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2012年03月26日

不如帰 ―Voice of reporting in summer―(後編)(半分の月がのぼる空・二次創作作品)







 月曜日、「半分の月がのぼる空」二次創作掲載の日です。
 今回の話は前作「輪舞 ―Rondo of Lives―」から派生した話で、冒頭での文脈が一部かぶっています。前記の様に、半ば思いつきで書いた作品なので、山なし谷なしオチなしな仕様となっています(笑)そこの所御了承くださいませ。
 
 それではコメントレス。

 いいはなしだーああああー
 
 ですよねー!! 
 
 前作の方は劇場版ではなくマンガの方の大長編で知ってました。大軍団の侵略者を相手にたった数人で立ち向かうこの話は、シリーズの中でももっとも強大な敵を相手にしているのではないかと思います。

 でしょうね。考えてみたら、エライ話だ。ちなみに、人間社会が標的になった話で一番危機感を感じなかったのは「のび太の大魔境」の犬の王国です。火を噴く車(火炎放射器付きの木製戦車)に空飛ぶ舟(プロペラで飛ぶ舟。やっぱり木製。武器は火薬樽(手動で落とす))って・・・それで人間界(こっち)に攻めてきて、何をどうする気だったのだ・・・。

 そして、やっぱり気になりますよねー後半から出番の消えたミクロス……。

 はい。ピッポとミクロスの掛け合いなんかも見てみたかったもんです。

 ま、それはおいといて、今回クローズアップされた労働ロボットと支配ロボットという設定が、リルルの最期をより深いものにしてると思う。もちろん、ジュドとのエピソードも。とにかく、かなりの良作であることは間違いない。

 おおいに同意。この演出でリルルとピッポのキャラに深みが出ましたよね。いや、良いもん見せてもらいました。しかし、ラストのザンダクロスの奮闘振りはカッコ良かった。もういっそスパロボに出ても遜色n・・・無理か(笑)


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 ―その時の気持ちがなんだったのか、自分でもよく分からない。
 つまらない嫉妬心だと言われればその通りだし、くだらない対抗心だと言われてもそうだとしか言いようがない。
 それでも僕は、この娘に見せたかった。
 彼女の父親が。
 どう頑張ったって追い越せないその男が。
 彼女に見せようとして、それでも叶わなかったという、鳥の姿。
 それをどうしても、見せたかったんだ―

 「カメラなんかどうするの?裕一。」
 「これだよ、これ。」
 そう言って、僕はカメラの望遠レンズをつついた。
 「これなら、遠くの鳥でも見えるだろ。」
 胸を張る僕に、しかし里香は容赦なく突っ込みを入れてくる。
 「遠くが見えたって、肝心の鳥がいなくちゃ、仕方ないじゃない。」
 「う・・・だからその、これから探すんだよ。」
 そう言いながら、僕はガサガサと林の中に足を踏み入れる。
 「ほら、来いよ。」
 「う、うん。」
 言い出した手前、里香も文句は言えなかったのだろう。渋々と言った態でついてきた。

 曇天の下の林の中は、思った以上に薄暗かった。
 厚く茂った下草をガサガサと薙ぎ倒しながら、僕は周囲の木々の梢を見回す。
 けれど、視界にそれらしい鳥の影は全然入ってこない。
 たまに見えたと思っても、それはどこにでもいるスズメやドバトだった。
 唯一の手がかりだった鳴き声も、いつの間にか聞こえなくなっている。
 ひょっとしたら、もうどこか遠くへ飛んでいってしまったのかもしれない。
 そんな考えが頭を過ぎったけど、それをあえて無視して僕は探索を続けた。
 梅雨の空気は湿気っぽい。それが篭った林の中はムッとしていてただ歩いているだけでも、汗が吹き出てくる。
 流れる汗を袖で拭いながら、それでも僕は探し回った。
 歩き回って。
 梢を見上げて。
 カメラのファインダーを覗いて。
 それでも、鳥の姿は見つからない。
 「裕一。」
 ウロウロする僕を見かねたのか、ついに里香が声を上げた。
 「いいよ。もう。戻ろう。」
 「・・・。」
 僕は答えずに、探索を続ける。
 「裕一!!」
 里香の声に苛立ちが混じり始めた。
 それでも僕は、答えない。
 「裕一ってば!!」
 ついに里香が怒鳴り声を上げた。
 「何だよ!?うるせえな!!」
 思わず怒鳴り返した僕に、里香がぐっと息を呑む。
 「お前が見たいっていったんだろ!?だからおれは・・・」
 僕の怒鳴り声は、だけど見る見る尻すぼみになっていった。
 里香が、僕を睨んでいた。そのまなじりには、薄らと涙が浮かんでいた。
 僕が里香に怒鳴るなんて、今だかつてない。当然だ。何より、僕自身が驚いている。
 「裕一、何だかおかしい・・・!!」
 「・・・。」
 「何、そんなにむきになってるの・・・!?」
 「・・・。」
 そう。僕はむきになっていた。
 それが、里香の父親に対する対抗心なのか、それともただのくだらない嫉妬なのかは僕自身にもわからない。
 ただ、僕はむきになっていた。
 苛立っていた。
 あの鳥が、姿を見せてくれない事に。
 その姿を、見つけられない事に。
 里香が見たがるものさえ、見せてやれない自分に。
 そして、よりにもよってそれを里香にぶつけてしまった。
 この世で、一番ぶつけちゃいけない相手に。
 だけど、いくら後悔しても、もう遅い。
 「・・・。」
 「・・・。」
 僕達の間に、重たい沈黙が降りる。
 里香は、何も言わなかった。
 僕も、何も言えなかった。
 そして―
 「もういい!!裕一の馬鹿!!」
 里香が叫ぶ様にそう言って、踵を返した。
 その背中が、ズンズンと遠ざかって行く。
 一瞬呆気にとられた後、僕はハッと我に返った。
 「お、おい!!待てよ、里香!!」
 慌てて後を追うと、里香の腕を掴む。
 「何よ!?離して!!」
 「悪かったよ!!ごめん!!」
 「もういいってば!!いいから、離して!!」
 取り付く島もないとはこの事だ。
 それでも、何とか僕は食い下がる。
 「ほんと、悪かったって!!里香!!」
 「離してってば!!」
 僕が掴んでいた腕を、里香が強く引いた。
 その途端―
 「あっ!?」
 「きゃっ!!」

 ドサッ

 僕達はバランスを崩して、二人もつれる様に草薮に倒れ込む。
 気が付くと、僕は里香を組み敷く様にして倒れていた。
 「裕一、重い!!どいてよ!!」
 「わ、わりぃ!!」
 僕が慌てて起き上がると、里香も後を追う様に身を起こす。
 その顔は、赤く染まっていた。
 それも、さっきとは違った意味合いの赤みだ。
 自分の身を抱く様にして、ジト目で僕を見上げてくる。
 「裕一・・・まさか変な事しようとして、こんな所に連れて来た訳じゃないよね・・・?」
 とんでもない事を言う。
 「ば、馬鹿!!んな訳・・・」
 僕が弁解しようとしたその時、

 ツ―――

 上の木の枝から、何かが僕達の間に下がってきた。
 「へ?」
 「え?」
 僕と里香の目が、“それ”に集中する。
 ―それは糸にぶら下がり、モゾモゾと蠢く大きな毛虫だった。
 「うぇ・・・」
 「ひ・・・」
 思わず僕達が悲鳴を上げようとしたその瞬間―

 ガサッ

 突然、右手の樹の枝の間から何かが飛び出した。
 「うわっ!?」
 「きゃっ!?」
 それは驚く僕らの間を、凄いスピードで通り過ぎると、そのまま近くの枝へと止まった。
 「あ・・・!?」
 「あれって・・・?」
 一瞬、鳩かと思った。
 濃い灰色の羽と背、縞模様に飾られた、純白の腹部。鳩より少し小さい位の身体を、枝に乗っける様にして止まっている。鋭く突き出た嘴には、まだ蠢く毛虫がしっかりとくわえられていていた。
 その鳥は、金色の縁取りのついた目で僕たちを胡散臭げに見下ろしていたけど、やがて首を小刻みに動かし始めた。

 カッ カッ カッ

 その動きに合わせて、毛虫が口の中に消えてゆく。

 カッ カッ カッ

 そうやって毛虫をすっかり飲み込んでしまうと、その鳥は一息つく様にゆっくりと身体を伸ばした。と、次の瞬間パカッと大きく口を開く。そこから覗く、ドキリとするほど、鮮やかな朱。そして――

 ケキョッキョキョキョッ、キョキョキョキョキョッ

 鳴いた。
 高らかに。

 キョキョキョッ、キョキョキョキョキョッ・・・

 ひとしきり鳴くと、その鳥は枝を蹴る様にして飛び立った。そのままクルクルと踊る様に舞いながら、見る見るうちに遠い空へと消えていく。
 手の中のカメラの事も忘れてそれを見送ると、僕と里香はお互いに顔を見合わせた。

 「裕一、見た?」
 「・・・見た。」
 「毛虫、食べてたね・・・。」
 「なんか、目つき悪かったぞ。目の回り、黄色だし・・・。」
 「口の中真っ赤・・・ちょっと気持ち悪かったかも・・・。」
 「色地味だし・・・。」
 「大きくて、可愛くないし・・・。」
 「可愛くないな・・・。」
 「でも・・・」
 「ああ・・・」
 「見たよね・・・。」
 「見た・・・。」

 ケキョッキョキョキョッ、キョキョキョキョキョッ

 どこからか、またあの声が聞こえてきた。
 流れる声を追って、僕らは視線を宙へと泳がせる。
 いつの間にか空を覆っていた雲は切れ、その合間から青い空が覗いていた。

 キョキョキョッ、キョキョキョキョキョッ

 軽く、速く、転がる様に紡がれる、それは夏告げの歌。
 高く空を見上げれば、響く歌に追われる様に、雲の海が引いていく。
 クルクルと舞う声が何処か彼方へ消える頃、それに合わせる様に射し始めるのは日の光。
 今までの鬱憤を晴らすかの様に、眩しく、強く、そして熱い。
 思わず目を細める僕達の周りで、林の木々が歓喜の声を上げる様にザワザワと鳴った。

 ―夏が、始まっていた―
                                                                                                   
                                               終り
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