在、スピン偏極の緩和レートを小さくした状態を利用した磁気センサー (spin exchange relaxation-free (SERF) magnetometer en) の開発において、他のアルカリ金属類とともに使用されている[24]。

82Rb は陽電子放射断層撮影に用いられている。ルビジウムはカリウムと非常に似ているため、カリウムを多く含んだ生体細胞は放射性ルビジウムも蓄積する。主要な用途の1つは心筋血流イメージング (en) である。76秒という非常に短い半減期のため、患者の近くで 82Sr の崩壊によって 82Rb を生み出す必要がある[25]。脳腫瘍において、血液脳関門でのルビジウムとカリウムの置換の結果、ルビジウムは通常の脳組織よりも脳腫瘍の部分に多く集まるため、シンチグラフィによって放射性同位元素の82Rbを検出することで、脳腫瘍を画像化することができる[26]。

ルビジウムの双極性障害やうつ病に対する影響についての試験が行われている[27][28]。透析患者にはルビジウムの消耗が見られ、したがってルビジウムのサプリメントは憂うつを助けるかもしれない[29]。いくつかの試験において、ルビジウムは最高720 mgの塩化ルビジウムとして与えられた[30]。

歴史[編集]

1861年にローベルト・ブンゼンとグスターブ・キルヒホッフによってドイツのハイデルベルクにおいて鉱石のリチア雲母から分光器を用いることでルビジウムは発見された。発光スペクトルで赤色の光線を示すことから、ラテン語で暗赤色を表す rubidus よりルビジウムと名付けられた[31][32]。


Three middle-aged men, with the one in the middle sitting down. All wear long jackets, and the shorter man on the left has a beard.


グスターブ・キルヒホッフ(左)とローベルト・ブンゼン(中央)は分光器によってルビジウムを発見した。右側の人物はヘンリー・エンフィールド・ロスコー。
ルビジウムはリチア雲母に少量含まれる物質として存在する。キルヒホッフとブンゼンは、酸化ルビジウム (Rb2O) をわずかに0.24 %のみ含むリチア雲母を150 kg処理した。カリウムおよびルビジウムは、ヘキサクロロ白金酸によって不溶性の塩を与えるが、これらの塩類は温水中で可溶性にわずかな差を示す。その結果、ヘキサクロロ白金酸カリウムよりも溶解度の低いヘキサクロロ白金酸ルビジウムが分別晶出によって得られた。水素によるヘキサクロロ白金酸塩の還元の後、炭酸塩のアルコールに対する溶解度の差によってルビジウムの分離に成功した。このプロセスによって更なる研究に用いるための塩化ルビジウムが0.51 g得られた。セシウムとルビジウムの初めての大規模な分離は、キルヒホッフとブンゼンによって44,000 Lのミネラルウォーターから行われ、7.3 gの塩化セシウムと9.2 gの塩化ルビジウムが分離された[31][32]。ルビジウムは、キルヒホッフとブンゼンによって分光器が発明されてからわずか1年後、セシウムの直後に発見された第2の元素であった[33]。

キルヒホッフとブンゼンは、新しい元素の原子量を推定するために、このようにして得られた塩化ルビジウムを用い、その結果ルビジウムの原子量は85.47であると見積もられた(現在一般に認められている値は85.47である)[31]。彼らは溶融させた塩化ルビジウムの電気分解によってルビジウムの単体を得ようとし、肉眼での観察においても顕微鏡での観察においても金属物質であるというわずかな痕跡も示さない、青色の均一な物質を得た。彼らはそれを亜塩化物 (Rb2Cl) であるとしたが、それは恐らく金属ルビジウムと塩化ルビジウムとの、コロイド状の混合物である[34]。金属ルビジウムを得るための2回目の実験においてブンゼンは、酒石酸ルビジウムの焼成によってルビジウムを還元することができた。蒸留されたルビジウムは発火性の物質であったが、ルビジウムの密度と融点を明らかにすることができた。1860年代に行われた研究の品質は、現在一般に認められている数値と比較して、密度の違いが0.1 g/cm3未満であり、融点の違いも1度未満であることから、評価されている[35]。

1908年、ルビジウムのわずかな放射能が発見されたが、1910年代に同位体元素の理論が確立する前であり、1010年を超える長い半減期のために活性が低いため、その説明は困難であった。現在証明された、ベータ崩壊によって安定な 87Sr となる 87Rb の崩壊は、1940年代後期にはまだ議論中であった[36][37]。

ルビジウムは、1920年代以前にはごくわずかな産業的価値しかなかった[38]。以降のルビジウムの最も重要な用途は、主に化学および電子の分野における研究開発用途であった。1995年、E. A. コーネル (Eric A. Cornell) とC. E. ワイマン (Carl E. Wieman) は 87Rb を用いてルビジウム原子のボース=アインシュタイン凝縮に成功した[39]。この功績により、彼らは2001年度のノーベル物理学賞を受賞した(W. ケターレ (Wolfgang Ketterle) と共同受賞)[40]。

分析[編集]

定性分析[編集]

ルビジウムの定性分析には発光スペクトル分析が利用され、420から428 nmに紫色の二重線の発光が観察される。また、簡便な方法として炎色反応によるすみれ色の炎色の観察も行われる[41]。

定量分析[編集]

重量分析法[編集]

ルビジウムの重量分析法はカリウムやセシウムと同様の方法が利用される[42]。代表的な方法として、ルビジウム溶液に過剰量の硫酸を加えて蒸発乾固させ、得られた残渣に炭酸アンモニウムを加えて重量既知の白金坩堝で強熱することによって硫酸ルビジウムとし、その重量を秤量することでルビジウム濃度が分析される[43]。また、硫酸の代わりに濃塩酸を加えて塩化ルビジウムとして分析することもできる[44]。ナトリウムまたはリチウムを含んでいるものでは、ヘキサクロロ白金酸もしくは亜硝酸コバルチナトリウムまたは過塩素酸を加えて、ヘキサクロロ白金酸ルビジウムもしくは亜硝酸コバルチルビジウムまたは過塩素酸ルビジウムの沈殿を生じさせる方法が用いられる。これらの方法は、エタノールで洗浄することによってエタノールに溶解するリチウムおよびナトリウムの塩を除去することができる利点があり、亜硝酸コバルチナトリウムを用いた方法は特に多量の塩類が含まれる溶液の分析に有用である[45]。しかし、このようなルビジウムの挙動はカリウムと類似しているためカリウムを含む試料の重量分析は困難である。古典的な手法として、ヘキサクロロ白金酸カリウムとヘキサクロロ白金酸ルビジウムのわずかな溶解度の差を利用してカリウムとルビジウムを分離する方法や、カリウムとルビジウムの混合物の全量を塩化物として重量分析し、さらに硝酸銀溶液を用いてこの混合塩化物中の塩素量の定量を行い、重量と塩素量の連立方程式を立てて算出する方法などがある[46]。

機器分析法[編集]

分析機器を用いたルビジウムの定量分析には原子吸光法 (AAS)または炎光分析法が最も簡便であり[47]、それらの測定において最も高感度な吸収波長は780.027 nmである[48]。AASにおいては、通常は空気-アセチレン炎を用いたフレーム原子吸光法が用いられるが、グラファイト炉原子吸光法を用いることで、検出限界1.6 pgという高感度な分析が可能となる[48][49]。ルビジウムはそのイオン化エネルギーの低さに起因してフレーム中でのイオン化が激しく、分析結果に負の誤差が生じて定量値が低くなるため、試料液にイオン化抑制剤として高濃度のカリウムやセシウム等のイオン化されやすい元素を加えて分析を行う[50][48]。また、他の元素を原子吸光法によって測定する際にルビジウムが共存していると、ルビジウムのイオン化しやすい性質によってイオン化干渉が生じて分析結果の誤差要因となる[51]。

植物体中のルビジウム分析法の例を示す。 植物体中のルビジウムは希酸で大部分が抽出されるため、高濃度試料では塩酸抽出でも十分であるが、微量かつ全量分析の場合は強酸分解が望ましい。なお、イオン化抑制剤としてセシウムを用いた場合は、同時にカリウムの分析も可能である。
1.植物体の乾燥粉砕試料を採る。
2.希塩酸を加え 振とう抽出する。
3.乾燥ろ紙でろ過、ろ液を適宜希釈する。
4.希釈液に規定量のセシウムを加える。
5.原子吸光で780 nmの吸光度を測定する。または炎光光度計で780 nmの発光強度を測定する。

化合物[編集]

塩化ルビジウムは、恐らく最も使われているルビジウム化合物である。生化学において、細胞から DNA を取り出すのに用いられ、少量で容易に生体に取り込まれてカリウムと置換するため生物指標としても用いられている。他の通常のルビジウム化合物としては腐食性の水酸化ルビジウム (RbOH) があり、これは光学ガラスに用いられる炭酸ルビジウム (RbCO3) やルビジウム硫酸銅 (Rb2SO4•CuSO4•6H2O) など、大部分のルビジウムをベースとした化学反応の出発原料として用いられている。ヨウ化銀ルビジウム (RbAg4I5) は、他のどんな既知のイオン結晶よりも高い室温伝導率を有し、薄膜バッテリーなどの用途に利用されている[52][53]。

ルビジウムは、金属ルビジウムが空気に曝されることで酸化ルビジウム Rb2O や Rb6O、Rb9O2 などを含むいくつかの酸化物を生成し、過剰な酸素雰囲気下では超酸化物 RbO2 を生成する。Rb9O2のような非化学量論的な酸化物は亜酸化物と呼ばれ、アルカリ金属元素の化合物としては珍しくルビジウム元素同士の共有結合を有した金属的な外観を持つ化合物である[54]。ルビジウムはイオン半径が大きいため格子エネルギー効果によって不安定な陰イオンとも安定なイオン性塩を形成することができ、その代表例として超酸化ルビジウムがある[55]。ルビジウムはハロゲンと反応してフッ化ルビジウム (RbF)、塩化ルビジウム (RbCl)、臭化ルビジウム (RbBr) およびヨウ化ルビジウム (RbI) を生成する。

同位体[編集]

詳細は「ルビジウムの同位体」を参照

自然に存在するルビジウムは、安定同位体である 85Rb (72.2 %) および放射性同位体である 87Rb (27.8 %) の2つの同位体元素から成っている[56]。このようなルビジウムは1 g当たりおよそ670 Bqの固有の放射能を有しており、110日で写真フィルムを著しく感光させるのに十分な強さである[57][58]。ルビジウムの同位体は24種類あり、85Rb と 87Rb 以外のものは半減期が3か月未満である。それらのほとんどは非常に強い放射能があり、用途はほとんどない。

87Rb の半減期は4.88 × 1010年であり、それは13.75 ± 0.11 ×109年である宇宙の年齢の3倍以上である[59]。87Rb は原生核種 (en:Primordial nuclide) の1つである。ルビジウムは鉱石において容易にカリウムと置換するため、地球上の至る所に存在している。そのため、ルビジウムは放射年代測定に広範囲で用いられている。87Rb はベータ粒子 (β-) を放出して安定した 87Sr に崩壊する。マグマの結晶分化の間、Sr は斜長石に集まる傾向があり、Rb は液相に残る。ゆえに、マグマ残液中の Rb / Sr の比率は時間とともに増加し、漸進的分化によって Rb / Sr 比の高い石が形成される。この比率が最も高いものでは、10以上になるペグマタイトがある。ストロンチウムの初期量が知られているか、もしくは添加することができれば、ルビジウムとストロンチウムの濃度比および、87Sr と 86Sr の比をそれぞれ測定することで年代を決定することができる。この方法は、その後石が変化していない場合においてのみ鉱石の正確な年齢を示す(ルビジウム-ストロンチウム年代測定法(英語版))[60][61]。

自然に存在しない同位体の1つである 82Rb は、半減期が25.36日である 82Sr の電子捕獲(β崩壊の一種)によって生み出される。半減期が76秒である 82Rb のそれ以降の崩壊は陽電子放出(β崩壊の一種)によって引き起こされ、安定した 82Kr を生み出す[56]。

予防措置と生物学的影響[編集]





アンプルに封入された金属ルビジウム
ルビジウムは水と激しく反応するため、火災を引き起こす危険がある。安全性と純度を確保するため、この金属は乾いた鉱油中で保存され、通常は不活性雰囲気のガラス製アンプル中に封入される。ルビジウムは鉱油中の少量の空気への露出でさえ過酸化物を形成するため、金属カリウムの保管と類似した過酸化物形成の予防措置が取られる[62]。

ルビジウムはナトリウムやカリウムのように、水に溶解しているときには+1価の酸化状態を取り、これは全ての生体中での状態も含む。人体は Rb+ イオンをカリウムイオンとして処理する傾向があるため、ルビジウムは体の細胞内液、すなわち細胞の内部に蓄積する[63]。ルビジウムイオンは特に有毒ではない。70 kgの人間は平均0.36 gのルビジウムを含んでおり、この量を50から100倍に増加させても被験者に悪影響は見られなかった[64]。人体における生物学的半減期は、31から46日である[27]。しかし、ルビジウムによるカリウムの部分的な置換は起こり得ることであり、筋組織においてカリウムの50 %以上がルビジウムに置換されたネズミは死亡した[65][66]。

出典[編集]

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参考文献[編集]
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クリプトン

クリプトン (英: krypton) は原子番号36の元素。元素記号は Kr。希ガス元素の一つ。

常温、常圧で無色、無臭の気体。融点は-157.2 °C、沸点は-152.9 °C (-153.4 °C)、比重は2.82 (-157 °C)。重い気体であるため、吸引すると声が低くなる。空気中には1.14 ppmの割合で含まれている。空気を液化、分留することにより得られる。不活性であるがフッ素とは酸化数が+2の不安定な化合物を作る。また、水やヒドロキノンと包接化合物を作る。



目次 [非表示]
1 用途
2 歴史
3 クリプトンの化合物
4 同位体
5 出典


用途[編集]

不活性ガスであるため、白熱電球に封入されフィラメントの昇華を防ぐために用いられる。クリプトンが封入された白熱電球はクリプトンランプと呼ばれる。

1960年から1983年までは長さの単位メートルの基準としてクリプトンのスペクトルが用いられた。1 mは「クリプトン86原子の準位 2p10 と 5d5 の間の遷移に対応する光の真空中における波長の1,650,763.73倍に等しい長さ」と定義されていた。

クリプトンガスを吸いこんで空気中で発した声は、ヘリウムガスとは反対に、低くなる(メカニズムについては、ヘリウム#用途を参照)。ただし、純粋なクリプトンガスを吸い込むのは酸欠の危険を伴う。試すのであれば、しかるべき配合の、酸素との混合ガスを使わなければならない。

歴史[編集]

1898年、ウィリアム・ラムゼー (William Ramsay) とモーリス・トラバース (Morris W. Travers) によって、液体空気からキセノンとともに発見された[2]。ギリシャ語の隠れる (kryptos) が語源である。

クリプトンの化合物[編集]
二フッ化クリプトン (KrF2)
包接化合物 Kr・6H2O
Kr・3C6H4(OH)2


同位体[編集]

詳細は「クリプトンの同位体」を参照

出典[編集]

1.^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds, in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
2.^ 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、191頁。ISBN 4-06-257192-7。

臭素

臭素(しゅうそ、英: bromine)は、原子番号35の元素。元素記号は Br。ハロゲン元素の一つ。

単体(Br2、二臭素)は常温、常圧で液体(赤褐色)である(常温で液体の元素は水銀と臭素だけである)。融点は−7.3 °C、沸点は58.8 °C。反応性は塩素より弱い。刺激臭を持ち、猛毒である。海水中にも微量存在する。



目次 [非表示]
1 歴史
2 性質
3 資源
4 用途
5 臭素の化合物 5.1 臭素系有機化合物
5.2 臭素のオキソ酸

6 同位体
7 出典
8 関連項目
9 外部リンク


歴史[編集]

アントワーヌ・バラールは、1826年にフランス学士院へ臭素発見に関する論文を提出している。フランス・モンペリエにおいて、海水と塩素の反応によって発見された。バラールは後述するムラサキガイの名称 murex から、新元素の名称として muride を提案した。しかし、フランス学士院は muride ではなく、ギリシャ語の悪臭 (bromos) に基づく bromine に決定した。なお、ドイツのカール・レーヴィヒは、1825年に鉱泉から新元素を発見していたのだが、論文を提出する前にバラールの論文が発表されてしまった。

20世紀初頭、ドイツでは海水から臭素を得ていた。プールに導き入れた海水を塩素で酸化して、わずかに生じる臭素をアニリンと反応させて得られる2,4,6-トリブロモフェノール(フェノールに臭素原子が3つ置換したもの)の沈殿を分解して臭素単体を得ていた。当時の価格は同質量の金より高価であったという。アメリカ合衆国においては、ダウ・ケミカル創業者のハーバート・ダウが開発した電気分解法を鹹水鉱床に用いることで、臭素生産が始まった。後に海水にもダウの手法が適用された。

精神的な興奮状態、性欲を鎮める作用があるため、19世紀においては、興奮性の精神病の治療薬、鎮静剤、性欲抑制剤として臭化カリウムなどの臭化物を用いた。ただし、毒性があるため、現在ではほとんど用いない。

後に、イスラエルの死海周辺の井戸から産する臭化マグネシウム水溶液から得られるようになった。臭素の価格は中東和平が達成されると下がり、軍事的緊張が続くと高騰するなど不安定であったが、アメリカ合衆国のユニオン郡 (アーカンソー州)の地下水から得られるようになり、現在ではこちらが最大の産出地である。

性質[編集]

非金属元素の中では常温・常圧で液体である唯一の元素で、二原子分子 (Br2) を形成する。色は暗赤色で、常温・常圧で蒸発しやすく、赤色の気体となる。同じハロゲンの塩素と同様、強烈な不快臭を持つ。ハロゲン中での反応性は塩素より小さく、ヨウ素より大きい。水には若干溶け、二硫化炭素と脂肪族アルコールと酢酸にはよく溶ける。多くの元素と容易に結合して強力な漂白作用を持つ。皮膚に臭素が触れると腐食を引き起こすため危険である。

臭素化合物にはオゾン層を破壊したり、生物濃縮するものがあるため、段階的に廃止される予定となっており、次第に工業的に製造されなくなってきている。

臭素は強力な酸化剤で、金属や有機化合物と容易に反応する。

資源[編集]

工業的には臭化物イオンを含む水溶液を酸性条件下で塩素を吹き込み、酸化された臭素単体を蒸留精製する。臭素は海水中には65 ppm (0.0065%) 含まれ、推定資源量は100兆トン存在し、多くの国で海水を原料として臭素を生産している。一方、死海あるいは臭素の含有量が高い鉱水が知られており、アメリカ合衆国やイスラエルなどの国では、鉱水や死海の水を原料にして、同様に塩素で酸化して生産している。日本では海水に塩素を吹き込んで臭素を遊離させる海水法とにがりに含まれるMgBr2に塩素を吹き込んで臭素を遊離させるにがり法で生産され、生産量は2007年で26000t(推定)である[2]。

米国地質調査所の2005年版統計[3]によると、全世界の臭素の生産量は約590,000トンである。その内訳は、1位の合衆国が222,000トン、2位のイスラエルが206,000トンであった。国連統計局の2002年度統計[4]によると、輸出量はリサイクルされたものも含めて1位のイスラエルが94,141,000ドル、2位のベルギーが34,412,092ドルであった。



2002年輸出金額(ドル)

2002年生産量(トン)

合衆国 16,820,987 225,000
イスラエル 94,141,000 206,000
中国 - 40,000
英国 15,922,613 50,000
日本国 - 20,000
ベルギー 34,412,092 -
オランダ 19,297,583 -
その他 13,877,164 9,000
計 194,471,439 550,000
説明図 臭素の生産量と輸出量

用途[編集]

ムラサキガイ Murex brandaris が分泌する無色の液体が空気中で酸化されると、紫色(皇帝紫)の成分である6,6'-ジブロモインジゴが得られる。この貝は、現在のレバノン沿岸ティルスに産したため、染料はチリアンパープル (Tyrrian purple) とも呼ばれた。19世紀にアニリン染料(モーブなど)が開発されるまでは、もっとも優れた紫色の染料として用いられていた。

工業的には、有鉛ガソリンの添加剤であるジブロモエタン、消火に用いる CBrClF2, CBrF3 などのハロン、土壌燻蒸剤の臭化メチルが主な用途であった。しかしながら、いずれも環境に与える影響が大きいとされ、生産・消費量は減少している。航空機、新幹線車両などの内装材にも用いられ、難燃剤として優れるポリ臭素化ジフェニルエーテルは、そのほかの主な用途である。

写真の感光材として、臭素の化合物臭化銀 (silver bromide) が用いられている。このため、印画紙のことを英語では bromide paper と呼ぶ。これが転じて、アイドル等の写真であるブロマイドの語源となった。

高温で様々な無機物・有機物を含む温泉水の消毒剤として塩素剤だけでは不十分な場合があるため、BCDMH(ブロモクロロジメチルヒダントイン)を主成分とする塩素臭素剤が使用される[5]。海外では「Bromine Tablets」という一般名で市販されている。

臭素の化合物[編集]

詳細はCategory:臭素の化合物を参照。
臭化カリウム (KBr)
臭化銀 (AgBr) - 写真の感光材料
臭化水素 (HBr)
臭化マグネシウム (MgBr2)

臭素系有機化合物[編集]

詳細はCategory:有機ハロゲン化合物を参照。
ブロモホルム (CHBr3)
四臭化炭素 (CBr4)
臭素系ダイオキシン類
N-ブロモスクシンイミド (NBS)

臭素のオキソ酸[編集]

臭素のオキソ酸は慣用名を持つ。次にそれらを挙げる。


オキソ酸の名称

化学式(酸化数)

オキソ酸塩の名称

備考

次亜臭素酸
(hypobromous acid) HBrO (+I) 次亜臭素酸塩
( - hypobromite)
亜臭素酸
(bromous acid) HBrO2 (+III) 亜臭素酸塩
( - bromite)
臭素酸
(bromic acid) HBrO3 (+V) 臭素酸塩
( - bromate) 臭素酸塩は危険物第1類。
過臭素酸
(perbromic acid) HBrO4 (+VII) 過臭素酸塩
( - perbromate)
オキソ酸塩名称の '-' にはカチオン種の名称が入る。

同位体[編集]

詳細は「臭素の同位体」を参照

出典[編集]

1.^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds, in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
2.^ 『15509の化学商品』 化学工業日報社、2009年2月。ISBN 978-4-87326-544-5。
3.^ http://minerals.usgs.gov/minerals/ Mineral Commodity Summaries
4.^ Commodity Trade Statistics Database
5.^ 社団法人空気調和・衛生工学会発行「浴場施設のレジオネラ対策指針」

セレン

セレン (英: selenium) は原子番号34の元素。元素記号は Se。カルコゲン元素の一つ。セレニウムとも呼ばれる。



目次 [非表示]
1 性質
2 産出
3 用途
4 歴史
5 セレンの化合物 5.1 酸化物とオキソ酸
5.2 ハロゲン化物
5.3 有機セレン化合物
5.4 鉱物
5.5 その他

6 生体内のセレン 6.1 摂取量

7 関連法規
8 脚注
9 関連項目
10 外部リンク


性質[編集]

いくつかの同素体が存在するが、常温で安定なのは六方晶系で鎖状構造をもつ灰色セレン(金属セレン)である。灰色セレンの融点は217.4 °C(異なる実験値あり)で、比重は4.8である。他の同素体として、赤色で単斜晶系のα, β, γセレン、ガラス状の無定形セレンなどがある。-2, 0, +2, +4, +6価の酸化状態を取り得る。水に不溶だが、二硫化炭素 (CS2) には溶ける。また、熱濃硫酸と反応する。燃やすと不快臭のある気体(二酸化セレン)が発生する。硫黄に性質が似ている。

セレンは自然界に広く存在し、微量レベルであれば人体にとって必須元素であり、抗酸化作用(抗酸化酵素の合成に必要)があるが、必要レベルの倍程度以上で毒性があり摂取し過ぎると危険であり、水質汚濁、土壌汚染に係る環境基準指定項目となっている。これはセレンの性質が硫黄にきわめてよく似るため、高濃度のセレン中では含硫化合物中の硫黄原子が無作為にセレンに置換され、その機能を阻害されるためである。

克山(クーシャン)病(Keshan disease:中国の風土病)やカシンベック病 (Kashin-Beck disease) の原因としてセレン欠乏が考えられている。

産出[編集]

セレンを主成分とする鉱物は、銅或いは銀との化合物のセレン銀鉱やセレン銅銀鉱が知られるが、産出量の少ない鉱物で有るため鉱石として利用はされない。硫黄化合物として産出する事が多いため工業的には、硫酸製造の際の沈殿物や銅精錬時の副産物を精錬し得る。

主な産出国は、日本28 %、カナダ26 %、アメリカ18 %などとなっている。産出量は2.15×103トン、予想埋蔵量は70×103トンである[3]。

用途[編集]

金属セレンは、半導体性、光伝導性がある。これを利用してコピー機の感光ドラムに用いられる。またセレンは整流器(セレン整流器)に使われたり、光起電効果によりカメラの露出計やガラスの着色剤[4]、脱色剤に使われる。毒性がある為、現在は使用が制限され多くの用途において代替物質が使用されている。

歴史[編集]

1817年、スウェーデンの化学者イェンス・ベルセリウス (Jöns Jakob Berzelius) によって、テルルと共に発見された。

セレンはギリシャ神話の月の女神セレネから命名されている。これは、周期表上でひとつ下に位置するテルル(ラテン語で地球を意味する Tellus から命名)より後に発見され、性質がよく似ていたためである。あるいは地球の「上」に位置するためとも言われる。

セレンのように、周期表上で並ぶ元素が天体の配置になぞらえて命名された例は、ウラン・ネプツニウム・プルトニウムにも見られる。

セレンの化合物[編集]

酸化物とオキソ酸[編集]
一酸化セレン (SeO)
二酸化セレン (SeO2)
三酸化セレン (SeO3)

セレンのオキソ酸は慣用名をもつ。次にそれらを挙げる。


オキソ酸の名称

化学式

構造式

オキソ酸塩の名称

備考

亜セレン酸
(selenious acid) H2SeO3 亜セレン酸塩
( - selenite)
セレン酸
(selenic acid) H2SeO4 セレン酸塩
( - selenate) 強酸である。
ペルオキソ一セレン酸
(peroxomonoselenic acid) H2SeO5 ペルオキソ一セレン酸塩
( - peroxomonoselenate) 三酸化セレンと過酸化水素から作られる。

※ オキソ酸塩名称の '-' にはカチオン種の名称が入る。

ハロゲン化物[編集]
四フッ化セレン (SeF4)
六フッ化セレン (SeF6)
四塩化セレン (SeCl4)
四臭化セレン (SeBr4)
四ヨウ化セレン (SeI4)

有機セレン化合物[編集]

詳細は「有機セレン化合物」を参照

セレンに有機基が結合した化合物として、セレノール (RSeH)、セレニド (RSeR') など多くの種類の化合物が知られる。

鉱物[編集]
セレン銀鉱 (Ag2Se)
セレン銅銀鉱 (CuAgSe)

その他[編集]
セレン化水素 (H2Se)
塩化セレニニル (SeOCl2)
セレノシステイン - アミノ酸の1種、特殊なタンパク質中に見出される
セレノメチオニン - セレノシステインとは異なりタンパク質の構造や機能には影響を与えない
セレン化亜鉛 (ZnSe) - 赤外線を透過させる光学素子として最も良く使用される光学材料

生体内のセレン[編集]

セレンはセレノシステインとしてタンパク質に組み込まれ、主にセレノプロテインとして働く。セレンはビタミンEやビタミンCと協調して、活性酸素やラジカルから生体を防御すると考えられている。

セレノプロテインには抗酸化に関与するグルタチオンペルオキシダーゼ、チオレドキシン還元酵素、甲状腺ホルモンを活性化するテトラヨードチロニン-5'-脱ヨウ素化酵素、セレンを末梢組織に輸送するセレノプロテインPなどがある。

セレンは欠乏量と中毒量の間の適正量の幅が非常に狭い。セレン過剰症として、悪心、吐き気、下痢、食欲不振、頭痛、免疫抑制、高比重リポ蛋白(HDL)減少などの症状がある。一方、欠乏症は貧血、高血圧、精子減少、ガン(特に前立腺ガン)、関節炎、早老、筋萎縮、多発性硬化症などが知られている。ただし、ヒトにおいて、セレン単独の欠乏では、これらの症状が認知されていない(動物実験レベルではセレン単独の欠乏症状が認められている)。

セレンは肉や植物など日常で摂取する食材に含まれており、欠乏症はさほど多くはないが、食品、特に植物性のものに含まれるセレン含量は生育する土壌中のセレン含量に左右される。そのため、セレン含量の乏しい土地の住人にセレン欠乏が見られる。そのような土地として中国黒竜江省の克山県があり、うっ血性心不全を特徴とする克山病が知られている。患者にセレンを補給することにより改善するため、セレンが深く関与すると考えられている。また、中国河南省の林県もセレン含量の低い土壌で、この土地では胃癌の発生頻度が高いことが知られているが、こちらにはニトロソ化合物が影響しているという説もある。

また、血液中のセレン濃度と前立腺ガンの相関性が指摘されており、血液中セレン濃度の低下は前立腺ガンのリスクファクターと言われる。セレンの補充は前立腺ガンのリスクを軽減するとの報告もある。ただし、取り過ぎは前立腺ガンのリスクを軽減しないどころか、皮膚がんのリスクを高めると言われる。

前述のように、ヒトではセレン単独の欠乏症状が見られない。したがって、セレン欠乏は、欠乏症の二次的な要因となると考えられている。すなわち、ビタミンEなどと協調してはたらくため、両栄養素の欠乏症状の相乗作用により現れると考えられる。また、克山病ではセレン欠乏が、コクサッキーウィルスの変異を促し、病原性の獲得および増大をもたらすと考えられている。

摂取量[編集]

人体には体重1 kgあたり、約0.17 mg程度含まれると言われ、1975年にヒトでの必須性が認められた。セレンの食事摂取基準は2005年版の日本人の食事摂取基準[5]によると、推定平均必要量が25(20) μg、推奨量が30(25) μg、上限量が450(350) μgである(数値は成人男性、かっこ内は成人女性)。ただし、30〜49歳の男性の推定平均必要量が30 μg、推奨量が35 μgとなっている。日本人の平均的なセレンの摂取量は100 μg/日とされ、中毒を起こす摂取量は800 μg以上とされている。

東京都は、日本人の摂取量は推奨量をすでに超えている為、「通常はサプリメントとして摂取する必要は無いと考えられる」。更に、「一日許摂取量が上限量に近い栄養補助食品が存在し、上限量を超える可能性がある、この様な物は栄養補助食品として販売されることが問題である」としている[6]。

過剰摂取は健康に影響を及ぼし、次の症状を引き起こすことがある。下痢、胃腸障害、脱毛、爪の変形、疲労感、焦燥感、末梢神経障害、心筋梗塞、急性の呼吸困難、腎不全など[7][8]。実際に過剰な含有量のダイエット食品を摂食し、健康被害を生じた例がある。

関連法規[編集]
消防法 (貯蔵等の届出を要する物質)
毒劇物取締法 (毒物)
薬事法
労働基準法(疾病化学物質)
労働安全衛生法
環境基本法(水質汚濁、土壌汚)
下水道法(水質基準:0.1 mgSe/L)
水質汚濁防止法(排水基準:0.1 mgSe/L)
化学物質排出把握管理促進法 (第一種指定化学物質(セレン及びその化合物))

脚注[編集]

1.^ “Selenium : Selenium(I) chloride compound data”. WebElements.com. 2007年12月10日閲覧。
2.^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds, in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
3.^ 日本化学会編『第6版 化学便覧 応用化学編』丸善出版社 p.46
4.^ インドではガラスの腕輪の着色に好んで使われるインドは「自分の写し鏡」(中村繁夫 (アドバンスト マテリアル ジャパン社長)、Wedge Ifinity2012年09月04日掲載)
5.^ 日本人の食事摂取基準厚生労働省
6.^ ミネラル補給用サプリメントの含有量調査 セレンの分析東京都健康安全研究センター 研究年報 2007 年
7.^ 「健康食品」の安全性・有効性情報 セレン独立行政法人 国立健康・栄養研究所
8.^ 過剰のミネラルを含むダイエタリーサプリメントについて(pdf)東京都食品安全情報評価委員会

ヒ素

ヒ素(砒素、ヒそ、英: arsenic、羅: arsenicum)は、原子番号33の元素。元素記号は As。第15族元素(窒素族元素)の一つ。

最も安定で金属光沢のあるため金属ヒ素とも呼ばれる「灰色ヒ素」、ニンニク臭があり透明なロウ状の柔らかい「黄色ヒ素」、黒リンと同じ構造を持つ「黒色ヒ素」の3つの同素体が存在する。灰色ヒ素は1気圧下において615 °Cで昇華する。

ファンデルワールス半径や電気陰性度等さまざまな点でリンに似た物理化学的性質を示し、それが生物への毒性の由来になっている。



目次 [非表示]
1 用途
2 人体への影響 2.1 中毒

3 関連法規
4 ヒ素の化合物
5 歴史
6 分析法
7 ヒ素鉱石
8 同位体
9 脚注
10 関連項目
11 外部リンク


用途[編集]

生物に対する毒性が強いことを利用して、農薬、木材防腐に使用される。

III-V族半導体であるヒ化ガリウム (GaAs) は、発光ダイオードや通信用の高速トランジスタなどに用いられている。

ヒ素化合物であるサルバルサンは、抗生物質のペニシリンが発見される以前は梅毒の治療薬であった。

中国医学では、硫化ヒ素である雄黄や雌黄はしばしば解毒剤、抗炎症剤として製剤に配合される。

ほとんどの生物にとっては有毒だが、ヒ素を必須元素とする生物も存在する。微生物のなかに一般的な酸素ではなく、ヒ素の酸化還元反応を利用して光合成を行っているものも存在する[5]。2010年には、GFAJ-1という細菌が、生体内で使われる核酸等のリンの代わりにヒ素を用いているという発表があった[6]が、2012年のサイエンス誌上での報告によって主張は完全に否定されている[7][8][9][10]。詳細はGFAJ-1の項目を参照)。

人体への影響[編集]

ヒ素およびヒ素化合物は WHO の下部機関 IRAC より発癌性がある (Type1) と勧告されている。また、単体ヒ素およびほとんどのヒ素化合物は、人体に非常に有害である。飲み込んだ際の急性症状は、消化管の刺激によって、吐き気、嘔吐、下痢、激しい腹痛などがみられ、場合によってショック状態から死に至る。慢性症状は、剥離性の皮膚炎や過度の色素沈着、骨髄障害、末梢性神経炎、黄疸、腎不全など。慢性ヒ素中毒による皮膚病変としては、ボーエン病が有名である。単体ヒ素及びヒ素化合物は、毒物及び劇物取締法により医薬用外毒物に指定されている。日中戦争中、旧日本軍では嘔吐性のくしゃみ剤ジフェニルシアノアルシンが多く用いられたが、これは砒素を含む毒ガスである。

一方でヒ素化合物は人体内にごく微量が存在しており、生存に必要な微量必須元素であると考えられている[11][12]。ただしこれは、一部の無毒の有機ヒ素化合物の形でのことである。低毒性の、あるいは生体内で無毒化される有機ヒ素化合物にはメチルアルソン酸やジメチルアルシン酸などがあり、カキ、クルマエビなどの魚介類やヒジキなどの海草類に多く含まれる。さらにエビには高度に代謝されたアルセノベタインとして高濃度存在している。人体に必要な量はごく少なく自然に摂取されると考えられ、また少量の摂取でも毒性が発現するため、サプリメントとして積極的に摂る必要はない。

亜ヒ酸を含む砒石は日本では古くから「銀の毒」、「石見銀山ねずみ捕り」などと呼ばれ殺鼠剤や暗殺などに用いられていた。

宮崎県の高千穂町の山あい土呂久では、亜ヒ酸製造が行われていた。この地区の住民に現れた慢性砒素中毒症は、公害病に認定された。症状としては、暴露後数十年して、皮膚の雨だれ様の色素沈着や白斑、手掌、足底の角化、ボーエン病、およびそれに続発する皮膚癌、呼吸器系の肺癌、泌尿器系の癌がある。発生当時は、砒素を焼く煙がV字型の谷に低く垂れ込め、河川や空気を汚染したものと考えられた。上に記した症状は、特に広範な皮膚症状は、環境による慢性砒素中毒を考えるべき重要な症状である。この症状が重要であり、長年月経過すれば、病変、皮膚、毛髪、爪などには、砒素を検出しない。

「土呂久ヒ素公害」を参照

上流に天然のヒ素化合物鉱床がある河川はヒ素で汚染されているため、高濃度の場合、流域の水を飲むことは服毒するに等しい自殺行為である。低濃度であっても蓄積するので、長期飲用は中毒を発症する。地熱発電の排水は砒素などの有害物質を多く含む。このため環境中へ流出しないよう採取地の地下へ戻すことが多い[要出典]。慢性砒素中毒は、例えば井戸の汚染などに続発して、単発的に発生することもある。このような河川は中東など世界に若干存在する。砒素中毒で最も有名なのは台湾の例であり、足の黒化、皮膚癌が見られた。汚染が深刻な国バングラデシュでは、皮膚症状、呼吸器症状、内臓疾患をもつ患者が増えている。ガンで亡くなるケースも報告されている。中国奥地にもみられ、日本の皮膚科医が調査している。

中毒[編集]

詳細は「ヒ素中毒」を参照

1955年の森永ヒ素ミルク中毒事件では粉ミルクにヒ素が混入したことが原因で、多数の死者を出した。この場合は急性ヒ素中毒である。年月が経過し、慢性ヒ素中毒の報告もある。日本において急性ヒ素中毒で有名なのは、1998年に発生した和歌山毒物カレー事件であり、この稿には詳細な急性中毒の報告が記載されている。

この他、1908年に死去した清の光緒帝も、ヒ素による毒殺だった可能性が高いとされている。

2004年には英国食品規格庁がヒジキに無機ヒ素が多く含まれるため食用にしないよう英国民に勧告した。これに対し、日本の厚生労働省はヒジキに含まれるヒ素は極めて微量であるため、一般的な範囲では食用にしても問題はないという見解を出している[13]。

関連法規[編集]

土壌汚染対策法において、ヒ素およびその化合物は第2種特定有害物質に定められている。

ヒ素の化合物[編集]
アルシン (AsH3)
カコジル ((CH3)2As-As(CH3)2)
ヒ化ガリウム (GaAs, GaAs3)
三酸化二ヒ素 (As2O3) - 急性前骨髄球性白血病 (APL) の治療薬。商品名トリセノックス。海外では骨髄異形成症候群 (MDS)、多発性骨髄腫 (MM) に対しても使われている。その他血液癌、固形癌に対する研究も進められている。
サルバルサン (C12H12As2N2O2) - 元々は梅毒の治療薬

歴史[編集]

13世紀にアルベルトゥス・マグヌスにより発見されたとされる[14]。ヒ素の元素名(arsenic)は、黄色の顔料を意味するギリシャ語「arsenikon」に由来するといわれている[15]。

ヒ素は無味無臭かつ、無色な毒であるため、しばしば暗殺の道具として用いられた。ルネサンス時代にはローマ教皇アレクサンデル6世(1431年 - 1503年)と息子チェーザレ・ボルジア(1475年 - 1507年)はヒ素入りのワインによって、次々と政敵を暗殺したとされる。

入手が容易である一方、体内に残留し容易に検出できることから狡猾な毒殺には用いられない。そのためヨーロッパでは「愚者の毒」という異名があった。中国でも天然の三酸化二ヒ素が「砒霜」の名でしばしば暗殺の場に登場する。例えば、『水滸伝』で潘金蓮が武大郎を殺害するのに使用したのも「砒霜」である。

分析法[編集]

無機ヒ素は容易に水素化物として気化する。このため、無機及び全ヒ素の分析法では専ら強酸分解試料に水素化試薬を加え、生成気化したアルシンを原子吸光法、誘導結合プラズマ発光 (ICP) 法、ICP質量分析 (ICP-MS) 法で測定するか、吸収液で捕集し吸光度法で測定する。感度は ICP-MS法 > ICP法 > 原子吸光法 > 吸光度法 の順に高感度である。原子吸光法では装置のバーナヘッド部を加熱セルに交換するか、バックグラウンド吸収が低いアルゴン-水素炎を用いる。感度・精度ともアルゴン-水素炎よりも加熱セルを採用した方が優れている。有機ヒ素化合物の分析では、未分解の試料を溶媒で抽出後、HPLC で分離し ICP-MS で検出する方法が採用される。

全ヒ素の分析手順は概ね次のようなものである。
1.試料を強酸分解する。硝酸-過塩素酸、硝酸-硫酸、硝酸-過塩素酸-硫酸のような混酸が用いられる。
2.分解液を水素化物発生装置の試料容器に採る。
3.これに塩酸、ヨウ化カリウム、塩化スズ(II) を加え、しばらく放置する。この操作でヒ素(V)をヒ素(III)に還元する。
4.さらに水素化試薬(水素化ホウ素ナトリウム、亜鉛粉末等)を加え、試料容器を密閉する。
5.水素化ヒ素が気相に追い出されてくる。
6.気相を原子吸光分析装置に導入する。
7.波長193.7 nmの吸光度を測定する。

アルゴン-水素炎で測定する場合は、通常のスロットバーナで可能。バーナヘッド部を加熱セルに変更した場合は、セル温度を950 °Cに設定する。

一昔前は水素化ヒ素発生装置の操作が面倒であったが、最近はオートサンプラ付きの自動水素化物発生装置が市販されている。試薬の濃度や組合せを変更すれば鉛、セレン、アンチモン等の分析にも対応できるなど、とても簡便になっている。

ヒ素鉱石[編集]

ヒ素鉱石を構成する鉱石鉱物には、次のようなものがある。
自然砒 (As) - 三方晶系
輝砒鉱 (As) - 斜方晶系
パラ輝砒鉱 (As) - 斜方晶系
紅砒ニッケル鉱 (NiAs)
砒鉄鉱(砒毒砂、レーリンジャイト)(FeAs2)
鶏冠石 (As4S4)
雄黄(石黄)(As2S3)
輝コバルト鉱 (CoAsS)
硫砒鉄鉱 (FeAsS)
硫砒銅鉱 (Cu3AsS4)
方砒素華 (As2O3) - 天然の三酸化二ヒ素。砒霜とも。
スコロド石 (FeAsO4•2H2O)
コバルト華 (Co3(AsO4)2•8H2O)
ミメット鉱 (Pb5(AsO4)3Cl)
オリーブ銅鉱 (Cu2AsO4(OH))
アダム石 (Zn2AsO4(OH))

同位体[編集]

詳細は「ヒ素の同位体」を参照

脚注[編集]

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1.^ Arsenic, mindat.org
2.^ Gokcen, N. A (1989). “The As (arsenic) system”. Bull. Alloy Phase Diagrams 10: 11–22. doi:10.1007/BF02882166.
3.^ Ellis, Bobby D. (2004). “Stabilized Arsenic(I) Iodide: A Ready Source of Arsenic Iodide Fragments and a Useful Reagent for the Generation of Clusters”. Inorganic Chemistry 43: 5981. doi:10.1021/ic049281s.
4.^ editor-in-chief, David R. Lide. (2000). “Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds”. Handbook of Chemistry and Physics (81 ed.). CRC press. ISBN 0849304814.
5.^ T. R. Kulp, et al., "Arsenic(III) Fuels Anoxygenic Photosynthesis in Hot Spring Biofilms from Mono Lake, California", Science 321, 967 (2008). doi:10.1126/science.1160799
6.^ 「砒素で生きる細菌を発見」の意味、WIRED.jp、2010年12月3日。
7.^ http://usatoday30.usatoday.com/tech/science/story/2012-07-07/arsenic-microbe/56098788/1
8.^ http://www.sciencemag.org/content/337/6093/467
9.^ http://www.nature.com/news/arsenic-loving-bacterium-needs-phosphorus-after-all-1.10971
10.^ http://www.philly.com/philly/blogs/evolution/Bad-Science-More-Bovine-Waste-from-the-Arsenic-Bacteria-Team.html
11.^ 生体と金属(愛知県衛生研究所)
12.^ 身の回りのヒ素とアンチモンの化合物と環境影響(鹿児島大学工学部生体工学科 前田滋)
13.^ ヒジキ中のヒ素に関するQ&A(厚生労働省)
14.^ 前田正史 (2005), 研究課題「循環型社会における問題物質群の環境対応処理技術と社会的解決」研究実施終了報告書, 社会技術研究開発事業・公募型プログラム 研究領域「循環型社会」, 科学技術振興機構 社会技術研究開発センター, p. 8 2009年7月18日閲覧。
15.^ 桜井 弘 『元素111の新知識』 講談社、1998年、177頁。ISBN 4-06-257192-7。

ゲルマニウム

ゲルマニウム(英語: germanium[3])は原子番号32の元素。元素記号は Ge。炭素族の元素の一つ。ケイ素より狭いバンドギャップ(約0.7 eV)を持つ半導体で、結晶構造は金剛石構造である。



目次 [非表示]
1 用途
2 歴史
3 ゲルマニウムの化合物
4 同位体
5 人体への影響 5.1 健康効果に否定的な意見

6 参考資料
7 関連項目
8 外部リンク


用途[編集]

初期のトランジスタにはゲルマニウムが使われ、安定性に優れるケイ素(シリコン)が登場するまでは主流だった。現在でも、電圧降下が小さいことからダイオードや、バンドギャップが比較的狭いことから光検出器に用いられる。

また、ガンマ線の放射線検出器(半導体検出器)にも用いられる。素子を液体窒素などで冷却する必要があるという欠点もあるが、エネルギー分解能に優れることから利用されている。

赤外線に対して透明で、赤外域で高い屈折率(約 n = 4)を示す材料として有用である。この性質を利用して石英を用いたレンズにゲルマニウムを添加すると屈折率が上がり、また赤外線を透過するようになるので、光学用途にも多用される。

歴史[編集]


エカケイ素Es と ゲルマニウムGeの性質



エカケイ素

ゲルマニウム


原子量
72 72.63

密度 (g/cm3)
約5.5 5.327

融点
高い 摂氏952度


灰色 灰色

ドミトリ・メンデレーエフは、自ら考案した周期表で当時知られていた元素(ケイ素)から、未発見の元素を "エカケイ素"(Ekasilicon, Es:周期表におけるケイ素のすぐ下の元素という意味)として予言した。1885年、ドイツのクレメンス・ヴィンクラーがアージロード鉱という銀鉱石からエカケイ素に当たる新元素を発見し、ドイツの古名ゲルマニア (germania) にちなんでゲルマニウムと命名した。メンデレーエフが周期表に基づいて予想したエカケイ素の性質とゲルマニウムの性質がよく一致し、メンデレーエフの周期表の完成度の高さを示す好例となった。

ゲルマニウムの化合物[編集]
水素化ゲルマニウム (GeH4)
一酸化ゲルマニウム (GeO)
二酸化ゲルマニウム (GeO2)
ジゲルマン (Ge2H6)
トリゲルマン (Ge3H8)

同位体[編集]

詳細は「ゲルマニウムの同位体」を参照

人体への影響[編集]

健康効果に否定的な意見[編集]

日本においてはゲルマニウムを使った様々な健康器具類が販売されているが、ゲルマニウムが人体への健康効果を持つ科学的根拠は確認されていない[4][5][6][7]。また、これら健康器具類の購入者・使用者は、ゲルマニウムによる健康への効果を期待するべきではないとされている[5]。具体的に「貧血に効果がある」、「金属ゲルマニウム(主に無機ゲルマニウムが使用される)を身につけることで疲れが取れる」、「新陳代謝を活発にする」「癌に効く」などといった効能がうたわれることがあるが、ゲルマニウムにこのような効能、効果があることは医学的に証明されていないだけでなく、このような表示は薬事法に抵触する恐れがあることが国民生活センターによって指摘されている[5][6]。

日本では薬事法に基づき承認や認証を得た「家庭用磁気治療器」等の医療機器の中に一部ゲルマニウムを用いているものがあるが、これらはゲルマニウムの治療効果によって承認・認証を得ているものではないため、ゲルマニウム自体が何らかの治療・予防・改善効果をもたらすと標榜することは当該品目の承認・認証内容を逸脱するため認められない。また、ゲルマニウムによる治療・予防・改善効果をうたうことができる医療機器は2010年現在日本国においては認められておらず、中には発売していた業者が逮捕されたケースもある[6][7]。

ゲルマニウムを含む健康食品を摂取して死亡した例もある。無機ゲルマニウムは生死に関わるような副作用があるが、1970年代後半からのゲルマニウムブームにて、当初から無機ゲルマニウムの飲用は腎臓等に障害を発生させるとの研究結果がすでに報告されていたにも拘らず、一部の業者が無機ゲルマニウムを有機ゲルマニウムと偽って飲用として販売したために事故が発生し、1998年10月には厚生労働省が各都道府県に対しゲルマニウム含有食品についての注意喚起を行っている[8]。

なお、たとえ有機ゲルマニウムであろうとも経口摂取による健康障害[9]や死亡例[10]が報告されているため、絶対的な安全性は確立されていない。有機ゲルマニウムの中で唯一医薬品として認められているものにプロパゲルマニウムがあるが、ウイルス性のB型慢性肝炎に対する有効性が認められるものの、前述のような健康障害や死亡などの危険性についての警告文が付されており、消化器系の各種症状(腹痛、下痢、口内炎等)、うつ、月経異常、脱毛等の副作用がある[11]。

ある有機ゲルマニウム製剤の経口投与により癌に効果があるという研究もある[12]が、こちらも不明瞭な域を脱しているとは言えず、臨床試験に携わった多くの研究者達によって危険性を提示されている[13]。

国立健康・栄養研究所は、「サプリメントとしての経口摂取はおそらく危険と思われ、末梢神経や尿路系の障害を起こし、重篤な場合には死に至ることがある」[14]として注意を呼びかけている。また、経口摂取によりこれまでに31例の腎臓への重大な疾患や死亡が報告されている[15]。

参考資料[編集]

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1.^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds, in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
2.^ a b c d “Properties of Germanium”. Ioffe Institute
3.^ http://www.encyclo.co.uk/webster/G/23
4.^ “ゲルマニウムブレスレット:健康効果を科学的に確認できず” (日本語). 毎日新聞 (2009年6月25日). 2009年6月25日閲覧。
5.^ a b c “ゲルマニウムブレスレット「疲労和らぐ」根拠なし” (日本語). 読売新聞 (2009年6月25日). 2009年6月25日閲覧。
6.^ a b c “温熱治療器「がんに効く」と無許可販売容疑” (日本語). 読売新聞 (2010年1月6日). 2010年1月6日閲覧。
7.^ a b “「がんに効く」治療器無許可販売の元社長ら逮捕 容疑否認” (日本語). 産経新聞 (2010年1月6日). 2010年1月6日閲覧。
8.^ 保健機能食品・健康食品関連情報 ゲルマニウムを含有させた食品の取扱いについて - 厚生労働省
9.^ Hess B, Raisin J, Zimmermann A, Horber F, Bajo S, Wyttenbach A, Jaeger P. "Tubulointerstitial nephropathy persisting 20 months after discontinuation of chronic intake of germanium lactate citrate." Am J Kidney Dis. 21(5), 1993 May, pp548-52. PMID 8488824
10.^ Krapf R, Schaffner T, Iten PX. "Abuse of germanium associated with fatal lactic acidosis." Nephron. 62(3), 1992, pp351-6. PMID 1436351
11.^ 国立健康・栄養研究所 話題の食品成分の科学情報 - ゲルマニウム
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ガリウム

ガリウム (新ラテン語: gallium[1]) は原子番号31の元素で、元素記号は Ga である。ホウ素、アルミニウムなどと同じ第13族元素に属する。圧力、温度によっていくつかの安定な結晶構造がある。常温、常圧では斜方晶系が安定(比重 5.9)で、青みがかった金属光沢がある金属結晶である。融点は 29.8 °C と低いが、一方、沸点は 2403 °C[2][3](異なる実験値あり)と非常に高い。酸やアルカリに溶ける両性である。価電子は3個 (4s, 4p) だが、3d軌道も比較的浅いところにある。

また、水と同じように、液体の方が固体よりも体積が小さい異常液体である。ガリウムは固体から液体になると、その体積が約3.4%減少する。そのため金属のガリウムをガラス容器に保管すると相転移に伴う体積変化によって容器が破損するため、通常はポリ容器に保管される。



目次 [非表示]
1 歴史
2 性質 2.1 構造

3 化合物と化学反応 3.1 水溶液中の反応
3.2 カルコゲン化物
3.3 ニクトゲン化物
3.4 ハロゲン化物
3.5 水素化物
3.6 有機金属化合物

4 用途 4.1 産業
4.2 生体内での利用
4.3 その他

5 産出
6 生産
7 出典
8 参考文献
9 関連項目
10 外部リンク


歴史[編集]





ガリウムを発見したポール・エミール・ルコック・デ・ボアボードラン
ドミトリ・メンデレーエフが1870年に周期表を発表した際、「エカ=アルミニウム (eka-alminium)」として予言した元素である。メンデレーエフはこの元素の原子量や比重などを予測した[4]。

1875年にポール・ボアボードランがピレネー山脈産の閃亜鉛鉱を分光法によって分析した際、特徴的な2本の紫色の光線として発見した[5]。また、同年ボアボードランは溶融させた水酸化カリウムに水酸化ガリウム(III) を加えて溶融塩電解することによって金属ガリウムを得ることに成功している。命名には2つの説があり、一つはボアボードランがこの新しい元素を母国フランスのラテン名「ガリア (galia)」にちなんでガリウムと命名したとする説、もう一つはボアボードランのミドルネームである "Lecoq" から関連付けて、フランス語で雄鶏を意味する "Le Coq" のラテン語である gallus から付けられたとする説である[6]。メンデレーエフの予測した密度の理論値5.9は、実測値である5.94と非常に一致しているなど、予測された多くの物性は非常に密接に実測値と一致していた[7]。この「エカ=アルミニウム」の予測物性と「ガリウム」の実測物性の近似は、当時評価を受けていなかったメンデレーエフの周期表が注目を浴びるきっかけとなった[8]。

性質[編集]

単体のガリウムは自然では産出しないが、溶解製錬によって簡単に得ることができる。高純度の金属ガリウムは光沢のある銀色であり、固体金属の断面はガラスに似た貝殻状断面となる。また、鉱酸によって徐々に溶解する。金属ガリウムは非常に柔らかく、モース硬度は1.5である[9]。液体から固体へと相転移する際に体積が3.2%増加する[10]。これは、固体状態において分子間結合を形成する物質の典型的な現象である[11]。そのため、金属やガラス容器での保管はガリウムの固化による容器破損を防ぐために避けられる。ガリウムのように液体の方が固体よりも高密度な材料は、ケイ素、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよび水のような限られたもののみである。

ガリウムは固体状態では反磁性であるが、液体状態では常磁性となり、40 °C における磁化率は χm = 2.4×10−6 である[12]。

ガリウムは、大部分の他の金属をその金属格子に拡散することで侵食する。例えば、ガリウムはアルミニウム-亜鉛合金[13]や鋼鉄[14]の粒界に侵食することで、それらを脆化させる。また、金属ガリウムは他の金属と容易に合金化し、その代表的なものとして磁歪材料や制振材料に用いられる鉄ガリウム合金 (FeGa) がある[15]。

融点は 302.9146 K (29.7646 °C) と室温に近く、人の手の上で溶解する。ガリウムは過冷却となる傾向が非常に強いため、種結晶の添加による結晶化の促進を行わなければ融点以下の温度においても結晶化しにくい[16]。液体のガリウムは水銀と違ってガラスや金属、皮膚に対する濡れ性が強いため、毒性は強くなく予防措置の必要性が少ないものの、機械的に取扱いが難しい。

構造[編集]





溶融ガリウムの凝固による結晶生成
ガリウムは他の金属のような単純な結晶構造の形では結晶化せず、常圧状態において異なる条件下で形成される四つの既知の多形であるα、β、γ、δ-ガリウムと、高圧状態において形成される Ga-II、Ga-III、Ga-IV が存在する。通常の状態下において安定した状態は単位格子に八つの原子を含む斜方晶系であるα-ガリウムが形成する。α-ガリウムは、最も近い原子同士の距離は 244 pm、六つの隣接する原子とはさらに 39 pm 離れている。このような対称性の低い不安定な構造であることは、ガリウムの融点の低さの原因となっていると考えられている[17]。最も近い隣接した原子間の結合は共有結合的な性質を持っており、そのため Ga2 二量体は結晶の基礎的要素として見られ、共有結合した二量体がそれぞれ金属結合している構造を取る。これも、ガリウムが同族元素であるアルミニウムやインジウムと比較して著しく融点が低いことの説明とされる。この二量体のガリウムは液体状態においても安定であり、気体状態においても二量体のガリウムを検出することができる[18] 。

過冷却状態の液体ガリウムからの結晶化によって、他の結晶形のガリウムを得ることができる。−16.3 °C 以上において単斜晶系のβ-ガリウムが形成され、これはガリウム原子がジグザグに並列した構造を取る。−19.4 °C 以上では三方晶系のδ-ガリウムが形成され、これは12個のガリウム原子が歪んだ形で配列した、α-ホウ素と同様の結晶構造を取る。−35.6 °C では最終的にγ-ガリウムが形成され、これは7個のガリウム原子が環状に配列し、その中央に直鎖型に配列したガリウム原子が相互に接続するような斜方晶系を取る[18] 。

室温、高圧の状態においても他の結晶形のガリウムを得ることができる。30 kbar 以上の高圧条件下において、各々8個の原子と隣接した立方晶系の安定した Ga-II が得られる[18]。140 kbar 以上になると、インジウムの構造に対応した正方晶系の Ga-III が得られる[19] 。1200 kbar 以上において、面心立方格子の構造を取る Ga-IV が得られる[19]。


多形

α-Ga[20]

β-Ga[21]

γ-Ga[22]

δ-Ga[23]

Ga-II[24]

Ga-III[24]

Ga-IV[19]

構造 α-Ga の結晶構造 β-Ga の結晶構造 γ-Ga の結晶構造 δ-Ga の結晶構造 Ga-II の結晶構造 Ga-III の結晶構造 Ga-IV の結晶構造
結晶系 斜方晶系 単斜晶系 斜方晶系 三方晶系 立方晶系 正方晶系 立方晶系
配位数 1+6 8 (2+2+2+2) 3, 6–9 6–10 8 4+8 12
空間群 Cmca C2/c Cmcm R3m I43d I4/mmm Fm3m
格子定数 a = 452.0 pm
b = 766.3 pm
c = 452.6 pm a = 276.6 pm
b = 805.3 pm
c = 333.2 pm
β = 92° a = 1060 pm
b = 1356 pm
c = 519 pm a = 907.8 pm
c = 1702 pm a = 459.51 pm a = 280.13 pm
c = 445.2 pm a = 408 pm
格子あたりの原子数 8 8 40 66 12 3 4

化合物と化学反応[編集]

ガリウムの化合物は通常+3の酸化数をとる。ガリウム(I) の化合物も合成されているが、不均化によって直ちにガリウム(III) となる傾向がみられる。ガリウム(II) の化合物は、実際はガリウム(I) とガリウム(III) の混合物である[3]。

水溶液中の反応[編集]

ガリウムを強酸に溶かすと Ga2(SO4)3 や Ga(NO3)3 のようなガリウム(III) 塩を生成する。ガリウム(III) 塩の水溶液は水和ガリウムイオン [Ga(H2O)6]3+ を含んでいる[25]。水酸化ガリウム(III) Ga(OH)3 はガリウム(III) の水溶液にアンモニアを加えることで得られ、それを 100 °C で乾燥させると水酸化酸化ガリウム(III) GaO(OH) に変化する[26]。

アルカリ金属の水酸化物溶液はガリウムを溶解してガリウム酸イオン Ga(OH)4− を形成する[3][25][27]。水酸化ガリウム(III) も両性化合物であり、アルカリに溶解してガリウム酸塩を作る[28]。初期の研究では八面体形の Ga(OH)63- の存在が示唆されたが[29]、後の研究ではこのイオン種を見いだすことはできなかった[27]。

カルコゲン化物[編集]

金属ガリウムは常温で酸化被膜を形成するため空気と水に対して不活性である。しかしより高い温度では空気中の酸素と反応して酸化ガリウム(III) Ga2O3 が生じる[3]。この酸化ガリウム(III)は半導体素子やガスセンサー等に用いられる。また、酸化ガリウム(III)を金属ガリウムとともに真空中で 500 °C から 700 °C で加熱すると、暗褐色の酸化ガリウム(I) Ga2O が得られる[30]。酸化ガリウム(I) は非常に強い還元剤として働き、硫酸を硫化水素にまで還元することができる[31]。酸化ガリウム(I) は 800 °C で不均化を起こし金属ガリウムと酸化ガリウム(III) になる[32]。

硫化ガリウム(III) Ga2S3 は金属ガリウムと硫化水素とを 900 °C で反応させることによって得られ[33]、3つの結晶形を取りうる[34]。金属ガリウムの代わりに水酸化ガリウム(III) Ga(OH)3 と747 °Cで反応させることによっても得られる[35]。


2 Ga(OH)3 + 3 H2S → Ga2S3 + 6 H2O

アルカリ金属の炭酸塩と酸化ガリウム(III) の混合物に硫化水素を反応させることでチオガリウム酸イオン [Ga2S4]2− が生成する。これらの塩は強酸によって硫化水素を放出しながら分解される[36]。チオガリウム酸の水銀塩 HgGa2S4 は蛍光体として用いられる[37]。

緑色の硫化ガリウム(I) や硫化ガリウム(II) のような低硫化物も生成し、硫化ガリウム(I) は硫化ガリウム(II) を窒素気流化で 1000 °C に加熱することで作られる[38]。

その他の二元化合物には、セレン化ガリウム Ga2Se3 やテルル化ガリウム Ga2Te3 があり、閃亜鉛鉱型構造を取る。これらの化合物は半導体であるが、容易に加水分解するため用途には制限がある[34]。

ニクトゲン化物[編集]





窒化ガリウムの単結晶
ガリウムを 1050 °C でアンモニアと反応させると青色発光ダイオードの素材として知られる窒化ガリウム GaN が得られる。リン、ヒ素、アンチモンとも反応して二元化合物を作り、それぞれリン化ガリウム(英語版) GaP、ヒ化ガリウム GaAs、アンチモン化ガリウム(英語版) GaSb を形成する。これらの化合物は硫化亜鉛と同じ閃亜鉛鉱型構造を取り、ヒ化ガリウムは半導体材料として重要であり、リン化ガリウムは発光ダイオードの材料として利用されるなど、重要な半導体特性を有する[39]。リン化ガリウム、ヒ化ガリウム、アンチモン化ガリウムはいずれも金属ガリウムとリン、ヒ素、アンチモンとの直接反応によって合成され[40]、これらは窒化ガリウムよりも高い電気伝導性を示す[41]。リン化ガリウムは酸化ガリウム(I) とリンとの反応によって低温で合成することもできる[42]。

ガリウムは三元窒化物を形成する[40]。


Li3Ga + N2 → Li3GaN2

Li3GaP2 や Li3GaAs2 などのリンやヒ素による類似した化合物も存在している。これらの化合物は希酸と水によって容易に加水分解される[41]。三元リン化物の代表的な化合物として、圧電素子として利用されるリン酸ガリウム (GaPO4) がある。

ハロゲン化物[編集]

酸化ガリウム(III) はフッ化水素酸やフッ素によってフッ素化されてフッ化ガリウム(III) GaF3 を与える。フッ化ガリウム(III) は水にあまり溶解しないイオン性化合物であるが、フッ化水素酸に対しては3水和物 GaF3•3H2O を形成して溶解する。これを乾燥させると水酸化フッ化ガリウムのn水和物 GaF2OH•nH2O が得られる。この付加物はアンモニアと反応して GaF3•3NH3 となり、これを加熱することで無水物 GaF3 が得られる[43]。

塩化ガリウム(III) は金属ガリウムと塩素ガスの反応によって合成される[3]。塩化ガリウム(III) はフッ化ガリウム(III) とは違い二量体分子 Ga2Cl6 として存在しており、融点は 78 °C である。臭化ガリウム(III) Ga2Br6 およびヨウ化物ガリウム(III) Ga2I6 も同様である[44]。

他の第13族元素のハロゲン化物と同様にガリウム(III) のハロゲン化物はルイス酸であり、ハロゲン化物の受容体と反応して GaX4- アニオン(X はハロゲン)を含むアルカリ金属ハロゲン化物を形成する。それらもまたハロゲン化アルキルと反応してカルボカチオンと GaX4− を生成する[45]。

ハロゲン化ガリウム(III) は高温まで加熱されると金属ガリウムと反応し、それぞれ対応するハロゲン化ガリウム(I) を生成する。例えば、塩化ガリウム(III) と金属ガリウムを反応させることによって塩化ガリウム(I) GaCl が生成する。


2 Ga + GaCl3 → 3 GaCl (g)

低温では塩化ガリウム(I) は不均化を起こして塩化ガリウム(III) と金属ガリウムとなり平衡は左に寄る。塩化ガリウム(I) は金属ガリウムと塩化水素を 950 °C で反応させることでも作ることができ、それは赤い固体として濃縮できる[46]。

ガリウム(I) 化合物はルイス酸と錯体を作ることで安定化することができる。


GaCl + AlCl3 → Ga+[AlCl4]−

いわゆるハロゲン化ガリウム(II) GaX2 はそれぞれのハロゲン化ガリウム(I) にハロゲン化ガリウム(III) がルイス酸として付加したものであり、Ga+[GaX4]− という構造をしている[3][46][47]。


GaCl + GaCl3 → Ga+[GaCl4]−

水素化物[編集]





ガランの二量体。ピンクの球は Ga、白は H を表す
アルミニウムと同様ガリウムも水素化物 GaH3 を形成する。水素化ガリウム(III)(ガラン)は無色の液体であり[48]、LiGaH4 と塩化ガリウム(III) を −30 °C で反応させることによって得られる[49]。


3 LiGaH4 + GaCl3 → 3 LiCl + 4 GaH3

水素化ガリウム(III) はジメチルエーテルを溶媒として合成すると重合体 [GaH3]n として得られ、無溶媒で反応させると二量体の揮発性の分子 Ga2H6 として得られる。その構造はジボランと似ており、二つの水素原子が二つの金属中心を架橋する構造を有し[49]、水素化アルミニウム(III) α-AlH3 が6配位を持つのとは異なっている[50]。

水素化ガリウム(III) は −10 °C 以上では不安定で、金属ガリウムと水素に分解する[51]。

有機金属化合物[編集]

ガリウムのトリアルキル化合物は同族元素であるアルミニウムのそれと類似した性質を持っているが、トリアルキルアルミニウムが炭素原子の架橋により多量体を形成するのと比較して、トリアルキルガリウムは二量体をも形成しないため非常に不安定である[52]。トリアルキルガリウムの中でも特に重要なものとして、LED照明などに用いられる窒化ガリウムや半導体として重要なヒ化ガリウムの有機金属気層成長法による製造において、ガリウム源として用いられるトリメチルガリウムがある[53][54]。また、クロロジメチルガリウムなどのジアルキルガリウムにおいては、水溶液中で錯イオンを形成し安定化することが知られている[55]。

用途[編集]

産業[編集]





ガリウムを利用した青色発光ダイオード
マイクロ波集積回路や赤色発光ダイオード、半導体レーザーなどに用いられるヒ化ガリウムのようなIII-V族半導体の主要な材料である。窒化ガリウムは中村修二が開発した青色発光ダイオードの材料である。世界市場のガリウムの95%は半導体に使われているが、合金や燃料電池などの新規用途の開発も続けられている。

302.91 K (29.76 °C)–2676 K (2403 °C) と広い温度範囲で液体であるため、液柱温度計に用いられる[56][2]。水銀と違って低温での蒸気圧が低いことも、温度計への利用に有利である。

融点が低いため、低融点合金にも使われる。ガリウム68.5%、インジウム21.5%およびスズ10%からなる合金はガリンスタンとよばれ、毒性が低く常温で液体(融点−19 °C)であることから液体鏡面望遠鏡 (en) の水銀の代替として研究されており、また合金に含まれるインジウムの高速中性子に対する反応断面積の高さを利用して核融合炉の冷却材としても研究されている[57]。また、プルトニウム-ガリウム合金はトリニティ実験で使われた核爆弾および長崎に投下されたファットマンの中心核に少量添加され、プルトニウムの結晶構造を安定化させるのに用いられた[58]。

生体内での利用[編集]

ガリウム(III) イオンは生体内で鉄(III)イオンと同じように振る舞うため、鉄(III) イオンが操作する生体反応に相互に作用して局在化する。この性質を利用して、疾患推定の検査であるシンチグラムにガリウム塩が使われている。またガリウムの生物学的役割は知られていないが、代謝の促進を促すことが示された[59]。

その他[編集]

1990年、国際度量衡局が定めた国際温度目盛 (ITS-90) の定義定点の一つとして、標準気圧 (101,325 Pa) におけるガリウムの融解点である302.9146 K (29.7646 °C) が用いられた[60][61][62]。

人間の手のひらに固体のガリウムを乗せると体温で融け、融けたガリウムを別の容器などに移すと次第に固体に戻るため、融点に関する教材としての使い道がある。ただし、液体のガリウムは濡れ性が強く、手やガラスに付くと取れにくいので、取り扱いには注意を要する。

産出[編集]

ガリウムは自然界では単体としては存在せず、元素またはその化合物を抽出する一次原料としての高品位のガリウム鉱物もまた存在しない。地球の地殻には約 16.9 ppm 含まれている。ガリウムは、ボーキサイトの微量成分として抽出され、閃亜鉛鉱からも少量抽出される[56]。石炭、ダイアスポア、ゲルマニウムに含まれるガリウムは無視できるほどの量である。石炭を燃焼した粉塵には、少量のガリウムが含まれる場合があるが、通常、重量にして1%以下である。ガリウムの含有量が比較的多い鉱石としてはナミビアのツメブで産するゲルマナイトが知られているが、それでも含有率はわずかに0.6%–0.7%程度である[16]。

生産[編集]





高純度のガリウム
ガリウムはアルミニウムや亜鉛を製錬する際の副産物として得られる。これらの2つの方法以外は経済的ではない。アルミニウム製錬での副産物として得るのが主流である。ボーキサイトからバイヤー法でアルミナを生産する際に、ここで得られるガリウムを含んだバイヤー液(アルミン酸ソーダ溶液)から、Ga2O3(酸化ガリウム(III))を沈殿させた後で、水銀陰極を用いて電解還元し、ガリウムを得る方法などがある。ガリウム含有溶液には他の金属も含まれるため、それらと分離して精製する必要がある。半導体として使用する場合には、ゾーンメルト法でさらに純度を高めたり、チョクラルスキー法を使って、単結晶を得ることができる。通常、99.9999%の純度が達成され、商業的に広く利用されている。世界全体の生産量は、2006年のガリウムの生産量は234トンで、採掘からは100トン未満が得られ、残りは電子部品の製造工程でのスクラップなどからリサイクルされると推定される。日本はガリウムの最大の需要国であり、例えば2006年の日本のガリウム需要は168トンであり、これは世界の需要の約72%を占めている。また、日本でのスクラップ回収から得られる量は90トン以上と、大きな比率を占めている[63]。

出典[編集]

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36.^ Greenwood (1962) pp.104-105
37.^ Krausbauer, L.; Nitsche, R.; Wild, P. (1965), “Mercury gallium sulfide, HgGa2S4, a new phosphor”, Physica 31 (1): 113-121, doi:10.1016/0031-8914(65)90110-2
38.^ Greenwood (1962) p.94
39.^ Wiberg, Holleman (2001) p.1034
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42.^ Michelle Davidson (2006), Inorganic Chemistry, Lotus Press, p. 90, ISBN 8189093398
43.^ Downs (1993) pp.128-129
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47.^ Amit Arora (2005), Text Book Of Inorganic Chemistry, Discovery Publishing House, pp. 389–399, ISBN 818356013X
48.^ 千谷 (1959) 403頁。
49.^ a b Wiberg, Holleman (2001) p.1031
50.^ Wiberg, Holleman (2001) p.1008
51.^ Anthony J. Downs; Colin R. Pulham (1994), A. G. Sykes, ed., Advances in Inorganic Chemistry, Volume 41, Academic Press, pp. 198–199, ISBN 0120236419
52.^ コットン、ウィルキンソン (1987) 337-341頁。
53.^ T.J. Mountziaris, S. Kalyanasundarama and N.K. Inglea (1993), “A reaction-transport model of GaAs growth by metalorganic chemical vapor deposition using trimethyl-gallium and tertiary-butyl-arsine”, Journal of Crystal Growth 131 (3-4): 283-299, doi:10.1016/0022-0248(93)90178-Y
54.^ 徳永裕樹ほか (2006), 大量生産GaN用MOCVD装置の開発, 大陽日酸
55.^ コットン、ウィルキンソン (1987) 341頁。
56.^ a b コットン、ウィルキンソン (1987) 323頁。
57.^ Lee C. Cadwallader (2003) (preprint), Gallium Safety in the Laboratory 2010年11月15日閲覧。
58.^ Sublette,Cary (2001-09-09), “Section 6.2.2.1”, Nuclear Weapons FAQ 2010年11月16日閲覧。
59.^ Winter, Mark, Scholar Edition: gallium: Biological information, The University of Sheffield and WebElements Ltd, UK 2010年11月15日閲覧。
60.^ Preston–Thomas, H. (1990), “The International Temperature Scale of 1990 (ITS-90)”, Metrologia 27: 3–10, doi:10.1088/0026-1394/27/1/002 2010年11月15日閲覧。
61.^ ITS-90 documents at Bureau International de Poids et Mesures 2010年11月15日閲覧。
62.^ Magnum, B.W.; Furukawa, G.T. (August 1990), Guidelines for Realizing the International Temperature Scale of 1990 (ITS-90), National Institute of Standards and Technology, NIST TN 1265 2010年11月15日閲覧。
63.^ 石油天然ガス・金属鉱物資源機構, ストロンチウム及びガリウムの需要・供給・価格動向等 2008年12月21日閲覧。

参考文献[編集]
Anthony John Downs (1993), Chemistry of aluminium, gallium, indium, and thallium, Springer, ISBN 075140103X
N. N. Greenwood (1962), Harry Julius Emeléus, Alan G. Sharpe, ed., Advances in inorganic chemistry and radiochemistry, Volume 5, Academic Press, ISBN 0120236052
Egon Wiberg; Nils Wiberg; Arnold Frederick Holleman (2001), Inorganic chemistry, Academic Press, ISBN 0123526515
F・A・コットン、G・ウィルキンソン 『コットン ウィルキンソン 無機化学(上)』 中原 勝儼、培風館、1987年、原書第四版。ISBN 4563041920。
千谷利三 『新版 無機化学(上巻)』 産業図書、1959年。
村上雅人 『元素を知る事典: 先端材料への入門』 海鳴社、2004年。ISBN 9784875252207。

六方最密充填構造

六方最密充填構造(ろっぽうさいみつじゅうてんこうぞう、hexagonal close-packed, hcp)とは、結晶構造の一種である。学術用語では、稠密六方格子構造(ちゅうみつろっぽうこうしこうぞう)、または単に六方格子構造などと呼ばれる。

六方最密充填構造は一般に正六角柱で表し、この正六角柱の上面および底面の各角および中心と、六角柱の内部で高さ 1/2 のところに 3 つの原子が存在する。底面の中心に位置する原子は、底面の角の 6 原子および上下の各 3 原子(計 12 原子)と接しており、最密充填構造となっている。また、原子の最稠密面をABAB…(A, Bは原子の位置の種類を示す)の順に重ねた構造と表現することもできる。充填率は立方最密充填構造(面心立方格子構造)と等しいが、別の構造である。

概要[編集]
充填率 : 74 %(={\frac {\pi }{3{\sqrt {2}}}}、最密充填)
最近接原子数(配位数) : 12 個
最近接原子間距離 = 格子定数 a
単位格子中の原子の数 : 2 個(=4\times {\frac {1}{12}}+4\times {\frac {1}{6}}+1)
六方最密充填構造に含まれる原子の数 : 6 個(=2\times 3)
六方最密充填構造の単位格子は、正六角柱を縦に 3 等分してできる菱形柱である(「結晶格子」の「六方晶」を参照)。単位格子に含まれる原子数は 2 個であるから、六方最密充填構造には 6 個の原子が含まれる。
結晶内のすべり面の数が限られているので、硬くてもろく、常温では塑性変形しにくい金属が多い。
六方最密構造という結晶構造はあるが、六方最密格子なるものは存在しない。格子と結晶構造は別物であり、明確に区別して呼ばなければならない。

常温で六方最密充填構造をとる元素[編集]

球対称の原子を充填した理想的な六方最密充填構造では格子定数の軸率は {\frac {c}{a}}={\frac {2{\sqrt {2}}}{{\sqrt {3}}}}=1.633 となるが、実在の金属では異方性があり厳密な意味での六方最密充填構造を取る金属は存在しない。マグネシウムは比較的理想的な格子に近く軸率は c/a = 1.624 であるが、亜鉛では c/a = 1.856 と異方性が高くなる。しかし一般的にはすべて六方最密充填構造と分類している。なお、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)は六方晶ではあるが、最稠密面をABACの順に 4 層ずつ繰り返す複六方最密構造と呼ばれる特殊な構造であり六方最密充填構造ではない。
ベリリウム(Be)
マグネシウム(Mg)
スカンジウム(Sc)
チタン(Ti)
コバルト(Co)
亜鉛(Zn)
イットリウム(Y)
ジルコニウム(Zr)
テクネチウム(Tc)
ルテニウム(Ru)
カドミウム(Cd)
ガドリニウム(Gd)
テルビウム(Tb)
ジスプロシウム(Dy)
ホルミウム(Ho)
エルビウム(Er)
ツリウム(Tm)
ハフニウム(Hf)
レニウム(Re)
オスミウム(Os)

亜鉛

亜鉛(あえん、英: zinc、羅: zincum)は原子番号30の金属元素。元素記号は Zn。亜鉛族元素の一つ。安定な結晶構造は、六方最密充填構造 (HCP) の金属。必須ミネラル(無機質)16種の一つ。



目次 [非表示]
1 性質
2 天然における存在
3 歴史
4 製錬 4.1 乾式法
4.2 湿式法

5 用途 5.1 電池
5.2 亜鉛めっき

6 人体における亜鉛 6.1 所要量
6.2 欠乏症
6.3 過剰症
6.4 サプリメントとしての亜鉛
6.5 摂取源

7 亜鉛の化合物
8 同位体
9 脚注
10 関連項目
11 外部リンク


性質[編集]

青味を帯びた銀白色の金属であるが、湿った空気中で錆び易く、灰白色の塩基性炭酸亜鉛で覆われる。融点は419.5 °C、沸点は907 °C。常温では脆いが、約110 - 150 °Cの範囲のみで展性、延性に富むようになる。

単体金属の格子定数はa = 265.9 pm、c = 493.7 pm (25 °C) で、理想的な六方最密充填構造よりもやや c 軸方向に伸びている。c 軸方向の熱膨張率は a 軸方向の約3.5倍と異方性が強く現れ、線膨張率は a 軸方向(c 軸と垂直)は1.50×10−5 K−1、c 軸方向では5.30×10−5 K−1である[1]。

空気中で加熱すると酸化亜鉛となる。
2Zn + O2 → 2ZnO
希酸に容易く水素を発生して溶けるが、希硝酸に溶解させた場合は濃度により、亜酸化窒素、窒素、ヒドロキシルアミンあるいはアンモニウムイオンを生成する[2]。


Zn + 2 H+(aq) → Zn2+(aq) + H2


4 Zn + 10 H+(aq) + NO3−(aq) → 4 Zn2+(aq) + NH4+(aq) + 3 H2O

両性元素であり、熱濃アルカリにも徐々に溶ける。


Zn + 2 OH−(aq) + 2 H2O → [Zn(OH)4]2−(aq) + H2

ハロゲンとは室温において乾燥状態では反応しにくいが、水分の存在下で室温でも激しく反応し、硫黄とは高温で硫化物をつくる。一方、水素、炭素および窒素とは高温でも直接は反応しない。

天然における存在[編集]

天然には、稀に遊離状態で産出することはあるが、資源的に見合う量ではない。地殻中の存在比は推定値で80 ppm[3]とそれほど多くはないが、硫化亜鉛を主成分とする閃亜鉛鉱などが容易く採掘されるため金属は安価である。ほか、亜鉛はウルツ鉱、菱亜鉛鉱などの中に存在する。

亜鉛の沸点が同族のカドミウム、水銀と同様に低いため、酸化亜鉛を木炭などで還元して金属を得ようとしても昇華してしまい煙突の先端で空気中の酸素と反応し酸化物に戻る。この場合、鉱石を還元して生成した蒸気を空気を遮断して冷却しなければ単体は得られない。

歴史[編集]

亜鉛は少なくとも紀元前4000年から銅との合金である黄銅(真鍮)として用いられて来た。古代ギリシア人はキプロス産の亜鉛化合物について記述している。ローマ征服前のダキア人(現在のルーマニア)は紀元前から金属亜鉛精錬技術に通じていた。ダキア以前に金属亜鉛を得た民族は見つかっていない。ダキア以外のヨーロッパで金属亜鉛を精錬するようになったのは産業革命が始まってからである。

インドでもダキア人とは独立に亜鉛精錬技術を発見し、12世紀にはウールを還元剤として金属亜鉛を得ていた。12世紀から16世紀までに100万トン以上の亜鉛を製造したと考えられている。インドの技術はやがて中国に渡り、16世紀には中国でも亜鉛生産が始まっている。

ヨーロッパ人として金属亜鉛に初めて接したのはポルトガル人だった。ポルトガル人は亜鉛の重要性に気づいておらず、ポルトガル商船を拿捕したオランダ人によってヨーロッパに金属亜鉛が持ち込まれた。1509年にニュルンベルクのエベナーが初めて欧州での金属亜鉛の生産をはじめた。1620年にはヨーロッパで東洋起源の金属亜鉛の販売が始まった。1737年に、中国から亜鉛精錬技術がイギリスに伝わる。1743年、ヨーロッパ初の亜鉛工場が港湾都市ブリストルに建設された。年間生産量は200トンである。同年スウェーデン人のアントン・フォン・シュワープが炭酸亜鉛から亜鉛を蒸留分離することに成功、硫化亜鉛からも抽出できた。これはイギリス人の製法とは独立である。1746年、ドイツ人アンドレアス・マルクグラーフは他の2国とは独立に金属亜鉛を得る。コークスと酸化亜鉛を加熱する際、空気を断つことが成功につながった。結局、マルクグラーフの手法が金属亜鉛の大規模生産へとつながっていく。このため、マルクグラーフこそが亜鉛の発見者であると位置づけられることがある。1798年に水平レトルト精錬法という、耐火性容器に石炭と亜鉛鉱石を入れて加熱し、亜鉛を蒸留精錬する方法による精錬工場が建設された[4]。当初、鉛製造工業の副産物として得られていた亜鉛の表面は平滑ではなく、櫛の歯 (Zinken) のような筋状になっていたので、Zinkと呼ばれるようになった[5]。

日本では真鍮を意味する鍮石という言葉は天平年間から記録があり、文禄年間には真鍮という名称に変化している。その当時すなわち16世紀終わり頃、亜鉛は中国名で倭鉛と呼ばれ、ポルトガルではツタンナガ (Tutanaga) といったが、これを日本ではトタン(吐丹)と呼んだ。また亜鉛という言葉は1713年(正徳3年)に『和漢三才図会』に記録されたのが最初であるとされる[6]。

1850年代には米国のヒルツが亜鉛生産を開始した。1881年にフランスのルトランジュが電解法を発明した[4]。

日本国内における金属亜鉛の製錬は1889年(明治22年)に黒鉱の処理から開始された。蒸留亜鉛が商業ベースで生産され、電気亜鉛の生産が神岡鉱山で開始されたのは共に1910年(明治43年)頃である[6]。 1910年代になると世界各地で亜鉛の電解精錬がはじまった[4]。

製錬[編集]





酢酸亜鉛




塩化亜鉛
亜鉛鉱としては閃亜鉛鉱 (ZnS) や菱亜鉛鉱 (ZnCO3) が主要であり、日本の亜鉛鉱山は閃亜鉛鉱が主である。細かく破砕された鉱石から浮遊選鉱などで脈石・銅鉱物・鉛鉱物などを分離したものは亜鉛精鉱と呼ばれる(亜鉛含量 50-58 %)。亜鉛精鉱は焼結により団塊とされることが多い。亜鉛精鉱は焙焼により酸化亜鉛(亜鉛焼鉱)とされた後に、乾式製錬法もしくは湿式製錬法(電解精錬)により金属亜鉛に製錬される。


ZnS + 3/2 O2 → ZnO + SO2

閃亜鉛鉱にはカドミウムが、菱亜鉛鉱には鉛が随伴するため、亜鉛精錬においてはこれらの有害金属が環境放出されないように制御される。

乾式法[編集]

乾式製錬法は、炭素(コークスまたは無煙炭)により酸化亜鉛の焼鉱を還元し、生成した金属亜鉛を揮発回収して蒸留亜鉛を作る方法である。還元炉の形式により、水平レトルト蒸留法・立形レトルト蒸留法(竪型レトルト法・New Jersey 法)・電熱蒸留法・ISP 法などに大別される[7]。


ZnO + C → Zn(g) + CO

蒸留亜鉛は耐火粘土製コンデンサー(受け皿)に導いて冷却し液状亜鉛として捕集されるが、鉛 (bp. 1744 °C)、カドミウム (bp. 765 °C) を含む。これらの不純物はダイカスト用亜鉛において粒界腐食を起こす原因ともなるので、分別蒸留によりさらに高純度に精製される。鉛は揮発しない温度に保たれ、カドミウムは先に揮発させて分別する。

電熱蒸留法では、亜鉛焼鉱とコークス粒の混合物に直接電流を通し加熱する円筒電気炉を使用する。この方法では亜鉛1トン当たり3000 kWhの電力と500 kgのコークスを必要とする。ISP 法は鎔鉱炉製錬法とも呼ばれ、炉内で生成する亜鉛蒸気を鎔融鉛のシャワーに吸収させ、この亜鉛を4.6 %含む560 °Cの鎔融金属を440 °Cまで冷却すると鎔融鉛に対する亜鉛の溶解度が2.1 %まで低下し、ほぼ純粋な鎔融亜鉛が分離して浮き上がるため、これを回収する[6]。

湿式法[編集]

湿式製錬法では、酸化亜鉛の焼鉱を硫酸に溶かした硫酸亜鉛の水溶液とし電解して金属を得る。


ZnO + H2SO4 → ZnSO4 + H2O


(ZnO + 2 H+ → Zn2+ + H2O)

この硫酸亜鉛溶液は不純物を含むため、まず少量の二酸化マンガンを加えて鉄イオンを2価から3価へ酸化した後、鉄・ヒ素・アンチモンを沈殿させる。続いて少量の亜鉛末を加えて銅・ニッケル・コバルトおよびカドミウムを単体をして析出除去する[7]。この精製した硫酸亜鉛水溶液に希硫酸を加えて酸性とし、陰極にアルミニウム電極、陽極に不溶性の含銀鉛電極を用いて電解精錬する。陽極からは酸素、陰極からは亜鉛が析出し、純度 99.99 %以上の金属亜鉛が得られる[8][9]。亜鉛はイオン化傾向が水素よりも大きく電位的に還元されにくい金属であるが、水素過電圧が高いため水溶液中であっても陰極に析出させることができる(亜鉛めっきの節も参照のこと)。


Zn2+ + 2 e− → Zn(陰極、E°= −0.7626 V)

消費電力は亜鉛1トンあたり3000 - 4000 kWhである[2]。

用途[編集]

亜鉛めっき鋼板として鋼材の防食に用いる。特に、薄い鉄板に亜鉛めっきを施したものはトタンと呼ばれ屋根材などに使われる(→トタン板)。犠牲電極としての亜鉛めっきの他、真鍮や洋銀などの合金材料、乾電池の陰極板などに利用される。ダイカストの地金には亜鉛合金が広く用いられている。また、亜鉛の蒸気を酸素と反応させることにより、亜鉛華と呼ばれる白色粉末が得られ、これを顔料、医薬品、化粧品などとして用いる。亜鉛を原料としたおしろいが生まれる以前は鉛や水銀を原料としており、しばしば中毒を引き起こしたため、安全な亜鉛のおしろいの登場は画期的な事であった。また、近年においては透明薄膜トランジスタの伝導膜として酸化亜鉛が注目を集めている[2]。船舶では金属が水に触れて腐食する事を防ぐ為、亜鉛ブロックを船体に組み込んで犠牲電極としている。亜鉛ブロックは消耗するので定期的に補充する。

電池[編集]

マンガン電池やアルカリ電池、空気亜鉛電池等の負極材料として使用される。尚、充電時には電池内部にて負極から正極に向けて樹枝状のデンドライトが生成し、短絡の原因ともなる為いずれの電池も充電には適さない。亜鉛を燃料とする一種の燃料電池ともいえるメカニカルチャージ式の空気亜鉛電池が一時期開発されていた。

亜鉛めっき[編集]

亜鉛を鋼板へめっきする方法としては、溶融した亜鉛に鋼材を浸して行なう溶融亜鉛めっきと、電気分解を利用する電気めっきがある。電気めっきの場合には、めっき後かなり時間がたってからウィスカーと呼ばれるひげ状の細長い亜鉛結晶が成長してくることが知られており、これが電気製品の故障原因となる場合がある。近年でも、サーバーに障害を発生させる原因となるとして注意喚起が行なわれている[10]。

また、亜鉛は水銀などと同様に水素過電圧の大きな電極であり(約0.7 V; 1 N H2SO4)相対的に水素分子を発生しにくい電極である。つまり水素過電圧は電極の表面状態,電流密度,温度などで変化するので条件によっては水素よりも標準酸化還元電位が大である亜鉛が水溶液から析出したり電解めっきすることが可能になる。すなわち、亜鉛の表面では水素イオンが電子により還元されてから水素分子が生成する多段階反応が律速となるため、低電流領域では陰極電位がZn の平衡電位に到達せず水素が発生するものの、高電流領域では二水素生成が飽和することで陰極電位が上昇し(水素過電圧)亜鉛が析出する現象が見られる。また陰極上に生成吸着した Zn(OH)2 が水素析出抑制剤として作用するとも考えられている[11]。

人体における亜鉛[編集]


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この節には独自研究が含まれているおそれがあります。問題箇所を検証し出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2013年3月)

生体では鉄の次に多い必須微量元素で、体重70 kgのヒトに平均2.3 g含まれる。100種類を超える酵素の活性に関与し、主に酵素の構造形成および維持に必須である。それらの酵素の生理的役割は、免疫機構の補助、創傷治癒、精子形成、味覚感知、胎発生、小児の成長など多岐にわたる。炭酸脱水酵素が最も重要だろう。その他、加水分解酵素の活性に関わり、DNA や RNA のリン酸エステルを加水分解によって切断するので細胞分裂に大きく関わる。

人体に入る亜鉛はすべて食品に由来する。人体中では骨に多く、次いで体組織である。最も少ないのが血液であり、7 ppmに過ぎない。体組織中では、眼球、肝臓、筋肉、腎臓、前立腺、脾臓である。体液としては精液に多い。このうち、亜鉛の貯蔵器官は骨と脾臓である。亜鉛の排出経路は消化器が9割を占め、残りが尿と汗である。男性の場合、適度な亜鉛摂取は精子形成の増加および性欲増進の効果が見られる。

なお、必須ミネラル16種の一つであるが、大量の高濃度の亜鉛は人体に有害である。皮膚を刺激し、蒸気を吸入すると呼吸器に障害を起こし、全身、特に四肢の痙攣に至る。また工業的に作られた製品は不純物が有害な場合がある。

所要量[編集]

2005年版の「日本人の食事摂取基準」では、推定平均必要量:8 (6) mg/日、推奨量:9 (7) mg/日、上限量:30 (30) mg/日(数値はいずれも成人男性、かっこ内は成人女性)である。ちなみにアメリカでは、男性で11 mg/日、女性で8 mg/日が推奨されている。

欠乏症[編集]

亜鉛の欠乏は、亜鉛含量の少ない食事の摂取、亜鉛と結合し小腸での吸収を妨げる食物繊維の取りすぎ、さらに鉄や銅の過剰摂取などが原因となって起こることがある。亜鉛を最も含む食材は入手の容易さを考慮に入れるとレバーである。食物中にフィチン酸が含まれていると亜鉛の吸収が妨げられる。フィチン酸は穀物や豆類に多い。したがって、赤身の肉が少なく、穀物や豆類の摂取が多い国、例えば、FAO の統計によると、メキシコやペルーなどに欠乏症の素地を満たす国民が多い。

症状は細胞分裂の頻繁な箇所に影響が現れる。
味蕾の減少による味覚障害
精子形成の減少
無月経
貧血
皮膚炎
免疫機能の減弱
甲状腺機能の減弱
創傷治癒の遅延

亜鉛欠乏時には、胃腸機能の減衰および免疫機能低下による下痢が見られ、亜鉛を含む栄養素の摂取不良を招き、欠乏がさらに悪化することがある。亜鉛はインスリンの構造維持に必須でもあり、糖代謝にも関与する。さらに、ビタミンAの活性化にも関与するため、亜鉛の欠乏により、ビタミンA欠乏症が現れることがある。また、動物実験レベルでは、亜鉛欠乏により、活動性の低下、記憶や注意力の低下、味覚指向の変化[12]が見られる。医師による治療の際は、亜鉛含有製剤としてポラプレジンクなどが処方される[13]。

過剰症[編集]

亜鉛は過剰に摂取されると、膵液を通して過剰分が排泄されるが、大量に摂取されると過剰症を引き起こす。亜鉛の摂取過多は鉄や銅の欠乏を招く。また、善玉コレステロールとして知られる高比重リポタンパク質 (HDL) の血液中の濃度を低下させる。





亜鉛を多く含む食品の例
サプリメントとしての亜鉛[編集]





亜鉛のサプリメント。写真の製品は、1粒辺り50mgが含まれる(オーストラリア)
時折、亜鉛の重要性をことさら誇張し「亜鉛を摂取すると精力が付く」とか「亜鉛は性のミネラル」などといったような文句で亜鉛サプリメントの宣伝がなされることがあるが、亜鉛の多量摂取により男性機能が高まるということはない。このような症状を強く感じても、それらが亜鉛の摂取によるものとは断定できない。特に皮膚や免疫という生命維持にとって重要性の高い要素に対する素人の判断は問題を拡大することにもつながる。これらの症状はほかの原因によって起きている可能性もあるため、安易に亜鉛サプリメントを摂取して間に合わせようとするのではなく、医師に相談し適切な処方を受ける方が確実である。

摂取源[編集]


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この節の正確性に疑問が呈されています。問題箇所に信頼できる情報源を示して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2009年1月)

100 g中に含まれる亜鉛の量 (mg) の比較。
カキ - 7
レバー - 6
牛肉 - 4
小麦 - 4 - ただし土壌により、1/10にまで下がる場合がある
チーズ - 3
納豆 - 3
エビ - 2
卵 - 1
牛乳 - 0.4

亜鉛の化合物[編集]

化合物中の原子価は唯一2価が安定であり、その他1価の二原子イオン (Zn22+) は亜鉛および塩化亜鉛を融解状態で反応させると生成するものの、極めて不安定で不均化しやすい[14]。

2価の水和イオン Zn2+(aq) は無色であり、多少加水分解して弱酸性を示し、その酸解離定数はpKa = 9.0である。
塩化亜鉛 (ZnCl2)
酸化亜鉛 (ZnO)
硫化亜鉛 (ZnS) - 白色
硫酸亜鉛 (ZnSO4)
クロム酸亜鉛 (ZnCrO4) - 黄色顔料・ジンククロメート(ジンクイエロー)として使われる。
ステアリン酸亜鉛 (Zn(C18H35O2)2) - 製薬助剤
スズ酸亜鉛 (ZnSnO3) - プラスチック難燃剤
グルコン酸亜鉛 (C12H22O14Zn) - 医薬(亜鉛補充剤)
リン化亜鉛 (Zn3P2) - 殺鼠殺虫剤(毒物及び劇物取締法による劇物)

同位体[編集]

詳細は「亜鉛の同位体」を参照

脚注[編集]

1.^ 日本化学会編 『化学便覧 基礎編 改訂4版』 丸善、1993年
2.^ a b 『化学大辞典』 共立出版、1993年
3.^ Taylor & McLennan, 1985
4.^ a b c 山口英一監修、非鉄金属研究会編著、『非鉄金属の本』、日刊工業新聞社、2010年8月30日初版1刷発行、ISBN 9784526065149 pp. 78–85
5.^ 大学教育研究会編 『化学ー物質と人間の歴史―』 開成出版、1985年、ISBN 4-87603-044-8
6.^ a b c 西川精一 『新版金属工学入門』 アグネ技術センター、2001年
7.^ a b 『新実験化学講座8 無機化合物の合成(I)』 丸善、1976年
8.^ 増本健、2-5-1亜鉛、『金属なんでも小事典』、ブルーバックスB1188、講談社、pp. 128–130、1997。ISBN 4-06-257188-9
9.^ 後藤 佐吉、「亜鉛」、『世界大百科事典』、第二版CD-ROM版、平凡社、1998年。
10.^ [1]
11.^ 福島久哲、中野博昭、硫酸塩浴からの亜鉛および亜鉛合金の電析機構、表面科学Vol. 22, No. 2, pp. 107–112, 2001
12.^ 亜鉛の摂取不足がラットのラード食と魚油食の嗜好性に及ぼす影響 日本栄養・食糧学会誌 Vol.66 (2013) No.1 pp. 25–33
13.^ 亜鉛含有製剤 佐賀医科大学医学部附属病院 薬剤部
14.^ F・A・コットン、G・ウィルキンソン著、中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年

関連項目[編集]

ウィキメディア・コモンズには、亜鉛に関連するメディアがあります。
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ジンクホワイト(酸化亜鉛)
微量元素
マトリックスメタロプロテアーゼ(酵素)
武田厚司
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