2016年02月07日
奇術師の杖
どんな魔法でも治せぬ病に伏せる幼い少女には、秘密がある。それは夜になると窓から現れる奇術師との楽しくて特別な時間。一振りの杖を持つ仮面の奇術師は名も明かさず声も発しない。
厳格な掟と厳しい修行で得られる魔術を奇術師は惜しげもなく披露した。少女に輝く光の粒を散りばめたり、美声で囀る小鳥と歌を奏で、部屋に小さな雲を生み出し光る雨降らせ虹を見せた。
けれど病は確実に少女の体を蝕む。命の灯が消えようとする夜。姿を見せた奇術師に少女は微笑んだ。「お兄ちゃん、ありがとう」それきり少女は冷たくなり、二度と微笑むことはなかった。
奇術師が師匠の元に戻ると、師匠は掟を破り例え肉親でも修行中に人に姿と魔術を晒したことには触れず、勝手に持ち出した杖を譲り渡した。奇術師はその晩、杖を握り人知れず泣いたという。
厳格な掟と厳しい修行で得られる魔術を奇術師は惜しげもなく披露した。少女に輝く光の粒を散りばめたり、美声で囀る小鳥と歌を奏で、部屋に小さな雲を生み出し光る雨降らせ虹を見せた。
けれど病は確実に少女の体を蝕む。命の灯が消えようとする夜。姿を見せた奇術師に少女は微笑んだ。「お兄ちゃん、ありがとう」それきり少女は冷たくなり、二度と微笑むことはなかった。
奇術師が師匠の元に戻ると、師匠は掟を破り例え肉親でも修行中に人に姿と魔術を晒したことには触れず、勝手に持ち出した杖を譲り渡した。奇術師はその晩、杖を握り人知れず泣いたという。
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