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2021年09月17日

中小企業経営・政策 〜2021年版中小企業白書 2-3〜

第2部第3章 事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用
事業承継の意向を確認したところ、親族への承継を希望する経営者が多いものの、近年の事業承継は親族内承継から親族外承継にシフトしている。事業承継を実施した企業の承継後の業績を分析したところ、後継者の年齢や事業承継の方法などにかかわらず、総じて事業承継実施企業のパフォーマンスが同業種平均値を上回っていることが分かった。先代経営者や後継者が、事業承継が単なる経営者交代の機会ではなく、企業の更なる成長・発展のための転換点であることを認識した上で、事業承継に向けた準備や承継後の経営に臨むことの重要性を指摘した。雇用維持などの事業承継策としてだけでなく、事業の成長・発展や事業再生を目的に売り手としてのM&Aを検討する企業も一定程度存在することを確認した。
第1節 事業承継を通じた企業の成長・発展

休廃業・解散の動向と経営者の高齢化

休廃業・解散件数は、2019年までは4万件台の半ばで推移していたが、2020年は新型コロナウイルス感染症の
影響などにより、調査開始以降最多となる4万9,698件となった。2018年から2020年にかけて、休廃業・解散企業の業種構成比には大きな変化は見られない。2020年は休廃業・解散件数が増加しているが、業種にかかわらず休廃業・解散が増加している。休廃業・解散企業の従業員規模を見ると、全ての業種において、休廃業・解散企業の95%以上は従業員20名以下の比較的小規模な企業であることが分かる。近年、経営者の平均年齢は上昇傾向にあり、休廃業・解散件数増加の背景には経営者の高齢化が一因にあると考えられる。休廃業・解散した企業のうち、直前期の業績データが判明している企業について集計すると、2014年以降一貫して約6割の企業が当期純利益が黒字であることが分かる。2018年から2020年にかけて、利益率が5%以上の企業が4分の1程度となっており、業績不振企業だけでなく、高利益率企業の廃業が一定数発生していることが分かる。年代別に見た中小企業の経営者年齢の分布を見ると、2000年に経営者年齢のピーク(最も多い層)が「50歳〜54歳」であったのに対して、2015年には経営者年齢のピークは「65歳〜69歳」となっており、経営者年齢の高齢化が進んできたことが分かる。経営者年齢別に2017年から2019年の間の新事業分野への進出の状況を見ると、経営者年齢が若い企業ほど、新事業分野進出に取り組んだ企業の割合が高く、売上高、利益ともに経営者年齢と負の相関がある。
事業承継の現状と事業承継実施企業のパフォーマンス

た経営者交代数の推移を見ると、経営者交代数は年間3万6千件前後で推移しており、毎年一定程度経営者交代が行われている。承継方法別に経営者交代前後の経営者平均年齢を見ると、交代前の経営者年齢は同族承継で68.9歳、同族承継以外で63.2歳と、同族承継では事業承継時期が遅くなる傾向にあることが分かる。同族承継においては、子息などの後継者が一定の経験や年齢を重ねるのを待って事業承継するために、結果的に承継時期が遅くなっている可能性が考えられる。一方で交代後の経営者平均年齢は同族承継で46.8歳、同族承継以外で54.5歳と同族承継の方が若い年齢で経営者に就任していることが分かる。現在の経営者の就任経緯については半数以上の企業で、先代経営者の親族が経営者に就任している。その中でも近年事業承継をした経営者の就任経緯は、近年同族承継の割合は減少しており、足元の2020年においては、内部昇格と同水準の34.2%となっていることが分かる。事業承継の方法がこれまで主体であった親族への承継から、親族以外への承継にシフトしてきていることが分かる。
後継者有無の状況

後継者不在企業の割合(以下、「後継者不在率」という。)の推移を見ると、後継者不在率は2017年の66.5%
をピークに近年は微減傾向にあり、足元の2020年は65.1%となっている。業種別に後継者不在率を見ると製造業では57.9%、運輸・通信業では61.5%と比較的低い一方、建設業では70.5%、サービス業では69.7%となっており、業種によって差異がある。
後継者有無別のパフォーマンス比較

後継者有無と企業パフォーマンスの関係について、両者は相関関係にあると言われている。例えば負債比率、有利子負債利子率が高く、売上高成長率が低い企業は後継者が不在になる確率が高まることが指摘されている。(株)東京商工リサーチの「企業情報ファイル」を基に、後継者がいる企業(以下、「後継者有企業」という。)と後継者不在企業のパフォーマンスについて後継者有無別に、2015年から2019年の売上高成長率の中央値を見を見ると、後継者有企業において売上高成長率が高い傾向にあることが見て取れる。
後継者の選定

後継者を選定する際の優先順位について、優先順位1位で最も高いのは「親族」(61.1%)で、次いで「役員、従業員」(25.0%)となっている。続いて優先順位2位を見ると、「役員、従業員」が最も高く5割を超えており、また「事業譲渡や売却」を検討する者も一定程度存在することが分かる。優先順位3位では、「事業譲渡や売却」、「外部招へい」を合わせると6割を超えている。このことから、多くの経営者はまず「親族」を第一候
補として検討し、次いで「役員、従業員」、そして「事業譲渡や売却」、「外部招へい」の順に検討している様子がうかがえる。ただし、近年同族承継の割合が34%程度であることを考慮すると、必ずしも希望通りに親族への承継がかなわないケースも増えてきていると考えられ、事業継続の意志がある場合は早めに後継候補者の意思確認を進めていくことで、様々な選択肢を検討することが可能になるといえる。
事業承継の課題

後継者への承継方法別に事業承継の課題を見ると、「事業の将来性」については、承継方法にかかわらず半数以
上の経営者が課題として捉えていることが分かる。また同族承継や内部昇格の場合は、「後継者の経営力育成」や「後継者を補佐する人材の育成」の割合が高い。さらに内部昇格の場合は、「後継者を探すこと」も20.9%と他の承継方法と比べ高くなっており、役員・従業員の中から適任者を選定することが課題となっている様子がうかがえる。一方で、外部招へいの場合は、「近年の業績」や「従業員との関係維持」の割合が高い。「近年の業績」が課題となっていることで、外部招へいという手段を検討している可能性も考えられる。
承継時の状況別、事業承継後のパフォーマンス

事業承継の1年後から5年後まで同業種平均値を20%前後上回っており、事業承継実施企業が同業種平均値よりも高い成長率で推移している。事業承継時の後継者の年齢別に分析したものを見ると、全ての指標において、事業承継時の年齢にかかわらず事業承継後の成長率が同業種平均値を上回っており、事業承継後パフォーマンスが向上していることが分かる。特に事業承継時の年齢が39歳以下においては成長率が高い傾向にある。
第2節 M&Aを通じた経営資源の有効活用

中小企業のM&Aの動向

10年前と比較した中小企業のM&Aに対するイメージの変化について確認したものを見ると、買収することにつ
いては33.9%で、売却(譲渡)することについても21.9%で「プラスのイメージになった」としており、いずれも「マイナスのイメージになった」を大きく上回り、M&Aに対するイメージが向上してきていることが分かる。地域別にM&Aに対するイメージの変化を見ると、買収すること、売却(譲渡)することのいずれも地域による傾向の差は見られない。都市部の企業だけでなく、地方部の企業にとってもM&Aが身近な手段になってきている様子がうかがえる。
M&A実施意向

中小企業のM&A実施意向を見ると、3割程度の中小企業において、何らかの形でM&Aを実施する意向がある。買い手・売り手の別に見ると、買い手意向がある企業の割合が19.1%と高く、売り手意向がある企業は5.6%となっている。また、買い手・売り手両方の意向があるとする者も4.1%存在する。M&A実施意向別に希望する相手先企業の規模について、買い手として意向のある企業では「自社より小規模」を希望する割合が高く、売り手として意向のある企業では「自社より大規模」を希望する割合が高い。M&A実施意向別に希望する相手先企業の業種について、買い手として意向のある企業では「同業種」が54.2%、「異業種・業種関連あり」が37.6%となっており、自社と関連する業種を希望する割合が高い。一方で、売り手として意向のある企業では「異業種・業種関連なし」が30.7%となっており、買い手として意向のある企業と比較すると、幅広い業種で相手先企業を検討している様子がうかがえる。M&A実施意向別に希望する相手先企業の地域を確認したものを見ると、買い手として意向のある企業では相手先企業を比較的近隣の地域で検討している一方、売り手として意向のある企業では「その他国内全域」が46.8%と最も高く、広いエリアで相手先企業を検討していることが分かる。M&A実施意向別に
希望するM&Aの形態について確認したものを見ると、買い手として意向のある企業、売り手として意向のある企業のいずれも「垂直統合(商流の川上や川下企業との統合)」よりも「水平統合(同業種同業態企業との統合)」を希望する傾向にある。
買い手としてのM&A実施意向

経営者年齢別に買い手としてのM&A実施意向を見を見ると、経営者年齢が若い企業ほど「買い手意向あり」の割合が高いことが分かる。特に、経営者年齢が30代以下の企業では4割以上で買い手意向がある。買い手としてM&Aを実施する際に重視する確認事項について「事業の成長性や持続性」が最も高く6割を超えており、「直近の売上、利益」、「借入等の負債状況」と続いている。希望するM&Aの形態別に買い手としてM&Aを実施する際に重視する確認事項について見ると、水平統合の場合は「直近の売上、利益」や「借入等の負債状況」など財務面を重視する傾向にあり、垂直統合の場合は、「既存事業とのシナジー」や「事業の成長性や持続性」など事業そのものを重視する傾向にあることが分かる。
売り手としてのM&A実施意向

後継者有無別に売り手としてのM&A実施意向を見を見ると、後継者がいない企業において、「売り手意向あり」の割合が高いことが分かる。売り手としてのM&Aを検討したきっかけや目的について、「従業員の雇用の維持」や「後継者不在」といった事業承継に関連した目的の割合が高い一方、「事業の成長・発展」も48.3%と高く、約半数の企業が成長のために売り手としてのM&Aを検討していることが分かる。売り手としてM&Aを実施する際に重視する確認事項について見ると「従業員の雇用維持」が82.7%となっており、ほとんどの経営者が売却・譲渡後の従業員の雇用維持を重視していることが分かる。実際にM&Aを実施した企業(買い手企業)に対し、売り手企業の従業員の雇用継続の状況について確認したものを見ると、8割以上の企業でM&A実施後も全従業員の雇用を継続している。
新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた中小企業のM&A実施意向の変化

感染症流行前と2020年10月時点でのM&A実施意向について確認したものを見ると、感染症流行前後での差は大
きくはないものの、「買い手として意向あり」とする割合は低下し、「売り手として意向あり」とする割合は高まっていることが分かる。
中小企業のM&Aを支援する機関

M&A支援機関別に対応することの多い買い手企業のM&Aのきっかけや目的について、事業引継ぎ支援センターでは、「人材の獲得」を目的とする買い手企業が最も多く、「売上・市場シェアの拡大」、「新事業の展開・異業種への参入」が上位となっている。事業引継ぎ支援センター以外では、「売上・市場シェアの拡大」の割合が特に高い傾向にあることが分かる。また金融機関やその他支援事業者では、「取引先や同業者の救済」や「地域の産業や雇用の維持」の割合も相対的に高い傾向にある。M&A支援機関別の特徴としては、事業引継ぎ支援センターは「相談の敷居の低さ、金額の安さ」や「話しやすさや相談者への経営理解」が上位となっており、事業
者が気軽に相談に行きやすいことが特徴となっている。M&A仲介業者では、「M&Aの専門性」、金融機関では「話しやすさや相談者への経営理解」や「接触頻度」、その他支援事業者では「M&A以外の経営課題に対するサポート」の割合が高く、支援事業者によって差別化している要素に違いがある。
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