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2018年02月01日
鉄塊
長きに渡る惰眠により鈍らと化した刀身は、その名の通りただの鉄の塊だ。血に彩られし過去は全て赤錆び、ざりざりと音を立てて剥がれていく。
不快な重みしか与えないこの塊を、誰が振るおうか。斬るのではなく肉を叩き潰すだけのその塊を、誰が好もうか。振るうほどに狂気に駆りたてるその武器を、誰が愛そうか。
眠り続ける平穏に安堵する。戦わなければ血でこの身が砥がれる事もない。このまま崩れて滅びる事も出来よう……だが、力を求める愚か者達はその安らぎを許しはしなかった。
剥がれ落ちる赤錆は鉄の涙。血と肉と脂に塗れる姿こそが呪いの証。ならば筋を斬り割こう。肉をすり潰そう。骨を砕こう。それが我が身の贖罪であるのなら。
不快な重みしか与えないこの塊を、誰が振るおうか。斬るのではなく肉を叩き潰すだけのその塊を、誰が好もうか。振るうほどに狂気に駆りたてるその武器を、誰が愛そうか。
眠り続ける平穏に安堵する。戦わなければ血でこの身が砥がれる事もない。このまま崩れて滅びる事も出来よう……だが、力を求める愚か者達はその安らぎを許しはしなかった。
剥がれ落ちる赤錆は鉄の涙。血と肉と脂に塗れる姿こそが呪いの証。ならば筋を斬り割こう。肉をすり潰そう。骨を砕こう。それが我が身の贖罪であるのなら。
2018年02月02日
双子の牙
双子の神に捧げられた幼い双子の魂が宿る武器。その刃は欠けても戻り、決して離れる事は無い。何があっても共にある事を約束された、二人で一つの美の結晶。
刃に宿った双子の魂は夢を見る。共に育ち共に大人になり共に人を好きになり共に恋に落ちる幸せな夢を見る。二人は一人。だからわたしもぼくも、おなじひとをすきになる。
わたしはわたし。ぼくはぼく。わたしをみて。ぼくをみて。わたしをすきになって。ぼくをすきになって。まねしないで。まねじゃない。
ふたりはいっしょ。しんでもいっしょ。あいてをころしてもいっしょ。ころしあってもいっしょ。ふたつのからだはひとつにもどる。おねがいだれかはなしてくださいはなして。
刃に宿った双子の魂は夢を見る。共に育ち共に大人になり共に人を好きになり共に恋に落ちる幸せな夢を見る。二人は一人。だからわたしもぼくも、おなじひとをすきになる。
わたしはわたし。ぼくはぼく。わたしをみて。ぼくをみて。わたしをすきになって。ぼくをすきになって。まねしないで。まねじゃない。
ふたりはいっしょ。しんでもいっしょ。あいてをころしてもいっしょ。ころしあってもいっしょ。ふたつのからだはひとつにもどる。おねがいだれかはなしてくださいはなして。
2018年02月03日
百獣の剣王
むかしむかしある王国に三人姉妹の王女がいました。中でも長女は世界一賢いと評判で、やがて女王となって国を治める立場に上り詰めました。
女王は国を強くする為に軍の強化を始めます。その為にお金が必要なので、民の税金を増やしました。民には稼ぎ口として、新たに建てた軍の工場で働かせました。
民は働き税金は増え軍は強くなり、軍が強くなれば工場の需要が増え民は働き税金は増え軍は強くなり民は働き――賢い女王の下で全ては計画通り効率よく進みます。
ソシテ国ヲ強クスル為ニ、我々民ハ工場デ良ク働クタメ工場デ機械ニ改造サレ、軍モ強イ機械ニ改造サレマシタ。今デモ国ハ制御システムニナッタ女王ノ下デ完璧ニ統治サレテオリマス。
女王は国を強くする為に軍の強化を始めます。その為にお金が必要なので、民の税金を増やしました。民には稼ぎ口として、新たに建てた軍の工場で働かせました。
民は働き税金は増え軍は強くなり、軍が強くなれば工場の需要が増え民は働き税金は増え軍は強くなり民は働き――賢い女王の下で全ては計画通り効率よく進みます。
ソシテ国ヲ強クスル為ニ、我々民ハ工場デ良ク働クタメ工場デ機械ニ改造サレ、軍モ強イ機械ニ改造サレマシタ。今デモ国ハ制御システムニナッタ女王ノ下デ完璧ニ統治サレテオリマス。
2018年02月04日
不死鳥の大剣
ある日、森に一羽の鷹が迷い込んできました。大空を飛ぶ優美な翼は傷付き弱り果て、今にも死んでしまいそう。その姿を憐れに思った美しい小鳥は、必死に鷹の世話をしました。
美しい小鳥のおかけで、鷹は徐々に元気になりました。優々たる大きな翼に寄り添う、光輝く小さな鳥の姿は、森の動物たちの憧れの 的になりました。
傷が完全に治った鷹は、森の外へ帰ると言いました。けれど必ず戻ってくるとも。美しい小鳥は、友情の証としてその輝く羽根を一枚、鷹に与えました。
約束通り鷹は戻ってきました。その傍らに人間を連れて。「この羽根は高値で売れる。よくやった」人間は鷹を褒めると手にした大剣で小鳥を叩き殺し、その羽根を全てむし取りました。
美しい小鳥のおかけで、鷹は徐々に元気になりました。優々たる大きな翼に寄り添う、光輝く小さな鳥の姿は、森の動物たちの憧れの 的になりました。
傷が完全に治った鷹は、森の外へ帰ると言いました。けれど必ず戻ってくるとも。美しい小鳥は、友情の証としてその輝く羽根を一枚、鷹に与えました。
約束通り鷹は戻ってきました。その傍らに人間を連れて。「この羽根は高値で売れる。よくやった」人間は鷹を褒めると手にした大剣で小鳥を叩き殺し、その羽根を全てむし取りました。
2018年02月05日
四◯式斬機刀
開発日誌:0504 タカダ
凄い事を思いついた。このアイデアは誰も実現出来ていない。明日からさっそくテストしよう。
開発日誌:0704 タカダ
金属と魔素の合金を作るというアイデアは部長に却下された。部長はわかってない。これがどれくらいの金になるかを……
開発日誌:1201 タカダ
進捗状況が思わしくない。ストレスのせいか、最近髪がよく抜ける。早く開発を成功させなければ。
開発日誌;1215 フジタ
データを確認したが問題を発見できない。だが諦めない。タカダさん亡き今、受け継ぐのは自分しかいないのだから……
凄い事を思いついた。このアイデアは誰も実現出来ていない。明日からさっそくテストしよう。
開発日誌:0704 タカダ
金属と魔素の合金を作るというアイデアは部長に却下された。部長はわかってない。これがどれくらいの金になるかを……
開発日誌:1201 タカダ
進捗状況が思わしくない。ストレスのせいか、最近髪がよく抜ける。早く開発を成功させなければ。
開発日誌;1215 フジタ
データを確認したが問題を発見できない。だが諦めない。タカダさん亡き今、受け継ぐのは自分しかいないのだから……
2018年02月06日
三式斬機刀
その大剣は、斬った相手に苦痛を与えると評判だった。だから男はどんなに重かろうとそれを背負った。恐怖を誇示することで無用な争いを避けようと考えていたからだ。
戦わずとも男の名声は村中に轟いた。「あの恐ろしい剣を抜かせるな」と皆が囁き合っていたからだ。己の思った通りの結果に男は心の中でほくそ笑み、恐怖こそが平和を作ると考えた。
男は同じような武器を職人に作らせ、他の者にも持たせた。そうすることで互いに互いを牽制し、話し合いで争いを解決させようと目論んだのだ。男の策は上手くいった……途中までは。
恐怖による牽制は、睨み合いでこそ威力を発揮する。では、誰かが使ったら――答えは簡単だ。一夜にしてその村は死ぬよりつらい苦痛の叫びで満ち溢れ、この世の地獄と化したという。
戦わずとも男の名声は村中に轟いた。「あの恐ろしい剣を抜かせるな」と皆が囁き合っていたからだ。己の思った通りの結果に男は心の中でほくそ笑み、恐怖こそが平和を作ると考えた。
男は同じような武器を職人に作らせ、他の者にも持たせた。そうすることで互いに互いを牽制し、話し合いで争いを解決させようと目論んだのだ。男の策は上手くいった……途中までは。
恐怖による牽制は、睨み合いでこそ威力を発揮する。では、誰かが使ったら――答えは簡単だ。一夜にしてその村は死ぬよりつらい苦痛の叫びで満ち溢れ、この世の地獄と化したという。
2018年02月07日
白の約定
アガ オモイビト ハジメテ フレアウ
アガ オモイビト ココロ ツカメズ
アガ オモイビト トオク サリテ
アガ オモイビト ソノ シ デ エイエン ナル
アガ オモイビト ココロ ツカメズ
アガ オモイビト トオク サリテ
アガ オモイビト ソノ シ デ エイエン ナル
2018年02月08日
黒の血盟
あの人に触れ合った時の事は忘れない。
この恋が永遠であるという確信。
あの人の側にいても、あの人の気持ちを判らず。
苦しくて、苦しくて。
あの人の近くにいれば、あの人を傷つける。
あの人から離れても、あの人を傷つける。
……ようやく、私の場所を見つけた。
あの人に最も近くて、永遠のように遠いこの場所を。
この恋が永遠であるという確信。
あの人の側にいても、あの人の気持ちを判らず。
苦しくて、苦しくて。
あの人の近くにいれば、あの人を傷つける。
あの人から離れても、あの人を傷つける。
……ようやく、私の場所を見つけた。
あの人に最も近くて、永遠のように遠いこの場所を。