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2016年09月23日

小説「ビデオの中の彼女」(その7)

 室内大浴場でのひとときを十分に楽しんだ私は、まっすぐ自分の部屋へと戻った。そして、20年前の蛙里いずみにも、自分の部屋にて最後の撮影が待っていたのだった。思い切って全裸になるほど開放的な気持ちになっていた彼女に対して、撮影スタッフは、寝る前の布団の上で、少し大胆な一人遊びをやってみせるよう指示したのである。もちろん、蛙里いずみはそこまで過激な撮影に対しては拒否もできたのだろうが、度重なるエロチックな撮影に彼女自身がすっかり高揚してしまっていたようだ。彼女は、体のうちの熱い思いを押さえておく事ができずに、ただの真似事でも良かったと言うのに、本気で一人遊びしている姿をカメラの前で披露するのである。
 その光景は完全に「湯けむりの天使」内におさめられており、シロウト娘のはしたない失態になったみたいな感じもするが、本人はその時、味わった事のない甘美な官能に浸れていたようなので、悔いは無かったのかもしれない。このビデオを見た殿方たちにしても、ただのセクシービデオではなく、クライマックスで、出演女性の積極的な姿まで拝めた訳だから、不満は無いはずなのである。
 この最後のロケ場所は、私が泊まった部屋ではなかったはずだ。しかし、この旅館の和室はどこも同じ作りになっている。あの時の蛙里いずみの姿を重ね合わせてみる分には、問題はなかった。私も、今夜は、最高に幸せな気分にまどろんでいた蛙里いずみの幻を、我が身のそばに感じつつ、素敵な夜を迎える事としよう。    (つづく)

「ルシーの明日とその他の物語」

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posted by anu at 15:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2016年09月22日

アットホームアワード用ボツネタ(一部)

 「三匹のこぶた」を元ネタにして、ワラ、木、レンガの家を比べる話とか考えたのですが、いまいち内容がふくらみませんでした。「不思議の国のアリス」のパロディで「日本の国のアリス」はどうだろう、と思いました。日本の住宅はウサギ小屋だと聞いて、アリスが小さくなるお菓子を用意しているとか、日本の住宅事情をアリス原典のネタと引っ掛けて、ユーモアに描こうかと思ったのですが、これも、あまり斬新な内容になりそうな気配が感じられませんでした。
 いっそ、「宇宙戦争」のタコ型火星人が地球人に化けて、スパイとして日本に潜入する話なんてのも考えたのですが、最後は、日本人の親切さに触れて、火星人が改心すると言う展開にしたかったのに、生き血が好物で、ウィルスにやたらに弱い火星人では、なかなか、そんな方向には話を進める事が出来なかったのでありました。

 アットホームアワードの審査基準はなかなか手厳しかったようで、結局、私が実際に出品した作品は一つも入選しなかったのですが、それでも「三匹のこぶた」はのちに「狼ハンター」の元ネタの一つに採用されていますし、「宇宙戦争」ネタも「マーシャンウォー(仮)」へと発展しています。また、アットホームアワード用に考えていたニジュウ面相ネタはブックショートの方へ投稿できましたし、何よりもアットホームアワードへ無理に新作を送り込もうとした結果、蛙里いずみと言う新キャラクターとそのシリーズが誕生しました。

 たとえ入選しなくても、アットホームアワード用にアイディアをひねった努力は無駄にはなっていないのであります。

「ルシーの明日とその他の物語」より)

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posted by anu at 17:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2016年09月21日

小説「ビデオの中の彼女」(その6)

 そして、浴衣を身に着けた私は、室内大浴場を目指した。蛙里いずみも、まずは浴衣姿に着替えて、それから浴場へと入ったのである。
 ビデオ内では、この時も、大浴場は蛙里いずみ一人の貸し切りにしてもらっていた。スタッフ以外、誰にも見られていない場所で、彼女は生まれた時の姿に戻って、存分に大きな浴場でのたった一人の入浴をエンジョイしたのだ。ヌードを撮影されたとは言え、一生忘れられないような体験ができたのである。
 今回、私が入浴した時は、さすがに貸し切りと言う訳にもいかず、他にも何人かの入浴客がいたのだが、それでも、この浴場内で蛙里いずみが無邪気に跳ね回っていた姿を思いふけるにあたっては、邪魔に感じるほどのものではなかった。
 この大浴場は混浴ではない。しかし、若く、はつらつとしていた蛙里いずみのような女性と一緒にこの浴場を堪能できたのならば、殿方たちは、さぞ夢のごとき時間を過ごせた事であろう。    (つづく)

「ルシーの明日とその他の物語」

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posted by anu at 19:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2016年09月18日

新ネタ「マーシャンウォー」

 エロ週間を経て、また創作意欲が湧いてきました。
 「ティアマトの復活」とか「悪の三博士大作戦」など、どうしてもまとまらなかったネタを全部放棄しちゃって良かったです。頭をリセットすると、また良質なアイディアがどんどん浮かび上がってきました。

 とりあえず「狼ハンター」の続編を書き上げておいて、その次に取りかかろうと考えているネタが「マーシャンウォー(火星人戦争)」です。タイトルはやや思いつき部分も多く、オーシャンビューのノリです。(かな?)

 もともと、ウェルズの「宇宙戦争」火星人を原作にした話を書きたいと思って、アットホームアワード向けに考えていたのですが、これがうまくいかなくて、このたび、うまい具合に次書きたいネタと火星人が重なってきました。ルシーものの一本にしますので、どっぷりSFテイストに仕上がるはずですが、けっこう面白い作品にはなりそうです。

 さらに、グリム童話の「漁師とおかみさん」を加工した話も発案したばかりなのですが、こちらは本気で書くとしたら、もう少し捻りが必要そうです。

「ルシーの明日とその他の物語」

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posted by anu at 16:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2016年09月14日

小説「ビデオの中の彼女」(その5)

 私も、彼女の軌跡を追って、露天風呂のあとは室内大浴場へと入りたいところだが、ここは先に夕食をとる事にしよう。「湯けむりの天使」でも、露天風呂と室内大浴場のパートの間には食事のシーンが挟まれているからだ。
 宿泊している和室に戻り、用意されていた夕食に箸をつけてみると、ある事に気が付いた。この料理、見覚えのあるものばかりなのだ。季節の山菜を主体にした郷土料理なのだが、思い出してみたら、どれも「湯けむりの天使」の中で蛙里いずみが口にしていたものばかりなのであった。どうやら、「湯けむりの天使」のロケと同じ季節にここに訪れたものだから、運良く、同じメニューを食べられたらしい。そして、おいしい土地の味を満喫させてもらいながら、20年経っても変わらぬ名物料理を提供し続けている老舗の旅館の粋な姿勢に、深い感動の気持ちも沸き上がったのだった。
 食事後、蛙里いずみは、旅館のホール方面にある娯楽施設で少し遊んでから、室内大浴場へと向かっている。「湯けむりの天使」の中で、彼女はゲームセンターで遊んだり、お茶目にカラオケを歌ったりしていたのだ。私も、ちょっとホールの方を覗いてみたのだが、残念ながら、今はゲームセンターもカラオケが歌える場所も無くなっていた。もはや時代が違うのだ。蛙里いずみが楽しそうに遊んでいた事を思うと、その思い出の場所をもう確認できないと言うのは、やや心残りにもなったのであった。    (つづく)

「ルシーの明日とその他の物語」

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posted by anu at 17:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2016年09月12日

小説「ビデオの中の彼女」(その4)

 さて、そろそろ○×旅館に戻る事にしよう。
 ○×旅館には、名物の露天風呂があるのだが、ここが「湯けむりの天使」の次のロケ現場でもあるのだ。
 20年前は、この露天風呂は男のみの入浴場所だったようで、それでも、ビデオのスタッフは、旅館の許可を得れたらしく、蛙里いずみは、貸し切り状態で、ビキニを付けて入浴していた。
 そもそも、この露天風呂が女人禁制にされていたのは、外部から露天風呂の内側が丸見えだった事が最大の理由だったようである。それでビキニ着用が条件になったらしいとは言え、でも、この露天風呂の女性入浴者第一号になれた事は、蛙里いずみとしても、さぞ自慢げに思えていたに違いあるまい。
 現在はこの露天風呂も、時間制で女性も入れるようになっている。露天風呂周辺の環境も整備され、女性の入浴時間帯は関係者以外は近づけないように配慮されているらしい。
 私もさっそく、この露天風呂には浸からせてもらった。さいわい、私以外の入浴者とは鉢合わせせず、20年前に蛙里いずみがビキニ姿でこの露天風呂内ではしゃぎ回っていた姿を自分に重ね合わせて思いふけってみたら、より露天風呂を独占している気分が堪能できたのだった。私にとっては、この露天風呂はあくまで蛙里いずみのメモリアルな場所なのだ。
 もちろん、露天風呂から見える外のロケーションも拝ませてもらった。それが、この露天風呂の目玉でもあるのだから。眼前に広がる大自然は、なるほど、皆が絶賛する美しさであり、確かに男だけの楽しみにしておくのは惜しいものがあった。しかし、蛙里いずみは、自分が写される事に夢中になっていたみたいで、20年前の撮影時には、この絶景を眺めていなかったようなのであった。
 ビキニ着用が条件だったにも関わらず、この露天風呂のくだりの最後の最後のショットで、蛙里いずみは、照れながらも、そのビキニを自分から上も下も外している。「湯けむりの天使」の中で、彼女がはじめて全裸になった瞬間であり、セクシーな撮影が続く中、彼女の方からもっと自分を見せたい気持ちになっていったらしい。そして、次の室内大浴場での入浴シーンでは、彼女もとうとう全裸で撮影に臨む事となるのだ。    (つづく)

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posted by anu at 17:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2016年09月09日

小説「ビデオの中の彼女」(その3)

 この河原に来た私は、靴下を脱ぎ、思い切って裸足になってみた。石の冷たさをじかに感じる事で、露出の多いレオタード姿で踊っていた蛙里いずみの気分を、少しでも味わってみようと思ったからだ。
 冷たくてゴツゴツした石の肌触りが本当に気持ちいい。この少し照れ臭くて、開放的な気持ちになれる撮影を続けてゆくうちに、蛙里いずみは大胆なヌードも公開する決心を高めていったのである。
 この河原から少し離れたところに、壁の岩はだが完全にむき出しになった直角の崖があった。この壁の前でポーズをとった構図でも、蛙里いずみはビデオ内に写っているのだが、これがまたアングルの名画「泉」を彷彿させるような、なかなかの美しいカットに仕上がっているのだ。
IMG_0009.jpg
 20年経った今でも、その壁の岩はだは手つかずのまま、当時の状態を保ち続けていた。私は、着衣したままだが、そっとその岩はだの前に立ってみた。そこは日陰になっていて、前方以外の視界がすっかり遮断されていた。静かに、ただ小川のせせらぎだけが心地よく聞こえてくるのであり、どこか神秘的な気分を味わえるのだった。「湯けむりの天使」を知らなければ、まさに気付かなかったであろう穴場である。    (つづく)

「ルシーの明日とその他の物語」

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2016年09月07日

ちょっとネタばれ

 執筆活動を再開するにあたり、過去の自作のキャラクターはほぼ使い回ししないと心に決めたのですが、そうなると、登場人物の名前の付け方に自由度が増した分、少し遊びたくもなってきました。

 最初に遊んでみたのが「帰り道」です。この作品に出てくる二人組の名前は、一恵とF先輩で、私としては、吹石一恵と福山雅治のつもりだったのですが、ヒントが少なすぎて、誰にも気付いてもらえなかったようです。そんな訳で、「帰り道」の続編となる「3つの手の物語」では、もろ、先輩を福山と表記し、一恵の父親の徳一も登場させております。(吹石一恵の父親の名前が徳一)

 以後の作品では、もっと分かりやすい名前遊びをする事にしました。

「お化け坂」
はるか    (春か)
なっちゃん  (夏ちゃん)
アキラ    (秋ラ)
冬彦

「笑う幽霊坂」
美来  (未来)
過子  (過去)

「おばあちゃん」
世界一
世界初音  (世界初ね)
世界喜望  (世界規模)

「ルシーの晩餐」
キノオ  (昨日)
キョウ  (今日)
アス   (明日)

「浦島異聞」
桃吉  (桃太郎)
金太  (金太郎)
寸坊  (一寸法師)

 トライアングル・シリーズは、主要登場人物が三人と言う事で、トライアングルをトライ、アン、グルに分解してみました。そのまんま、他の登場人物名も、打楽器を用いています。雑誌「ダ・ガッキ」をはじめ、編集長のシン・バル氏、T・バリン(タンバリン)氏、すず(ベル)さん、など。

「ルシーの明日とその他の物語」より)

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posted by anu at 18:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

小説「ビデオの中の彼女」(その2)

 東京を出発した私は、その日のうちに、K温泉のある地方に到着し、正午過ぎには、K温泉内の○×旅館へとチェックインした。
 この○×旅館もまた、「湯けむりの天使」のロケ現場の一つでもあったのだが、私にはまず先に訪ねておきたい場所があった。
 ○×旅館のすぐそばに、K温泉の観光名所の一つでもある大きな吊り橋がある。その吊り橋を渡った先は、散策ルートになっていて、K温泉周辺の豊かな自然を楽しめる趣向になっていた。この散歩道の一角にはきれいな小川が流れている河原もあって、そこが「湯けむりの天使」の最初のロケ現場でもあるのだ。
 「湯けむりの天使」のビデオを頭から再生してみると、まず、石だらけのこの河原がばあっと画面上に登場する。そこに、純白のレオタードを着た蛙里いずみが笑顔で現れ、リボンやフープ、ボールなどの小道具を持つと、やった事もない新体操の真似事をいっぱい披露してみせるのだ。たどたどしい彼女の動きは、まるで幼稚園のお遊戯のごときであったが、それが逆に愛嬌いっぱいで、微笑ましく鑑賞できたのである。    (つづく)

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2016年09月05日

小説「ビデオの中の彼女」(その1)

 某地方の奥地にK温泉はある。このK温泉こそは、20年前、蛙里いずみが出演した成人用セクシービデオ「湯けむりの天使」のロケ地でもあるのだ。
 いや、回りくどい書き方をして誤摩化すのは止める事にしよう。この「湯けむりの天使」と言うオリジナルビデオは、実はアダルトものなのである。当時20代前半だった蛙里いずみは、このビデオの中で、まぶしいヌードも惜しみなく披露していたのだった。
 蛙里いずみの名前は、インターネットで調べてみても、恐らく引っかかりはしない。彼女は、正規のヌード女優などではなく、このビデオのみに出演した生粋のシロウトだからだ。「湯けむりの天使」と言うビデオのタイトルの方も、ネットでは多分見つからないはずだろう。このアダルトビデオ自体が、そこまで無名な作品なのである。
 しかし、私にとっては、もっとも思い入れのあるビデオでもあった。特に、出演していた蛙里いずみの愛らしい姿に、私は20年間、癒され続けてきたのである。彼女は本当に私にとっては唯一の存在だったのだ。
 ゆえに、このたび、私は、K温泉への一人旅を敢行する事に決めた。20年前の蛙里いずみが、どのような気持ちでこのビデオに出ていたのかを、あらためて追体験したくなったからである。    (つづく)

「ルシーの明日とその他の物語」

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posted by anu at 18:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説
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