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2012年03月27日

霊使い達の宿題その5・地霊使いの場合(後編)(遊戯王OCG・二次創作作品)









 火曜日、遊戯王OCG二次創作・「霊使い達の宿題」の日。
 地霊使い、アウスの出番となっています。ですが・・・はい、全国のアウススキーの皆様。本作品に登場するアウスは、貴方が妄想するアウスとは確実に、そして壮絶に違うと思われます(一部違和感ない方もいらっしゃいますが)。危険を感じた方はすぐ逃げてください。さらに読んでいる間に悪寒、動悸、発汗、吐き気等の症状が現れた場合も、即座に退避してください。読む方は、以上の事を”ようく”承知した上でお読みください(このくらい言っときゃいいだろ)。 
 それでは、詳しく知りたい方はお約束通り、リンクのWikiへ。

 
 というわけでコメントレス。

 読ませていただきました。
 今回は今までの作品と違い短編といった感じなので、少し展開が早かったです。w


 ああ、すいません。ちょっと中編・後編に分けるには中途半端な長さだったもので・・・orz もっと精進します。
 
 私も毛虫などはあまり得意ではありませんw
 
 小生もあまり得意ではありません。(誰だ、そこで爬虫類やGは平気なくせにとか突っ込んでるの)でも、ホトトギスにとっては主食だそうです。

 裕一も若干の嫉妬心じみた所がなんとなくいい感じでした。
 
 はい。たまにはこんなのもいいかなーと。

 季節の変わり目なので体に気をつけてがんばってください。

 はい、ありがとうございますー。m(_ _)m 


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                           ―8― 

 暗い穴倉の中で、“彼”はふと目を開いた。
 まだ眠気の残る瞳で、ゆっくりと周りを見回す。
 住み慣れた巣穴の中。何ら変わった様子はない。
 けれど、“彼”の六感の一つは確かな違和感を感じ取っていた。
 無造作に地べたに転がしていた頭をもたげると、鼻をヒクヒクと動かして空気を探る。
 “彼”の鋭い嗅覚が、鼻腔に満ちた空気の中からその違和感を探り出す。
 それは、香りだった。
 少し刺激的で、それでいて酷く蠱惑的な香り。
 “彼”の腹が、低い音を立てる。
 空腹だった。
 ここしばらく、狩りが上手くいっていない。
 最後に食事をしたのは、いつの事だっただろう。
 下位種とはいえ、時に神格すら有する種族の端くれである“彼”に、飢え死にというものはない。しかし、それと空腹とはまた別の話だ。
 それに耐えるために、しばしの間休眠に入る事にしたというのに。
 すっかりこの香りに邪魔をされてしまった。
 迷惑な話である。
 しかし、覚めてしまったからには仕方ない。
 こうなったからには、この香りの元凶に責任をとってもらおう。
 件の香りが、いままで生きてきた中で嗅いだ事のない物である事が少し引っかかったが、そんな疑念などどうでも良くなってしまうほど、その香りは蠱惑的だった。
 “彼”は四肢に力を込めると、己の身体を引きずり始める。
 ズルリ
 重い身体が、地面に独特の後をつける。硬い鱗に覆われた表皮が地に摩れ、所々にキラキラと光る欠片を残していく。
 ズルリ ズルリ
 そして“彼”は、実に数ヶ月ぶりに巣穴の外へと這いずり出た。

 外に出ると、件の香りはいっそう強くなった。
 顔を上げ、フンフンとそれの漂ってくる方向を探る。
 どうやら、件の香りは西の方から漂ってくるらしい。
 それは、“彼”がいつも「力」を浴びに行く、この森で一番大きな樹のある場所の方向。
 結構な事だ。
 食事の後に、あの「力」を浴びながら昼寝を決め込むのも悪くない。
 “彼”はその場所に向かい、ゆっくりと足を進め始めた。

 『ひぇえええええ・・・ナンマンダブ、ナンマンダブ・・・』
 (ちょっと君。少し静かにしてくれないかな。“彼”に警戒されると、困るんだけど。)
 『こげな状態で冷静でなんかいられますかいな!?この人でなし!!腹黒娘!!』
 (君は実に馬鹿だなぁ。ボクがそんな言葉で動揺すると思ってるの?今更。)
 『分かってますがな!!けど言わずにおれるかい!!チクショーッ!!』
 (だから、静かにしなってば。)

 鋭い嗅覚でその香りを辿りながら、“彼”は進んでいた。
 朽ちて倒れた巨木を踏み折り、鬱蒼と茂った藪をくぐり、流れる沢を越えて。
 途中、幾度か低レベルのモンスターに出会ったが、今の“彼”はそんなものには何の興味も引かれはしない。
 一歩一歩を進める度に、件の香りが近くなる。
 ああ、たまらない。
 口に満ちる唾液をダラダラと溢れさせながら、“彼”は歩を早めた。

 『んぁ!?何や、臭ってきましたで!?』
 (・・・この臭い、多湿棲の爬虫類独特の臭いに似てる・・・。これは、来たかな?)
 『ひぃっ!!』
 (どうしたの?)
 『今、そこの茂みが動いた!!動きましたで!!』
 (しっ!!来た!!)

 突然、デーモン・ビーバーの目の前の茂みが割れた。
 折れた枝をメシメシと踏み砕きながら現れたのは、体長7〜8メートルはあろう怪物。
 腹を地面につけて這いずる様は、まるで大きな蜥蜴を彷彿とさせる。
 しかし“それ”の背中には、申し訳程度ではあるが確かな翼がついており、“それ”が立派な彼の種族の一端である事を如実に示していた。
 ―地を這うドラゴン―
 悠久の進化の果てに大空を捨て、地を這う事に生きる術を見出した異端のドラゴン族である。
 ドラゴンの目の焦点が、ゆっくりとデーモン・ビーバーに合わせられる。
 獲物を見つけた喜びを表す様に、その巨大な口が歪に歪む。その隙間から見え隠れする太い牙が、逃げる術のないデーモン・ビーバーをさらに震え上がらせた。
 『ひ・・・ひぃいいいいい!!』
 ズル・・・ズル・・・
 一歩、また一歩。地を這いながら、ドラゴンがデーモン・ビーバーに近づいて行く。
 やがてデーモン・ビーバーの真下まで来ると、ドラゴンは上を見上げ、その巨大な口をガパリと開いた。
 太い杭の様な牙がズラリと並ぶ口が、デーモン・ビーバーを一呑みにする。
 ・・・と思われたその瞬間、
 パァ・・・
 突然ドラゴンの真下の地面が朱く輝き、朱色の魔方陣が浮かび上がる。
 『!!』
 驚いたドラゴンが身を翻そうとするが、もう遅い。
 ボコッ
 そんな音とともに地面に大穴が開き、地を這うドラゴンは為す術もなくその中へと堕ちていった。


                           ―9―

 ―罠魔法(トラップ・スペル)「落とし穴(フォール・ホール)」―
 ・・・効果はそのまんまなので割愛する。

 『ガ、ガゴ、ゴ…!?(お、落とし穴…だと!?)』
 深い穴にはまり、身動きのとれない“彼”。その耳に、この森では聞き慣れない声が響いた。
 「上手くいったみたいだね。」
 そんな言葉とともに、世界樹の影から現れた二つの影。片方は良く知っている。この森に住むジャイアント・オークだ。もう一人は人間。若いメスのようだ。
 どういう事だろう。あの自分にもまして貪欲なジャイアント・オークが、まるで飼い犬の様に人間のメスなどに付き従っているとは。まるで悪い夢でも見ているようだ。
 混乱する“彼”に向かって、人間がスタスタと近づいてくる。
 フシューッ
 威嚇の噴気音を上げるが、その人間は微塵も臆する事無く近づいてくる。
 “彼”の頭の上に紐でぶら下がっているデーモン・ビーバーが何事かを喚くが、それも気にする様子はない。
 お互いの吐息を感じるくらいまでの距離まで近づくと、人間は手にしていた杖の先を“彼”の鼻面に押し付けた。
 途端、杖の先端の水晶が淡く輝いたかと思うと、何かの力が“彼”の中に流れ込んでくる。それを感じた瞬間、“彼”は自分の身に起こった事を理解した。
 「はい。これでキミは僕のもの。」
 そう言って、その人間は怪しく微笑む。
 『ガグ、ゴガゴゴ…!!(ひ、卑怯な…!!)』
 思わず“彼”が呟くと、
 「卑怯?最高の褒め言葉だね。ありがとう。」
 思わぬ返答が返ってきて、“彼”は肝を潰す。
 「グゲガゴ!?(何で竜語わかるし!?)」
 「ウフフ。」
 その問いにも、人間は笑うだけで答えない。
 (な、何かこの人、怖い…(汗))
 怯える“彼”の頭の上で、風に揺れるデーモン・ビーバーが心底気の毒そうに溜息をついた。

 『ペロペロ・・・冗談やないで・・ペロ・・・ホンマ・・ペロペロ・・・毎度毎度、人(?)の事・・ぺロ・・何やと・・ペロペロ・・思うとるんでっか・・ぺロ・・・。』
 「愚痴を言うか、食べるか、どっちかにしたらどうだい?だいたい、近くに沢があるんだから、そこで洗ってくればいいじゃないか。」
 傍らにオークを傅かせ、平伏させたドラゴンの背にチョンと座ったアウスは、カレーのルー塗れになった身体を必死に嘗め回している相方に、呆れた様にそう言った。
 『ペロペロ・・そんな・・・勿体ない・・ぺロ・・・』
 「それにしても、さすがは老舗名店自慢のカレー。この香りには、警戒心の強い君でも抗えなかったみたいだね。」
 そう言いながら、ドラゴンの目の前で空になったパッケージをピラピラとさせる。そのパッケージには「モウヤン特製!!絶品シーフードカレー(お持ち帰り用)」の文字。
 それを一瞥したドラゴンは、心底嫌そうな顔をして目を逸らした。
 「強いスパイスの香りがボク達の匂いも隠してくれるし、まさに一石二鳥だったよ。」
 『・・・せやけどなぁ、主(マスター)・・・』
 身体に付いたルーを舐めながら、デーモン・ビーバーがアウスに声をかけた。
 「何だい?」
 『それやったら、何でわざわざワイがぶっかぶって囮んなる必要があったんでっか?ただ皿にでもあけて置いときゃ良かった様な気もするんやけど・・・』
 それを聞いたアウスが、実に心外だといった態で答える。
 「君は本当に馬鹿だなぁ。そんなの、ちゃんとした理由があるに決まってるじゃないか。」
 『その心は?』
 訊かれたアウスは、ニッコリと微笑んで、

 「面白いから。」

 『・・・・・・。』
 「・・・・・・。」
 一人と一匹の間に流れる、切ない沈黙。
 そして―

 『もう君とはやっとれんわー!!』

 デーモン・ビーバーの魂のツッコミが、古の森の中に空しく木霊して消えていった。


                                                         終り
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