2019年08月20日
「すいか」を観て思ったことと、これから漫画家を目指す人のために言っておきたいこと。
ユーネクストで「すいか」を見ました。
もう10年以上前のドラマのようです。
小林聡美さんや、ともさかりえさんなど
個性的な女優さんがたくさん出ています。
ほのぼのしながらチクリと胸を刺すところもあり、
とてもおもしろいカワイイドラマでした。
ユーネクストなら見放題でドラマが一気に見れます!
特にともさかりえさんがカワイイです!
ファッションも佇まいも、じぃっと見つめてしまいたくなるほど
カワイイ!
で、ともさかりえさんは、「たいして売れていないマイナーなエロ漫画家」という
役どころなんですよね。
あらまあ!私のことじゃない?(笑)
と、感情移入してしまうのはごく自然なこと(笑)
世間一般の「少女漫画家ってこんな生活」というステレオタイプな表現も
少しはあったけど、根の部分はとてもリアルでした。
だからよけい共感…。
それで、後半の方で、ともさかさんはついに
「メジャーな大手出版社」から「連載の依頼」が
舞い込んでくるのです。
まあ、普通、「マイナーな雑誌でしか仕事がない、そして売れてるわけではない漫画家」
からしたら、一つの目標であり、ゴールでありスタートでもあり、
とにかく「すっごいラッキーなこと」であり、
もしかしたら、普通のステレオタイプなドラマなら
ここで「めでたしめでたし」「夢はきっと叶う!」とかいって
ハッピーエンドを迎えるのもアリでしょう。
しかし、「大手出版社で連載!めでたしめでたし」という
流れではなかったことが
「すいか」のスゴイところ。
ともさかさんの役柄もプレッシャーに押しつぶされながらも
「やっと来たチャンス!」「失敗するわけにはいかない」と
本気だしてネームに取り組みます。
しかし、大手出版社にネームを見せると
偉そうな編集者が
「言ってたのと違うじゃない!」と怒鳴りつけます。
「俺の言った通りに描けばいいんだよ!」と
ネームを直すことを強要します。
ともさかさんは「でも、それじゃあ描く意味ないっていうか…」と
ごにょごにょと自分の意見を言おうとしますが
編集者は聞き耳もちません。
それで「もういいです!やめます!」と
ネームを抱えて出版社を出て行きます。
私は…
泣いてしまいました。
ドラマだからってオオゲサに演出しているわけではないのです。
これ、真実です…。
ドラマでも映画でも、はたまた「漫画の中」ででも
新人や売れていない漫画家が編集者にネームを見せるシーンは
よく出てきます。
そのシーンでは、100パーセント、
自信なさげにうなだれる漫画家とふんぞり返る編集者の様子が
映し出されます。
編集者からは威圧感。
おかしくないですか?
編集者ってそんなに偉いんですか?
編集者って、そんなにマンガのことを
「理解してわかっていて売れるヤツがわかる」
んでしょうか?
そんなに偉そうにしなくてもいいじゃないですか?
こっち(漫画家)はウケるかウケないかわからないけれど
自分の命を削って描いた漫画を持ってきているんです。
「おもしろいかおもしろくないか」は
まだ、自分の中でしかわかりません。
編集者ははじめての読者です。
自信などないに決まってます。
編集者は?
選ぶ立場なんでしょうか?
「キミくらいの漫画家ははいて捨てるほどいるんだから」
「ウチの雑誌に描きたいって漫画家は腐るほどいるんだから」
これが本音でしょう。
編集者がよく口にするのは
「ウチの雑誌としては…」
「ウチの読者は…」
なんですけど、あれって本当なんでしょうか?
そんなにアナタの雑誌のカラーを後生大事に守っているのでしょうか?
結果的に「ウチには合わない」と言って突っ返されます。
だったら「持ち込み大募集!」とか書かなければいいのに…。
これから漫画家を目指す人に言いたい。
持ち込みなんてしなくていいです。
するのなら投稿で充分です。
わざわざ編集部に足を運ぶ必要はない。
編集部に直接アドバイスもらえると言って
喜んではだめです。(ほとんどの人は「何言ってるかわからない」と混乱するだけです)
名刺もらって「スタートラインに立った!」とか
自慢していたらダメです。
編集者のことを「担当様」「編集者様」とか崇めてはいけません。
敬意をもって普通に「さん」で充分です。
「すいか」の他に同じく「ユーネクスト」で
「きみが心に棲みついた」も見たのですが、
ここに出ていた編集者と漫画家の関係は、
これは完全なるフィクションです。
こんなに仲の良い、同志な編集者と漫画家の関係は、まあ、ないです。
編集者が「〇〇せんせぇ〜」と下でに出るのは、
漫画家が売れた時だけです。
稼ぎ頭の漫画家をおだてて調子に乗せてるだけです。
出版社という組織に属する編集者のとって、
大手であればあるほど、
「編集者が上、漫画家が下」
です。
社内では上司に偉そうにされている人ほど
漫画家には偉そうにしたいのではないでしょうか。
編集者としては会社のため、「売れなきゃダメ」であり
売れる漫画家をたくさん囲い込まなければいけません。
漫画家としては?
どうなんでしょう?
もちろん、売れたいです。
おもしろい漫画を描きたいです。
でも、「出版社のため」でしょうか?
そんなことはないはずです。
「大手出版社で連載するため」でしょうか?
それも一つの目標ではあるでしょうが
それが目的ではないはずです。
ともさかりえさんの演技に泣いてしまったのは、
あまりにも多くのことを伝えているから。
私は何のために漫画を描いているんだろう…
本当に描きたいものだけを描くためだったら…
だったらもう同人誌でいいじゃないか!
と、これも一つの結論です。
編集者に「ウチの読者は〜」とか「ウチには合わない」とかグダグタ言われるくらいだったら
自分と自分の読者に向けてだけ描いていれば幸せでしょう。
しかし
漫画を仕事にしていきたいのならば
やっぱり出版社で、編集者とともに描いていくほうがいい。
矛盾していますか?
すみません。
私がデビューしたのはもう、30年近くも前の話。
稼げるようになったのはやっと10年くらい前から。
それでも…
やっぱりどうしても、大手でデビューできてよかったと思います。
それは、編集者に何度ボツやダメ出しや書き直しを
命じられても、石にかじりついてでも描いてやる!と
思ったからです。
「書き直して」と言われたら、前のネームよりもおもしろいものを!
と必死で考えたからです。
そうやって、諦めずに繰り返し、繰り返し、ネームを描いていくと
ある時「あっ!」と思う瞬間があるからです。
もう10年〜20年くらい前の話なので、
今はちょっと状況が違うかもしれませんが、
編集者とは仲間でもないし味方でもないけれど、
確かに、私という人間にとって不思議な、ものすごい意味のある存在でした。
家族よりも恋人よりも、
私のことを知っている存在でしょう。
だってネーム(心の底)をずっと一番に目にしているのですから。
漫画家にとって編集者とは
毒にも薬にもなる
危険な関係。
油断していると毒になり害になります。
最初から諦めて一人で描く(同人誌)
という方法もあるし、
今なら最初から出版社を通さずにセルフ出版(kindleなど)する
方法があります。
今後、そういった道は増えていくと思います。
でも、最初は
まだ「ネームができない」という状態であるのなら
しばらくは修業と思って、
出版社に投稿するのが一番いいかと思います。
まずは「一番の読者」である担当編集者を
漫画でクスッと笑わせること
これが最初の目標です。
そこで気をつけてほしいこととは
編集者が「上」漫画家が「下」ではない。ということ。
たとえ圧を感じたとしても、
人間として、「同等」であることを忘れないでください。
人として敬意をもって接することは当然のことですが、
へりくだってはいけません。
たとえ技術的に未熟であったとしても
自尊心を捨ててはいけません。
編集者は神ではない
ということを心にとどめて欲しいのです。
編集者も自分と同じ人間である
ということ。
編集者のために描くのではない
ということ。
どんなことを言われても
自信を失わない強いメンタル
そして
向上心。
あくまでも
自分の漫画を描くためです!
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