2010年04月25日
知らぬが仏 in アメリカ
アメリカの大学に通ってきたときの日本人の後輩の話。
まさに知らぬが仏。
アメリカ滞在中にそう思ったことが何度もあった。
例えば、こわもての黒人のたくましい右腕に刻まれた刺青の文字が「芋」であったり、
イケイケの白人のTシャツにデカデカと「折り紙」とプリントされてたり。
これは教えてあげるべきか否か。。。否だな。なんて思ったりした。
そしてこの「知らぬが仏」な出来事は、
言葉や文化の違いを持った僕ら留学生にも当然起こる。
まさに知らぬが仏。
アメリカ滞在中にそう思ったことが何度もあった。
例えば、こわもての黒人のたくましい右腕に刻まれた刺青の文字が「芋」であったり、
イケイケの白人のTシャツにデカデカと「折り紙」とプリントされてたり。
これは教えてあげるべきか否か。。。否だな。なんて思ったりした。
そしてこの「知らぬが仏」な出来事は、
言葉や文化の違いを持った僕ら留学生にも当然起こる。
同じ大学の日本人で、Kというお調子者の後輩がいた。
彼は勢いというかノリで生きている。
英語もノリでしゃべってるので、めちゃくちゃだったりするが、
そんな性格が功を奏して国籍問わずみんなの人気者だ。
僕は建築学部で彼はインテリア学部と学部は違うが、そんな彼に
よく設計課題のアドバイスなんかをしてあげたりしていた。
ある日、彼がおおげさに頭をかかえて僕のところへやってきた。
もうすぐ課題の発表があるのに、デザインに行き詰っているとのこと。
どんなデザインだったがここでは端折るが、とにかく僕は、
「空間から次の空間が見えそうでいて、すぐには見えない。そんな
仕掛けをつくったらどうか。それによって高揚感を与えるってのはどうだ。
日本文学で例えていうなら、川端や、谷崎のあのエロティシズム、
俗っぽくいうならチラリズムをデザインに取り入れたらどうか。」と助言した。
こういう考えをデザインに取り入れるというのはよくあることなのだが、
Kには、新鮮だった。
「チラリズムか〜。いいねえ。いいじゃん、いいじゃん、EEジャンプじゃん。その線でいくよ。」
と超乗り気。
「いけそうなきがする。発表の日みにきてよ。」
と言って去っていった。
発表というのは、僕の学校ではどのデザイン系学部でも必ずある。
僕の専攻していた建築学部もまた同じなのだが、
それは学期の最後の締めくくりにあって、学期を通して取り組んできた
課題を大勢の前で発表するというもの。大勢というのはほんとに大勢で
クラス全員 + 教授 + 教授の知り合い + その他の学部の人、それにさらに加え、
クラスの人の家族や彼女までみにきちゃう始末。そういう場で15分から20分
各自あたえられ、自分のデザインを発表する。そして教授らに
ものすごくほめられたり、時にはコテンパンにやられたり、とするのである。
まさに一大イベント。言葉の壁のある僕らにとっては大大大イベントなのです。
そんなわけで彼の発表の日がやってきた。
僕も後ろのほうでKの発表を見学することに。
Kが自分のデザインして描いた図面を壁に貼っているのがみえた。
発表する順番が近いということだ。がんばれK。
そして発表の時間。
うん、図面はよくかけてるぞ。いいぞK。あとはうまく説明するだけだ。
途中まではスムーズに説明していたKだったが、僕がアドバイスをした例の
「見えそうで見えないあの仕掛け」のことをうまく説明できないでいる。
どうするK。がんばれK。
彼は焦った。そして早まった。そして言っちまった。勢い任せで言っちまった。。。
「い、it's like a チラリズム」
あちゃ〜。チラリズムって言っちゃってる。チラリズムのチラリは日本語だっつうのぉ
なんて僕の心の叫びはとどかない。
周りの反応はいっさいない。そりゃそうだ、だって日本語だもの。
気づかぬKは果敢に攻める。よせばいいのに再び挑戦。
「 い、いっつ ライク ティラリズム、you know?」
あいたたたた。
ユーノー?じゃねえよ。誰もしらねえよ。
つうか「ティ」ってなんだ。そこじゃないよ。 発音どうのじゃないんだってばさぁぁ。
まわりはポカン状態。俺はKに代わって赤面状態。
Kにむけて「違う違う」と手を大きく振るジェスチャーを送るが気づかない。
Kはといえば、みんなと一緒にポカン状態。「あれー反応わりいな。」的は表情だ。
そうこうして20分が経ちKの発表はおわった。
教授の総評としては、
「言ってることはいまいち分からんが、図面はまあよくできてるのでいいんじゃない。」
とのことだった。
そんな総評だったので、Kは万々歳。クラスメイトにハイタッチをしながら
僕のところへやってくる。のほほんと晴れやかな表情で。
まさに知らぬが仏だ。。。
K:「俺の発表どうだった?」
調子こいているKに僕は間髪いれず言い放つ。
「チラリズムって日本語だぞ。」
K:「エ〜?マジ〜〜!?きいてないよぉ〜。でも、ま、結果オーライっしょ。」
あれっ全然堪えてないや。
気づけば彼はルンルン気分で、
「発表も終ったことだし、さあ思い切り遊ぶぞ〜」
なんて帰る用意をしてるじゃないか。
そうかこれでいいのか。
「知らぬが仏」を避ける為にひたすら知識や教養を身につけるのも、もちろん重要だが、
Kのように、そんなことあってもてんで気にしない、へっちゃら、へっちゃらと、
「へこたれない」精神を身につけることの方が、この異国の地で、いや、
人生をエンジョイするためには重要なのかもと思いました。
おしまい。
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彼は勢いというかノリで生きている。
英語もノリでしゃべってるので、めちゃくちゃだったりするが、
そんな性格が功を奏して国籍問わずみんなの人気者だ。
僕は建築学部で彼はインテリア学部と学部は違うが、そんな彼に
よく設計課題のアドバイスなんかをしてあげたりしていた。
ある日、彼がおおげさに頭をかかえて僕のところへやってきた。
もうすぐ課題の発表があるのに、デザインに行き詰っているとのこと。
どんなデザインだったがここでは端折るが、とにかく僕は、
「空間から次の空間が見えそうでいて、すぐには見えない。そんな
仕掛けをつくったらどうか。それによって高揚感を与えるってのはどうだ。
日本文学で例えていうなら、川端や、谷崎のあのエロティシズム、
俗っぽくいうならチラリズムをデザインに取り入れたらどうか。」と助言した。
こういう考えをデザインに取り入れるというのはよくあることなのだが、
Kには、新鮮だった。
「チラリズムか〜。いいねえ。いいじゃん、いいじゃん、EEジャンプじゃん。その線でいくよ。」
と超乗り気。
「いけそうなきがする。発表の日みにきてよ。」
と言って去っていった。
発表というのは、僕の学校ではどのデザイン系学部でも必ずある。
僕の専攻していた建築学部もまた同じなのだが、
それは学期の最後の締めくくりにあって、学期を通して取り組んできた
課題を大勢の前で発表するというもの。大勢というのはほんとに大勢で
クラス全員 + 教授 + 教授の知り合い + その他の学部の人、それにさらに加え、
クラスの人の家族や彼女までみにきちゃう始末。そういう場で15分から20分
各自あたえられ、自分のデザインを発表する。そして教授らに
ものすごくほめられたり、時にはコテンパンにやられたり、とするのである。
まさに一大イベント。言葉の壁のある僕らにとっては大大大イベントなのです。
そんなわけで彼の発表の日がやってきた。
僕も後ろのほうでKの発表を見学することに。
Kが自分のデザインして描いた図面を壁に貼っているのがみえた。
発表する順番が近いということだ。がんばれK。
そして発表の時間。
うん、図面はよくかけてるぞ。いいぞK。あとはうまく説明するだけだ。
途中まではスムーズに説明していたKだったが、僕がアドバイスをした例の
「見えそうで見えないあの仕掛け」のことをうまく説明できないでいる。
どうするK。がんばれK。
彼は焦った。そして早まった。そして言っちまった。勢い任せで言っちまった。。。
「い、it's like a チラリズム」
あちゃ〜。チラリズムって言っちゃってる。チラリズムのチラリは日本語だっつうのぉ
なんて僕の心の叫びはとどかない。
周りの反応はいっさいない。そりゃそうだ、だって日本語だもの。
気づかぬKは果敢に攻める。よせばいいのに再び挑戦。
「 い、いっつ ライク ティラリズム、you know?」
あいたたたた。
ユーノー?じゃねえよ。誰もしらねえよ。
つうか「ティ」ってなんだ。そこじゃないよ。 発音どうのじゃないんだってばさぁぁ。
まわりはポカン状態。俺はKに代わって赤面状態。
Kにむけて「違う違う」と手を大きく振るジェスチャーを送るが気づかない。
Kはといえば、みんなと一緒にポカン状態。「あれー反応わりいな。」的は表情だ。
そうこうして20分が経ちKの発表はおわった。
教授の総評としては、
「言ってることはいまいち分からんが、図面はまあよくできてるのでいいんじゃない。」
とのことだった。
そんな総評だったので、Kは万々歳。クラスメイトにハイタッチをしながら
僕のところへやってくる。のほほんと晴れやかな表情で。
まさに知らぬが仏だ。。。
K:「俺の発表どうだった?」
調子こいているKに僕は間髪いれず言い放つ。
「チラリズムって日本語だぞ。」
K:「エ〜?マジ〜〜!?きいてないよぉ〜。でも、ま、結果オーライっしょ。」
あれっ全然堪えてないや。
気づけば彼はルンルン気分で、
「発表も終ったことだし、さあ思い切り遊ぶぞ〜」
なんて帰る用意をしてるじゃないか。
そうかこれでいいのか。
「知らぬが仏」を避ける為にひたすら知識や教養を身につけるのも、もちろん重要だが、
Kのように、そんなことあってもてんで気にしない、へっちゃら、へっちゃらと、
「へこたれない」精神を身につけることの方が、この異国の地で、いや、
人生をエンジョイするためには重要なのかもと思いました。
おしまい。
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